さかん)” の例文
旧字:
ふぐは多し、またさかんぜんに上す国で、魚市は言うにも及ばず、市内到る処の魚屋の店に、春となると、このあやしうおひさがない処はない。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
故に仏を奉ずる者の、三先生に応酬するがごとき、もとこれ弁じやすきの事たり。たんを張り目を怒らし、手をほこにし気をさかんにするを要せず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
岡は国へ帰りたくないというような思い屈したものばかりでなく、何時でも血気さかんな若々しいものを一緒に岸本のもとへ持って来た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
第三、不尽の高くさかんなる様を詠まんとならば、今少し力強き歌ならざるべからず、この歌の姿弱くして到底不尽にひ申さず候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
こういう失敗は、良き教訓です。君はいま御年もさかんなために、ともすれば血気強暴にはやり給い、呉の諸君は、為にみな、しばしば、心を
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どう云ふ事情か、君が話してくれんから知れんけれど、君の躯は十分自重して、社会に立つてさかんなるはたらきして欲いのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
われには少しもこの夜の送別会に加わらん心あらず、深き事情こころも知らでたださかんなる言葉放ち酒飲みかわして、宮本君がこのこうを送ると叫ぶも何かせん。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
松島海軍大佐をして愛妓花吉を待つに堪へざらしめたる湖月亭の宴会とは、何某なにがしと言へる雑誌記者の、欧米漫遊をさかんにする同業知人等の送別会なりけり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
それから暫く山口の高等学校にいたが、遂に四高の独語教師となって十年の歳月を過した。金沢にいた十年間は私の心身共にさかんな、人生の最もよき時であった。
或教授の退職の辞 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
人より先に登って来た南日君と私とは、杖にもたれて雪の上に立ち停った。息を継ぐ間もあらせず「君、さかんだな」と南日君がいう、「壮だな」と鸚鵡おうむ返しに答える。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
初はひど吃驚びっくりしたが、く研究して見ると、なに、父のいびきなので、やっと安心して、其儘再び眠ろうとしたが、さかんなゴウゴウスウスウが耳に附いて中々眠付ねつかれない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「忽得凶音読復疑。秋前猶有寄兄詞。」田能村竹田たのむらちくでん杏坪きやうへいの老いて益さかんなる状を記したのは此年である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
老いて益々さかんなるものが在るのを一瞥のうちに看取し合って、意を強うし合っているらしい。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
子あるまゝを塩引にしたるを子籠ここもりといふ、古へのすはよりといひしも是ならんか。本草にさけあぢはひうま微温やはらかどくなし、主治きゝみちうちあたゝさかんにす、多くくらへばたんおこすといへり。
世界を家とし老いてます/\さかんなカアタア君は僕等の理想的老人だと告げたら、彼はエエス、エエスと云つて喜んで居た。彼は日本酒に酔ひながら卓上演説をなし、又明快な声で長篇の詩を朗詠した。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「休むさ。学校なんか」とたたきつけるように云ったのはさかんなものだった。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さかんなるかなや、故国の運命を
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
この図をながら、ちょんぼりひげの亭主が、「えへへ、ごさかんこつだい。」いきおいの趣くところ、とうとう袴を穿いて、辻の角の(安旅籠やすはたご)へ
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
第三、不尽の高くさかんなるさまを詠まんとならば今少し力強き歌ならざるべからず、この歌の姿弱くして到底不尽にい申さず候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
すなわち兵を率いて滹沱こだを渡り、旗幟きしを張り、火炬かきょを挙げ、おおいに軍容をさかんにして安と戦う。安の軍敗れ、安かえって真定に走る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
慕蓉は兵を鼓舞するために、自身、城外の鼓楼ころう床几しょうぎを移して、兵一人てに酒三杯、肉まんじゅう二箇ずつを供与して、そのこうさかんにした。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれが支店の南洋にあるを知れる友らはかれ自らその所有の船に乗りて南洋におもむくを怪しまぬもことわりならずや。ただひたすらその決行をさかんなりと思えるがごとし。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
人並に血気はさかんだったから、我より先に生れた者が、十年二十年世の塩を踏むと、百人が九十九人まで、みんなじめじめと所帯染しょたいじみて了うのを見て、意久地いくじの無い奴等だ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
貸座敷の高楼大厦とそのうちにある奴婢ぬひ臧獲ぞうかくとは、おいらんを奉承し装飾する所以ゆえんの具で、貸座敷の主人はいかに色をさかんにし威を振うとも此等これらの雑輩に長たるものに過ぎない。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
彼はおのれが与へし男の不幸よりも、そはれぬ女のかなしみよりも、づその娘が意気のさかんなるに感じて、あはれ、世にはかかる切なる恋のもゆる如き誠もあるよ、とかしらねつし胸はとどろくなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
『藤原温泉記行』に高倉山とあるものは、大方このタケクラを間違えたあやまりであろうと思う。クラは上州殊に山地の方言で巌又は岩壁を意味している。タケはさかんなる貌をいうのであろう。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
この月は仕合しあはせな事に二人の老大家だいかの新作に接することが出来る。ルノワアル翁は既にその新作ばかりをジユラン・リユイルの店の数室にならべて居るが、何よりもづ老いてます/\精力のさかんなのに驚く。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
と小宮山は友人の情婦いろではあり、煩っているのが可哀そうでもあり、殊には血気さかんなものの好奇心も手伝って、異議なく承知を致しました。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
○いはゆる詩人といふ漢詩を作る仲間で、送別の詩などを大勢の人から貰ふてその行色をさかんにするとかいふて喜んで居る。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
驍将ぎょうしょう張球は、もっともさかんな軽兵五千をひっさげて、湖口より攻めかかり、背には沢山の投げ炬火たいまつを負わせて行った。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
学を好みけいを治め、の家居するや恂々じゅんじゅんとして儒者の如く、しかも甲をき馬にほこを横たえて陣に臨むや、踔厲たくれい風発、大敵にいてますますさかんに、年十九より軍に従いて数々しばしば偉功を立て
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そのフレンドが僕の身をおもうてくれて、社会へ打つて出てさかんに働け、一臂いつぴの力を仮さうと言うのであつたら、僕は如何いかに嬉からう! 世間に最も喜ぶべき者はフレンド、最もにくむべき者は高利貸ぢや。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其面そのかおを見ると、私は急に元気づいて、いつになくさかん饒舌しゃべった。何だか皆が私の挙動に注目しているように思われてならなかった。無論友達はうち立際たちぎわに私の泣いたことを知る筈はないから……
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
気懸きがかりなのはこればかり。若干いくらか、おあしにするだろう、と眼光きょのごとく、賭物かけものの天丼を照らした意気のさかんなるに似ず、いいかけて早や物思う。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
丁度二十余年前に当って居り、当時文化日に進みて、奢侈の風、月に長じたことは分明ぶんみょうであり、文時が奢侈を禁ぜんことを請うの条には、方今高堂連閣、貴賎共に其居をさかんにし、麗服美衣
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
身装みなりは構わず、しぼりのなえたので見すぼらしいが、鼻筋の通った、めじりの上った、意気のさかんなることその眉宇びうの間にあふれて、ちっともめげぬ立振舞。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たとえばよそのは老い枯びたる人の肌の如く、これは若くさかんなる人の面の如し。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
……えゝ、もつとも、結核けつかくは、喉頭かうとうから、もうときにはしたまでもをかしてたんださうですが。鬼殻焼おにがらやき……意気いきさかんなだけうも悲惨ひさんです。は、はア。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
血もほとばしらんばかりさかんだった滝太郎のおもてを、つくづく見て、またその罪の数をみまわして、お兼はほっという息をいた。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
浅草寺の鐘の声だと、身投げをすべき処だけれど、凡夫さかんにして真昼間まっぴるま午後一時、風は吹いても日和はよしと……どうしても両国を乗越のっこさないじゃ納まらない。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
れない料理人れうりにんが、むしるのに、くらか鎧皮よろひがは附着くつゝいてたでせうか。一口ひとくちさはつたとおもふと、したれたんです。鬼殻焼おにがらやき退治たいぢようとふ、意気いきさかんなだけじつ悲惨ひさんです。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
病人に代ってその人の意気のさかんなのを語るのは、少くとも病魔退散の祈祷きとうにもなろうと思う。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だから、面白かったと云うのか。……かったはさみしい、つまらない。さかんに面白がれ、もっと面白がれ。さあ、糸を手繰れ、上げろ、引張れ。俺が、凧になって、あがってやろう。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だから、面白かつたと云ふのか。……かつたはさみしい、つまらない。さかんに面白がれ、もつと面白がれ。さあ、糸を手繰たぐれ、上げろ、引張れ。俺が、凧に成つて、あがつて遣らう。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「あの窈窕ようちょうたるものとさしむかいで、野天で餡ものを突きつけるに至っては、刀の切尖きっさきへ饅頭を貫いて、食え!……といった信長以上の暴虐ぼうぎゃくです。貴老あなたも意気がさかんすぎるよ。」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人のの母親で、その燃立つようなのは、ともすると同一おなじ軍人好みになりたがるが、あか抜けのした、意気のさかんな、色の白いのが着ると、汗ばんだ木瓜ぼけの花のように生暖なまあたたかなものではなく
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かまちに人の跫音あしおとがしたが、あわただしく奥に来て、さかんな激しい声は、沈んで力強く
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「大分さかんになりましたな、おおん。」
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おッそるべくさかんだなあ。」
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さかんだ、壮だ。」
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)