)” の例文
旧字:
ゆきなか紅鯛べにだひ綺麗きれいなり。のお買初かひぞめの、ゆき眞夜中まよなか、うつくしきに、新版しんぱん繪草紙ゑざうしはゝつてもらひしうれしさ、わすがたし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
殊に歳暮さいぼの夜景の如き橋上けうじやうを往来する車のは沿岸の燈火とうくわと相乱れて徹宵てつせう水の上にゆらめき動く有様ありさま銀座街頭の燈火とうくわよりはるかに美麗である。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
かうしたものさびれた町の夜のも、おくみには何とはなく、自分にしたしい或物の含まれてゐるやうな、小なつかしい晩であつた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
彼女は、もない廊下の壁に、寄り添いながら立っていた。父が、寝室へ入るまでは、何うにも父の傍を離れられないように思った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
のべ用意ようい雨具あまぐ甲掛かふかけ脚絆きやはん旅拵たびごしらへもそこ/\に暇乞いとまごひしてかどへ立出菅笠すげがささへも阿彌陀あみだかぶるはあとよりおはるゝ無常むじやう吹降ふきぶり桐油とうゆすそへ提灯の
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
松をすかしてチラチラ見えるいくつものは、たち高楼こうろうであり武者長屋むしゃながやであり矢倉やぐら狭間はざまであり、長安歓楽ながやすかんらく奥殿おくでんのかがやきである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は恐るる色なく、木立ちのあいだをくぐりぬけて、古廟のうちへ踏み込むと、ひとつの光りもないので、あたりは真の闇であった。
あたしうちでも、いくつ弓張りや手丸提燈てまるちょうちんを入れて出してやったかわからない。議事堂です、議事堂ですと、各自みんなが口々に言った。
主君である人の、かいなまくらにしてをながめたつき、髪のこぼれかかった額つきが貴女きじょらしくえんで、西の対の夫人によく似ていた。
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
博士は椅子から立って、西側の窓の鎧扉よろいどをがらがらと明けた。——外は初冬の寒い風で、高台の街々はもう大方はが消えている。
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
山の下の多くの飲食店や、商家あきないやにはが青黄色い柳の色と一つに流れて、そこを動いている電車や群衆の影が、夢のように動いていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
向うに心斎橋筋の大丸だいまるがちらちらしてたのん覚えてますけど、そこを大丸の前まで行かんと、太左衛門橋筋南い曲った思うとこで
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
宮川と汐合川しおあいがわの流れ出したところが長くになっていました。大湊の町の町並はともしつらねた人家の丁字形ていじがたになっていました。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これ等が黄色なてらされて居るのを私は云ひ知れない不安と恐怖の目で見て居るのであつた。しまひには両手で顔を覆ふてしまつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
いつもより光沢つやの好い頬をに照らして、湯のぬくもりのまだ抜けないえりを少し開けるように襦袢じゅばんを重ねていた。長い襟首がよく見えた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
町々にがともって、寒いもやと煙との間を労働者たちが疲れた五体を引きずりながら歩いて行くのにたくさん出あっているだろう。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
十七ぐらいでしょうか、こうに近く、話などをしているところを見ると、かわいらしさ以上に、この少女の聡明さに引きつけられます。
九つの鍵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
爺はゆうべ消し忘れたまくらもとの置ランプを見ますと、いつの間にかは消えてゐました。爺は手をのばして、ランプつぼを揺つて見ました。
天童 (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
……勤行はまだ始まっていなかった。一人の尼僧は聖像屏の傍に沿うて燭台しょくだいを入れて廻り、もう一人は枝つき燭架に灯を入れていた。
最早もはやあかねさえせた空に、いつしかI岬アイみさきも溶け込み、サンマー・ハウスのを写すように、澄んだ夜空には、淡く銀河の瀬がかかる——。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
この町のを遠くから見ながらくるときは、林太郎の目にはこの町がおとぎ話の竜宮りゅうぐうのように美しいところに思われたのでした。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
御堂は狭からぬには蛍ほどなり、灯の高さは高し、互の程は隔たりたり、此方を彼方は有りとも知らず、彼方を此方は能くも見得ねば
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
阿濃あこぎは、窓を離れて、その下にうずくまりながら、結び燈台のうす暗いにそむいて、腹の中の子を慰めようと、細い声で歌をうたった。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いうまも丹三、どどどどうん、と階下へおりて、ぱっと外へ出るが早いか、仲間を呼びに、庭木のむこうにのもれている部屋へ走った。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
義太夫ぎだゆう音楽でも時とともに少しずつその形式を進化させて行けば「モロッコ」や「まち」の浄瑠璃化じょうるりかも必ずしも不可能ではないであろう。
生ける人形 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そして、そのかげが次第に暗さを加えて、はては光子の雛段にも及んで来ると、雪洞のがドロリとしたぬくもりで覆われてしまうのだった。
絶景万国博覧会 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そこにある電話の口も把手ハンドルも、電話帳も、その狭い室にさし込んで来るの光線も何も彼もすべて喜悦よろこびに輝いてゐるやうにかれには思へた。
時子 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
私は阪本さんのために珍しく笑はせられながら、床の間の玩具棚おもちやだなの光で見ようとしてくのです。下の棚はがらあきになつて居るのです。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
電車の音、広告塔の、街路樹、さういふものをあとにして、お涌はひたすら暗い道へ道へと自分の今の気持ちに沿ふところを探し歩いた。
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
夕方ちかく、お母さまは、しずかに二階の洋間にはいっていらして、パチと電燈にをいれて、それから、ベッドのほうに近寄って来られ
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
趙家の親子はうちに入ってともしごろまで相談した。趙白眼もいえに帰るとすぐに腰のまわりの搭連をほどいて女房に渡し、箱の中におさめた。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
この、ものものしい、暁のの祭典は、港の周辺のどこからでも望まれる。各所から、数千の好奇の視線が、三番ブイに、集中されていた。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
甲板かんぱんに出てみると、まっくらな海上に、左舷の方にあたって赤と青とのがみえた。その灯はだんだんとこっちに近づいてくるのがわかった。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
思わず歩哨ほしょうが声を立てようとしたとき、それらの遠くのはフッと一時に消えた。まるで今見たことが夢だったかのように。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
このとき、ゆうちゃんはあしもとのつちひろって、あおあてにげました。すると、あおうごいて、しろ着物きものがこちらへ近寄ちかよってきました。
二百十日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
村へ着いたのはもうともしごろだった。そして、家々の戸口や窓から洩れる黄ろい光を見た時の嬉しさを、私は決して忘れることがあるまい。
それから女どもに取巻かれて古木学士と抱き合いながら踊っているうちに、部屋中のが突然虹のようにギラギラと輝き出したように見えた。
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……ちゃんと隠れる処が出来ているの。……今を点して見せて貰ったら、ずうっと奥の方の物置室ものおきの座板の下に畳を敷いて座敷があるの……
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
垣根かきねの外からのぞいて見ると、家の中には、まだがついてなくて、縁側のすのこの上で武士風の男が一心に笛を吹いてゐた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
明るくの入つた市街まちには、自分の頭をかばひ立てるやうにして、尻目に他人ひとの帽子をねらつてゐる人達がうようよしてゐた。
真鍮しんちゅうの潰れた煙管きせるを出して行燈の戸を上げて火をつけようと思うが、酔って居て手がふるえておりますからが消えそう
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「われわれはおぼれて死ぬことはないだろう」とかれはやがてしずかに言った。「ランプのを見なさい。ずいぶん心細くなっているではないか」
夕暮時に脚立を担いだ点灯夫が、蝙蝠のやうに駆け廻つてを入れてゆくかど々の瓦斯灯オイル・ランプがもはや細々として今にも消えかゝりさうな時刻であつた。
サクラの花びら (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
のついていない部屋へやくらかった。ただ赤々あかあかとさかんにえている暖炉だんろの火が、あたりをぼんやりと照らしだしていた。
水に映って、それは閑雅かんがのちらちらであろうと思えた、この支流である飛騨川の峡谷はまた本流の蘇川峡とは別趣の気韻きいんをもって私に迫った。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
の蔭から六十近いおやじが顔を出して一寸余を見たが、直ぐ団扇うちわでばたばたやりはじめた。後の方には車が二台居る。車夫の一人はいびきをかいて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
するうち、あかりはずんずんはっきりしてきて、ぱあっとてりだしたとおもうと、そこはどろぼうの家で、中にはこうこうとがともっていました。
有明の行灯のに照らされた、怒った眼で此方を見ている母の顔があるばかりで、べつに怪しいものの姿はなかった。
狐の手帳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
尾田はさっきから松林の中に佇立ちょりつしてそれらのを眺めていた。悲しいのか不安なのか恐ろしいのか、彼自身でも識別できぬ異常な心の状態だった。
いのちの初夜 (新字新仮名) / 北条民雄(著)
おもくちたあぶらかしてたが、さてどうやらそれがうまくはこぶと、これもあしさきさぐした火口ほくちって、やっとのおもいで行燈あんどんをいれた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)