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纜
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もや
ふりがな文庫
“
纜
(
もや
)” の例文
小倉は肉や
葱
(
ねぎ
)
などをつつきながら、頭は
纜
(
もや
)
いっ放しの
伝馬
(
てんま
)
のことと、三上対船長との未解決のままの問題との方へばかり向いていた。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
橋上に佇んで見下せば、河の面てには靄立ち
罩
(
こ
)
め、
纜
(
もや
)
った船も未だ醒めず、動くものと云えば無数の鴎が飛び翔け巡る姿ばかりである。
戯作者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
若衆に取寄せさせた、調度を控えて、島の柳に
纜
(
もや
)
った頃は、そうでもない、
汀
(
みぎわ
)
の
人立
(
ひとだち
)
を遮るためと、用意の紫の幕を垂れた。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夏は、まあええが、
冬分
(
ふゆぶん
)
は死ぬ思いじゃったなあ。
遠賀川
(
おんががわ
)
の洲の岸に、
水棹
(
みさお
)
を立てて、それに、舟を綱で
纜
(
もや
)
う。寒風が吹きさらす。雪が降る。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
これも只の酒をしたゝかに
呷
(
あふ
)
つて
艪
(
ろ
)
を押す手も覺束なくなつた船頭の直助と二人、
纜
(
もや
)
つた船の
舳
(
へさき
)
と
艫
(
とも
)
に別れて、水を渡つて來る凉しい風に醉を吹かれて居たのです。
銭形平次捕物控:004 呪ひの銀簪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
が、俊寛の声は、
渚
(
なぎさ
)
を吹く海風に吹き払われて、船へはすこしもきこえないのだろう。闇の中に、一の灯もなく黒く
纜
(
もや
)
っている船からは、応という一声さえなかった。
俊寛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
杭に
纜
(
もや
)
われた小舟が、洪水に飜弄されるように、油紙の屋根が、ペラペラ動く。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
川の南西側に
榛
(
はん
)
の
樹立
(
こだち
)
の連なれるあたりの樹蔭に船を
纜
(
もや
)
ひて遊ぶが多し。
水の東京
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
そこえらの溝水に
纜
(
もや
)
っている船を注意ぶかく覗きこむのであった。
白い壁
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
背戸ごとに小舟
纜
(
もや
)
へる
汲水場
(
くみづ
)
にはをりをり女居りて日暑し
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
雑多な舟が
何艘
(
なんそう
)
となく
纜
(
もや
)
ってある。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
牁戕
(
かし
)
振り立て
纜
(
もや
)
ひせし
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
若衆
(
わかいしゅ
)
に
取寄
(
とりよ
)
せさせた、調度を控へて、島の柳に
纜
(
もや
)
つた頃は、
然
(
そ
)
うでもない、
汀
(
みぎわ
)
の
人立
(
ひとだち
)
を
遮
(
さえぎ
)
るためと、用意の
紫
(
むらさき
)
の幕を垂れた。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
その時であったが水の上から
欠伸
(
あくび
)
する声が聞こえて来た。続いて
吹殻
(
ほこ
)
を払う
煙管
(
きせる
)
の音。驚いた武士が首を延ばして河の中を見下ろすと、
苫船
(
とまぶね
)
が一隻
纜
(
もや
)
っている。
三甚内
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
これも
只
(
ただ
)
の酒をしたたかに
呷
(
あお
)
って
艪
(
ろ
)
を押す手も覚束なくなった船頭の直助と二人、
纜
(
もや
)
った船の
舳
(
へさき
)
と
艫
(
とも
)
に別れて、水を渡って来る涼しい風に酔いを吹かれていたのです。
銭形平次捕物控:004 呪いの銀簪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
きっと「サンパンは
纜
(
もや
)
っといて、泊まって明朝帰ればいい、サア」といって十円は出すだろう。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
纜
(
もや
)
つてゐる、私はこの荷船に乗るのである、どうせ積荷を主な目的とする船であるから、無理やりに、荷物の中へ割り込んで、坐るぐらゐの窮屈は、忍ばずばなるまい、何となれば時又から、一日で
天竜川
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
岸
(
きし
)
と舟とを
纜
(
もや
)
つた
綱
(
つな
)
が
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
今はたとい足許が水になって、神路山の松ながら人肌を通す
流
(
ながれ
)
に変じて、胸の中に舟を
纜
(
もや
)
う、
烏帽子
(
えぼし
)
直垂
(
ひたたれ
)
をつけた船頭なりとも、乗れとなら乗る気になった。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
湖上に出ている屋根の側まで筏が流れて来た時に、そこに一隻丸木舟が
纜
(
もや
)
ってあるのに気が付いた。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「けさここへ
纜
(
もや
)
ってあった伝馬は、万寿のじゃなかったかい」と、船頭はきいた。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
やうやく船を
纜
(
もや
)
つて、私は船頭におぶはれて、岸に着いた。
天竜川
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
纜
(
もや
)
つた舟から
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
お帰りには
二見
(
ふたみ
)
ヶ浦、これは申上げるまでもござりませぬ、五十鈴川の末、向うの岸、こっちの岸、枝の垂れた根上り松に
纜
(
もや
)
いまして、そこへ参る船もござります。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とうとうわたしたちは船の
纜
(
もや
)
ってある岸まで、無事に着くことが出来ました。
犬神娘
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
後へ
引返
(
ひっかえ
)
してかの石碑の前を
漕
(
こ
)
いで、蓬莱橋まで行ってその岸の松の木に
纜
(
もや
)
っておいて
上
(
あが
)
るのが
例
(
ならい
)
で、風雨の
烈
(
はげ
)
しい晩、休む時はさし
措
(
お
)
き、年月夜ごとにきっとである。
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
無数に小船が
纜
(
もや
)
っている。その一つへ飛び込んだ。つづいて三人がヒラリと乗る。崖へ手を延ばした薬草道人、その辺を探ると思ったが、手に連れて崖の一所が、グ——ッと左右へ押しひらけた。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
十里四方には人らしい者もないように、船を
纜
(
もや
)
った大木の松の幹に
立札
(
たてふだ
)
して、
渡船銭
(
わたしせん
)
三文とある。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「この辺りでよかろう、舟を
纜
(
もや
)
え」
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
優しい柔かな流に面し、大橋を正面に、峰、山を右に望んで、橋添には
遊廓
(
くるわ
)
があり、水には
蠣船
(
かきぶね
)
もながめだけに
纜
(
もや
)
ってあって、しかも国道の要路だという、
通
(
とおり
)
は
賑
(
にぎわ
)
っている。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
纜
(
もや
)
ってある船の方へ行きました。
犬神娘
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
砂利船、材木船、泥船などをひしひしと
纜
(
もや
)
ってある
蛤町
(
はまぐりちょう
)
の河岸を過ぎて、左手に黒い板囲い、㋚※※と大きく
胡粉
(
ごふん
)
で書いた、中空に見上げるような物置の並んだ前を通って、
蓬莱橋
(
ほうらいばし
)
というのに
懸
(
かか
)
った。
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
就中
(
なかんずく
)
、風呂敷にも
袂
(
たもと
)
にも懐にも盗みあまって、
手当
(
てあたり
)
次第に家々から、
夥間
(
なかま
)
が大道へ投散らした、
霰
(
あられ
)
のごとき衣類調度は、ひた流しにずるずると、山から海へ掃き出して、ここにあらかじめ
纜
(
もや
)
った船に
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
穉
(
おさな
)
い方は、両手に
舷
(
ふなべり
)
に
掴
(
つか
)
まりながら、これも裸の肩で躍って、だぶりだぶりだぶりだぶりと
同一
(
おなじ
)
処にもう一艘、渚に
纜
(
もや
)
った親船らしい、
艪
(
ろ
)
を操る児の丈より高い、他の舷へ波を浴びせて、ヤッシッシ。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
纜
漢検1級
部首:⽷
27画
“纜”を含む語句
纜綱
電纜工場
電纜
解纜
収纜
垂纜
大電纜
繋纜
纜縄
防水電纜