かり)” の例文
取する者も無なりしにぞ長庵今は朝暮あさゆふけぶり立兼たちかねるより所々しよ/\方々はう/″\手の屆く丈かり盡して返すことをせざれば酒屋米屋薪屋まきやを始め何商賣なにしやうばい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
商用とやらが、そう極まって晩方にあるものではあるまいと云えば、「金をかりる相談を朝っぱらからする奴があるものか」と云う。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
通帳かよいで取込んでかりが山のごとし、月末にどしどし詰懸けられると、なんぼむこうが平民でも、華族じゃからって払わぬわけにはかぬ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
薄暗い部屋のうちに、影のような長蔵さんと亭主がひざを突き合せている。ちょうど、かりがどうとかしてハハハハと亭主が笑ったところだった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
せな「ナアニ寄りはません、お寺様へ行ってお花上げて拝んで、雨降って来たからお寺様でかりべえって法蔵寺様で傘借りてけえって来ただ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
処々より雪かこひの丸太あるひは雪垂ゆきたれとてかやにて幅八九尺ひろさ二間ばかりにつくりたるすだれかりあつめてすべての日覆ひおひとなす。
やがて電車通でんしやどほりいへけんかりると、をとこ国元くにもとから一よめつたことのある出戻でもどりのいもうとに、人好ひとずきのよくないむづかしい母親はゝおやとがたゝめ
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
おまるちゃんが「かめの年」といったのは、よく諸方で可愛がられる子で、近所の——そばや利久の前の家——酒屋で、孫娘のように大事にしてよくかりに来た。
くてイワン、デミトリチは宿やどかりことも、療治れうぢすることも、ぜにいので出來兼できかぬるところから、幾干いくばくもなくして町立病院ちやうりつびやうゐんれられ、梅毒病患者ばいどくびやうくわんじや同室どうしつすることとなつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
高窓が表向おもてむきになって付いているばかりで、日も当らない、斯様こう汚らしい処をかりるつもりでなかったが、値段が安くて、困っている当時のものだからつい入ることにしてしまった。
老婆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この前離家をかりていた小学教員夫婦の悪口などを繰返してきかされるのはまだしもだったが、新吉夫婦にかかわる内輪の事を、根掘葉掘ねほりはほりかれるのには、おときもよわり切っていた。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
「持っていって下さい」と直衛は相手の言葉を遮って云った、「かりは借です」
改訂御定法 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
五両も六両もかりてるもんに一銭があになるべいと思つたが、よく/\思ひ直して、今夜つける油もねいから、よし/\これで蝋燭らふそくちやうかつてぢいさんとふたり暗闇くらやみで今夜泣くとこを、このおかげに
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
すこしも勞れ不申、朝暮は是非散歩いたし候樣承り候得共、小あみ町に而は始終相調あひかなひ申候處、青山之ごく田舍ゐなか信吾しんご之屋敷御座候間、其宅をかり養生中に御座候間、朝暮は駒場野はわづか四五町も有之候故
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
以て役人の手をかり無理無體むりむたいに我を殺さんとなす成ん然すれば何程苦痛くつうたへるともつひには命を失はずには置れまじ此上は一日も早く苦痛くつう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
自棄やけまぎれに飛出したんで、両親には勘当はされても、位牌いはいに面目のあるような男じゃない。——その大革鞄おおかばんかりものです。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
処々より雪かこひの丸太あるひは雪垂ゆきたれとてかやにて幅八九尺ひろさ二間ばかりにつくりたるすだれかりあつめてすべての日覆ひおひとなす。
永「此奴こいつ悪い奴じゃアぞ、おのれ出家の身の上で賭博をるとはしからん、えゝ何じゃア其様そんな穴塞ぎの金をわしにをかりるとは何ういう心得じゃア」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
是公の御者には廿銭かりがあるだけだが、その別当べっとうに至っては全く奇抜である。第一日本人じゃない。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かくてイワン、デミトリチは宿やどかりることも、療治りょうじすることも、ぜにいので出来兼できかぬるところから、幾干いくばくもなくして町立病院ちょうりつびょういんれられ、梅毒病患者ばいどくびょうかんじゃ同室どうしつすることとなった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
で、豪気な、おおかめさん一家は、けちけち町湯にゆくのが業腹ごうはらで、白昼大門通りを異風行列で練りだすのだった。ときによると、あんぽんたんまで、その人数に加えようと、かりにくるのだった。
己は迂濶うかつにも、借りている一巻を返すことに就いてはいろいろ考えていたが、跡をかりるということに就いてはちっとも考えていなかった。己は思案するひまもなく、口実の書物を取り換えに座を起った。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
いくらかりておいでなすつたんだネ?
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
かりはたらかせしが其の夜はおそなりしかば翌朝かへしけるにはや辰刻頃いつゝごろなるに隱居所の裏口うらぐちしまり居て未だ起ざる樣子なれば大いにあやし何時いつも早く目を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
太「あの野郎なんでも口の先で他人ひとだまして銭をかりる事は上手だが、けえ声では云えねえが、此処こゝな甚藏は蝮野郎まむしやろうでよくねえおっかねえ野郎でのう」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
小児衆こどもしゅう小児衆、わしとこへござれ、と言う。はや白媼しろうばうちかっしゃい、かりがなくば、此処ここへ馬を繋ぐではないと、馬士まごは腰の胴乱どうらん煙管きせるをぐっと突込つッこんだ。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山より雪の崩頽くづれおつる里言さとことばになだれといふ、又なでともいふ。あんずるになだれは撫下なでおりる也、るをれといふは活用はたらかすることばなり、山にもいふ也。こゝには雪頽ゆきくづるかりもちふ。
……儲けるどころか、対手方あいてかたに大分のかりが出来た、さあどうする。……で、損料……立処たちどころに損料を引剥ひっぱぐ。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お前さんも峯壽院ほうじゅいん様の御用達ごようたしでは無いか………お前さんは立派な天下の御家人では無いか、おとっさんが亡くなると蔵宿くらやどかりつくし、拝領物まで残らず売ってしまって
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あつまりしものども、それこそよき善行ぜんぎやうなれ、こよひもよほし玉へ、茶の子はこなたよりもちゆかん、御坊ごばうは茶の用意よういをし玉へ、数珠ずゝあんにはなかりき、これもおてらのをかりてもちゆかん
庄「いや/\かりても今の身の上では返えせる目途もくとがありませんからお借り申すことは出来ません」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
撫子 (ゾッと肩をすくめ、ひとみを見据え、顔色かわる)おそのさん、その庖丁はかりません。
錦染滝白糸:――其一幕―― (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先生せんせいを他国の人と眼解みてとりあざむきてたばこの火をかりたるならん、可憎々々にくむべし/\否々いや/\にくむべからず、われたばこの火をかして美人にえん(烟縁)をむすびし」と戯言たはふれければ、岩居を拍て大に笑ひ、先生あやまて
下の伯母さんに三円お金のかりがございまして、そのお金の抵当かたに、身に取りまして大事な観音様をお厨子ずしぐるみに取られ、母は眼病でございまして、其の観音様を信じ
二月ばかり給金のかりのあるのが、同じく三月ほどとどこおった、差配で借りた屋号の黒い提灯ちょうちんを袖に引着けて待設ける。が、この提灯を貸したほどなら、夜中に店立たなだてをくわせもしまい。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なにね深川の方の知己ちきの処に蟄息して居たが、遠州えんしゅうの親族の者が立帰って来て、何か商法を始めようと思うのだ、それに就いて蠣売町かきがらちょううちが有るから、その家を宿賃でかりつもり
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なにか、自分じぶん天守てんしゆ主人あるじから、手間賃てまちん前借まへがりをしてつて、かりかへ羽目はめを、投遣なげやりに怠惰なまけり、格合かくかうをりから、わかいものをあふつて、身代みがはりにはたらかせやうかもはかられぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と云われ春見も不思議に思い、あの証書をほかへ預けて金をかりるような事は身が恐いから有るまいが、畳の下にでも隠して有ろうも知れぬから、表へ出してやって、あとさがそうと思い。
衣帯正しく端然として膝に手をいてじっともの思いに沈んだが、かりものの経机をそばに引着けてある上から、そのむかしなにがし殿でんの庭にあった梅の古木で刻んだという、かれ愛玩あいがん香合こうごうを取って
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それは出来でけない、あれは御存知の水街道の麹屋の女中で、高い給金で抱えて置く女だ、今日一日羽生村の名主様がかりて来たんだ、それを無礼した勘弁出来でけないといって道場へ連れて
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
妾狂いをするのは当前あたりまえだと、大層もない事をお云いでないよ、今では旦那だと云って威張っているが、去年まではお前はなんだい、萩原様の奉公人同様に追い使われ小さな孫店まごだなかりていて
私に話もしないで此方様こちらさまへ書入れにして金をかりるとはあんまりではないか、お前のような不人情な人に附いていても、どんな目に逢うか知れないから、何卒どうぞ夫婦の縁は是れりにしておくんなさい
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おやおかへりかい、かへつたばかりでつかれてやうが、後生ごしやうねがひだから、井戸端ゐどばたつて水をんでておれな、それからついでにお気の毒だけれど、おとなりで二はいかりたんだから手桶てをけに二はいかへしておれな。
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)