こゝろ)” の例文
Kさんのその時分じぶんうたに、わがはしやぎし心は晩秋ばんしう蔓草つるくさごとくから/\と空鳴からなりするといふやうなこゝろがあつたやうにおぼえてゐます。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
さてまたわれらの情は、たゞ聖靈のこゝろかなふものにのみもやさるゝが故に、その立つる秩序によりてとゝのへらるゝことを悦ぶ 五二—五四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
月郊君もうやら川上のこゝろは察したらしかつたが、実は伊藤公とは生れて初めての同座で、今後またこんな機会があらうとも思はれない。
出港しゆつかうのみぎり白色檣燈はくしよくしやうとうくだけたこと、メシナ海峽かいきようで、一人ひとり船客せんきやくうみおぼれた事等ことなどあだかてんこゝろあつて、今回こんくわい危難きなん豫知よちせしめたやうである。
君よ、この特絶無類とも申すべき一種の自覚のこゝろをば誰れとともにか語り候ふべき。げにの夜は物静かなる夜にて候ひき。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
ながめてゐるが此身のくすりで有ぞかしと言を忠兵衞押返おしかへは若旦那のお言葉ともおぼえずおにはと雖も廣くもあらずましてや書物にこゝろ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一夜は斯ういふ風に、しとねの上でふるへたり、煩悶はんもんしたりして、暗いところを彷徨さまよつたのである。翌日あくるひになつて、いよ/\丑松は深くこゝろを配るやうに成つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「二人を殺したのは、六十三番凶の神籤みくじを持つて、明神前の卜者うらなひへそのこゝろを解いてもらひに行つた奴——」
媼は聞きて、我を僧とすべしといふこゝろぞ、とは心得たりと覺えられき。されど當時は、我等悉く媼が詞の顛末もとすゑすること能はざりき。媼のいふやう。あらず。
○去年とは昌泰しやうたい三年なり(延喜元年の一年まへ)其年の九月十三夜、 清涼殿に侍候じかうありし時、秋思といふだいを玉はりしに、こゝろにことよせていさめたてまつりしに
「そも愛といひ恋といふ、ふかきこゝろを世の人は、さら/\くまず氷より、霜より冷えしそのこゝろ」
「なんでも卑しい女に水戸樣のお手が附いて下げられたことがあるのださうでございます。菓子店を出した時、大名よりは増屋ましやだと云ふこゝろで屋號を附けたと聞いてゐます」
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ずゐ文帝ぶんてい宮中きうちうには、桃花たうくわよそほひあり。おもむき相似あひにたるものなりみないろてらちようりて、きみこゝろかたむけんとする所以ゆゑんあへ歎美たんびすべきにあらずといへども、しかれどもこゝろざし可憐也かれんなり
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
例外の事は例にはならぬが、是等の事を思ふと、無形と有形との關係に靈妙なる連鎖の有る事を心づいて、そして其の連鎖を捕捉したいこゝろは誰しもの胸にも湧かずには居るまい。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
己が増長をして何か心得違いのあった時には異見を云ってくれる者が無ければならん、そこで中々家来という者は主従の隔てがあって、どうも主人のこゝろに背いて意見をする勇気のないものだが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
藥種屋 こゝろすゝみませねど、貧苦ひんくめがお言葉ことばしたがひまする。
涙のこゝろさぐらずば
わなゝき (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
たとへば鳩の、願ひにさそはれ、そのつよき翼をたかめ、おのがこゝろに身を負はせてそらをわたり、たのしき巣にむかふが如く 八二—八四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
安く送らん事最々いと/\容易よういわざながら忠相ぬしつら/\かれを見るに貴介きかい公子こうし落胤らくいん似氣にげなく奸佞かんねい面に顯れ居ればこゝろゆるせぬ曲者くせものなりと夫が成立なりたちよりの事柄を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
○去年とは昌泰しやうたい三年なり(延喜元年の一年まへ)其年の九月十三夜、 清涼殿に侍候じかうありし時、秋思といふだいを玉はりしに、こゝろにことよせていさめたてまつりしに
その概略あらましは今物書くべき心地もせねば、くはししき事の顛末をば、羅馬に到り着きて後にこそ告ぐべけれ、手を握らで別れ去ることの心苦しさを察せよといふ程のこゝろなりき。
のみち、たがねつべきかひなは、一度ひとたびてのひらかへして、多勢たせいあつして将棊倒しやうぎだふしにもする、おほいなる権威けんゐそなはるがごとくにおもつて、会心くわいしん自得じとくこゝろを、高声たかごゑらして、呵々から/\わらつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして其為に後から生れた弟の方を愛して、弟の方へ国を譲りたいやうなこゝろが母に起りました。そこで大変な騒動が起り、干戈を動かすやうな事が出来た事が古い歴史にあります。
運命は切り開くもの (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「佳人心漸くなり——これは八五郎が、お染さんに嫌はれたといふこゝろだ」
それで別に御用は無いと云ふことになつて下げられたさうでございます。なんでも眞志屋と云ふ屋號は其後始て附けたもので、大名よりは増屋だと云ふこゝろであつたとか申すことでございます。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
つね此點このてんむかつてふかこゝろもちゐ、狂瀾きやうらん逆卷さかま太洋たいやうめんおいて、目指めざ貨物船くわぶつせん撃沈げきちんする塲所ばしよかなら海底かいていふかさ五十米突メートルらぬ島嶼たうしよ附近ふきんか、大暗礁だいあんせうまた海礁かいせうよこたはつて塲所ばしよかぎつてさうだ。
ロミオ といふのは、慇懃ねんごろ挨拶あいさつするためといふこゝろか?
このときかの民うたへるも我その歌のこゝろせず——世にうたはるゝことあらじ——またよく終りまで聞くをえざりき 六一—六三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
唱へながら引かれしとぞ此時お熊のたるより世の婦女子ふぢよしぢやうは不義のしまなりとてきらひしはたはれ事の樣なれども貞操ていさうこゝろともいふべし然るを近來ちかごろ其事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こゝろなく投げかさねたらむやうに見ゆる、いしずゑの間より、水流れ落ちて、月はあたかも好し棟の上にぞ照りわたれる。河伯うみのかみの像は、重き石衣いしごろもを風に吹かせて、大なる瀧を見おろしたり。
彼等は蚕児の智慧を笑ひぬ汝等彼等の智慧を讚せよ、すべて彼等の巧みとおもへる智慧を讚せよ、大とおもへるこゝろを讚せよ、美しと自らおもへる情を讚せよ、かなへりとなす理を讚せよ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ひつぎまへ銀樽ぎんそん一個いつか兇賊等きようぞくらあらそつてこれをむに、あまかんばしきこと人界じんかいぜつす。錦綵寶珠きんさいはうじゆ賊等ぞくらやがてこゝろのまゝに取出とりいだしぬ。さてるに、玉女ぎよくぢよひだりのくすりゆびちひさきたまめたり。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ロミオ 此方こちその貧苦ひんくにこそはらへ、こゝろにははらはぬわい。
消残きえのこりたる雪に見たてたる一首のこゝろ
願はくは我等の名汝のこゝろを枉げ、生くる足にてかく安らかに地獄をりゆく汝の誰なるやを我等に告げしめんことを 三一—三三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
宿債しゆくさいいまれうせずとやらでもある、か毛武まうぶ総常そうじやうの水の上に度〻遊んだ篷底はうていの夢の余りによしなしごとを書きつけはしたが、もとより人を酔はさうこゝろも無い、書かずともと思つてゐるほどだから
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
消残きえのこりたる雪に見たてたる一首のこゝろ
我、汝の好むところみな我にし、汝は主なり、わが汝のこゝろに違ふなきを知り、またわがもだして言はざるものを知る 三七—三九
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
おろかなり円位、仏が好ましきものにもあらばこそ、魔か厭はしきものにもあらばこそ、安楽も望むに足らず、苦患くげんも避くるに足らず、何を憚りてか自らこゝろを抑へおもひを屈めん、妄執と笑はば笑へ
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
汝のいやしゝわが魂が汝のこゝろにかなふさまにて肉體より解かるゝことをえんため、願はくは汝の賜をわがうちまもれ。 八八—九〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
また諸〻の自然のみ、おのづから完きこゝろの中にとゝのへらるゝにあらずして、かれらとともにその安寧もまたしかせらる 一〇〇—一〇二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
死いまだ羽を與へざるに我等の山をめぐり、己がこゝろのまゝに目を開きまた閉づる者は誰ぞや。 一—三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
わが師雙手もろてをひらきてしづかに草の上に置きたり、我即ちそのこゝろをさとり 一二四—一二六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)