)” の例文
「どこへくだ、辰さん。……長塚の工事は城をくような騒ぎだぞ。」「まだ通れないのか、そうかなあ。」店の女房も立って出た。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
地勢としての横浜は神奈川より岸深きしぶかで、海岸にはすでに波止場はとばされていたが、いかに言ってもまだ開けたばかりの港だ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
城下の鉄砲鍛冶かじ火土捏ほどこねをしていたのだ。左官職にひとしい泥だらけな手をして、筒金つつがねを焼く火土をいたり吹鞴ふいごの手伝いなどしていた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで後から掃溜を覗いてみますと、玉子焼や重ね蒲鉾の喰い残しのような立派なものが山をくほど棄てて御座います。
ヘツヒの古名のかまどに転用せられたのも、新たに出来た語とは謂えぬが、クドも西日本ではおそらくは新語でなかった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
極楽寺ごくがくじ光緒くわうしよ十二年に建てた支那の寺院で、山層を利用して幾段にも堂舎をき上げ、巨額の建築費を要したものだけに規模は大きいが、中に安置した釈迦、観音くわんおん
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
其西の行きどまりはき上げた品川堀のつつみやぶだたみになって、其上から遠村近落のかしの森や松原を根占ねじめにして、高尾小仏から甲斐東部の連山が隠見出没して居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
良兼の軍は馬も肥え人も勇み、よろひの毛もあざやかに、旗指物もいさぎよく、弓矢、刀薙刀なぎなた、いづれ美〻しく、掻楯かいだてひし/\と垣の如くき立てゝ、勢ひ猛にさかんに見えた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
たとへ七二泉下せんかの人となりて、七三ありつる世にはあらずとも、其のあとをももとめて七四つかをもくべけれと、人々に志を告げて、五月雨さみだれのはれ七五手をわかちて
廣小路ひろこうぢよりながむるに、石段いしだんのぼひとのさま、さながらありとうつるがごとく、はな衣類きもの綺羅きらをきそひて、こゝろなくには保養ほやうこのうへ景色けしきなりき
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
叔母の家は山に拠って高くきあげてありますから山里の暮れゆくのが見下されるのです。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
猪川の家は、石の重い、壁の厚い、支那式の家でありながら、壁に切りあけた窓と、四国の田舎にありそうな、石のき塀などによって、すぐ支那人の住家とは見分けがついた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
こうしてムクの歩み行く方向を見ると、暗い中でも物を見るに慣らされた眼が、ハッキリと、自分のこしらえた生田いくたの森のへいと、それからき出した逆茂木さかもぎへと続いて行きました。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
人足たちの住む仮小舎かりごやを建て、灰焼場を建て、役所の建物を修繕したあとも、土入れと地形じぎょうは続けられたし、南の浜の崩れた石垣をき直すには、もっと暇がかかりそうであった。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
日本國は女人によにんの國といふ國で、天照大神ともふす女神によしんきいだされたしまである。
庭の方へき出してある小さいヴェランダへ出て見ると、庭には一面に、大きい黄いろい梧桐ごとうの葉と、小さい赤い山もみじの葉とが散らばって、ヴェランダから庭へ降りる石段の上まで
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
相手は大勢おおぜい、蟠龍軒はすきあらば逃げたいのは山々でござりますが、四辺あたりは一面土手をいたる如く立錐りっすいの余地もなく、石川土佐守殿は忍び姿で御出馬に相成り、与力は其の近辺を警戒して居ります。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
身方の背後に石垣をいて、相図をすれば打って出る
きあまし一二 にかも依らむ一三
あかゞねの壁き上げて父の身を
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
路のべに 子らのきたる
短歌集 日まはり (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
まもりときし城なれば
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
赤潮のつるぎは、炎の稲妻、黒潮の黒い旗は、黒雲の峰をいて、沖からどうと浴びせたほどに、一浦ひとうらの津波となって、田畑も家も山へ流いた。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四つの土塚がその境界にき立てられることになった。あるものはほら先の大石へ見通し、あるものは向こう根の松の木へ見通しというふうに。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
西洞院にしのとういん四条の辻からぞろぞろ出て来た侍たちである。その横には、白壁でいた長い塀と宏壮な腕木門うでぎもんがあった。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほねをひろひつかきて九五塔婆たふばいとなみ、僧を迎へて菩提ぼだいのことねんごろにとぶらひける。
然し与右衛門さんは強慾ごうよくであるかわり、彼はうそを云わぬ。詐は貨幣かね同様どうよう天下のとおり物である。都でも、田舎でも、皆それ/″\に詐をつく。多くの商売は詐にかれた蜃気楼しんきろうと云ってもよい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そのお前さんが土や木のたばつつみくのも
あかがねの壁き上げて父の身を
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
御諸に くや玉垣たまかき一一
ゆびさして、指の先で、男が只瞻ひたみはりに瞻った瞳を、沼の片隅に墨でいた芭蕉の蔭へ、触って瞬かせるまで、動かさせて
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小使いの音吉が来て三尺四方ばかりの炉を新規にき上げてくれた頃、高瀬は先生の隣屋敷の方からここへ移った。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「なに。——分らんのか、眼に見えないか。信長の襲撃に備え、塹壕ざんごうを掘り、やぐらをき、あれ見ろ、百姓どもの老幼まで、加役かえきに徴発されて、働いておるさまを」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勝四郎、翁が一四〇高齢よはひをことぶきて、次にみやこに行きて心ならずもとどまりしより、前夜さきのよのあやしきまでをつばらにかたりて、翁がつかきて祭り給ふめぐみのかたじけなきを告げつつも涙とどめがたし。
翌日は立派に土手がいてございました。
本陣の勝手口の木戸をあけたところにいてある土竈どがまからはさかんに枯れ松葉の煙のいぶるような朝が来た。餅搗もちつきの時に使う古い大釜おおがまがそこにかかった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのまま、立直って、徐々そろそろと、も一度戻って、五段ばかり石をいた小高い格子戸の前を行過ぎた。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして、薪を積み、釜下をき、火をつけるばかりにして待っていた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
實際じつさいとほこれのぞんだときは——もう二三日にさんにち奧州あうしうたびれてやまゆきめづらしくないも、前途ゆくて土手どていてあやしい白氣はくき伏勢ふせぜいがあるやうにそばだてたのであつた。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やがて両村立ち合いの上で、かねて争いの場処である草山に土塚をき立てる日が来た。半蔵は馬籠の惣役人そうやくにんと、百姓小前こまえのものを連れて、草いきれのする夏山の道をたどった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
し、とはれて、けますと、そこあなうちではなかつたのです。すつくりてたやうなたかみねの、うへにもうひとたふきましただいうへりました。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この掘出されたという感じを強く与えるものは、町の往来に高くき上げてある雪の山だ。屋根から下す多量な雪を、人々が集って積み上げ積み上げするうちに、やがて人家の軒よりも高く成る。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
二俣ふたまたの奥、戸室とむろふもと、岩で城をいた山寺に、兇賊きょうぞくこもると知れて、まだ邏卒らそつといった時分、捕方とりかた多人数たにんず隠家かくれがを取巻いた時、表門の真只中まっただなかへ、その親仁おやじだと言います、六尺一つの丸裸体まるはだか
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これにぞ、気を得て、返す刀、列位の黒道人くろどうじん切附きりつけると、がさりと葉尖はさきから崩れて来て、蚊帳を畳んだように落ちる。同時に前へ壁をいて、すっくと立つ青仙人を、腰車にって落す。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
根に軽くいた草堤くさづつみの蔭から、黒い髪が、ひたいが、鼻が、口が、おお、赤い帯が、おなじように、そろって、二人出て、前刻せんこく姉妹きょうだいが、黙って……襟肩えりかたで、少しばかり、極りが悪いか、むずむずしながら
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
踏切がこんもりと、草の中に乾いた川のように、こう高く土手をいた処で、その、不性ぶしょうたらしい斑が、急に背筋にうねを打って狂って飛上るんです。何だかくわえて、がりがり噛りながら狂うんですよ。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
暴風雨あらしのために、一夜に出来た砂堤すなどてなんです。お断りするまでもありませんが、打って寄せる浪の力で砂をき上げる、川も増水のいきおいで、砂を流し流し、浪にかれて、相逆あいさからってそこに砂を装上もりあげる。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)