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此方
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こつち
ふりがな文庫
“
此方
(
こつち
)” の例文
一層
(
いつそ
)
此方
(
こつち
)
から進んで、直接に
三千代
(
みちよ
)
を喜ばしてやる方が遥かに愉快だといふ取捨の念丈は殆んど理窟を離れて、
頭
(
あたま
)
の
中
(
なか
)
に
潜
(
ひそ
)
んでゐた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
因
(
そこ
)
で、
感情
(
かんじやう
)
を
害
(
がい
)
してるなと、
此方
(
こつち
)
では
思
(
おも
)
つてる
前方
(
せんぱう
)
が、
件
(
くだん
)
の
所謂
(
いはゆる
)
お
帳場
(
ちやうば
)
なるもの……「
貴女
(
あなた
)
、これは
持
(
も
)
つて
行
(
い
)
かれますか。」と
言
(
い
)
つた。
廓そだち
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
己
(
お
)
れは
此樣
(
こん
)
な
無學漢
(
わからづや
)
だのにお
前
(
まへ
)
は
學
(
もの
)
が
出來
(
でき
)
るからね、
向
(
むか
)
ふの
奴
(
やつ
)
が
漢語
(
かんご
)
か
何
(
なに
)
かで
冷語
(
ひやかし
)
でも
言
(
い
)
つたら、
此方
(
こつち
)
も
漢語
(
かんご
)
で
仕
(
し
)
かへしておくれ
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
私は、然し、主筆が常に
自己
(
おのれ
)
と利害の反する側の人を、好く云はぬ事を知つて居た。「
先方
(
むかう
)
が六人で、
此方
(
こつち
)
よりは一人増えたな。」
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「先生様のお為めなら、
俺
(
わし
)
い、
何時
(
いつ
)
だつて投票するだと、
彼方
(
あつち
)
からも
此方
(
こつち
)
からも持掛けるんで定めし先生様もお困りでがせうな。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
▼ もっと見る
「
此
(
こ
)
の
婆奴等
(
ばゝあめら
)
、そつちの
方
(
はう
)
で
偸嘴
(
ぬすみぐひ
)
してねえで、
佳味
(
うめ
)
え
物
(
もの
)
有
(
あ
)
つたら
此方
(
こつち
)
へ
持
(
も
)
つて
來
(
こ
)
う」
先刻
(
さつき
)
の
首
(
くび
)
へ
珠數
(
じゆず
)
を
卷
(
ま
)
いた
小柄
(
こがら
)
な
爺
(
ぢい
)
さんが
呶鳴
(
どな
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「何でも向うがすつかり
赤化
(
せきくわ
)
しちやつて、ゐられなくなつて、それで
此方
(
こつち
)
へ来たんだが、去年の冬あたりから来てるんぢやないかな……」
アンナ、パブロオナ
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
「湯河原までぢや、十五円で参りませう。本当なれば、もう少し頂くので
厶
(
ござ
)
いますけれども、
此方
(
こつち
)
からお勧めするのですから。」
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
額
(
がく
)
だアな、
此方
(
こつち
)
へお
出
(
い
)
で、こゝで
抹香
(
まつかう
)
を
供
(
あげ
)
るんだ、
是
(
これ
)
がお
堂
(
だう
)
だよ。梅「へえゝ
是
(
これ
)
が
観音
(
くわんおん
)
さまで……これは
何
(
なん
)
で。近「お
賽銭箱
(
さいせんばこ
)
だ。 ...
心眼
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「其處を塀の上へ登つて。
此方
(
こつち
)
へ千兩箱を越さしたんだ、大きな音を立てずに、二つの千兩箱は、スルスルと畑の中へ滑り落ちたんだね」
銭形平次捕物控:009 人肌地藏
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
何とかして一度でも
此方
(
こつち
)
を見てくれゝばいゝと三田は念じてゐたのだけれど、先方にとつては、三田の如きは路傍の電信柱に等しかつた。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
さうして照ちやんのもう
此方
(
こつち
)
の仕事には氣が添はず何かそは/\としてゐるのを心の底で腹立たしく妬ましく思ふのであつた。
続俳諧師:――文太郎の死――
(旧字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
いつそ今の中一か八かで、
此方
(
こつち
)
から進んで占領地へ踏出したら、案外新しい生活の道を見つけることができるかも知れない。
羊羹
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
此方
(
こつち
)
から
算盤
(
そろばん
)
を
彈
(
はじ
)
いて、この
土地
(
とち
)
の
人間
(
にんげん
)
の
根性
(
こんじやう
)
を
數
(
かぞ
)
へてやると
泥棒
(
どろぼう
)
に
乞食
(
こじき
)
を
加
(
くは
)
へて、それを
二
(
ふた
)
つに
割
(
わ
)
つたやうなものだなう。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
彼方
(
あつち
)
此方
(
こつち
)
と
搜
(
さが
)
す中、
漸
(
やつ
)
とのことで大きな
無花果
(
いちじく
)
の
樹蔭
(
こかげ
)
に
臥
(
ね
)
こんで
居
(
ゐ
)
るのを
見
(
み
)
つけ
出
(
だ
)
し、
親父
(
おやぢ
)
は
恭々
(
うや/\
)
しく
近寄
(
ちかよ
)
つて
丁寧
(
ていねい
)
にお
辭儀
(
じぎ
)
をして
言
(
い
)
ふのには
怠惰屋の弟子入り
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
濡
(
ぬ
)
れるだらうから、
此方
(
こつち
)
へ
入
(
はい
)
つたら
好
(
よ
)
からうとすゝめ、
菓子
(
くわし
)
などを
與
(
あた
)
へて
居
(
ゐ
)
る
間
(
うち
)
に、
雨
(
あめ
)
も
小歇
(
こやみ
)
となり、
又
(
また
)
正午
(
ひる
)
に
近
(
ちか
)
くなつた。
探検実記 地中の秘密:07 末吉の貝塚
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
「まア、飛ばねえやうに、繩ででも
縛
(
くゝ
)
つて置いてお呉れなせえ、
此方
(
こつち
)
の
躯
(
からだ
)
もちぎれねえやうに、今ま一杯
行
(
や
)
つてくからネ」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
婦人の方は、先方で請出すと云ふのなら、
此方
(
こつち
)
でも請出すまでの事。さうして、貴方の
引負
(
ひきおひ
)
は
若干
(
いくら
)
ばかりの
額
(
たか
)
に成るのですか
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
あいつの本箱には、黒い背中を縦に
此方
(
こつち
)
向きにした何十冊とも数知れない学生時代のノート・ブツクが未だに、何年も前から麗々と詰つてゐる。
夏ちかきころ
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
今度は
此方
(
こつち
)
も意地になつて、菓子折で作つた札に、「X—新聞固く御断り
申候
(
まうしさふらふ
)
」と油絵具で
認
(
したゝ
)
め、それを
釘
(
くぎ
)
づけにした。
姉弟と新聞配達
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
二人が土蔵を出ると、向ふから祖母が腰をまげて、
枇杷
(
びわ
)
の木の下をせか/\と
此方
(
こつち
)
へ小走りに走つてくるのが見えた。
父の帰宅
(新字旧仮名)
/
小寺菊子
(著)
惜しい事をしたナ、向ふ
河岸
(
かし
)
のクルーゲルの伯父さん、
最
(
も
)
う少ししつかりして貰ひたかつた。だがよ、
此方
(
こつち
)
の勧進元のセシル、ローヅも豪かつたナ。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
甚麼話
(
どんなはなし
)
を
爲
(
す
)
るので
有
(
あ
)
らうか、
彼處
(
かしこ
)
へ
行
(
い
)
つても
處方書
(
しよはうがき
)
を
示
(
しめ
)
さぬでは
無
(
な
)
いかと、
彼方
(
あつち
)
でも、
此方
(
こつち
)
でも、
彼
(
かれ
)
が
近頃
(
ちかごろ
)
の
奇
(
き
)
なる
擧動
(
きよどう
)
の
評判
(
ひやうばん
)
で
持切
(
もちき
)
つてゐる
始末
(
しまつ
)
。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
二三人の紳士たちが、彼の傍に掛けてゐて、時々部屋の
此方
(
こつち
)
まで彼等の話の斷片が聞えて來た。初めは耳に入ることの意味がはつきり出來なかつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
すると
此方
(
こつち
)
で、太陽の下では睡げだつた連中が、ウアハハハツと云つて
欣
(
よろこ
)
ぶ。その形態たるや彼我相似てゐる。鉄管も管であり、地下鉄道も管である。
散歩生活
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
丼
(
どんぶり
)
や
鮨
(
すし
)
や蜜柑のやうなものが、そつち
此方
(
こつち
)
に散らばつて、煙が
濛々
(
もう/\
)
してゐた。晴代は割り込むやうにして、木山の傍に坐つたが、木山は苦笑してゐた。
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
そんなことをして
此方
(
こつち
)
をさん/″\
嚇
(
おど
)
かして置いて、お
仕舞
(
しまい
)
に高い
祈祷
(
きとう
)
料をせしめようとする
魂胆
(
こんたん
)
に相違ないのだ。そのくらゐの事が判らないのかな。
影を踏まれた女:近代異妖編
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
とにかく
此方
(
こつち
)
は教育を受けた年限も長いんやから、心臟が強い云はれるかも知らんけど、なんぼでもよいからTさんより上にして下さい言うたんですよ。
かめれおん日記
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
A フン、それは
相談
(
さうだん
)
をしない
方
(
はう
)
が
惡
(
わる
)
いんだが、
向
(
むか
)
ふで
相談
(
さうだん
)
しなけりや
此方
(
こつち
)
から
相談
(
さうだん
)
しかけたら
可
(
い
)
いぢやないか。
ハガキ運動
(旧字旧仮名)
/
堺利彦
(著)
「
難有
(
ありがた
)
う。𤍠は高かつたが
一寸
(
ちよつと
)
した風邪だつたんだね。ゆうべから起きたよ。大きな物を
描
(
か
)
き出したね、
此方
(
こつち
)
は長谷川かい。随分凄さうなモデルだね。」
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
すぐに
病人
(
びやうにん
)
を
連
(
つ
)
れてゆけつて
酷
(
ひど
)
い
事
(
こと
)
をぬかしやがる、
此方
(
こつち
)
もつい
嚇
(
かつ
)
として
呶鳴
(
どな
)
つて
來
(
き
)
ちやつたんですが…………
彼女こゝに眠る
(旧字旧仮名)
/
若杉鳥子
(著)
それに話をすると其れぢや折角の
此方
(
こつち
)
の主意が通らないといけないから百二十點もつけておけといふんでせう。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
「溶けたツて、
此方
(
こつち
)
の眼じアあるまいし、
餘計
(
よけい
)
なおせつかいだわ。」と輕く投出すやうに謂ツた。かと思ふと
海酸漿
(
うみほゝづき
)
を鳴らす音がする。後はまた
寂然
(
ひつそり
)
する。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
外
(
はづ
)
して、二十五燭のを使つてたよ。さうすると晝のやうに明るかつた。
此方
(
こつち
)
でもさうするといゝ。一つで家中明るくならあ。そして長い紐で八方へ引張るさ。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
して居るに長兵衞は長八に向ひ
此頃
(
このごろ
)
は
此方
(
こつち
)
の娘がさつぱり見えぬが風にても引しかと問ければ長八は今の
噂
(
うはさ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
而もその途端に向うも
此方
(
こつち
)
を見て、ぱつと視線がぶつかつたのさ……何しろその時、僕ははつと思つたよ。
S中尉の話
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
弟 だつてさうぢや無いか!
此方
(
こつち
)
が命がけになつてゐるのに、向ふはどうして命がけにならないんだ。
疵だらけのお秋
(新字旧仮名)
/
三好十郎
(著)
此方
(
こつち
)
へ出したり宜しい諸事僕が心得た先の
宿
(
しゆく
)
で待つよと跡より驅來りて梅花道人手輕く三人の荷を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
此方
(
こつち
)
にはちやんと
證據物件
(
しようこぶつけん
)
が
厶
(
ござ
)
る、そんなに
八釜
(
やかま
)
しく
言
(
い
)
ふなら、サア
來
(
き
)
て
見
(
み
)
なせいと
云
(
い
)
つて、
山奧
(
やまおく
)
へ
連
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つて、
其
(
その
)
紀念塔
(
きねんたふ
)
を
見
(
み
)
せてやるのだ、どうだい
此
(
この
)
字
(
じ
)
が
讀
(
よ
)
めぬか
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
「おい。どうしたんだ。そんな隅の方にゐないで、ちつとは
此方
(
こつち
)
へ出ろよ。」目ざとく其
状態
(
ありさま
)
を見て取つたAが、いつもの快活な調子で、向うからかう誘ひかけて呉れた。
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
所がふり向いた顔を見ると、
反
(
かへ
)
つて
此方
(
こつち
)
が驚いた。坊主頭と云ふ事を除いたら、竹内と似てゐる所などは一つもない。——相手は額の広い割に、眉と眉との間が険しく狭つてゐる。
孤独地獄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
『わたしのお友達が
此方
(
こつち
)
を見ながら大きな声でうたつてゐるから御覧なさい』
つね子さんと兎
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
其の蝙蝠傘の
此方
(
こつち
)
は自分が握つてゐるが、
彼方
(
むかふ
)
は真の親切者が握つてゐるのだか狐狸が握つて居るのだが、妖怪変化、悪魔の類が握つてゐるのだか、何だか彼だかサッパり分らない
黒闇〻
(
こくあん/\
)
の中を
観画談
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
僕等はしばし休んで
合羽
(
かつぱ
)
を身に
著
(
き
)
はじめた。その時
遙
(
はるか
)
向うの峠を人が一人のぼつて行くのが見える。やはり
此方
(
こつち
)
の道は今でも通る者がゐるらしいなどと話合ひながら息を切らし切らし上つて行つた。
遍路
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
「
此処
(
ここ
)
は
此方
(
こつち
)
の仲間のやで、おまん
等
(
ら
)
の上る所やないで、阿呆。」
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
ニコライとは
此方
(
こつち
)
でも聞かぬ事で、これも古今の珍聞だ。
露都雑記
(新字旧仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「酒を
振舞
(
ふるま
)
はなきや、
此方
(
こつち
)
から
拳固
(
げんこ
)
を振舞つてやら。」
椋のミハイロ
(新字旧仮名)
/
ボレスワフ・プルス
(著)
其進路
(
そのコース
)
に
沿
(
そ
)
うて
其方
(
そつち
)
此方
(
こつち
)
に
排置
(
はいち
)
されました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
「待ち給へ。君には
此方
(
こつち
)
が
好
(
い
)
い。」
魔睡
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
尤も
其間
(
そのあひだ
)
に梅子は電話
口
(
ぐち
)
へ二返呼ばれた。然し、
嫂
(
あによめ
)
の様子に別段変つた
所
(
ところ
)
もないので、代助は
此方
(
こつち
)
から進んで何にも聞かなかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
此
漢検準1級
部首:⽌
6画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“此方”で始まる語句
此方様
此方側
此方衆
此方面
此方等
此方向
此方持
此方組
此方樣
此方人等