幸福しあはせ)” の例文
看板に「沢山たくさん道具をお壊しなさい、それ貴君あなたのお幸福しあはせ」と書いてある。如何いかにも破壊を好む気ばや仏蘭西フランス人の気に入りさう遊戯あそびだ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
祇園の空を飛んだ若い飛行将校よ、あの折シヨペンハウエルが万亭まんていの二階で流連ゐつゞけをしてゐなかつたのは君に取つて勿怪もつけ幸福しあはせであつた。
こちとらが何かちよつぴり幸福しあはせを見つけて、それを手に入れようと思ふと、すぐに侍從だの將官だのが横合から掻つぱらつてしまやがる。
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
それ大変たいへんだ、しかきみはまだ一めいがあるのが幸福しあはせだ、大原伊丹君抔おほはらいたみくんなど可愛想かあいそうにモルヒネを沢山たくさんませられたもんぢやから、到頭たうとう死んでしまつた。
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「田舎の人は、やつぱり呑気だねえ、お前エらお父ツちやんは、屹度永生きをするだらうよウ、お前エは幸福しあはせだよウ。」
鏡地獄 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
死罪しざいこと追放つゐはうといはッしゃるは、黄金わうごん斧鉞まさかりわしくびねておいて、そち幸福しあはせぢゃとわらうてござるやうなものぢゃ。
「そやけど、あんた良うおまツせなア、おはんちごてはつても、お父つあんお居やすよつて、まだ幸福しあはせや。」
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
互に得たる幸福しあはせを互に深く讚歎し合ふ、爾時そのとき長者は懐中ふところより真実のたまの蓮華を取り出し兄に与へて、弟にも真実の砂金を袖より出して大切だいじにせよと与へたといふ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
あたしは幸福しあはせものだ、おもひまうけない戰地へ、前線へ、慰問の手紙をもつていつてもらへる。そして、それが、多くの兵隊さんの目に觸れるやうにしてもらへる——
四人の兵隊 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
「どうせべられるなら、こんな孝行者かうこうものおやくちにはいるのは幸福しあはせといふもんだ」と、よろこんでその觀念くわんねんをとぢました。そして二ふたゝびひらきませんでした。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
自分を引き取つてくれる餘裕のある知人や親戚しんせきを持つてゐる、幸福しあはせな少女たちの出發の爲めに、荷造りをしたり、その他必要な支度をしたり、手一ぱいに働いてゐた。
わたくし、ほんたうに幸福しあはせだと思ひますわ。久し振りで東京へ歸つて來ても、身内の者や知り合ひの方に氣のひける思ひをしないで快く遊んで行けるんで御座いますもの。
見学 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
黒猫「おまへさんなんざあ器量きりよういし、おとなしいからひと可愛かあいがられて幸福しあはせといふものさ」
もしも二人ふたりがはなればなれのらない土地とちつたとしたらどうであつたらう。まちは、そんなことを、またふとかんがへると、幸福しあはせなやうながすることもあつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
『まア貴下あなたあれがえないの。アゝ最早もうえなくなつた。』と老婦人らうふじん殘念ざんねんさうに舌打したうちをした。義母おつかさん一寸ちよつ其方そのはうたばかり此時このとき自分じぶんおもつた義母おつかさんよりか老婦人らうふじんはう幸福しあはせだと。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
蔭ながら自分等の幸福しあはせを、出世を祈ると言つたツけ——う思出して頂きたいのです。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いや、これわるかつた。まあ、あらためて、あらためて御禮おれいまをします。……實際じつさい手紙てがみ遺失おとしたとかなかつたうちに、貴女あなたからもどつたのは、なんともひやうのない幸福しあはせなんです。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ふウむ、其りや、野郎可哀さうな様だがかへつ幸福しあはせだ、乃公こちとらの様にピチ/\してちや、養育院でも引き取つては呉れめヱ——、ま、愈々いよ/\となつたら監獄へでも参向する工夫をするのだ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
昨日きのふはからずも天外てんぐわい萬里ばんりわが同胞どうほうにめぐりひ、あだかてんのなせるがごと奇縁きえんにていま優美やさし春枝夫人はるえふじん可憐かれんなる日出雄少年等ひでをせうねんらおなふねおな故國ふるさとかへるとはなにたる幸福しあはせであらう。
孤独で自然のすべてを愛し愛せられたら幸福しあはせだとおもつてゐます。
愛情 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
すくはんとの其孝心が天につうじ神やほとけ冥助めいじよにて賣代うりしろなしたるあかつきには如何なる貴人きじん有福いうふくの人に愛され請出され却つて結構けつこうの身ともなり結句けつく我手にそだちしより末の幸福しあはせ見る樣になるまじき者にも非ずよく覺悟かくご
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
素直さを身に覚えつつよろこびに幸福しあはせなりとひとり云ひ寝る
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
夜更よふくるまで黒檀こくたんの卓に物書けば幸福しあはせ多きかな。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
『お前達は善い先生を持つて幸福しあはせだね。』
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ふくんでこればかりはわたし幸福しあはせさりとて喧嘩けんくわするときもあり無理むり小言こごといはれまして腹立はらだふこともあれどあとさきもなし海鼠なまこのやうなとわらはれます此頃このごろ施療せれうひまがなうて芝居しばゐ寄席よせもとんと御無沙汰ごぶさたそのうちにおさそまをしますあにはおまへさまを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
玳瑁たいまい幸福しあはせに住む。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
これが発明出来て、寺内首相に白粉おしろい香気にほひがしたり、嘉悦孝子かえつたかこ女史に石油の香気にほひがする事が知れでもしたら、大変な幸福しあはせである。
こりゃ、しっかりとおやらう! つい最前いまがたまでこひしさにぬるくるしみをてござったその戀人こひゞとのヂュリエットはつゝがない。すれば、それが幸福しあはせ
このバサウリューク(その魔性の男は、さういふ名前でとほつてゐた)が散財をしたさうで、叔母の話したことには、この世にある限りのどんな幸福しあはせと引換でも
なんだか、この袋を貰つた兵隊さん、一番つまらなかないかと、さう思つて詰めてゐるうちに、こんどは、この袋に當つた人、一番幸福しあはせなんぢやないかと思つたりして——
四人の兵隊 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
親の命令いひつけ通りに結婚して臺所にばかり齷齪あくそくしてゐる自分はあまり幸福しあはせではなさゝうだつた。
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
「たとひ親が乞食してても、(子供は)矢張り生みの親と一緒に暮らすのが幸福しあはせや……」
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
お花はランプの光まぶかほ背向そむけつ「けれど、其のお嬢様など、お幸福しあはせですわねエ、其様さうした立派な方なら、仮令たとひ浮き名が立たうが、一寸ちつとも男の耻辱はぢにもなりや仕ませんもの——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
過日の夜は実は我も余り汝を解らぬ奴と一途に思つて腹も立つた、恥しいが肝癪も起し業もにやし汝の頭を打砕ぶつかいて遣りたいほどにまでも思ふたが、然し幸福しあはせに源太の頭が悪玉にばかりは乗取られず
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
生むことの幸福しあはせを述べて下された。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
何か飛んでもない失敗しくじりでもしなければ、滅多に他人ひとに名前を知られさうもない男だが、幸福しあはせな事には一つ失敗譚しくじりばなしを持つてゐる。
萠黄色もえぎいろの、活々いき/\としたうつくしい眼附めつきわしよりも立派りっぱぢゃ。ほんに/\、こんどのお配偶つれあひこそ貴孃こなたのお幸福しあはせであらうぞ、まへのよりはずっとましぢゃ。
なんて綺麗だらう! 素敵だわ! あたしをお嫁にする人はほんとは幸福しあはせものよ! あたしの良人がどんなに惚れ惚れとあたしを眺めることだらう! 嬉しさの余り
でも、あたくし幸福しあはせだと思つてゐますのよ。母が患つてからは、あたくしの家に引き取つて、出來るだけの看病をして、心殘りのないやうに息を引き取らせたんで御座いますわ。
見学 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
思ひがけない幸福しあはせが来たやうに。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
何一つ立派な仕事は残さなかつたが、一代のうちに十六人の女房かないを持つたといふので、かなり世間の評判になる事が出来たのは飛んだ幸福しあはせであつた。
わたし、ほんとに幸福しあはせでした。わたしは生まれて十五年の月日をすごした土地ところへ帰つてゐたのです。
幸福しあはせか不幸福か、人間死んで見なきや分りませんさ。わたしども、この先どれほど生きてるものでもないから、老人同士で四國まゐりでもしようかなんて云つてるんですよ。」
水不足 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
よし、幸福しあはせでないとても
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
この点において、聖母マリアが浅子女史の伯母さんでなかつたのは、耶蘇教徒にとつて、勿怪もつけ幸福しあはせであつた。
かう言つて聞かせただけだ——そもじは思ひもかけぬ幸福しあはせな身になれますぞ、そして邪魔だてをする惡人どもがどのやうによからぬことを企らまうとも必ず末は妹と背ぢや。
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
よい幸福しあはせはまのあたり。
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
名高い将軍を娘聟に持つたばかりか、しこたま財産をさへ持つてゐる、何といふ幸福しあはせな男だらう、と言つて。
あなたの宗教は御主人への御飯仕度に多少とも効能ききめがございましたかしら、御主人はあなたが宗教をお信じになつてから、ずつとお幸福しあはせでいらつしやいますかしら。それから……
幸福しあはせなことには、肩書がつくと、病人がそれを信用してかゝるから、なほらない筈の病気までがついひよつくりくなつたりすることがあるので、病人は勿論、お医者自身までが