じつ)” の例文
その第一じつの午前十時から「爆弾漁業の弊害」という題下に、堂々三時間に亘った概論を終ると、満場、割るるが如き大喝采だ。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
其後そのごをとこからなんつてやつても、をんなからは依然いぜんとして毎月まいげつじつに『御返事ごへんじつてります』の葉書はがきた。とう/\それが一年間ねんかんつゞいた。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
たとえて見れば、れかお前のところへ来て云うのだな。あなたは千九百七十年五月一じつにお亡くなりなさいますよというのだな。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
天性てんせい軍人になるべき資格をはらめる者が一じつ新聞を見て始めて自己の天職てんしょくのいずれに存するかを発見するがごときはそれで
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ふまでのことではあるまい。昨日さくじつ……大正たいしやう十二ねんぐわつじつ午前ごぜん十一五十八ふんおこつた大地震おほぢしんこのかた、たれ一睡いつすゐもしたものはないのであるから。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
盛況の第一じつ閉場はねると、急にひっそりして仕舞った小屋の中に、親方の珍らしくご機嫌のよい笑声が、久しぶりに廻って来た春のように、響いた。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「昔から今日こんにちに至るまで高等学校の先生。えらいものだ。十年一じつのごとしというが、もう十二、三年になるだろう」
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小松さんは卒業後国語漢文科の検定試験を受けて、以来二十何年一じつの如く母校に教鞭を執っている。長谷川さんに至っては立志伝中の人物である。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
假令たとひ他人たにんためにはかなしいでもの一じつだけは自己じこ生活せいくわつからはなれて若干じやくかん人々ひとびとと一しよ集合しふがふすることが彼等かれらにはむし愉快ゆくわいな一にちでなければならぬ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
英語の稽古けいこを初めた時も、またその通りで、初めるまでは一じつをも争ッたが、初めてみれば、さほどに勉強もしない。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
天に二じつなしという千古の鉄則はここにやぶれた。呉は、果たして、これに対してどういう動きを示すだろうか。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よ、東海とうかいそらあけて、きょくじつたかくかがやけば、天地てんち正気せいきはつらつと、希望きぼうはおどる大八島おおやしま……。」
日の当たる門 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ことしの五月一じつに、エルリングは町に手紙をよこして、もう別荘の面白い季節が過ぎてしまって、そろそろお前さんや、避暑客のむれが来られるだろうと思うと
冬の王 (新字新仮名) / ハンス・ランド(著)
和田三造さんから切符を貰つたので巴里パリイ髑髏洞カタコンブ一昨日をとゝひの土曜日に観に行つた。あらかじめ市庁へ願つて置くと毎げつじつと土曜日とだけに観ることが許されるのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
まづ一やう来復らいふくして、明治三十一年一ぐわつじつの事で、下谷広小路したやひろこうぢとほる人の装束なりは、フロツクコートに黒の山高帽子やまたかばうしいただき、玉柄ぎよくえのステツキをたづさへ、仏蘭西製ふらんすせいくつ
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「こんじつたつの日で、よろず新しく立つといういい日でございまするから、こんじつ以来、日本もいい運に向いてまいりましょうでございます。おめでとうございます」
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
支倉喜平は神楽坂署に捕われてから、昼夜責め問われても、只知らぬ存ぜぬの一点張りだったが、訊問こゝに一週じつ、彼は始めて貞の行方について口を開いたのだった。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
それから更に十数じつの後であったが、それはお話が進むに従って、自然読者に分って来ることだから、ここでは、警察の方でも、こうして、特志とくしなる一刑事の苦心によって
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
横須賀より乗るべかりしを、出発になんなんとしてさわりありて一じつの期をあやまりたれば、武男はくれより乗ることに定め、六月の十日というに孤影蕭然しょうぜんとして東海道列車に乗りぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
じつまたじつかれかせぎにかせぎ、百姓ひやくしやう勿論もちろんすみやけば、材木ざいもくす、養蠶やうさんもやり、地木綿ぢもめんらし、およ農家のうかちから出來できることなら、なんでも手當次第てあたりしだい、そして一生懸命いつしやうけんめいにやりました。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それと、ねたんでるやつにお世辞せじを使うのさ。だけど、僕たちは、金持ちだってことは、ちゃんとわかってるんだ。毎月まいげつじつには、父さんが一人っきりでしばらく自分の部屋へひっこんでる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
地震の、東京での発震は、九月一じつの午前十一時五十八分四十五秒でした。
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
東町奉行跡部山城守良弼あとべやましろのかみよしすけも去年四月に現職に任ぜられて、七月に到着したのだから、まだ大阪には半年しかをらぬが、かくじつちやうがあるので、堀はまはしてもらふと云ふ風になつてゐる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
犬鳴山の行場ぎょうじょうへ籠ったのは翌年の三月一じつのことであるが、その山へこもるようになったのは前年の十月に霊夢を感じて仙術の修練に志したがためであった。犬鳴山では毎日滝にうたれて荒行あらぎょうをした。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そうでなくとも月の三じつは、かかさず社頭を拝する人と、例祭の日のほかは一ぺんも顔を出さず、または祭りにすらいそがしいと出てこぬ者があるようになり、家々としても老人か主婦かが代表して
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
廿七日、仮馬舎かりうまやに着手して、七月一じつ出来あがりたり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
かん光武くわうぶは一じつ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
最早もうお后になった知らせが来るか。最早もう王宮からお祝いの品物が届くかと待っておりましたが、とうとうその日一じつは何の知らせもありませぬ。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
お前だって何も百年生きているわけではないが、そう云われた日には、それからは千九百七十年五月一じつが気になって、生涯いやな思いをし通しにするのだ。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
「最初、神月がその夫人との中に感情を害したのは、不幸にも結婚の第一じつ、すなわち式を挙げた日だ。」
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
矢張やはり『御返事ごへんじつてります』とたゞそれだけいてある。をとこなんともつてやりやうがないので、のまゝ打つちやらかしておくと、またその翌月よくげつの一じつ葉書はがきた。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
十月一じつからモンマルトルの下宿を引払つて再びパンテオンに近いオテル・スフロオに移つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
子供こどもらは不思議ふしぎでならなかったのです。しかるに一じつあめってそのくるはいい天気てんきになったときに、ゆきうえかがみのようにかたこおって、どこまでもわたってゆくことができました。
雪の国と太郎 (新字新仮名) / 小川未明(著)
げによき御言葉みことばにこそ。——天に二じつあらせてはなりませぬ。さるがゆえに正成、微臣に過ぎぬ身にござりますが、ここ昼夜、肝嚢かんのうを病むばかり世のすえ案じられてまいりまする……。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じつ横山健堂よこやまけんどう氏より伊藤公に関する趣味しゅみ多きはなしを聞いた。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
息苦しくしてって、お前は来年の一月一じつから二月一じつまでの間に土の下にうめられるのだといって聞かせて、其上そのうえでどんな哲学を説き出すか、聞いてりたい。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
じつの安きいとまもないので、お絹は身も心も疲れ果てて、その一月ばかり前から煩い出し、床に就いて足腰の自由が利かなくなると、夫狂犬やまいぬ源兵衛は屋外にこれを追出した。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
じつがこの点の一つだ。而してお前はまだこの他に幾万の点を打つことも出来るし、数のあることも知っているだろう。けれど畢竟ひっきょう今迄の人間の経験した数は三万に満たないのである。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
矢張やはり『御返事ごへんじつてります』とある。をとここまつてしまつて、あんな葉書はがき度々たび/\よこしてはいけないとつてやつたが、矢張やはまたその翌月よくげつの一じつには『御返事ごへんじつてります』の葉書はがきた。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
春と冬は水かず、椿の花の燃ゆるにもべにを解くばかりのしずくもなし。ただ夏至げしのはじめの第一じつ、村の人の寝心にも、疑いなく、時刻もたがえず、さらさらと白銀しろがねの糸をならして湧く。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
じつきゃくがこのみせにはいってきました。主人しゅじんは、なにかそのきゃくはなしをしていました。いたつくえ乳母車うばぐるまは、めいめいに自分じぶんわれてゆくのでないかと、むねをどきどきさしていました。
春さきの古物店 (新字新仮名) / 小川未明(著)