しつ)” の例文
因つて知る、武は猶しつのごとく、文は則ち其の毛彩まうさいにして、虎豹こへう犬羊の分るゝ所以なるを。今の文士、其れ武事を忘る可けんや。
う云ふ時に代助は、あたま内側うちがは外側そとがはが、しつことなつた切りみ細工で出来上できあがつてゐるとしか感じ得られないくせになつてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
よ! よ! いはめんなめらかに、しつあをつやきざんで、はないろうつしたれば、あたかむらさきすぢつた、自然しぜん奇代きたい双六磐すごろくいは
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それといふのも、若葉わかば外部がいぶ丈夫じようぶかはもなく、しつやはらかよわいので、つよ日光につこうにあたるのをきらひます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
田忌でんきこれしんじてしかりとし、わうおよ諸公子しよこうし(二六)きん逐射ちくせきす。(二七)しつのぞむにおよんで、孫子そんしいは
とは、しんの男子の態度であろう。男もこの点まで思慮しりょが進むと、先きに述べたる宗教のおしうる趣旨にかのうてきて、深沈しんちん重厚じゅうこう磊落らいらく雄豪ゆうごうしつとの撞着どうちゃくが消えてくる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
素燒すやきでありますけれども、くろずんだ茶色ちやいろいぶされたのがおほいのです。そしてそのつちしつこまかいすなや、ときには大粒おほつぶすながまじつてゐるために平均へいきんしてをりません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
さうしてふかうみそこはこのしつそう直接ちよくせつ其表面そのひようめんまでたつしてゐるか、あるひ表面近ひようめんちかすゝんでてゐて、其上そのうへ陸界りくかい性質せいしつのものでうすおほふてゐるくらゐにすぎぬと、かうかんがへられてゐる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
私徳を修めて身を潔清けっせいくらいに置くと、私権を張りて節を屈せざると、二者その趣をことにするが如くなれども、根本の元素は同一にして、私徳私権あいかんし、徳は権のしつなりというべし。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
倹約な巴里パリイの女が外見は派手でありながら粗末なしつの物をたくみに仕立てるのとちがつて、倫敦ロンドンの女は表面質素じみな様で実は金目かなめかゝつた物を身に着けて居る。だ惜しい事に趣味が意気でない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ユダヤ人はちょっとしたもうけにほくほくして、しつのわるいグロッシェンでこの金額きんがくをもってきました。グロッシェン貨なら、三まいでも、質のいいかねの二枚ぶんのうちしかないのです。
白いふきんと象牙ぞうげのはしとをだいじに持っておって、それは人に手をつけさせない。この象牙ぞうげのはしにはだれもおどろいてる。ややたいらめなしつのもっとも優等ゆうとう象牙ぞうげで、金蒔絵きんまきえがしてある。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
その單色にしてしつまづしい行く手のの世界を、夢ならぬ現實の世界を
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
それは、一ばん上の段よりも、高くてしつのいい木々がえているところからも、すぐにわかります。そこには、カエデや、カシワや、ボダイジュや、シダレカバや、ハシバミなどがえています。
(第四)しつあらき丸石にして凹所おうしよを有する者。(之を凹み石と呼ぶ)
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
みづからを白金プラチナしつと知りながら……
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
〔譯〕せいは同じうして而てしつことなる。質異るはをしへの由つてまうけらるゝ所なり。性同じきは教の由つて立つ所なり。
きつね、たぬき、てん、のうさぎ、むさゝび、りすなどやまむけものはどこにゐるのでも毛皮けがはやくちますが、とく北方ほつぽうむものほど、しつがいゝのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
……ナニ、無事ぶじか? 無事ぶじかではない。かんがえてたつてれます。繊弱かよわをんなだ、しか蒲柳ほりうしつです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかしきん綺麗きれい裝飾そうしよくにはなりますが、しつやはらかくて刃物はものなどにしては實際じつさいやくちません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
万代ばんだいに腐らぬ金銅こんどうしつちて
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
青玉せいぎよくしつを持ちながら
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ごくめづらしいれいではありますが、あかつたものさへかけられるのであります。しかしかたはどれもやはらかいしつですから、みづれるとたいていはします。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
白皙蒲柳はくせきほりうしつず、越中国えつちうのくに立山たてやまつるぎみねゆきを、先頭せんとうだい四十何人目なんにんめかに手鈎てかぎけた、登山とざんにおいては、江戸えど消防夫ひけしほどの侠勢きほひのある、この博士はかせことばしんずると、成程なるほど
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
玲瓏れいろう明透めいてつ、そのぶん、そのしつ名玉山海めいぎよくさんかいらせるきみよ。溽暑蒸濁じよくしよじようだくなつそむきて、冷々然れい/\ぜんとしてひとすゞしくきたまひぬ。倏忽たちまちにして巨星きよせいてんり。ひかり翰林かんりんきて永久とこしなへえず。
芥川竜之介氏を弔ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しるしいしあをきあり、しろきあり、しつなめらかにしてのあるあり。あるがなか神婢しんぴいたるなにがしのぢよ耶蘇教徒やそけうと十字形じふじがたつかは、のりみちまよひやせむ、異國いこくひとの、ともなきかとあはれふかし。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)