此子このこ)” の例文
教会の老爺じいさんの子か知ら。今考えて見ると此の子は悪い処にいあわせたもんだ。乃公は此子このこすかして凧糸を其胸へ巻きつけた。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
なみだをかくして見出みいだせば此子このこ、おゝたともはれぬ仕義しぎなんとせん、あねさま這入はいつてもかられはしませぬか、約束やくそくものもらつてかれますか
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お辰素性すじょうのあらましふるう筆のにじむ墨に覚束おぼつかなくしたためて守り袋に父が書きすて短冊たんざくトひらと共におさめやりて、明日をもしれぬがなき後頼りなき此子このこ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
フムと感心のコナシありて、此子このこなか/\話せるワエと、たちま詩箋しせん龍蛇りうだはしり、郵便箱いうびんばこ金玉きんぎよくひゞきあることになるとも、われまた其夜そのよ思寝おもひね和韻わゐんの一をすら/\と感得かんとくして
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
もちつかへたか……さア大変たいへんだ……泣きながらたべるからつかへるのだ困つたものだ……お待ちなさい……此子このこが心配する……わしせなかたゝいてげる……いかい……失礼しつれいだがたゝきますよ。
わたし此子このこを一しよれてかなかつたならば』とおもふやあいちやんは
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
それよ今宵こよひよりは一時いちじづゝの仕事しごとばして此子このこため收入しうにふおほくせんとおほせられしなりき、火氣くわき滿みちたるしつにてくびやいたからん、ふりあぐるつち手首てくびいたからん。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
少しはまぎれて貧家にぬく太陽のあたるごとさびしき中にも貴きわらいの唇に動きしが、さりとては此子このこの愛らしきを見様みようとも仕玉したまわざるか帰家かえられざるつれなさ、子供心にも親は恋しければこそ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
此子このこは子供のくせに生意気こしゃくである。「旦那様お召替をなさいませんか」なんて、乃公の古い服を持って来たり、「今晩は何時にお帰りですか」なんて、何処へ行くともいわないのに聞く。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
あんま生地いくぢすぎる、そんな生地いくぢのない人と連添つれそつてゐるのはいやだ、此子このこはおまへさんのだからお前さんが育てるがい、わたしはもつと気丈きぢやうな人のところへ縁付かたづくから、といふ薄情はくじやうぶん
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
これから一つになつてたいまゝの道樂だうらくなりなになりおつくしなされ、ういくら此子このこしいとつてもかへことでは御座ござんせぬぞ、かへしはしませぬぞとねんして
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
綽名あだなでも何でも此子このこが付ける。小使の金さんはあれは生存競争に落伍した落胆の顔だそうだ。校長は少くとも日清戦争時代の人間で、今日こんにちの時勢には気の毒ながら少々おくれているのだそうだ。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
さあおまへさん此子このこをもいれてつてくだされ、なにをぐたりとておいでなさる、あつさにでもさわりはしませぬか、さうでなければ一ぱいあびて、さつぱりにつて御膳ごぜんあがれ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたしくかろうと此子このこめんじていてくだされ、あやまりますとていてけども、イヤうしてもかれぬとて其後そのごものはずかべむかひておはつ言葉ことばみゝらぬてい
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
無器用ぶきようなお前樣まへさま此子このこいぢくるわけにもくまじ、おかへりにるまでわたしちゝげませうと、ありさまをかねて、となりつまいてくに、何分なにぶんたのまをしますとひながら
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とほりまで買物かひものつてまする、かへりまで此子このこ世話せわをおたのみとおつしやつて、たゞしばらくのことおもひしに、二になれども三はうてども、おとくていままでかげえられぬは
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ふさ帽子ぼうしおももちゆたかに洋服ようふくかる/″\と花々敷はな/″\しきを、ぼつちやんぼつちやんとて此子このこ追從ついしようするもをかし、おほくのなか龍華寺りうげじ信如しんによとて、千すぢとなづる黒髮くろかみいまいくとせのさかりにか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたし此子このこはゞわたしためまもがみで、此樣こん可愛かあい笑顏ゑがほをして、無心むしんあそびをしてますけれど、此無心このむしん笑顏ゑがほわたしをしへてれましたこと大層たいそうなは、のこりなくくちにはくされませぬ
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此子このこれにもゆびもさゝせぬ、これはわたしものきしめたで御座ござりましやう。
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此子このこ笑顏ゑがほのやうに直接ぢかに、眼前まのあたり、かけあしとゞめたり、くるこゝろしづめたはありませぬ、此子このこなん小豆枕あづきまくらをして、兩手りやうてかたのそばへ投出なげだして寢入ねいつてとき其顏そのかほといふものは
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其樣そんところかへるにあたるものかちつともおつかないこといからわたしうちなさい、みんなも心配しんぱいすることなん此子このこぐらゐのもの二人ふたり三人さんにん臺所だいどころいたならべておまんまべさせるに文句もんくるものか
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一身いつしんつかれてせにせし姿すがた兄君あにきみこヽろやみにりて、醫藥いやく手當てあてづからの奔走ほんそういよいよかなしく、はて物言ものいはずなみだのみりしが、八月やつき壽命じゆみやう此子このこにあれば、月足つきたらずの、こゑいさましくげて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)