“もや”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:モヤ
語句割合
69.6%
6.3%
6.1%
5.2%
母屋4.2%
2.1%
濛靄1.0%
喪屋0.6%
繋綱0.6%
濛気0.4%
雨靄0.2%
0.2%
0.2%
催合0.2%
光靄0.2%
0.2%
暗霧0.2%
母家0.2%
湯霧0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
燃燒0.2%
粗朶0.2%
0.2%
0.2%
雨霧0.2%
雲霧0.2%
霧靄0.2%
0.2%
靄霧0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
もやに包まれた柳並木の濠端ほりばたに沿うて、ヘッド・ライトの明るい触角を立てながら、日比谷から桜田門、三宅坂の方へと上って行った。
指と指環 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
薄暗い食堂の戸を開けると、主婦がたった一人煖炉ストーブの横に茶器をひかえてすわっていた。石炭をもやしてくれたので、幾分か陽気な感じがした。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
船の支度が出來て、兩國の下にもやつたのは辰刻いつゝ(八時)少し過ぎ、結構な短册に下手つ糞な歌などを書いて居ると、お料理やお燗の世話を
橋上に佇んで見下せば、河の面てには靄立ちめ、もやった船も未だ醒めず、動くものと云えば無数の鴎が飛び翔け巡る姿ばかりである。
戯作者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
夜は母屋もやの囲炉裏ばたをおのれの働く場所として、主人らの食膳しょくぜんに上る野菜という野菜は皆この男の手造りにして来たものであった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
縞の財布よ、其の中に金が三両二分に端たが些とばかりと印形いんぎょう這入へえってたから、おとし主へ知らせて遣りたいと思って、万年の橋間はしまで船をもやって
この北の海にも春らしい紫色の濛靄もやが沖に立ちこめ、日和山の桜のこずえにもつぼみらしいものが芽を吹き、頂上に登ると草餅くさもちを売る茶店もあって
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
若日子の父の天津国玉神あまつくにたまのかみと、若日子のほんとうのお嫁と子供たちがそれを聞きつけて、びっくりして、下界へおりて来ました、そして泣き泣きそこへ喪屋もやといって
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
潮来いたこの出島に近い入江の深くに風を避け、真菰まこもの中に繋綱もやっていた醤油船はもう四日もここに泊っていた。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最初さいしょは、なにやら濛気もやでもかかっているようで、もののけじめもわかりかねましたが、そのうち不図ふと何所どこからともなしに、一じょう光明あかりんでると同時どうじに、自分じぶんかれているところ
すると、雨靄もやのむこうから、ボーッと汽笛がひびいてくる。E・D・Sエルダー・デムスターの沿岸船ベンガジ丸が、いまモザンビイクにはいってきたのだ。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
砂糖菓子のような回教寺院モスクの屋根も港の檣群しょうぐんも、ゆらゆら雨脚のむこうでいびつな鏡のようにゆれている。そのとき、仏マダガスカル航空フレンチ・マダガスカルサービスの郵便機が、雨靄もやをくぐりくぐり低空をとおってゆく気配。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
及ばぬ恋の無駄ながふもやすよりは、妄想をデツチ上げた恋愛小説でも作つて、破鍋われなべにトヂ蓋の下宿屋の炊婦おさんでもねらつたらからう。はツはツ、顔を赤くするナ。怒る。怒る勿。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
もやいの十二月二十日、宗悦は新左衛門宅へ催促に行くと、「おい誰か取次がありますぜ、奥方、取次がありますよ」と新左衛門自らいい、「どうれ」とやがて奥様がでてくる。
馬酔木あしび咲く春日の宮のまゐ蝙蝠傘かうもり催合もやひ子ら日暮なり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
灯のこないそのへやには、微かな、まるで埃のような光靄もやが漂っていて、木椅子の肌や書名の背文字が異様に光り、そのうら淋しさのみでも、低い漠然とした恐怖を覚えるのだった。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ところ小船こぶねは、なんときか、むかぎしからこのきし漕寄こぎよせたものゝごとく、とも彼方かなたに、みよしあし乗据のつすえたかたちえる、……何処どこ捨小船すてをぶねにも、ぎやくもやつたとふのはからう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今迄薄暗かった空はほのぼのとしらみかかって、やわらか羽毛はねを散らしたような雲が一杯に棚引き、灰色の暗霧もやは空へ空へと晴て行く。
低くおこりて物にさへぎられたれば、何の火ともわきまへ難くて、その迸発ほとばしりあかけむれる中に、母家もやと土蔵との影はおぼろあらはるるともなく奪はれて、またたくばかりに消失せしは、風の強きに吹敷れたるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
明るい湯霧もやを見詰め乍ら、うっとりとする気持は、そして晴れた高空たかぞらに、パンパンと快よく響く流しの醸す雰囲気は、誰だって、溜らなく好ましいものに相違ないのですから……。
足の裏 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
庭師が溜息をくと、カシモードは何やら彼の耳に殊更に低声こごゑで囁き、互ひの背中を叩き合つてゐた。私はその囁きに、余程深刻な好奇心をもやしたに相違なかつた。
タンタレスの春 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
冒険譚ばうけんだんおこなはれし十八世紀せいきには航海かうかい好奇心かうきしんもやし、京伝きやうでん洒落本しやれぼん流行りうかうせしとき勘当帳かんだうちやう紙数しすう増加ぞうかせしとかや。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
冷遇ふッて冷遇て冷遇ふり抜いている客がすぐ前のうちあがッても、他の花魁に見立て替えをされても、冷遇ふッていれば結局けッく喜ぶべきであるのに、外聞の意地ばかりでなく、真心しんしん修羅しゅらもやすのは遊女の常情つねである。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
今迄いまゝですこしも心付こゝろづかなかつたが、たゞる、わが弦月丸げんげつまる左舷船尾さげんせんび方向はうかう二三海里かいりへだゝつた海上かいじやうあたつて、また一かすか砲聲ほうせいひゞきともに、タールおけ油樽等あぶらだるとう燃燒もやすにやあらん、㷔々えん/\たる猛火まうくわうみてらして
それがひどく手持無沙汰の恰好に見えた。薪や粗朶もやを納屋から運び込むにも何かしら人目を憚かるやうにこそこそ運んだ。
(新字旧仮名) / 金田千鶴(著)
砂浜にもやわれた百そう近い大和船は、へさきを沖のほうへ向けて、互いにしがみつきながら、長い帆柱を左右前後に振り立てている。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
海には無数の船舶が、態々さまざまの姿でもやっている。穏かな波は戯れるようにその船腹をピチャピチャめ、浮標ブイ短艇ボート荷足舟にたりなどをさも軽々と浮かべている。
死の航海 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
晴天だと、ルウエンゾリ山が好箇の目標になるのだが……、降りだして雨霧もやに覆われてからは、ただ足にまかせて密林のなかを彷徨さまよいはじめた。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
だれかが枕辺まくらべいたり、さけんだりするときにはちょっと意識いしきもどりかけますが、それとてホンの一しゅんあいだで、やがてなにすこしもわからない、ふかふか無意識むいしき雲霧もやなかへとくぐりんでしまうのです。
その時は日がもうよほど傾いて肥後の平野へいやを立てこめている霧靄もやが焦げて赤くなってちょうどそこに見える旧噴火口の断崖と同じような色に染まった。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
帆風に散るか、もや消えて、と見れば、海にあらわれた、一面おおいなる岩の端へ、船はかくれて帆の姿。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
次の八畳の間のあいふすま故意わざと一枚開けてあるが、豆洋燈まめランプの火はその入口いりくちまでもとどかず、中は真闇まっくら。自分の寝ている六畳の間すらすすけた天井の影暗くおおい、靄霧もやでもかかったように思われた。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)