有之これあり)” の例文
このところはことさらにも九字くらいにする必要有之これあり、もし七字句などをもって止めたらんには上の十字句に対して釣合つりあい取れ不申もうさず候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
今更兎角とかく執成とりなしは御聴入れも可無之これなかるべく、重々御立腹の段察入さっしいり候え共、いささか存じ寄りの儀も有之これあり、近日美佐子同道御入来被下間敷候哉ごじゅらいくだされまじくそうろうや
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「露国の名誉ある貴族たる閣下に、御遺失なされ候物品を返上致す機会をそうろうは、拙者の最も光栄とする所に有之これありそうろうなお将来共しょうらいとも。」
(新字新仮名) / オシップ・ディモフ(著)
しかるところ寛永一四年島原征伐の事有之これあり候。某をば妙解院殿御弟君中務少輔殿立孝公なかつかさしょうゆうどのたつたかこう御旗本おんはたもとに加えられ御幟おんのぼりを御預けなされ候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
暑中の御見舞いを兼ね、いささか老生日頃の愚衷など可申述もうしのぶべくそうろう。老生すこしく思うところ有之これあり、近来ふたたび茶道の稽古にふけり居り候。
不審庵 (新字新仮名) / 太宰治(著)
二、諸大名官位の儀は、天聴へ奏達も有之これあり、至って重き儀に御座候処そうろうところ、金銀をもって賄賂すれば、容易く取り持ち、世話仕候不届き至極。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
きずは下腹部に一か所、その他二か所、いずれも椅子山いすざん砲台攻撃の際受け候弾創にて、今朝まで知覚有之これあり候ところ、ついに絶息いたし候由。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「……如何なる方面より風聞せられしものなるや判明せざれど、右類似の事件は当署管内に於て確かに発生せし事有之これあり……」
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
年来住みるしたる住宅は隣家蔦屋つたやにて譲り受け度旨たきむね申込もうしこみ有之これあり、其他にも相談の口はかかり候えども、此方こちらに取り極め申候。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
過般、御送付相成あいなり候『倫理教科書』の草案、閲見えっけん、少々意見も有之これあり、別紙にしたため候。妄評御海恕被下度くだされたく、此段、得貴意きいをえ候也。
読倫理教科書 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
申上度事もうしあげたきこと数々有之これあり候え共取急ぎ候まゝ書残し※おお目もじの上くわしく可申上候もうしあげべくそうろう芽出度めでたくかしく、父上様兄上様、菊…と、……菊というのは何かの
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
神代の句は守武神主もりたけかんぬし身分相応に情の奇なる処御座候、俵は其元そこもと相応に姿の妙なる処有之これあり候、別而べっして歳旦歳暮不相応なるは名句にても感慨なきものに候
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
御主意ごしゆい御尤ごもつともさふらふ唱歌しやうかおもまりさふらふあさましいかな教室けうしつさふらふしたがつてこゝろよりもかたちをしへたく相成あひなかたむ有之これあり以後いご御注意ごちゆうい願上候ねがひあげさふらふ
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
秀林院様の仰せには分別致し候やうにと申し渡され候へども、少斎石見両人の言葉に毛すぢほどの分別も有之これあり候や。
糸女覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その年来を聞召し候へば、十五六にて諸人を勧め、斯様かようの儀を取立て申す儀にては無之これなく候と思召し候条、四郎が名を借り取立て申すもの有之これありと思召し候。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
こは月のはじめより造りかけて、凱旋祭の前一日の昼すぎまでに出来上り候を、一度見たる時のことに有之これあり候。
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
人事的時間的の句中甚だ新にして美なるもの有之これあり候様に被存ぞんぜられ候。然し大兄の御近什中ごきんじゅうちゅうには甚だ難渋にして詩調にあらざるやの疑を起し候ものも有之様存候。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
沿道に見るべきものとしては、二本松附近に例の鬼の棲むてふ安達ヶ原の黒塚なるもの有之これあり候、今ささやかなる寺と、宝物と称するもの多少残り居り候由。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
無論一部の事にはそろへども江戸えど略語りやくご難有ありがたメのと申すが有之これあり難有迷惑ありがためいわくそろかるくメのりやくし切りたる洒落工合しやれぐあひ一寸ちよつと面白いと存候ぞんじそろ。(十九日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
諸処方々無沙汰ぶさたの不義理重なり中には二度と顔向けさへならぬ処も有之これあり候ほどなれば何とぞ礼節をわきまへぬは文人無頼ぶらいの常と御寛容のほど幾重いくえにも奉願上ねがいあげたてまつり候。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
当月十四日、大友近江守どのお招きのうえ、茶会のおもよおし有之これあり四方庵よもあん宗徧そうへん宗匠にも出席のはずに候
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「近頃立身致し候。紙幣は障子を張る程有之これあり諸君も尊敬つかまつり候。研究も今一足故暫時ざんじ不便を御辛抱願候。」
革トランク (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
……御依頼により埋葬つかまつ……と小生とかの蕗屋の三人のみに有之これあり……右につきとくと御談合申上度もうしあげたく……郷表ごうおもて(一二字分不明)六三中村なかむら……御一読の上は必ず火中……
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
つまり取り殺すことゝ存申候。取り殺さぬまでも、たたりにて、子供が出来ぬことゝ存申候。万一出来ても、祟りにて、育たぬことゝ存申候。村にもその例有之これあり候。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
されどしょうの学校はその翌日、時の県令高崎たかさき某より、「詮議せんぎ次第しだい有之これあり停止ていし候事そうろうこと」、との命をこうむりたり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
(前略)既に御身にも新紙などにて御承知の事と被存候ぞんぜられさふらふが、当国は昨秋以来経済界に大恐惶だいきようくわう有之これあり
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
利生りしょう相見あいみえ豊年なれば、愈〻いよいよその瑞気ずいきを慕ひて懈怠けたい無く祭りきたり候。いま村にて世持役よもちやくと申す役名も、是になぞらへて祈り申す由に候。但し此時このとき由来伝へはなし有之これあり候也(以上)
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
最後に、浅葱色のあわせ一枚と小倉の袴が一着だけ残った時、村松金之助は組頭に呼出されました、そして「勤め向宜しからざる儀有之これあり」という条件で、永のいとまになったのです。
これは王陽明おうようめいの弟子が師のことばを書き取りしものなるが、なか/\おもしろき事有之これあり候。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
私儀感ずるところ有之これあり、今回教会員としての籍を退きたく、何卒なにとぞ御除名下されたくそうろう
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
御書状拜讀仕候つかまつりそろと拙者の貴君の御世話可致いたすべくと決心候節、貴君の爲めにはかり候は、當地に於いて正當なる教育を受けられ、社會に益ある一人物となられ候樣にと希望候儀に有之これあり候。
つとめしや外にいは有歟あるかとはるゝに瀬川せがは其儀は御覽ごらんの通りの老母らうぼ一人有之これあり君太夫きみたいふとても永々なが/″\世話せわ相成あひなり居も心苦しく又金七と申者も火難くわなんあひどくに候故相談さうだんの上遊女奉公仕ほうこうつかまつり其金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
西伯利シベリアより露国革命派続々逃込み、中には東京へ来るものも有之これあり候故、これらを相手に一と仕事と出懸でかけし処、相手がまるでお坊ちやんにて話にならず、たうとう骨折損ほねおりぞんとなりたり
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
以て自由と光栄の平和を作成する者に有之これあり、申す迄もなく之は、諸有あらゆる創造的事業と等しく、く国民の理想を体達して、一路信念の動く所、個人の権威、心霊の命令を神の如く尊重し
渋民村より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
の問題を真面目に議すべき時節到来せりと存候ぞんじそうろう、貴下は父としての主張あるべく、芳子は芳子としての自由あるべく、小生また師としての意見有之これあり候、御多忙の際には有之候えども
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
すこぶる面白く感動仕候つかまつりそうろう、その中に、劍山登り不可能の話有之これあり候に就きて、思い出し候あいだ、御参考までに別紙切抜き送り候、……なお小生のその後、富山県庁の社寺課長より聞く所にれば
越中劍岳先登記 (新字新仮名) / 柴崎芳太郎(著)
右者みぎは亡父遺言状仮葬之翌日相開き一覧致候処本葬云々うんぬん之儀有之これあり候につき遺言を
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一面にはこの自覚、人に知られたしとの要求有之これあり候へど、他の一面には、更に真面目まじめに、厳粛に、世の未だこの自覚に達せず又は達せんとて悩みつゝある多くの友に対する同情を催起いたしをり候。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
其方不埓儀有之これあり、食禄を召上げ、暇被下いとまくださる者也、月日、承之これをうけたまわる
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
プライベイト大宴会室の設備も有之これあり
此度麦倉屋敷ニ怪事有之これあり右ニ付村内ハ不申及もおすにおよばず近郷近在マデ聞伝エテ群衆ナシ昼夜ノ差別ナク騒ガシケレバ其為ニ百姓共ハ農事ヲ怠リ候儀モ之有哉ニ聞エ且婦女子ニ於テハ驚キ怖ルル者少カラズ候ニ付今日ヨリ当屋敷門前ヘ群集差止候ニ付屹度相守申可者也
魔王物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
幾百年の間常に腐敗したる和歌の上にも、特に腐敗の甚しき時代あるが如く、われらの如き常病人じょうびょうにんも特に病気にかかる事有之これあり閉口之外無之これなく候。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
流汗をふるいつつ華氏九十九度の香港ほんこんより申し上げそろ佐世保させほ抜錨ばつびょうまでは先便すでに申し上げ置きたる通りに有之これあり候。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
もつとも御所持の御什器ごじふきのうちには贋物にせものも数かず有之これあり、この「かなりや」ほど確かなる品は一つも御所持御座なく候。
糸女覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その時相役申候は、たとい主命なりとも、香木こうぼくは無用の翫物がんぶつ有之これあり、過分の大金をなげうそろこと不可然しかるべからず所詮しょせん本木を伊達家に譲り、末木を買求めたき由申候。
されどそこもとには、天草にて危急の場合を助けられ候恩義有之これあり、容易にやいばを下し難く候については、此状披見次第さるこくまでに早急に国遠こくおんなさるべく候。以上
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
実は少々御示教にあずかりたき儀有之これあり昨夜はいつもの処にて御目おめに掛れる事と存じをり候処御病臥びょうがの由面叙めんじょの便を失し遺憾に存じ候まゝ酒間乱筆を顧みずこの手紙差上申さしあげもうし候。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
得ば老生の喜びこれに過ぎず候なお別荘へはホテルより自動車にて御同道申上ぐる予定に有之これあり候。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
さて、小僧ますをとりて酒を入れ候に、酒はこともなく入り、つい正味しょうみ一斗と相成あいなり候。山男おおいわらいて二十五文をき、瓢箪をさげて立ちり候おもむき、材木町総代そうだいより御届おとど有之これあり候。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
おれは早速辞表を書こうと思ったが、何と書いていいか分らないから、私儀わたくしぎ都合有之これあり辞職の上東京へ帰り申候もうしそろにつき左様御承知被下度候さようごしょうちくだされたくそろ以上とかいて校長あてにして郵便で出した。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)