)” の例文
実をいふと、お高婆さんもその皮肉家の一にんで、伊達太夫などは稽古のたんびに随分こつぴどおろされるばかりか、うかすると
ところへ主人が、いつになくあまりやかましいので、寝つき掛った眠をさかにかれたような心持で、ふらふらと書斎から出て来る。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
五六ぽん屹立きつりつしたもみいたやうこずゑあひつて、先刻さつきからかるいひかりいと踊子をどりこおほうて一ぱい陰翳かげげてたのであるが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ある日、庭で覚束おぼつかない手つきをして小麦をいて居ると、入口で車を下りて洋装の紳士が入って来た。余は眼を挙げて安達君を見た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
三人の友だちとは、俳人の露柴ろさい、洋画家の風中ふうちゅう蒔画師まきえし如丹じょたん、——三人とも本名ほんみょうあかさないが、その道では知られたうできである。
魚河岸 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
門の内は稻をいだり、もみを乾したりするのに使はれる庭で、隅の方に柿の木が一二本立つてゐる外には、納家なやと土藏と塀と門と
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
温故之栞おんこのしおり』(巻十)にはこの国の水田生産のことを記して、以前は割竹五六本を木の台に立てつらね、稲を七八けいずつはさんでいた故に
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
見るもみじめなぼろ/\の油服を着て、時々此の親方にひつぱたかれながらき使はれてゐる十五六の小僧の姿が浮んだ。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
その棒で日本で言えば龍吐水りゅうどすいで水を突くような具合にシュウッシュウッとき上げき下げるその力は非常なもので、我々にはとても出来ない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
いつの間にか要太郎が見えなくなったと思うていると遥か向うの稲村いなむらの影から招いている。汗をふきふきついて行った。道の上で稲をいている。
鴫つき (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ズル/\ツと扱出こきだしたは御納戸おなんどだかむらさきだか色気いろけわからぬやうになつたふる胴巻どうまきやうなもの取出とりだしクツ/\とくとなかから反古紙ほごがみつつんだかたまりました。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
苅った稲もきばしで扱き、ふるいにかけ、唐臼ですり、唐箕とうみにかけ、それから玄米とする。そんな面倒くさい、骨の折れる手数はいらなくなった。
浮動する地価 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
細君によっては第三者のいるところで、良人おっとき下すのを得意としないまでも情愛の移っている証明と心得ている。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
寄り合っていた悪旗本や御家人ごけにんくずれの常連じょうれんが、母屋で、枕を並べて寝についたその寝入りばなを、逆にくように降ってわいた斬りこみであった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
おもんはこう、水ばなをすすりながら言って、台所へ戻った。これから、彼女も稲をかなければならなかったのだ。
山茶花 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
おさを流れるように、手もとにくり寄せられる糸が、動かなくなった。引いてもいても通らぬ。筬の歯が幾枚もこぼれて、糸筋の上にかかって居るのが見える。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
片頬かたほれたやなぎ葉先はさきを、おしなそのつややかにくろ前齒まへばくはへて、くやうにして引斷ひつきつた。あをを、カチ/\とふたツばかりむでつて、てのひらせてた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
原文、「許紀志斐惠泥。」紀はキの乙類であるから、コキは動詞くとすれば上二段活になる。
マリバスが笑つたり、泣いたりすると、やれヸオロンの三筋の絲を弓でくやうなうなりが聞える。
サバトの門立 (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
全身に水を浴びたよう脂汗をにじみ出し長身の細い肢体をねじらし擦り合せ、甲斐かいない痛みをき取ろうとするさまは、蛇が難産をしているところかなぞのように想像される。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
麻や亜麻が成熟すると、刈られて種子はき分けられて了ふ。それから、それを湿して、皮の繊維すじを取る仕事が始まる。即ち、其の繊維がわけもなく木から離れるやうにする仕事だ。
「ええ、実はそのお。」「ええ、実はそのお。」で、ややひびの入った重い濁り声で、咄弁とつべんでもなく雄弁でもなく、ただ冗漫言をだらだらと素麺そうめん式にいてゆくだけであるので驚いた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「それがお前! ここから下が」と両手で腰の両脇をくような恰好をしました。
蒲団 (新字新仮名) / 橘外男(著)
かれの眼には、いたるところでいろ/\な光景が映つた。収穫の忙しい庭、唐箕たうみのぐる/\廻つてゐる家、あるところでは、若い女が白い新しい手拭で頭を包んで、せつせと稲をいてゐた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
まだかない小麦の束を庭へひろげて乾していると、おちえと二人で小麦束の中へ入って歌などうたっていたが、急に黙ってしまって、縁側へ戻るなりそこへ突っ伏して、しくしく泣きだした。
(新字新仮名) / 犬田卯(著)
二人ふたりさくらをかのぼりていま櫻雲臺をううんだい傍近そばちかときむかふより五六りようくるまかけこゑいさましくしてるを、諸人しよにん立止たちどまりてあれ/\とふ、れば何處いづこ華族樣くわぞくさまなるべき、わかひたるぜに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
十六人の百姓ひゃくしょうどもが、顔をまるっきりまっ赤にして足でんで器械をまわし、小山のように積まれた稲を片っぱしからいて行く。わらはどんどんうしろの方へ投げられて、また新らしい山になる。
オツベルと象 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
なんだっての無いわらをいつまでもくのですか。
もとからすえく時には鱗の順ですからごくなめらかでサラ/\と抜けるけれど梢より根へ扱く時は鱗が逆ですから何と無く指にこたえる様な具合が有てうかするとブル/\ときしる様な音がします(荻)成る程そうだ順に扱けば手膺てごたえは少しも無いが逆に扱けば微かに手膺えが有る(大)サア是で追々に分ります私しは此三筋の髪の毛を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
さうして座敷ざしきすみ瞽女ごぜかはつて三味線さみせんふくろをすつときおろしたとき巫女くちよせ荷物にもつはこ脊負しよつて自分じぶんとまつた宿やどかへつてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
不図気がつくと、納屋の檐下のきしたには、小麦も大麦も刈入れたたばのまゝまだきもせずに入れてある。他所よそでは最早棒打ぼううちも済んだ家もある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いわくカラハシは竹を割って作ったもので、一人一日の能率は稲三十六もみ約七二十一貫目をけばよいことになっていた。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「今の芸当だね、あれを何処で習つたと思はつしやる。一年前紐育ニユーヨーク大通おほどほりで、せつせと辻自動車タキシき使つたお蔭でさ。」
がそこが訓練である。いやでも応でもさかにき上げる。門外漢から見ると気の知れない道楽のようであるが、当局者だけは至当の事と心得ている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
き下ろすかどっちかにしないと、体をなさないかもしれないが、これは批評でも何でもないのだから、こんな甘い、だらしのないものになっても致し方がない。
二科会展覧会雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
片頬かたほに触れた柳の葉先を、お品はそのつややかに黒い前歯でくわえて、くようにして引断ひっきった。青い葉を、カチカチと二ツばかりんで手に取って、てのひらに載せて見た。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「うむ。主人を前に置いて、迚も凡人だの、ダラシがないのとおろす女房があるだろうか?」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
峰の松原も、空様そらざまに枝を掻き上げられた様になって、悲鳴を続けた。谷からに生えのぼって居る萱原かやはらは、一様に上へ上へとり昇るように、葉裏を返してき上げられた。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
運命に叩き伏せられたその絶望を支へてじり/\下から逆にき上げて行くもはや斬つても斬れない情熱の力を感じさせる。その情熱の温度も少し疲れて人間の血と同温である。
ダミア (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
「ほんでも爺つあん。爺つあんが、なによりの楽しみにしていだ山茶花。——俺、なあに、手でいだって扱げんのだから。——せっかく、爺つあんが楽しみにしていだ山茶花……」
山茶花 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
むらさきのあやめ積藁むらすずめ農家の庭の麦きの音 (現、拾遺)
文庫版『雀の卵』覚書 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
然し耗ってもびても、心棒は心棒だ。心棒が廻わらぬと家が廻わらぬ。折角せっかくり入れた麦も早くいてって俵にしなければ蝶々ちょうちょうになる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
シャロットの入口に渡したる石橋に、蹄も砕けよと乗り懸けしと思えば、馬は何物にかつまずきて前足を折る。るわれはたてがみをさかにいて前にのめる。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「へえ、なに、わしが一攫ひとつかいてたの打棄うつちやつたんでがした」勘次かんじういつてあをつた。巡査じゆんささら被害者ひがいしや勘次かんじはたけ案内あんないさせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
だが、その日の牛肉は男爵にもなれないで、一生き使はれた古牛ひねうしの肉だつたので、齲歯むしばの多い岩村男にとつては、噛み切るだけが却々なか/\容易な事ではなかつた。
佐渡の海府かいふ地方では飯米が絶えて、にわかに稲をき籾を摺って食べる米だけをケシネといっている。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あちこちに稲を刈っている。あぜに刈穂を積み上げていている女の赤い帯もあちらこちらに見える。
鴫つき (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
どこか場末の床店とこみせが、指のさきで、そっとクリームをいてで広げて息で伸ばして、ちょんぼりと髯剃あとへ塗る手際などとは格別の沙汰で、しかもその場末より高くない。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「うむ。ダラ/\していて何が何だか分らない。普段なら厳しくおろしてやるんだけれど」
田園情調あり (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
峰の松原も、空様そらざまに枝を掻き上げられた様になつて、悲鳴を続けた。谷から尾の上に生え上つて居る。萱原は、一様に上へ/\とり昇るやうに、葉裏を返してき上げられた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)