しゃ)” の例文
この世の人はイエスの御言を聞いて、「なんという極端な言だろう。キリストしゃというものは過激な物の言い方をするものですねえ」
名人めいじんうらなしゃは、もはやこのまちにはいませんでした。たびからたびへ、わたどりのようにあるうらなしゃは、どこへかいってしまったのです。
金の魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いよう! 皆揃うたな。めんばっかり並びくさって、こら、カフェーやな。おんしゃらカフェーの女給ボーイや。お父さんに酌せエよ。」
俗臭 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
しかしルナパークのうしろから活動写真の前へ出た時は、こりゃうらないしゃなどのいる所ではないと今更いまさらのようにその雑沓ざっとうに驚ろいた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分が急に成熟した、ソレしゃの女のように思われて来てなりません。わたくしに小意地の悪い阿娜気あだけた気分が込み上げて来て
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
もしそれ持参金つきの箱入娘貰つたやうに万事遠慮我慢して連添つれそふ位ならば何も世間親類に後指うしろゆびさされてまでそれしゃうちに入るるの要あらんや。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
……ただその妻君というのが、ソレしゃ上りらしい挨拶上手で、亭主の引きまわしがよかったために、やっと人気をつないでいたという事ですが……
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
踊りのお師匠さんはソレしゃ上がりらしいきれいなお婆さんだった。紹介者はすぐ近所に住んでいた近藤夫人である。
「第一愛想がいいね、人をそらさないところがあるが、それといって、それしゃのするワザとさがない、天然に備わっているチャームというものがある」
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「占いしゃです。が、この近所のうわさじゃ、何でも魔法さえ使うそうです。まあ、命が大事だったら、あの婆さんの所なぞへは行かない方がいようですよ」
アグニの神 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
宿の内儀かみさんはやはりそれしゃの果だ。仕方がないから、内儀に事情を話して、お前さんが探出したら礼をすると言ったところが、内儀は内儀だけに、考えた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
中納言ちゅうなごん奥方おくがたもびっくりして、ぬほどかなしがって、上手じょうずうらなしゃにたのんでみてもらいますと、やはり大江山おおえやまおにられたということがわかりました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「武勇だって。武勇というものは、尋常無事のときにばかり知れるものかのう。きい殿はえらい目利めきしゃじゃ」
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
私は実は、あなたの様な猟奇……しゃですかね、つまり好奇心に富んだお方を、こうしてカフェなどを歩き廻って探すのが役目でしてね。それ丈けでちゃんと月給を
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ずんぐりとした好きしゃらしい脂肉あぶらじしを褥の上からねじ向けて、その主計頭がいとも横柄に構えながら、二万四千石ここにありと言いたげに脇息きょうそくもろ共ふり返ったのを
心安いばかりでなく、それしゃあがりのお定の年増姿がかれの浮気を誘い出して、お駒がほかの座敷へ廻っているあいだに、時々に飛んだ冗談を云い出すこともあった。
半七捕物帳:31 張子の虎 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
などと酔った紛れに冗談を仰しゃると、此方こちらはなか/\それしゃの果と見えてとう/\殿様にしなだれ寄りましてお手が付く。表向おもてむき届けは出来ませんがお妾と成って居る。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ちょうど半月はんつきばかりたった時、その日も甚兵衛はたずねあぐんで、ぼんやり家にかえりかけますと、ある河岸かし木影こかげに、白髯しろひげうらなしゃつくええて、にこにこわらっていました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
西洋に不思議な酒作さけづくりがある。それは禁止の酒を作っては、高価ですきしゃに売りつけるのだ。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
松江しょうこう日頃ひごろ、おいらの大好だいすきとかで、いたおろしをしたのはもとより、版下はんしたまでをあつめているほどしゃ仲間なかま、それがゆうべ、芝居しばいかえりにひょっこりって、このつぎ狂言きょうげんには
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
幕府ばくふ海軍かいぐんのせきにんしゃだった榎本武揚えのもとたけあきも、この五稜郭ごりょうかくでとらえられたのでした。
丈長たけなが掛けて、銀の平打のうしろざし、それしゃ生粋きっすいと見える服装みなりには似ない、お邸好やしきごのみの、鬢水びんみずもたらたらと漆のようにつややかな高島田で、ひどくそれが目に着いたので、くすんだお召縮緬めしちりめん
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しゃ上りと思われる、それもこの植民地のユキダルマ(枕芸者)上りと思われるここのおかみが帳場から、坐ったまま背のびして、白粉おしろいやけした顔におびえた表情を浮べて俺を見つめている。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
「お上もあれで、若い時分には、中々なかなかたっしゃだったのだのう。まだ、もう二人いるはずだが、と、そう現われて来られてはたまらぬ。そこで、——もし、正真の御落胤であった場合には、う処置してよいか」
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
おうさまの命令めいれいによって、そのうらなしゃは、されました。うらなしゃは、やまのぼって、かねのそばにすわって、いのりをささげたのでした。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おんしゃら、一ちょう浪花節掛けエ! 虎造の森の石松やぜ。虎造はよう読みよる。んしょ、てきは声が良えさかいな」
俗臭 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「いいえ、風変りなうらなしゃが、鈴を振り振り歌って来るのを真似まねて、ゾロゾロいて歩いているんです。へい。……それ、聞えるじゃございませんか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
運命が自分を誘い込むようなうらないしゃの看板にぶつかるだろうという漠然ばくぜんたる頭に帽子をせた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
差は一歩にして、末は救いの歓喜と滅亡の恐怖とにわかれる。真に怖るべきことであります。キリストしゃは他の人々に比し決して生まれながらの道徳堅固な者ではありません。
あるからっかぜのひどかった日に、御使いに行って帰って来ると、——その御使いも近所のうらなしゃの所へ、犬の病気を見て貰いに行ったんですが、——御使いに行って帰って来ると
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼はそれぎり音信不通であるので、母はしきりに案じていたが、うらなしゃなどに見てもらっても、いつも凶と判断されるので、もうこの世にはいないものと諦めるよりほかはなかった。
甚兵衛は家にかえって、その話をさるにいってきかせ、うらなしゃ言葉ことばを二人で考えてみました。地獄じごくるがわけはないというのが、どうもわかりませんでした。二人は一晩ひとばん中考えました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
こはすぐる日八重わが書斎にきたりける折書棚の草双紙くさぞうし絵本えほんたぐい取卸とりおろして見せけるなか豊国とよくにが絵本『時勢粧いまようすがた』に「それしゃ」とことわり書したる女の前髪切りて黄楊つげ横櫛よこぐしさしたる姿のあだなる
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
このとしの三がつ三日みっかには、桜田門外さくらだもんがいで、水戸みと浪士ろうし主人しゅじんをもたないさむらい)が、幕府ばくふ開国かいこくしたことをおこって、そのせきにんしゃである大老たいろう井伊直弼いいなおすけをおそうというじけんまでありました。
「まことにおそおおうございますが、陛下へいかのは、あそこにえる紅色あかいろちいさなほしでございます。」と、うらなしゃこたえました。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「何んや、高慢たれやがって! あんなピアノなんかなゝ良えんなら! ピン/\、ポロン/\大体政江! おんしゃがあんなもん習わせるのがいかへんのや!」
俗臭 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
敬太郎けいたろうはどこのうらないしゃに行ったものかと考えて見たが、あいにくどこというあてもなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あんな所にうらなしゃなんぞがあったかしら。——御病人は南枕みなみまくらにせらるべく候か。」
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
同じことが我々各自のキリストしゃとしての生涯に応用できます。私どもも洗礼者ヨハネの「罪の赦しを得さする悔い改めのバプテスマ」の宣伝を聞いて、我らを牽転ひきかえし給えと神に祈ります。
医者にて貰ったかと訊くと、それほどのことでもないらしいので、差しあたりは店の薬を飲んでいると藤太郎は云った。芝に上手なうらなしゃがあるので、母は朝からそこへたずねて行った。
半七捕物帳:35 半七先生 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
素人では気のつかぬ処に気がつく故にそれしゃはそれ者たる値打があるなり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あんさつしゃが、そこにもいた
金持かねもちは、せめてものおもに、自分じぶん不思議ふしぎ病気びょうきについてみてもらうことにいたしました。うらなしゃは、金持かねもちの病気びょうきうらなって、いいますのには
金の魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このうらなしゃのうわさがおうさまのみみたっしますと、さっそくおしになりました。おうさまは、にこにこわらって、このあやしきおとこをごらんになったのです。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このとき、うらなしゃそらあおぎました。いつしかそらには、金銀きんぎんすなをまいたように、燦爛さんらんとしてほしかがやいていました。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、うらなしゃのおばあさんが、今夜こんや、おまえはほんとうのおかあさんにあえるといったことをおもして、なんとなく小太郎こたろうむねおどったのであります。
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのとき、ちょうど、過去かこ現在げんざい未来みらい、なんでもいてわからないことはないといううらなしゃがありました。
星の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おんなは、さっそくそのうらなしゃのところへいって、自分じぶんんだ子供こどものことをばてもらいました。うらなしゃは、んだ子供こども過去かこ現在げんざい未来みらいかたりました。
星の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちょうど、そのころ、どこからともなく城下じょうかへまわってきたうらなしゃがありました。とりのように諸国しょこくあるいて、人々ひとびと運命うんめいうらなう、せいひくい、ひかりするどおとこでした。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのとき、たびからきた上手じょうずうらなしゃがありました。そのおとこは、過去かこいっさいのことをあてたばかりでなく、未来みらいのこともいっさいを秘術ひじゅつによってあてたのでありました。
金の魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)