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緊
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しま
ふりがな文庫
“
緊
(
しま
)” の例文
「でも、親分が居なさると若い者も何となく気が
緊
(
しま
)
っていい。迷惑でしょうが、町内付合だと思って涼み船の人数に入って下さい」
銭形平次捕物控:052 二服の薬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
白い
切
(
きれ
)
が、くるくると小さくなり、左右から、きりりと
緊
(
しま
)
って、細くなって、その前髪を富士形に分けるほど、鼻筋がすっと通る。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
勘次
(
かんじ
)
には
主人
(
しゆじん
)
の
家
(
うち
)
が
愉快
(
ゆくわい
)
に
能
(
よ
)
く
働
(
はたら
)
くことが
出來
(
でき
)
た。
彼
(
かれ
)
の
體躯
(
からだ
)
は
寧
(
むし
)
ろ
矮小
(
こつぶ
)
であるが、
其
(
その
)
きりつと
緊
(
しま
)
つた
筋肉
(
きんにく
)
が
段々
(
だん/″\
)
仕事
(
しごと
)
を
上手
(
じやうず
)
にした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「
何
(
ど
)
うも
斯
(
か
)
う
弛
(
ゆる
)
みますと、
到底
(
とても
)
元
(
もと
)
の
樣
(
やう
)
に
緊
(
しま
)
る
譯
(
わけ
)
には
參
(
まゐ
)
りますまいと
思
(
おも
)
ひますが。
何
(
なに
)
しろ
中
(
なか
)
がエソになつて
居
(
を
)
りますから」と
云
(
い
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼女の双眼は、
叡智
(
えいち
)
のなかに、いたずら
気
(
ぎ
)
を隠して、
慧
(
さか
)
しげにまたたいていた。引き
緊
(
しま
)
った白い顔に、黒すぎるほどの眼だった。
江木欣々女史
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
▼ もっと見る
『あゝ、月がある!』然う言つて私は空を見上げたが、後藤君は黙つて首を
低
(
た
)
れて歩いた。痛むのだらう。吹くともない風に肌が
緊
(
しま
)
つた。
札幌
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
緊
(
しま
)
りのない肉づきのいい体、
輪廓
(
りんかく
)
の素直さと品位とを
闕
(
か
)
いている、どこか崩れたような顔にも、心を
惹
(
ひ
)
きつけられるようなところがあった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
一家の平穏のためにはどんな
些細
(
ささい
)
な邪魔でも
嫌悪
(
けんを
)
したい本能から気の引き
緊
(
しま
)
るのを感じながら、彼女は玄関の厚い
硝子戸
(
ガラスど
)
をゆつくり開けた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
殊に彼女の口は、彫刻家の
鑿
(
のみ
)
の力を借りなければ開かぬものゝやうにかたく
緊
(
しま
)
り、
額
(
ひたひ
)
は次第に石のやうな
峻嚴
(
しゆんげん
)
さに
据
(
すわ
)
つてゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「旦那のかんがえていることはばかばかしいことですよ、わたしなぞ松の溜場にはいると、きゅっとからだが
緊
(
しま
)
って来るほど快い気持です。」
生涯の垣根
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「何だな、
吝臭
(
けちくさ
)
え。途中で
舎
(
よ
)
すようなら始めっから出ねえがいい。お前この節はいやに
緊
(
しま
)
り
家
(
や
)
になったな。」と
貶
(
けな
)
されると
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
それは、あの日には三十俵五人
扶持
(
ぶち
)
の門田与太郎であった。しかし今は、鶴のような
緊
(
しま
)
った
身体
(
からだ
)
に公然と着る
絆天
(
はんてん
)
や
股引
(
ももひき
)
がよく似合っていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
そこは日の目のさしたこともなかろうと思われるような、陰気な冷い部屋、畳は板のように
緊
(
しま
)
って固く、天井は高かった。
比叡
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
丈
(
せい
)
はすらりとしているし、眼は鈴を張ったようにぱっちりしているし、口は
緊
(
しま
)
って肉は
痩
(
や
)
せず
肥
(
ふと
)
らず、晴れ晴れした顔には常に紅が
漲
(
みなぎ
)
っている。
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
彼は涙ぐましいほど引き
緊
(
しま
)
った心で、而し、救いの手を待つような落着いた心で、毎週月曜日と、それから他の日にも時々、横田の家へ行った。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
柔和な博士の眼がまったく引き
緊
(
しま
)
り切って、博士はもはや猟銃も鴫も鷭も、すっかり忘れ果てているかのようであった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
寒
(
かん
)
かぜに赤くひき
緊
(
しま
)
っている顔は、どこか
大人
(
たいじん
)
の
相
(
そう
)
をそなえ、大きくて高い鼻ばしらから
顎
(
あぎと
)
にかけての
白髯
(
はくぜん
)
も雪の眉も、為によけい美しくさえあった。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
黒の
莫大小
(
メリヤス
)
の裏毛の付いたやつで、皺を延ばして
填
(
は
)
めた具合は
少許
(
すこし
)
細く
緊
(
しま
)
り過ぎたが、握つた
心地
(
こゝろもち
)
は暖かであつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
引き
緊
(
しま
)
った両顎と、憤り及び悲哀の皺とを持つところのこの獅子のような相貌を支配している特徴は、まさに意力である。——ナポレオン的意力である。
ベートーヴェンの生涯:02 ベートーヴェンの生涯
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そして、なんだか寒い程引き
緊
(
しま
)
った気持の中で、
一斉
(
いっせい
)
に開こうとする花束のような、
夥
(
おびただ
)
しい微笑がふくらみ、
軈
(
やが
)
て静かな
泪
(
なみだ
)
となって溢れ出すのを感じた。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
なかでも、長身なあなたが、若い
鹿
(
しか
)
のように、
嫋
(
しな
)
やかな、ひき
緊
(
しま
)
った肉体を、リズミカルにゆさぶっているのが、次の一廻り中、眼にちらついています。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
そこに行くと、「君待つと吾が恋ひ居ればわが
屋戸
(
やど
)
の
簾
(
すだれ
)
うごかし秋の風吹く」(巻四・四八八)の方が
旨
(
うま
)
い。似ているが初句の「君待つと」で
緊
(
しま
)
っている。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
パラオ女には珍しく
緊
(
しま
)
った顔立で、恐らく内地人との混血なのではなかろうか。顔の色も、例の黒光りするやつではなくて、艶を消したような浅黒さである。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
再びあの真っ暗な堂のなかは四天王の像だけになり、其処には千年前の夢が急にいきいきと
蘇
(
よみがえ
)
り出していそうなのに、僕は何んだか身の
緊
(
しま
)
るような気がした。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
するとその紫ばんだ、妙に
緊
(
しま
)
りのない
唇
(
くちびる
)
には、何か
微笑
(
ほほえみ
)
に近い物が、ほんのり残っているのでございます。
報恩記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一寸
(
ちょっと
)
したウイスキイの酔は、すぐにも発散したし、湯上りのやや
肌寒
(
はだざむ
)
を感ずるところへ、明日はいよいよ樺太だと思うと、何か気も
昂
(
あが
)
れば、引き
緊
(
しま
)
っても来る。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
「ふうん、貴様が例の闇太郎か! 大名、富豪の、どんな厳重な
緊
(
しま
)
りさえも
呪文
(
じゅもん
)
で出入りするかのように、自由に出没すると言う、
稀代
(
きたい
)
の賊と言うのは、貴様か?」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
僕が毎日の様に
行
(
ゆ
)
くのはリユクサンブル公園と、
其処
(
そこ
)
の美術館とだ。一
葉
(
えふ
)
をも着けない冬
枯
(
がれ
)
の、黒ずんだ幹の行儀よく並んだ
橡樹
(
マロニエ
)
の蔭を朝踏む気持は身が
緊
(
しま
)
る様だ。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
菘庵は、指先で血を取って、
指頭
(
しとう
)
で捻って小首をかしげていたが、急にひき
緊
(
しま
)
った顔つきになって
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
何時
(
いつ
)
もは、夫の帰るのを考えると、妙に
身体
(
からだ
)
が、引き
緊
(
しま
)
ってムラ/\とした
悪感
(
おかん
)
が、胸を
衝
(
つ
)
いて起るのであったが、今宵に限っては、不思議に夫の帰るのが待たれた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
筋肉質の
緊
(
しま
)
った
躯
(
からだ
)
で、色が黒く、はっきりと濃い眉や、いつも一文字なりにひき結んでいる唇や、またたきをすることの少ない静かな眼つきなどで際立って
凛
(
りん
)
とみえる。
初夜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
やがて乱れ飛ぶ霧に、せき立られるようにして立上ると、台地のすぐ上を登って行った。この壁は思ったより手強かった。岩は堅く
緊
(
しま
)
っているが、手懸は小さく足場は少い。
一ノ倉沢正面の登攀
(新字新仮名)
/
小川登喜男
(著)
うら寂しい夫でいて兎の毛で突いたほども隙間のない引き
緊
(
しま
)
った気分が、何か想像にも及ばない痛快な「だんまり」の幕の開かれる前の舞台に臨んだような感じを起させる。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
『
筋肉
(
にく
)
の固く引き
緊
(
しま
)
ってることといったら、まったく
吃驚
(
びっくり
)
するくらいで、鼻面が——針のように尖ってるのだよ!』そう言って二人を、非常に
瀟洒
(
しょうしゃ
)
な小さい
小舎
(
こや
)
へと案内したが
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
駒形の茂兵衛(三十三、四歳)角力をやめてグレてはいった博徒仲間、約十年に鍛錬した体と共に、心もぐッと
緊
(
しま
)
り、見違えるような男になっている。今は諸国をめぐる旅人風俗。
一本刀土俵入 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
ぐったりしていた気持が急に引き
緊
(
しま
)
って、私は身構える。そしてじっと待つ。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
頭上から強い光をうけているせいで断髪の頭や、ゆるやかな頸から肩への輪廓が
緊
(
しま
)
ってなお小柄に見える伸子は、影を絨毯の上におとしながら、首をかしげてちょっとの間黙って考えていた。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
弥撒
(
ミサ
)
を行ふ間は、わが心自づと強く、身も
緊
(
しま
)
つて、尊い葡萄酒の
輝
(
かゞやき
)
は眼に満ちわたり、聖なる
御油
(
みあぶら
)
に思も潤ふが、このわが廊堂の人げない処へ来ると、此世の
疲
(
つかれ
)
に
崩折
(
くづを
)
れて、
跼
(
くゞ
)
まるとも
構
(
かまひ
)
ない。
法王の祈祷
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
漆黒のやわらかな髪が肩まで垂れ、まるで月の光を凝固したような色のスーツは、胸のこんもりした双つの丘のしたで花籠のように
緊
(
しま
)
って、腰から腿にかけてのカーヴをひときわ魅惑的にしている。
メリイ・クリスマス
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
そして一體にふくよかに
柔
(
やはら
)
かに
出
(
で
)
來てゐる、
而
(
しか
)
も形に
緊
(
しま
)
ツたところがあツたから、
誰
(
たれ
)
が見ても
艶麗
(
えんれい
)
な
美
(
うつく
)
しい
體
(
からだ
)
であツた。
着物
(
きもの
)
を
着
(
き
)
てゐる
姿
(
すがた
)
も
好
(
よ
)
かツたが、
裸
(
はだか
)
になると一
段
(
だん
)
と
光
(
ひかり
)
を
増
(
ま
)
した。それから
顔
(
かほ
)
だ。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
平田は私立学校の教員か、専門校の学生か、また
小官員
(
こかんいん
)
とも見れば見らるる風俗で、
黒七子
(
くろななこ
)
の三つ紋の羽織に、
藍縞
(
あいじま
)
の
節糸織
(
ふしいとおり
)
と白ッぽい上田縞の二枚小袖、帯は
白縮緬
(
しろちりめん
)
をぐいと
緊
(
しま
)
り加減に巻いている。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
口は歌ふ前のやうにきゆつと
緊
(
しま
)
り
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
味方らしい年上の方が、
対向
(
さしむか
)
いになると、
凄
(
すご
)
いようで、おのずから五体が
緊
(
しま
)
る、が、ここが、ものの甘さと苦さで、甘い方が毒は順当。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
尤
(
もつと
)
も
元
(
もと
)
は
一面
(
いちめん
)
の
竹藪
(
たけやぶ
)
だつたとかで、それを
切
(
き
)
り
開
(
ひら
)
く
時
(
とき
)
に
根丈
(
ねだけ
)
は
掘
(
ほ
)
り
返
(
かへ
)
さずに
土堤
(
どて
)
の
中
(
なか
)
に
埋
(
うめ
)
て
置
(
お
)
いたから、
地
(
ぢ
)
は
存外
(
ぞんぐわい
)
緊
(
しま
)
つてゐますからねと
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
俺
(
お
)
ら
一錢
(
ひやく
)
もねえから」と
卯平
(
うへい
)
はこそつぱい
或
(
ある
)
物
(
もの
)
が
喉
(
のど
)
へ
支
(
つか
)
へたやうにごつくりと
唾
(
つば
)
を
嚥
(
の
)
んだ。
彼
(
かれ
)
の
目
(
め
)
の
皺
(
しわ
)
が
餘計
(
よけい
)
にぎつと
緊
(
しま
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
甲谷が振り返って芳秋蘭を見ようとすると、そこへ、細っそりと肉の
緊
(
しま
)
った、智的な眼の二重に光る宮子が、二階から降りて来て甲谷の傍の椅子へ来た。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
四人は、彼の前へ出て、彼のきびしい眉の
緊
(
しま
)
り方を見つめた。もう
吩咐
(
いいつ
)
けられる使命を察したもののように
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、
夥
(
おびただ
)
しく酔つて居るので、足の力に
緊
(
しま
)
りが無く、
却
(
かへ
)
つて自分が膳や椀の上に地響して
摚
(
どう
)
と倒れた。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
笑ひ聲を立てゝゐる娘が、彼にこのことを話して聞かせたとき、彼の口は確かに可なりきつと結ばれてゐたやうに見え、彼の顏の
下部
(
かぶ
)
は異常に嚴酷に引き
緊
(
しま
)
つてゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
翌朝彼らは、東南にあたる尾根の
凹
(
くぼ
)
みに煙のあがるのを見た。身肌のひき
緊
(
しま
)
る夜明けの静かな
凪
(
な
)
ぎのなかであった。その煙は青々と末ひろがりに天にのぼって薄れて行った。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
緊
常用漢字
中学
部首:⽷
15画
“緊”を含む語句
緊張
緊乎
緊着
引緊
抱緊
緊要
緊縛
緊縮
緊束
緊金
咬緊
握緊
緊那羅
緊褌
緊迫
緊密
緊直
下緊
固緊
緊箍咒
...