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ふりがな文庫
“
下駄
(
げた
)” の例文
また、ひとかごの
橘
(
たちばな
)
の実をひざにかかえ、しょんぼりと、市場の日陰にひさいでいる小娘もある。
下駄
(
げた
)
売り、
沓
(
くつ
)
直
(
なお
)
しの
父子
(
おやこ
)
も見える。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
父はもう片足の
下駄
(
げた
)
を手に取っていた。そしてそれで母を撲りつけた。その上、母の
胸倉
(
むなぐら
)
を
掴
(
つか
)
んで、
崖下
(
がけした
)
に
衝
(
つ
)
き落すと母を
脅
(
おど
)
かした。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
「ううん、着いて間もなくお母さんと喧嘩しちゃったのよ。手当り次第汚ない
下駄
(
げた
)
を突っかけたまま、飛び出して来たものなのよ。」
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私もその声に釣られて、刑事の背後から窓の下を見ると、昨日の雨で湿った余り広くもない庭に
下駄
(
げた
)
の跡がクッキリ
印
(
しる
)
されていた。
火縄銃
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と、
口
(
くち
)
の
中
(
うち
)
でいふとすぐ
抱
(
だ
)
いた。
下駄
(
げた
)
の
泥
(
どろ
)
が
帶
(
おび
)
にべつたりとついたのも
構
(
かま
)
はないで、
抱
(
だ
)
きあげて、
引占
(
ひきし
)
めると、
肩
(
かた
)
の
處
(
ところ
)
へかじりついた。
迷子
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
赤緒
(
あかお
)
の
下駄
(
げた
)
と云えば、
馬糞
(
ばふん
)
のようにチビた
奴
(
やつ
)
をはいている。だが、
雑巾
(
ぞうきん
)
をよくあててあるらしく古びた割合に木目が
透
(
す
)
きとおっていた。
魚の序文
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
と、ミチは白い顔を
頷
(
うなず
)
かせ、ピンクのワンピースの肩を突き出す様にして入り、
下駄
(
げた
)
を脱ぐと、番台に金を置いて手早く洋服を脱いだ。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
またいくら広くてもその面積はわれわれの
下駄
(
げた
)
ばきの足を
容
(
い
)
れる事を許さないために、なんとなく行き詰まった窮屈な感じを与えるが
写生紀行
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
その者が自分で消費するために金を出して買うところの米とか
下駄
(
げた
)
とかいうものには、おおよそ一定の限度があるべきはずである。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
一
風呂
(
ふろ
)
浴
(
あ
)
びて
日
(
ひ
)
の
暮
(
く
)
れゆけば
突
(
つき
)
かけ
下駄
(
げた
)
に七五三の
着物
(
きもの
)
、
何屋
(
なにや
)
の
店
(
みせ
)
の
新妓
(
しんこ
)
を
見
(
み
)
たか、
金杉
(
かなすぎ
)
の
糸屋
(
いとや
)
が
娘
(
むすめ
)
に
似
(
に
)
て
最
(
も
)
う一
倍
(
ばい
)
鼻
(
はな
)
がひくいと
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
殊に俊助は話が途切れると、ほとんど敵意があるような眼で、左右の人影を眺めながら、もどかしそうに
下駄
(
げた
)
の底を鳴らしていた。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
与えられるものを、黙って着ている。また私は、どういうものだか、自分の衣服や、シャツや
下駄
(
げた
)
に於いては極端に
吝嗇
(
りんしょく
)
である。
服装に就いて
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
幸
(
さいわい
)
怪我
(
けが
)
もなかったので
早速
(
さっそく
)
投出
(
なげだ
)
された
下駄
(
げた
)
を履いて、師匠の
家
(
うち
)
の前に来ると、雨戸が少しばかり
開
(
あ
)
いていて、店ではまだ
燈
(
あかり
)
が
点
(
つ
)
いている。
死神
(新字新仮名)
/
岡崎雪声
(著)
その時戸を明けて貸自動車屋の運転手らしい洋服に
下駄
(
げた
)
をはいた男が二人、口笛でオペラの
流行唄
(
はやりうた
)
をやりながら入って来たので
雪解
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
下駄
(
げた
)
一足を買うのにさえ渋い顔をするといったような、およそ大工の棟梁という職とはかけはなれた、けちくさいくらしかたをしていた。
おさん
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
下駄
(
げた
)
の音がからころと響いて聞えた。橋の下には
鼠
(
ねずみ
)
色の
絨氈
(
じゅうたん
)
を敷いたような隅田川の水が、夢の世界を流れている河のように流れていた。
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
午餐
(
ひる
)
に
勘次
(
かんじ
)
が
戻
(
もど
)
つて、
復
(
また
)
口中
(
こうちう
)
の
粗剛
(
こは
)
い
飯粒
(
めしつぶ
)
を
噛
(
か
)
みながら
走
(
はし
)
つた
後
(
あと
)
へ
與吉
(
よきち
)
は
鼻緒
(
はなを
)
の
緩
(
ゆる
)
んだ
下駄
(
げた
)
をから/\と
引
(
ひ
)
きずつて
學校
(
がくかう
)
から
歸
(
かへ
)
つて
來
(
き
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
二階の
手摺
(
てすり
)
に湯上りの
手拭
(
てぬぐい
)
を
懸
(
か
)
けて、日の目の多い春の町を
見下
(
みおろ
)
すと、
頭巾
(
ずきん
)
を
被
(
かむ
)
って、白い
髭
(
ひげ
)
を
疎
(
まば
)
らに
生
(
は
)
やした
下駄
(
げた
)
の歯入が垣の外を通る。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
思わずその肩をかかえるようにして縄のれんの外につれ出すと、奥からあわただしい
下駄
(
げた
)
の音といっしょに、おかみさんもとびだしてきた。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
「待て、待て、小吉。もう一杯やれ、待てったら」と言っていましたが小吉はぷいっと
下駄
(
げた
)
をはいて表に出てしまいました。
とっこべとら子
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
お君はニコ/\笑つたあとでさういふと、スルスルウと、太い幹をすべりおり、下に脱ぎ
揃
(
そろ
)
へてゐた自分の
下駄
(
げた
)
の上へ、両足をおろしました。
かぶと虫
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
「第一に材料が今の僕の気持ちにまるで向かないからです。それに自分の作物を人の
下駄
(
げた
)
にする気にもなれませんからね。」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
そして、権兵衛さんから傘を受け取る風をしながら、ふいにその
下駄
(
げた
)
で、権兵衛さんの肩のあたりを力一ぱい打ちました。すると権兵衛さんは
狐に化された話
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
大きな事をいいながら、光明寺までには半分道も
来
(
こ
)
ないうちに、
下駄
(
げた
)
全体がめいりこむような砂道で疲れ果ててしまった葉子はこういい出した。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
また
今日
(
こんにち
)
の
下駄
(
げた
)
によく
似
(
に
)
て
鼻緒
(
はなを
)
の
前
(
まへ
)
の
孔
(
あな
)
が
右足
(
みぎあし
)
は
左
(
ひだり
)
に、
左足
(
ひだりあし
)
は
右
(
みぎ
)
にかたよつて
出來
(
でき
)
た
石
(
いし
)
の
下駄
(
げた
)
が
出
(
で
)
て
來
(
く
)
ることがあります。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
信如
(
しんにょ
)
とか何とか云う坊さんの子が、
下駄
(
げた
)
の緒を切らして困っていると、美登利が、紅入友禅か何かの
布片
(
きれ
)
を出してやるのを
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
風が坂道の砂を吹き払って凍て乾いた土へ
下駄
(
げた
)
の歯が無慈悲に突き当てる。その音が髪の毛の根元に一本ずつ響くといったような寒い晩になった。
家霊
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
川口町から只今の高橋の
袂
(
たもと
)
へかゝりますと、
穿
(
は
)
いて居りました
下駄
(
げた
)
を、がくりと踏みかえす途端に
横鼻緒
(
よこばなお
)
が
緩
(
ゆる
)
みました。
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
なれたる人はこれをはきて
獣
(
けもの
)
を追ふ也。右の外、男女の雪
帽子
(
ばうし
)
雪
下駄
(
げた
)
、
其余
(
そのよ
)
種々雪中
歩用
(
ほよう
)
の
具
(
ぐ
)
あれども、
薄
(
はく
)
雪の国に用ふる物に
似
(
に
)
たるはこゝに
省
(
はぶ
)
く。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
さうして
見
(
み
)
れば、母は私の忘れて居る間に
下駄
(
げた
)
を買つておやりなすつたことか、もしさうでなければあの歯かけ
下駄
(
げた
)
をはいて田舎まで行つたかしら
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
例えば縦縞の着物に対して横縞の帯を用いるとか、
下駄
(
げた
)
の
木目
(
もくめ
)
または塗り方に縦縞が表われているとき
緒
(
お
)
に横縞を用いるとかいうような場合である。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
おまんはその足で、
母屋
(
もや
)
から勝手口の横手について裏の土蔵の前まで歩いて行った。石段の上には夫の脱いだ
下駄
(
げた
)
もある。戸前の錠もはずしてある。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
お高は、夏の宵の蚊柱がくずれるように、ぶうんと音を発して飛びかわす
拳
(
こぶし
)
や
下駄
(
げた
)
や、
棍棒
(
こんぼう
)
の下をくぐって、しなやかな手をふって逃げまわっていた。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
いつのことだったか、雨が降りそうな日に、私と私の細君とが公設市場の近くまで来た時、理髪屋の前で細君が
転
(
ころ
)
んだ、高い歯の
下駄
(
げた
)
を
履
(
は
)
いていたのだ。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
三太郎君はハッとして慌てながらその文字を
下駄
(
げた
)
で踏み消しました。そうしてコスモスの花越しに、空地続きになっている裏隣りの二階をあおぎました。
卵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
が、寺田だけは高利貸の金を借りてやって来た。七日目はセルの着物に
下駄
(
げた
)
ばきで来た。洋服を質入れしたのだ。
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
最前
(
さいぜん
)
はただ
杉
(
すぎ
)
檜
(
ひのき
)
の
指物
(
さしもの
)
膳箱
(
ぜんばこ
)
などを製し、
元結
(
もとゆい
)
の
紙糸
(
かみいと
)
を
捻
(
よ
)
る等に過ぎざりしもの、次第にその仕事の種類を増し、
下駄
(
げた
)
傘
(
からかさ
)
を作る者あり、
提灯
(
ちょうちん
)
を張る者あり
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
五百は髪飾から
足袋
(
たび
)
下駄
(
げた
)
まで、一切
揃
(
そろ
)
えて贈った。それでも当分のうちは、何かないものがあると、蔵から物を出すように、勝は五百の所へ
貰
(
もら
)
いに来た。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
美しい
塗
(
ぬ
)
り
下駄
(
げた
)
、博多の帯、
縮緬
(
ちりめん
)
の衣裳、
綸子
(
りんず
)
の長襦袢、銀の平打ち、
珊瑚
(
さんご
)
の前飾り、高価の品物が数々出る。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
下駄
(
げた
)
の甲羅問屋の娘さんで、美しいので評判な娘だったのを、鬼眼鏡が好んでもらったのだが、実家にいては
継母
(
ままはは
)
で苦労し、そこでは鬼眼鏡に睨み殺された。
旧聞日本橋:24 鬼眼鏡と鉄屑ぶとり(続旧聞日本橋・その三)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
徳田秋声君の家の隣家の二十歳ばかりの青年が、ちょうど徳田家の
高窓
(
たかまど
)
の外にあった
地境
(
じざかい
)
の大きな柿の樹の下に、
下駄
(
げた
)
を脱ぎ
棄
(
す
)
てたままで行方不明になった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
その人は、チョン
髷
(
まげ
)
を結って、太い
鼻緒
(
はなお
)
の
下駄
(
げた
)
を
穿
(
は
)
き、見るからに
素樸
(
そぼく
)
な風体、変な人だと思っていると
幕末維新懐古談:40 貿易品の型彫りをしたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
今晩方も店に出ていたら、
格子
(
こうし
)
の外を軽そうな
下駄
(
げた
)
の音などして、通る人は花のうわさをしていましたよ。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
十一時の
鐘
(
かね
)
が鳴ると同時に彼も教室を出て、
下駄
(
げた
)
をはいて友人と笑いながら話をしているのを僕は
認
(
みと
)
めた。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
勝手の方で、
飯
(
めし
)
をやる
合図
(
あいず
)
の
口笛
(
くちぶえ
)
が鳴ったので、犬の家族は
刎
(
は
)
ね起きて先を争うて走って往った。主人はやおら
下駄
(
げた
)
をぬいで、芝生の
真中
(
まんなか
)
に大の字に
仰臥
(
ぎょうが
)
した。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
イキとかイナセとかいう低級俗悪な趣味があって、男のくせに着物に何百円と金をかけてみたり、
下駄
(
げた
)
に二十円、三十円と金をかけてみたりして得意になっている。
伝不習乎
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
火刑の火はその当日、城下若松桂林寺町早山かもんのすけという御用鋳師の家からもってくるのが恒例で、磔柱や獄門は、若松市中の
下駄
(
げた
)
屋がまわりもちで作った。
せいばい
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
「やあ、着物が歩いている……
下駄
(
げた
)
が歩いている……お
化
(
ば
)
けだな……石を
投
(
ほう
)
ってやれ……
捕
(
つかま
)
えてやれ」
泥坊
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
奥から飛んで出てきた仲働きのお手伝いさんが、
慌
(
あわ
)
てて宿屋の
焼印
(
やきいん
)
のある
下駄
(
げた
)
を踏石の上に揃えた。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
今の耳にも
替
(
かわ
)
らずして、
直
(
すぐ
)
其傍
(
そのそば
)
なる
荒屋
(
あばらや
)
に
住
(
すま
)
いぬるが、さても
下駄
(
げた
)
の
歯
(
は
)
と人の気風は一度ゆがみて一代なおらぬもの、
何一
(
ひ
)
トつ満足なる者なき中にも
盃
(
さかずき
)
のみ欠かけず
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
“下駄”の解説
下駄(げた)は、一般的には、鼻緒があり底部に歯を有する日本の伝統的な履物。足を乗せる木板に「歯」と呼ばれる接地用の突起部を付け「眼」と呼ぶ孔を3つ穿って鼻緒を通したもので、足の親指と人差し指の間に鼻緒を挟んで履く。ただし、板下駄のように歯のない下駄もある。
(出典:Wikipedia)
下
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
駄
常用漢字
中学
部首:⾺
14画
“下駄”で始まる語句
下駄箱
下駄穿
下駄屋
下駄代
下駄作
下駄平
下駄灸
下駄職
下駄表
下駄袋