くだ)” の例文
これから毎朝まいてう鱷ののどへ曲つた金属のくだを插してその中からコオフイイや茶やスウプや柔かにしたパンを入れてくれると云ふ事になつた。
「さあそいつだってあぶねえものさ、飲むときまってくだを巻くし、打つと勝って来たためしはなし、買うとむやみに振られるしさ」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これはくだかたちをした筒形つゝがたたまでありまして、そのながさは一寸前後いつすんぜんごのものが普通ふつうです。いしはみな出雲いづもから碧玉へきぎよくつくつてあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
すると磯九郎は自分が大手柄でもたように威張り散らして、頭を振り立てて種々の事を饒舌しゃべり、終に酒に酔ってくだを巻き大気焔を吐き
そこで、外國人ぐわいこくじん吾等われら立去たちさつたあとで、このしま上陸じやうりくして、此處こゝ自分じぶんが、第一だいいち發見はつけんしたしまだなんかと、くだひたつて無益だめもうすのだ。
ところで、開会劈頭へきとう社大の浅沼がくだを巻いてかかると、小山議長は昂然として浅沼に一撃を加え、騒ぐ議場を尻目にして日程変更を宣した。
議会見物 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
未来を覗く椿つばきくだが、同時に揺れて、唐紅からくれない一片ひとひらがロゼッチの詩集の上に音なしく落ちて来る。まったき未来は、はやくずれかけた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は小さいよしくだで、腫物の口をこじ明けて、その管から貝母のしぼり汁をそそぎ込むと、数日の後に腫物はせて癒った。
浅い海底へ、組合した太いくだを、無数に取付け、それに海水を凍らせる凍結剤を、絶えず送るという仕組になっている。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
おのろけをうかがうの、伺わないのと盛んにくだを巻きつつある最中に、遊魂はもはや、近江の国分の宿の蒲団をもぬけの殻にしてしまったに相違ない。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そこで、「さあ、いいかい」と、言いながら、くだのようになった骨をしっかりとつかんで、もとどおりに合わせました。
その前から酔っていた士が二階にいてしきりにくだを巻いていたが、芝居が進んで茶屋場となり、由良之助が酒や女にうつつを抜かす態たらくを見ると
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そこにはまた、すこぶる珍らしいガラスのくだと、結晶石の大きい凝塊かたまりと、小さい点のある鉄の綱と、琥珀こはくと、非常に有力な天然磁石とが発見された。
もっと異様なのは、引金の辺から柔軟な金属のくだが出て、木箱の中の、やはり金属製の四角な容器につながっている。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そういうと、博士は、うしろの壁にかけてあった長さ一メートル半ほどの黒いくだのようなものをとり、千二に見せた。
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)
時遷じせん、気が気ではない。ふところから何か取出した。細い葦みたいなくだである。つないでゆくといくらでも長くなる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主婦は舅の酒には苦労を仕抜しぬいて来た。夫の生きて居る間は、酒の上で二人はよく親子喧嘩をした。親類に呼ばれて行く時には、屹度きつと酔つてくだいた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
バクスターは研究に研究をかさねた結果、地中にくだをうずめて、川から水をひくことにした。かれはサクラ号の浴室にそなえてあった、鉛管えんかんを利用した。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
東北は一般に、小児がだだをこねることをゴンボホルといい、あるいは酔人がくだを巻くことをもそういう処があり、後の方が古くからあったようである。
動物園の前に大口あいて立つ田舎漢いなかもの、乗車をすゝむる人力じんりき、イラッシャイを叫ぶ茶店の女など並ぶるはくだなり。
半日ある記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
函館停車場はごく粗朴そぼくな停車場である。待合室では、真赤にくらい酔うた金襴きんらん袈裟けさの坊さんが、仏蘭西人らしいひげの長い宣教師をつかまえて、色々くだを捲いて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
此方こつち意氣いきあらはれる時分じぶんには、親仁おやぢくるまのぞくやうに踞込しやがみこんで、ひげだらけのくちびるとんがらして、くだ一所いつしよに、くちでも、しゆツ/\いきくのだから面白おもしろい。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ある者は四竹よつだけでアメリカマーチの調子に浮かれ、ある者は悲壮な声を張り上げてロングサインを歌っている、中にはろれつの回らぬ舌でくだを巻いている者もある
遺言 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「はい、はい、ぞうをこしらえますかな。」と、いって、おじさんは、あめをくださきにつけて、まるめたり、いたりして、やっと一ぴきのぞうができがりました。
夏の晩方あった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
始めの間はいずれも殊勝しゅしょうらしくお経を読んで居りますがそろそろ酔の廻るに従ってお経の声は変じてくだを捲く声となり、管を捲く声が変じて汚穢おわいを談ずる声となる。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
黛夫人の髪毛かみのけの中から出て来た貴妃の賜物たまもの夜光珠やこうじゅ……ダイヤだね……それから青琅玕せいろうかんの玉、水晶のくだなぞの数点を身に付けて、生命いのちからがら山林に紛れ込んだが
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
従つて、十一歳にして既にくだを捲いたほどの神童で、と、これが人を笑はせる「落ち」なのである。
美談附近 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
これも用法不詳ふしやうなれど、煙管きせるのラウの如きくだをば上より下へかたむみ、全体ぜんたいをば大なる西洋煙管の如くにし、噐中にものりて管より之をひしやに考へらる。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
やがて、種牛の眉間みけんを目懸けて、一人の屠手がをの(一方に長さ四五寸のくだがあつて、致命傷を与へるのはこの管である)を振翳ふりかざしたかと思ふと、もう其が是畜生の最後。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「そうさなア。君まで僕を困らせるんじゃアないか」と、西宮は小万を見て笑いながら、「何だ、飲めもしないくせに。くだを巻かれちゃア、旦那様だんなさまがまたお困り遊ばさア」
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
又上におほふ所ありてその下には雪のつもらざるを知り土穴をほりこもるもあり。しかれどもこゝにも雪三五尺は吹積ふきつもる也。熊の穴ある所の雪にはかならず細孔ほそきあなありてくだのごとし。
長絨氈ペルシュマンはうすい空色で、明るい楓材かえでざいを張りつめたこの船室にたいへんよく調和する。半開きになったドアの隙間から、まぶしいほど白い浴槽と、銀色のシャワーのくだが見える。
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「ああ、あれか、あれはあすこのつくばひへバケツの水をたらしてあるのだ。そら、あの竹の中へバケツを置いて、バケツの胴へ穴をあけて、その穴へ細いくだをさして……」
野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そのかめの中に三本も四本も徳利を入れて、徳利の口には瀬戸物のくだを附けて瓶の外に出すなど色々趣向して、ドシ/″\火をあうぎ立てると管のきからタラ/\液が出て来る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
妹君は先刻服薬した時のようにやはりガラスのくだで飲ませた。居士はそれを飲んでから
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
そうして、竹のくだの先にその溶液をつけるなり、管の一方を口に当てて静かに吹いた。
二重人格者 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
火山毛かざんもう成因せいゝん一應いちおう説明せつめいようする。讀者どくしや化學かがくまた物理學ぶつりがく實驗じつけんおいて、硝子管がらすくだかしながらきゆうきちぎると、くだはしほそいとくことを實驗じつけんせられたことがあるであらう。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
見ると四角張ったものは狆の箱で、箱ぐるみ貰って来たという訳、箱だってなかなか手を尽くしたもので、きりぎりすかごの大きいような塩梅あんばいに前へ竹のくだ千本格子せんぼんごうし這入はいっている。
主人の無頓着むとんじゃくらしい顔には、富田がいくらくだを巻いてもやはり微笑の影が消えない。
独身 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
小説だもの、鱶七ふかしちが弁慶の長上下ながかみしもで貧乏徳利をブラ下げて入鹿御殿にくだを巻こうと、芝居や小説にいちいち歴史を持出すのは余程な大白痴おおばかで、『八犬伝』の鉄砲もまた問題にならない。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
わたしは火に当たろうと思ってそばへると、このなべがなんだかわった形をしているのに気がついた。なべのふたにはまっすぐなくだがつき出して、蒸気じょうきがぬけるようになっていた。
おもに屋台のヤキトリ屋で、泡盛や焼酎を飲み、くだを巻いていたのである。
親友交歓 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「結構でございますね。主人は御酒を戴いてくだを巻く外に能がありません」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ロレ 手短てみじかまうしませう、くだ々しうまうさうにはいのち覺束おぼつかなうござりまする。
日が暮れると、對岸の家々の燈火ともしびが水に映つて、あたりの景色は一段と立勝たちまさつた。川風の凉しい縁側の椅子に腰かけてゐると、三番でお米を相手にくどくどとくだを卷いてる男の聲が聞えて來る。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
一つの見方としては間違いではないでしょう。しかしそれは決して、全体的な正しい見方ということはできないでしょう。「くだの穴から天のぞく」ということわざがあります。むろん、覗いた天も天です。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
たしかにこれは、狭苦せまくるしいくだや小さい煖炉だんろの中をいずりまわるのとは、いささかわけがちがっていました。そよ風がすがすがしくいていました。町じゅうが緑の森のあたりまで見わたせました。
看護婦が、かわきを止めるような薬を、くだで少しずつ口へ注いでやった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
前の夜、あなたに言い足りなかった口惜くやしさで、めずらしく朝から晩まで飲んでいました。そのうちぱらってしまって、船の酒場に入ってくる誰彼だれかれなしを取っつかまえては、くだをまきさかずきいていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
余程酒が進んで来たと見え、勝平はくだくようにそう云った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)