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己
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おのれ
ふりがな文庫
“
己
(
おのれ
)” の例文
人をあざむくか、
己
(
おのれ
)
をあざむくか、どこかでうそをつかなければ、とうていああおおげさには、おいおい泣けるわけのものじゃない。
樗牛の事
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と小声に教えて、
己
(
おのれ
)
は大音に、「赤城様、得三様。」いうかと思えば姿は
亡
(
な
)
し。すでに幕の
後
(
うしろ
)
へ飛込みたるその早さ消ゆるに似たり。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
うむを見て
男魚
(
をな
)
己
(
おのれ
)
が
白䱊
(
しらこ
)
を
弾着
(
ひりつけ
)
、
直
(
すぐ
)
に
女魚
(
めな
)
男魚
(
をな
)
掘
(
ほり
)
のけたる
沙石
(
しやせき
)
を左右より
尾鰭
(
をひれ
)
にてすくひかけて
鮞
(
こ
)
を
埋
(
うづ
)
む。一
粒
(
つぶ
)
も
流
(
なが
)
さるゝ事をせず。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
寺で聞けば宜しいに、
己
(
おのれ
)
が殺した女の
墓所
(
はかしょ
)
、事によったら、
咎
(
とが
)
められはしないか、と
脚疵
(
すねきず
)
で、手桶を
提
(
さ
)
げて墓場でまご/\して居る。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
美和子は、真面目な表情で、鏡の中の
己
(
おのれ
)
に、ジッと見入りながら、反り返っているまつ毛の一本一本に、メーヴェリンを塗っている。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
しかもその修養のうちには、自制とか
克己
(
こっき
)
とかいういわゆる漢学者から受け
襲
(
つ
)
いで、
強
(
し
)
いて
己
(
おのれ
)
を
矯
(
た
)
めた
痕迹
(
こんせき
)
がないと云う事を発見した。
長谷川君と余
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
恐
(
おそ
)
る
可
(
べ
)
き
哉
(
かな
)
、
己
(
おのれ
)
より
三歳
(
みつ
)
弱
(
わか
)
い
山田
(
やまだ
)
が
既
(
すで
)
に
竪琴草子
(
たてごとざうし
)
なる
一篇
(
いつぺん
)
を
綴
(
つゞ
)
つて、
疾
(
とう
)
から
価
(
あたへ
)
を
待
(
ま
)
つ者であつたのは
奈何
(
どう
)
です、
然
(
さう
)
云
(
い
)
ふ物を書いたから
硯友社の沿革
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
かねて、二つに一つは助からないかもしれないと思っていたのだが、今、ふと
己
(
おのれ
)
が生きていることと、その意味が、はっと私を
弾
(
はじ
)
いた。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
大なる自己の実現である(ヘーゲルのいったように、凡ての学問の目的は、精神が天地間の万物において
己
(
おのれ
)
自身を知るにあるのである)
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
それは、新しい未知の環境の中に
己
(
おのれ
)
を投出して、
己
(
おのれ
)
の中にあつて
未
(
ま
)
だ己の知らないでゐる力を存分に試みることだつたのではないのか。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
彼は
己
(
おのれ
)
の責任を忘れて、きょろきょろと
四辺
(
あたり
)
を見廻した
後
(
のち
)
に、解きかけていた帯をそこそこに
締直
(
しめなお
)
して、枕橋の方へ曲って往った。
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
邦強く敵無くんば、
将
(
まさ
)
に長策を
揮
(
ふる
)
うて四方を
鞭撻
(
べんたつ
)
せんとす、則ち人をして
己
(
おのれ
)
に備うるに
遑
(
いとま
)
あらざらしむ、何ぞ区々防禦のみを言わんや。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
かれは
己
(
おのれ
)
の身に引き当ててしみじみと感じたのである。これほどの活手段はあの『無門関』などにもちょっとなかったようである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
「そういう訳なら師を取らずに
己
(
おのれ
)
一人工夫を凝らし、東軍流にて秘すところの
微塵
(
みじん
)
の構えを打ち破り清左衛門めを打ち据えてくれよう」
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
なぜなら彼女にしてみれば
己
(
おのれ
)
を欺き世を欺くのが不愉快であるばかりでなく、阿曽の感情をも考えなければならないからだった。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
己
(
おのれ
)
の
襟
(
えり
)
がみをつかんでいるのは、二十七、八の小男であった。若い侍のくせに、髪を
総髪
(
そうはつ
)
にして後ろへ垂れ、イヤにもったいぶった
風采
(
ふうさい
)
。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
噂
(
うわさ
)
を聞き伝えた奴国の宮の娘を持った母親たちは、
己
(
おのれ
)
の娘に
華
(
はな
)
やかな
装
(
よそお
)
いをこらさせ、髪を飾らせて戸の外に立たせ始めた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
ソレ書生タルモノ平時互ニ相誇ルニアルイハ博覧考証ヲ以テシアルイハ詩若シクハ文章ヲ以テシ皆自ラ
謂
(
いえ
)
ラク天下
己
(
おのれ
)
ニ
若
(
し
)
クモノハ
莫
(
な
)
シト。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
人を
怨
(
うら
)
み、怒り、
己
(
おのれ
)
の生涯に不平不満を持つことは常住となる。けれどもそれは、それまでの仏法の教にしたがえばすべて堕獄の因である。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
と堀尾君は
己
(
おのれ
)
を制することを忘れた。書き潰しの悪いことは分っているけれど、十五枚丁寧にズラリと並べられたのが癪に障ったのである。
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
支那人は何としても国家的に団結して、共同の利益のために、いわゆる政治的に国家的に
己
(
おのれ
)
を捨て、国に尽すという精神が一番欠乏している。
日支親善策如何:――我輩の日支親善論
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
軽薄な細工物は云はば
廃
(
すた
)
り易い
流行物
(
はやりもの
)
、一流の
操
(
みさを
)
を立てゝ
己
(
おのれ
)
の分を守るのが名人気質だと云ふのが分らぬか、この不了簡者。
名工出世譚
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
其
(
そ
)
の
愛
(
あい
)
する
所
(
ところ
)
((ノ人))を
論
(
ろん
)
ずれば
則
(
すなは
)
ち
以
(
もつ
)
て
(七五)
資
(
し
)
を
借
(
か
)
るとせられ、
其
(
そ
)
の
憎
(
にく
)
む
所
(
ところ
)
((ノ人))を
論
(
ろん
)
ずれば、
則
(
すなは
)
ち
以
(
もつ
)
て
己
(
おのれ
)
を
嘗
(
こころ
)
むとせらる。
国訳史記列伝:03 老荘申韓列伝第三
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
「なんという
迂濶
(
うかつ
)
なことだ。なんという愚かな眼だ。自分のすぐそばにいる妻がどんな人間であるかさえ
己
(
おのれ
)
は知らずにいた」
日本婦道記:松の花
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それは
己
(
おのれ
)
自身の不明を暴露するものであって、俳句の如き短詩型にあっては殊に
慎
(
つつし
)
むべき事である。(『玉藻』、二九、八)
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
この方が多分一つ前の俗信で、つまりは
己
(
おのれ
)
の心に欲せざるところを、人に向かって逆用しようとしたものであるらしいのだ。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
青年エリフまたヨブに説く所ありしも効果
少
(
すくな
)
く、ここに
己
(
おのれ
)
の力も
他人
(
ひと
)
の力もヨブを救う
能
(
あた
)
わざるに至って、エホバの声
遂
(
つい
)
に大風の中に聞える。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
そして水から上がるとただちに天が裂けて
御霊
(
みたま
)
が
己
(
おのれ
)
に、原語どおりに言えば「己の中に」——マタイ伝、ルカ伝には「上」にとなっていますが
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
己
(
おのれ
)
はとてもかくても
経
(
へ
)
なむ、女のかく若き程に、かくてあるなむいといとほしき、京にのぼりてよき宮仕をもせよ。よろしきやにもならば、我を
荻吹く歌
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
羨しくの
下
(
しも
)
には存を添へて読むべきである。茶山は
毎
(
つね
)
に
己
(
おのれ
)
に子の無いことを歎いてゐた。それゆゑ棭斎が懐之を連れてゐたのを羨ましく思つた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
まづ
己
(
おのれ
)
からその道に
背
(
そむ
)
きて、君をほろぼし、国を奪へるものにしあれば、みな
虚偽
(
いつわり
)
にて、まことはよき人にあらず、いとも/\
悪
(
あ
)
しき人なりけり。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼は自分では気がつかないが、怠け者のせいか、それともまた役に立たないせいか、とにかく運動を
肯
(
がえん
)
じないで、分に安じ
己
(
おのれ
)
を守る人らしく見えた。
端午節
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
塚田巡査は職務上これを
捨置
(
すてお
)
く訳には行かぬ。
取敢
(
とりあえ
)
ず
其
(
その
)
屍体を町へ運ばせて、
己
(
おのれ
)
は
其
(
その
)
報告書を作る準備に
取
(
とり
)
かかった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
頃者
(
このごろ
)
年穀
(
ねんこく
)
豊かならず、
疫癘
(
やくらい
)
頻
(
しき
)
りに至り、
慙懼
(
ざんく
)
交
(
こもごも
)
集りて、
唯
(
ひとり
)
労
(
らう
)
して
己
(
おのれ
)
を罪す。
是
(
これ
)
を以て広く
蒼生
(
さうせい
)
の
為
(
ため
)
に
遍
(
あまね
)
く
景福
(
けいふく
)
を求む。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
例えば、
巳
(
み
)
という字と
己
(
おのれ
)
という字との違い、これなどは紛れやすいから、きっとこんなのを試験に出すのだろう、よく覚えて置こう、と思うのである。
入学試験前後
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
改
(
あらた
)
め見るに我が
居間
(
ゐま
)
の
縁
(
えん
)
の下より怪き
箱
(
はこ
)
を
探
(
さが
)
し出し
蓋
(
ふた
)
を
明
(
あけ
)
けるに
己
(
おのれ
)
を
呪
(
のろ
)
ふ
人形
(
ひとがた
)
なれば大いに怒り夫より
呪咀
(
しゆそ
)
の
始末
(
しまつ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
しかし結局これが
己
(
おのれ
)
の今やらなければならないことなんだと思い諦めてまたその努力を続けてゆくほかなかった。
のんきな患者
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
「そんな時は、
己
(
おのれ
)
に
克
(
か
)
たなくては。」兄は唐突なやうにかう云つて、手に持つてゐた杖を敷石の上に衝き立てた。
尼
(新字旧仮名)
/
グスターフ・ウィード
(著)
北方の狐の
祟
(
たた
)
りは、なおいろいろのことをして追いだすことができるが、
江蘇浙江
(
こうそせつこう
)
地方の五通に至っては、民家に美しい
婦
(
おんな
)
があるときっと
己
(
おのれ
)
の所有として
五通
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
それから立居振舞も気が利いていて、風采も都人士めいている。「それに第一流の大家と来ている」と、オオビュルナンは口の内で詞に出して
己
(
おのれ
)
を
嘲
(
あざけ
)
った。
田舎
(新字新仮名)
/
マルセル・プレヴォー
(著)
触
(
さは
)
らぬ人に
祟
(
たゝ
)
りはない、
己
(
おのれ
)
の気持を清浄に保ち、
怪我
(
けが
)
のないやうにするには、孤独を
撰
(
えら
)
ぶよりないと考へた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
……まして、いわんや、上様お手飼のお鶴。上の
御仁慈
(
ごじんじ
)
をうけつがぬことはないはず。
己
(
おのれ
)
のために、尊い人間の一命を失わせるようなことはいたしますまい。
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その一例として「
己
(
おのれ
)
の欲するところを、人に施せ」という格言を取り上げて、その内容を吟味してみよう。
無知
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
武士は
己
(
おのれ
)
を知る者のために死すだ。考えてみると吾輩というこの人間の廃物を拾い上げてくれた奴は、次から次に、吾輩のために
非業
(
ひごう
)
の死を遂げて行くようだ。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それで
彼様
(
あん
)
な風に為つたのだと言ふけれど、単に愛情の過度といふのみで、それで人間が、
己
(
おのれ
)
の故郷の家屋を焼くといふ程の烈しい暗黒の
境
(
きやう
)
に陥るであらうか。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
女は
己
(
おのれ
)
を省みると、不似合いという晴がましさを感ぜずにいられない源氏からどんなに熱情的に思われても、これをうれしいこととすることができないのである。
源氏物語:02 帚木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
やり入れたるが水は馬の太腹にも及び車の臺へ付く程なれば叩き立られたる痩馬向ふの岸に着きかねて
喘
(
あへ
)
ぐに
流石
(
さすが
)
の
我武者馬丁
(
がむしやべつたう
)
も
術
(
すべ
)
なくて
己
(
おのれ
)
川中へ下り立ち四人を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
また獲物ある時これを藪中に匿しさもなき
体
(
てい
)
で藪外を巡り
己
(
おのれ
)
より強きもの来らざるを確かめて後初めて食う、もし人来るを見れば
椰子殻
(
やしがら
)
などを
銜
(
くわ
)
えて疾走し去る
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
論語にある「
己
(
おのれ
)
の欲するところに従えども
矩
(
のり
)
を
踰
(
こ
)
えず」の一句こそ実に自由の定義を
能
(
よ
)
く述べて尽したものであると前号に説明し、
然
(
しか
)
らば矩とは何なるかと反問し
自由の真髄
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
私心の
垢
(
あか
)
を洗った愛念もなく、人々
己
(
おのれ
)
一個の
私
(
わたくし
)
をのみ思ッて、
己
(
おの
)
が
自恣
(
じし
)
に物を言い、己が自恣に
挙動
(
たちふるま
)
う※
欺
(
あざむ
)
いたり、欺かれたり、
戯言
(
ぎげん
)
に託して人の
意
(
こころ
)
を測ッてみたり
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
“己”の意味
《名詞》
おのれ。自分。
つちのと。十干の6番目。
(出典:Wiktionary)
“己”の解説
己(き、つちのと)は、十干の6番目である。
陰陽五行説では土性の陰に割り当てられており、ここから日本では「つちのと」(土の弟)ともいう。
(出典:Wikipedia)
己
常用漢字
小6
部首:⼰
3画
“己”を含む語句
自己
知己
己等
己惚
己達
利己主義
大己貴命
己酉
己丑
己卯
一己
妲己
己巳
己斐
克己心
己亥
塙保己
利己主義者
利己主義男
己未
...