はし)” の例文
おじいさんのうちまちはしになっていまして、そのへんはたけや、にわひろうございまして、なんとなく田舎いなかへいったようなおもむきがありました。
おじいさんの家 (新字新仮名) / 小川未明(著)
つもる雪もおなじく氷りて岩のごとく、きしの氷りたるはし次第しだいに雪ふりつもり、のちには両岸りやうがんの雪相合あひがつして陸地りくちとおなじ雪の地となる。
謙作はテーブルのはしにやったじぶんの右の手に暖かな手のなまなましく触れたのを感じた。彼はもどかしそうにその手を握ったのであった。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
人に追い掛けられるように、草原くさはらや道を横切って、庭の向うのはしまで行った。そこから振り返って見れば、病人の部屋の窓が見える。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
もう縁側のはしぱたへも寄付よせつけてはなんねえと云いやしたが、お嬢様が連れて来たアだから逢うだけ逢って遣るから、サッサと出て
レールを二本前の方にぎ足しておいて、鉄のかんに似たものを二つ棺台のはしにかけたかと思うと、いきなりがらがらという音と共に
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あきかぜ少しそよ/\とすれば、はしのかたより果敢はかなげに破れて、風情ふぜい次第にさびしくなるほど、あめおとなひこれこそは哀れなれ。
あきあはせ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼が世界の向うの端においてはぐくみ育てられながら聞いた神話の国、それは現世のはしへりどってたそがれとぼかし交える国であった。
人馬のにひ妻 (新字新仮名) / ロード・ダンセイニ(著)
つまり、よくが破れているとか、プロペラのはしけているとか、座席の下に穴が明いとるとか、そういうボロ飛行機でよいのじゃ。
余ははしなく東京の父母や弟や親しき友を想ひ起して、今更の如く、今日まで我を囲みし人情の如何に温かであつたかを感じたのである。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
入江の出口から右の方に長く続いているさきはしが突き出ている、その先きの小島に波が白く砕け始めるようになって来ました。
少年と海 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
武丸は懐中から手紙を取り出して手筥に入れようとすると、中から琴の爪筥つめばこと「青眼鏡の賊」の記事を載せた新聞の切れはしが出て来た。
黒白ストーリー (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
手を取つて引上げぬばかり、後ではさすがにはしたないと氣が付いたか、女房のお靜が持つて來た手燭てしよくの灯の中に苦笑して居ります。
看護員は現在おのが身の如何いかに危険なる断崖だんがいはしに臨みつつあるかを、心着かざるものの如く、無心——いなむしろ無邪気——のていにて
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かくてこの危険なる法律をば、廃止したともなく、忘れておった世人は、それより四十年後に至って、はしなくも覚醒の機運に逢着した。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
はしなくこの場に来合せて、思ひもかけぬ御身たちに、邂逅ふさへ不思議なるに、憎しと思ふかの聴水も、かく捕はれしこそ嬉しけれ
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
僕ははしなくも篠田さんがかつて『労働者中もつとも早く自覚するものは、もつとも世人に軽蔑けいべつされて、尤も生活の悲惨を尽くしてる坑夫であらう』
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
まくらを並べて寝た人たちの中で葉子は床の間に近いいちばんはしに寝かされたが、どうしたかげんでか気味が悪くてたまらなくなり出した。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
文明の悪い波のはしが、押し寄せて来ようとしているのだ。こんなところの女までがおだてられて、仕事の真似をするのか……と。
遠野へ (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
お前はわたしにだまされたと言うか言わない時に、一番はしに伏していたわにがわたくしをつかまえてすつかり着物きものいでしまいました。
其方より暇乞ふ迄もなし、人の數にも入らぬ木のはしは、勿論親でもなく、子でもなし。其一念の直らぬ間は、時頼、シヽ七生までの義絶ぞ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
人の世界の投ぐる影、とがれるはしとなる處なるこの天は、クリストの凱旋に加はる魂の中彼をば最も先に受けたり 一一八—一二〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
見うけるところ汝も武士さむらいはしくれらしい。久しくそういう骨っぽい人間に出会わないので、背中の物干竿ものほしざおが夜泣きをしていた折でもある。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
村落むらはしからはしまでみなどう一の仕事しごと屈託くつたくしてるのだから季節きせつ假令たとひ自分じぶんわすれたとしてもまつたわすることの出來できるものではない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それは日本のはしのほうの、わずかな区域だけに行われているからで、それもあるいは遠からず消えてしまうのではないかと思う。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
と枕のはしを指もて音なへど、眠れるにもあらぬ貫一は何の答をも与へず、満枝は起ちてベッドの彼方あなたへ廻り行きて、彼の寐顔ねがほ差覗さしのぞきつ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
やや寒うなりかけた小亭ちんの、りかへつた小屋根のはしで、いくら振つても振つても、黄色い尻尾は、いよいよ切ない刻みを早めるばかしだ。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
はま女からしつけられたことのはしはしが、更につよくその気持を支え力づけて呉れた。——早く身軽になろう、そう考えていたのが、今では
初蕾 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
この首と胴体どうたいとのあいだはせまい通路になっているので、その通路へ一番精巧せいこうな二つのわなをうめ、そのわなのはし牝牛めうしの首に結びつけた。
といったが与八はポキリと言葉のはしを折って、一丁ほどは物を言いませんでした。兵馬も再び尋ねなかったが、やがて与八は
光一はようやく中ほどへ進んでようやくこしかけのはしに腰をおろした、手塚がきていやしまいかとあたりを見まわしたが暗がりで見えない。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
お召物は純白で、琥珀色こはくいろのスカーフが肩からかゝつて胸を蔽ひ、腰のところで結ばれ、長いふちを縫つたはしの方は膝の下まで垂れてゐました。
此時柏軒ははしなく一の難関に逢著した。それは所謂柏軒の乗船問題である。松田氏は此間の消息を語つてしもの如く云つてゐる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
その前年伊豆の土肥温泉に渡らうとして沼津に一泊しはしなくこの松原の一端を見出し、それに心を惹かれてのことであつた。
沼津千本松原 (新字旧仮名) / 若山牧水(著)
一文字に結んだ唇のはしには、強い意志さえうかがわれた。昔取った杵柄きねづかとでもいおうか、調べ方は手堅くて早く、かがんだかと思うと背伸びをした。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
といふのは、その頃は女形のつつましい口からは、尻といふやうなはしたない言葉は夢にも言つてはならない事になつてゐた。
父親は剃刀のをすかして見てから、紙のはしを二つに折って切ってみた。が、少し引っかかった。父の顔はけわしくなった。
笑われた子 (新字新仮名) / 横光利一(著)
わたくしはしなくも、昨夜ゆふべローマからの滊車きしやなかんだ『小公子リツトルロー、トフオントルローイ』といふ小説せうせつちうの、あのあいらしい/\小主人公せうしゆじんこう聯想れんさうした。
早や大引おおびけとおぼしく、夜廻よまわり金棒かなぼうの音、降来る夕立のように五丁町ごちょうまちを通過ぎる頃、屏風のはしをそっと片寄せた敵娼あいかた華魁おいらん
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
天井には板が張ってあって、助八さんに聞くと、その上に土をのせて、かわらが並べてあるのだそうです。その瓦のはしの方は窓から見えて居ります。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
大勢が手を揃えてその綱を繰上くりあげると、綱のはしにはすくなからず重量めかたを感じたので、不審ながらかくも中途まで引揚ひきあげると、松明たいまつの火はようやとどいた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それは岩見青年が××ビルディング内東洋宝石商会の社員であると云うのを聞いて、はしなくも二三ヶ月ぜんの白昼強盗事件が思い出されたのである。
琥珀のパイプ (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
あいちやんは爪先つまさき立上たちあがり、きのこふちのこくまなくうちはしなくもそのたゞちにおほきなあを芋蟲いもむし出合であひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
殊に私自身が東北人のはしくれであるから、そんな田舎者のひねこびた復讐心を見せつけられた時には、自己嫌悪みたいなものも加えられて、東京
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
しかし、突然夫に接吻せつぷんしたと思ふと、その次の瞬間には、夫の手を振りはらひながら露台のはしへ駆けてくが早いか、はるか下へ身を投げてしまつた。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
はしなる仙太は不意の傾斜かたむきに身を支うる暇なく、あ! と叫びたるまま水の中に陥りしが、辛くも戸板の角にとり縋りて。
片男波 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
或は今夜此筆を擱く迄には、何等か解決のはしを發見するに到るかも知れぬが、……否々いや/\、それは望むべからざる事だ。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「なんやうちにもさっぱり様子分れへんねんけど、今夜急にこの揃いの着物なあ、——」と、私は知って風呂敷の結び目から着物のはし出して見せて
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
蓮華寺の内部なか光景ありさま——今は丑松も明に其真相を読むことが出来た。成程なるほど、左様言はれて見ると、それとない物のはしにも可傷いたましい事実は顕れて居る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
されどの女丈夫が三十年間如何にして日月を過せしかは諸君の知らんと欲する所なるべし、故に予は他日を期しはしを改めて叙述する所あらんと欲す。
千里駒後日譚 (新字旧仮名) / 川田瑞穂楢崎竜川田雪山(著)