のり)” の例文
我等永遠とこしへのりを犯せるにあらず、そはこの者は生く、またミノス我をつながず、我は汝のマルチアの貞節みさをの目あるひとやより來れり 七六—
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
のりの道場に呉越ごえつはない。一視いっしみな御仏みほとけの子じゃ。しかるに、そこもとたちがひきおこした戦争のために、殺された者はそのかずも知れん。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人なみ/\の心より、思へばなれはこの我を、憎きものとぞうらむらん、われも斯くこそ思ひしが、のりの庭にてなれにあひし、人のことの葉きゝけるに
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
第一そういう土地柄で無いし、そういう歴史の背景も無いしのりの残燈を高く掲げているような老僧のような人も見当らない。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「はるばると運ぶ歩みは頼もしやのりはなさく寺をたずねて」と、ゆうべ宿の主を師匠に、二人が一生懸命に稽古けいこしていた御詠歌の文句が思い出された。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かかる砌なれば、庵の内には昼はひねもす、一乗妙典のみのりを論談し、夜はよもすがら、要文誦持の声のみす。
道の深奥をきわめることは不可能とあきらめているのだから、年だけは若くても私の及ばないのりの友かと思われる
源氏物語:47 橋姫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
何等の祝福ぞ、末代下根の我等にして、この稀有けう微妙の心証を成じて、無量ののりの喜びにあづかるを得べしとは。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
弓張月の漸う光りて、入相いりあひの鐘の音も収まる頃、西行は長谷寺はせでらに着きけるが、問ひ驚かすべきのりの友の無きにはあらねど問ひも寄らで、観音堂に参り上りぬ。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「ええ、そのような世迷いごとに、聴く耳は持たぬわ。この島ののりは、とりも直さず妾自身なのじゃ。とくと真実まことを打ち明けて、来世を願うのが、ためであろうぞ」
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ものして自然に美辞びじのりかなうと士班釵すぺんさあおきなはいいけりまことなるかな此の言葉や此のごろ詼談師かいだんし三遊亭のおじ口演くえんせる牡丹灯籠ぼたんどうろうとなん呼做よびなしたる仮作譚つくりものがたりを速記というほう
怪談牡丹灯籠:01 序 (新字新仮名) / 坪内逍遥(著)
遠くさかのぼれば、昔慧可大師えかだいし半臂はんぴってのりを求め、雲門和尚うんもんおしょうはまた半脚を折ってに入った。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
正岡子規先生ではないが、弘法をうずめし山に風は吹けどとこしえに照すのりのともしび。ですよ
仏法僧鳥 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
二に曰く、あつく三宝を敬へ、三宝はほとけのりほふしなり、則ち四生よつのうまれつひよりところ、万国の極宗きはめのむねなり。いづれの世何の人かみのりを貴ばざる。人はなはしきものすくなし、く教ふるをもて従ひぬ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
「今上の御宸襟ごしんきん推察し奉れば、我れ仏門に帰せし身ながら、のりころもかなぐり捨てたく思うぞ」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しるしいしあをきあり、しろきあり、しつなめらかにしてのあるあり。あるがなか神婢しんぴいたるなにがしのぢよ耶蘇教徒やそけうと十字形じふじがたつかは、のりみちまよひやせむ、異國いこくひとの、ともなきかとあはれふかし。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
勢ある家の事とて、羅馬に名高き尼寺の首座をば、今よりこの姫君の爲めに設けおけりとぞ。さればこの君には、苟且かりそめの戲にものりおきてに背かぬやうなることのみをぞ勸め參らせける。
御仏みほとけのりの護りと、ことよさし築かしし殿、星月夜ほしづくよ夜空のくまも、御庇みひさしのいや高々に、すずのいやさやさやに、いなのめの光ちかしと、横雲のさわたる雲を、ほのぼのと聳えしづもる。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
即ち神ののりに従ひて生活するものにあらざれば、自然なる、幸福なる生涯を終る事能はずと云へる真理は、伯の著書に散見して、伯が世ををしゆるの真意をうかゞふに足るべし。伯は言へらく
トルストイ伯 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
仏教でよく修業を積んだ人の所業を評して、「うたうもうものりこえ」と言います。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
血を見せてはならぬのり浄地じょうちおしえの霊場なのです。——いくたびか抜きかかった小柄こづかを押え押えて、必死と黒い影を追いました。今十歩、今十歩と、思われたとき、残念でした。無念でした。
世にはその境遇を問わず、道徳保安者の、死んだもののような冷静、無智、隷属、卑屈、因循をもってのりとし、その条件にすこしでも抵触すれば、婦徳を紛紜うんぬんする。しかし、人は生きている。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
見れば世の中には不可思議無量の事なしと言いがたこと仏家ぶっかの書には奇異の事をいだこれ方便ほうべんとなし神通じんつうとなして衆生しゅじょう済度さいどのりとせりの篇に説く所の怪事もまた凡夫ぼんぷの迷いを示して凡夫の迷いを
怪談牡丹灯籠:02 序 (新字新仮名) / 総生寛(著)
われ内なる人については神の律法おきてを楽しめどもわが肢体に他ののりありてわが心の法と戦い我をとりこにしてわが肢体の内におる罪の法に従わするを悟れり。ああわれ悩める人なるかな。この死の体より我を
語られざる哲学 (新字新仮名) / 三木清(著)
瀧口入道とのりの名に浮世の名殘なごりとゞむれども、心は生死しやうじの境を越えて、瑜伽三密の行の外、月にも露にも唱ふべき哀れは見えず、荷葉の三衣、秋の霜に堪へ難けれども、一杖一鉢に法捨を求むるの外
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
油蔵名のみになりていままさに消えなむとするのりのともしび
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
〽三ツの車にのりの道ソウラ出た……悋気りんき金貸かねかしや罪なもの
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
かりそめの影なりながらのりの月雲がくれこそ悲しかりけれ
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
責めますな心にやすきひと時のあらば思はむのりの母上
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
捧げたる願文ぐわんもんにこそ。光り匂ふのりのため
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
法師とは言うまでもなくのりである。
俗法師考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
眞晝かがよふのりく流を見れば
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
木々の芽のわれに迫るやのりの山
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
菩提樹ぼだいじゆがくれののりその
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
のりあめれあゝさらば
友に (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
謡うも舞うものりの声
京鹿子娘道成寺 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
のりの使に世にでて
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
願ふと云ふもしのなきことに他人に有ながら當家へ養子やうしに來た日よりあつ深切しんせつくして呉し支配人なる久八へ鳥渡成ちよつとなりとも書置かきおきせんとありあふすゞり引寄ひきよせて涙ながらに摺流すりながすみさへうすにしぞとふで命毛いのちげみじかくも漸々やう/\したゝをはりつゝふうじるのりよりのりみち心ながら締直しめなほす帶の博多はかたの一本獨鈷どつこ眞言しんごん成ねど祕密ひみつの爲細腕ほそうで成ども我一心長庵如き何の其いは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
近きも遠きもかしこにては加へじかじ、神の親しくしろしめし給ふ處にては自然ののりさらに行はれざればなり 一二一—一二三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「生信房どの、水をおあがりなさい」取り囲んでいたわるのりともたちの背へ、粉雪こなゆきが、さやさやと光って降りそそいでいる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私などに対してのりを越えた御待遇はなさらなかったから、細かなことは拝見する機会もなかったが、さすがに尊敬している私を信用はしていてくだすった。
源氏物語:20 朝顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
其道それを一周しますとラサ府内に在るところのすべての仏およびのりの宝すなわち経蔵を廻った事になりますから、非常な功徳くどくを積んだという訳になるのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
正岡子規先生ではないが、弘法こうぼふをうづめし山に風は吹けどとこしへに照すのりのともしび。ですよ
仏法僧鳥 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
今そなたと別れんことはまことに悲しけれど、そなたにしてのりのため道のために渡宋せんことはわれも亦随喜すべきである、我いかで汝の志を奪うべきや、と涙ながらに許してくれた。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そが中に、威力いきおいありさとり深くて、人をなつけ、人の国を奪ひ取りて、又人に奪はるまじき事量ことはかりをよくして、しばし国をよく治めて、後ののりともなしたる人を唐土もろこしには聖人とぞ言ふなる。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
のりの声は、あしを渡り、柳に音ずれ、蟋蟀きりぎりすの鳴き細る人の枕に近づくのである。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御仏ののりの護りと、ことよさし築かしし殿、星月夜夜ぞらのくまも、御庇みひさしのいや高だかに、すずの音のいやさやさやに、いなのめの光ちかしと、横雲のさわたる雲を、ほのぼのと聳えしづもる。
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
風に散る花も木葉このはも嗔らずとながめ悟ればわがのりぞかし
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
俗人には見えぬのりの不思議にある——と云い出した。
後光殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
捧げたる願文がんもんにこそ。光り匂ふのりのため
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)