もや)” の例文
ここにはもやぐいとホッ立て小屋がある。毛馬村の船着と見て、七名は、ばらばらとそこへ先廻りして降口おりぐちやくして待っていた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
縞の財布よ、其の中に金が三両二分に端たが些とばかりと印形いんぎょう這入へえってたから、おとし主へ知らせて遣りたいと思って、万年の橋間はしまで船をもやって
遠く海のほうを見ると税関の桟橋にもやわれた四そうほどの汽船の中に、葉子が乗って帰った絵島丸えじままるもまじっていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それであたしはこの辺を散歩すると云って寮を出るし、男はまた鯉釣りに化けて、この土手下の合歓の並木の陰に船をもやって、そこでいまいうランデヴウをしたものさね
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
門を出ると月下の平橋へいきょうには白い苫船とまぶねもやっていた。みんなは船に跳び込んだ。雙喜は前の棹を引抜き、阿發あはつは後ろの棹を抜いた。年弱としよわの子供は皆わたしに附いて中の間に坐った。
村芝居 (新字新仮名) / 魯迅(著)
それであたしはこの辺を散歩すると云って寮を出るし、男はまた鯉釣りに化けて、この土手下の合歓の並木の陰に船をもやって、そこでいまいうランデブウをしたものさね
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
下につないであつた山筏やまいかだの上へ落ちると、してゐた道中差だうちゆうざしがスルリと鞘走さやばしつて、それがいかだもやつたつなにふれるとプツリと切れていかだがこはれるとガラ/\/\と流れ出しました。
涼みごしらえの山一丸で、一人の男がこう云いながら、みよしもやづなを解きかけていると
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外濠の暗い河面かわもに、伝馬船が一そう提灯ちょうちんの明りをまたたかせて、もやっていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
万年の河岸へ船をもやってうえあが
舟辰は、忌々いまいましそうに、近くの河岸にもやっている船頭へたずねてみた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もやい合っているたくさんな船から船のふなべりを跳び移って来て
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)