ばん)” の例文
「ねえ、おかよや、おまえ、この子守唄こもりうたをきいたことがあって?」といって、はこなかから一まいのレコードをいて、ばんにかけながら
谷にうたう女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
赤シャツの農夫は、まどぶちにのぼって、時計のふたをひらき、針をがたがたうごかしてみてから、ばんに書いてある小さな字を読みました。
耕耘部の時計 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
曹丕は、八ばんの大礼という儀式の後、台にのぼって玉璽をうけ、帝は大小の旧朝臣を従えて、御涙をかくしながら階下にくだられた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尤も私の方からは參つたことはございません。檜木樣のところには良いばんがないからと仰しやつて、毎度私のところにいらつしやいますが
湯はおでない、王様の名だ、ばんはたらいだ、たらいに格言をほりつけたのだ、人間は毎日顔を洗い口をすすいでわが身を新たにするごとく
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
とうとう二、三ばんつことにした。人間も糟谷かすやのような境遇きょうぐうつるとどっちへむいても苦痛くつうにばかり出会であうのである。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
その色青みありて黒く甚だなめらかなり、農夫のうふこれをもつてわらをうつばんとなす、其夜妻にはいでしに燦然さんぜんとして光る物あり、妻妖怪ばけものなりとしておどろきさけぶ
高一少年は、すばやくきかいのかばんをかたにかけると、そのもりばんを、うごかしてみました。すると、電気鳩がつつみのなかから出てきました。
電気鳩 (新字新仮名) / 海野十三(著)
……こゝではまちも、もりも、ほとんど一浦ひとうらのなぎさのばんにもるがごとく、全幅ぜんぷく展望てんばう自由じいうだから、も、ながれも、かぜみちも、とり行方ゆくへれるのである。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
古いころの双六は今ある一枚刷いちまいずりの道中双六どうちゅうすごろくなどとはちがって、将棋しょうぎと同じようなばんの上の競技であった。そうしてその遊びをすることを打つといっていた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
向日葵ひまわり毎幹まいかん頂上ちょうじょうただ一花いっかあり、黄弁大心おうべんたいしんの形ばんごとく、太陽にしたがいて回転す、し日が東にのぼればすなわち花は東にむかう、日が天になかすればすなわち花ただちに上にむか
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
するともうひとりが、その糸をしめらして、三人めの女がそれをぐるぐるまわして、指でうけばんをたたきました。そして、この女がたたくたびに、いくらかのよりいとが下へおちました。
電人Mは、またスイッチばんの前に立って、いくつかのスイッチを入れました。
電人M (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その焼餅を盛ったばんにしたがって、一つの黒い物が入り込んで来た。
ばんは三たび、床上に跳りぬ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
その日と時間に合わせてばんをまわすと、そのとき出ているそらがそのまま楕円形だえんけいのなかにめぐってあらわれるようになっており
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
と、朶思大王も孟獲も、有頂天によろこんで、いよいよ大量に酒瓶さかがめを開き、肉をばんに盛り、血を杯にそそいで夜に入るまで歓呼していた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、時計とけいはりしろばんおもてうごいていました。そのときはまだ、昼前ひるまえでありましたが、いちじるしくながくなったのが子供こどもにもかんじられました。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
平次はさう言つて、一と握りの黒石くろを、ガチヤリとばんの上へ叩き付けました。御用聞にはしい人柄、碁さへ打たなきア、全く大した男前です。
その色青みありて黒く甚だなめらかなり、農夫のうふこれをもつてわらをうつばんとなす、其夜妻にはいでしに燦然さんぜんとして光る物あり、妻妖怪ばけものなりとしておどろきさけぶ
はじめ二目にもく三目さんもくより、本因坊ほんいんばう膏汗あぶらあせながし、ひたひ湯煙ゆけむりてながら、たる祕法ひはふこゝろむるに、僅少わづかに十餘子じふよしばんくや、たちまけたり。すなはひざまづいてをしへふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とうばんめいいわく、まことに日に新たにせば日々に新たにし又日に新たにせん……こう読むのだ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ばんは三度び、床上しようじように跳りぬ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
かや柾目まさめばんが三面、行儀よくならんでいた。床の間へ寄った一面は空いていて、紫ちりめんの座ぶとんだけがある。那智石なちいしの白へ手を突っ込んで
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みじかくて、時計とけいはりが、しろばんをわずかばかりしかきざまないうちに、もうれかかるのでありました。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
老女らうぢよようちなつた*6といひつゝ木のばんの上に長き草をおきて木櫛きくしのやうなるものにてかき解分ときわくるさま也。
そしてその地図の立派なことは、夜のようにまっ黒なばんの上に、一一の停車場や三角標さんかくひょう、泉水や森が、青やだいだいや緑や、うつくしい光でちりばめられてありました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いゝ塩梅あんばい今日けふみづがふへてりますから、なかはいりませんでも此上このうへうございます。)とかうひたして爪先つまさきかゞめながら、ゆきのやうな素足すあしいしばんうへつてた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、豪奢ごうしゃをこらした城内の一室へ迎え入れたのです。多くの、後宮の女には、粉黛ふんたいをさせ、珠をかざらせ、がくそうし、ばんには、山海の珍味を盛って。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてその地図の立派りっぱなことは、夜のようにまっ黒なばんの上に、一々の停車場ていしゃば三角標さんかくひょう泉水せんすいや森が、青やだいだいみどりや、うつくしい光でちりばめられてありました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
(いい塩梅あんばいに今日は水がふえておりますから、中へ入りませんでもこの上でようございます。)と甲をひたして爪先つまさきかがめながら、雪のような素足で石のばんの上に立っていた。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
要するに藤吉郎自身、藤吉郎という人間をよくよくあらためてみると、途方もない大慾たいよく容器いれものなのである。喜怒哀楽とよぶ愚かなものはみんな盛り上げているばんである。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四辺あたりみまはし、衣紋えもんなほして、雪枝ゆきえむかつて、背後向うしろむきに、双六巌すごろくいはに、はじめはこしける姿すがたえたが、つまはなして、ばんうへへ、すみれ鼓草たんぽゝこまけて、さいつてよこた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
時計屋とけいやの店には明るくネオンとうがついて、一びょうごとに石でこさえたふくろうの赤いが、くるっくるっとうごいたり、いろいろな宝石ほうせきが海のような色をしたあつ硝子ガラスばんって
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「オオ。何やらちと退屈をおぼえた、そちを相手に、象戯しょうぎでもさそうかと思うて。ばんをこれへもて」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……坊主ばうず法衣ころもは、大巌おほいはいろみだれた双六すごろくばんおほふて、四辺あたりすみよりもかげくろい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一秒ごとに石でこさえたふくろうの赤いが、くるっくるっとうごいたり、いろいろな宝石が海のような色をした厚い硝子ガラスばんって星のようにゆっくりめぐったり、また向う側から
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
やがてあぶり肉やあつものも出来、飴煮あめにも皿に盛られ、婆はほどよいころと、料理ばんを持って、二階部屋をそっと開けた。……ところがである、婆の哲学は、案に相違していた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はい、また、大きな蛋白石たんぱくせきばんのようでございます」
と、さっそく、ばんにたいして、烏鷺うろたたかわせ始めた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)