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往
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ゆ
ふりがな文庫
“
往
(
ゆ
)” の例文
彼の母がふだん滅多に出入りしない部屋に入つて
往
(
ゆ
)
きますと、Marion は
蝶番
(
てふつがひ
)
をはづした大きな窓の扉を自分の背に
背負
(
しよ
)
つて
茶話:08 大正十五(一九二六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
文「御重役でもなんでも、今はずう/″\しいのなんて、米屋でも
薪屋
(
まきや
)
でも、魚屋でも何でも、物を持って
往
(
ゆ
)
く気づかいありません」
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
細い
釘店
(
くぎだな
)
の往来は場所
柄
(
がら
)
だけに
門並
(
かどな
)
みきれいに掃除されて、打ち水をした上を、気のきいた
風体
(
ふうてい
)
の男女が忙しそうに
往
(
ゆ
)
き
来
(
き
)
していた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
嶺松寺にあった無縁の墓は、どこの共同墓地へ
遷
(
うつ
)
されたか知らぬが、もしそれがわかったなら、尋ねに
往
(
ゆ
)
きたいものであるといった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
かの
新婦
(
はなよめ
)
——即ち
大聲
(
おほごゑ
)
によばはりつゝ尊き血をもてこれと
縁
(
えにし
)
を結べる者の新婦——をしてその
愛
(
いつくし
)
む者の
許
(
もと
)
に
往
(
ゆ
)
くにあたり 三一—三三
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
▼ もっと見る
笠森
(
かさもり
)
のおせんだと、
誰
(
だれ
)
いうとなく
口
(
くち
)
から
耳
(
みみ
)
へ
伝
(
つた
)
わって
白壁町
(
しろかべちょう
)
まで
往
(
ゆ
)
くうちにゃァ、この
駕籠
(
かご
)
の
棟
(
むね
)
ッ
鼻
(
ぱな
)
にゃ、
人垣
(
ひとがき
)
が
出来
(
でき
)
やすぜ。のう
竹
(
たけ
)
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
楽屋へ
往
(
ゆ
)
くから
復
(
かえ
)
るまでの間、実に何十分を費したか知らないが、とにかくにその頃の
幕間
(
まくあい
)
はよほど長かったものに相違なかった。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「そうね。牛込の
彼処
(
あすこ
)
はどう。
諏訪町
(
すわちょう
)
時分にあなたとも二、三度行った家さ。この頃三番町にもちょいちょい
往
(
ゆ
)
くところがあるのよ。」
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
何か、火急な事以外には、同志たちの
往
(
ゆ
)
き
来
(
か
)
いもつつしみ合っていた。殊に、何処へ出ても、居所は明確に誰かへ聯絡を持って置く事。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
歩けばたいして感じないほどのゆるやかな坂道は、
往
(
ゆ
)
きにはこころよくすべりこんだのだが、そのこころよさが帰りには重い荷物となる。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
二人三人、世話人が、列の柵
摺
(
ず
)
れに
往
(
ゆ
)
きつ
還
(
かえ
)
りつ、時々顔を合わせて、二人
囁
(
ささや
)
く、直ぐに別れてまた一人、別な世話人とちょっと
出遇
(
であ
)
う。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
境に
黄泉比良坂
(
よもつひらさか
)
という名のあるのが不審なくらい、自由に人の世から
往
(
ゆ
)
き通う旅の神があり、また恋があり人情の
葛藤
(
かっとう
)
があった。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
((莊賈ノ使者))
既
(
すで
)
に
往
(
ゆ
)
き、
未
(
いま
)
だ
反
(
かへ
)
るに
及
(
およ
)
ばず。((穰苴))
是
(
ここ
)
に
於
(
おい
)
て
遂
(
つひ
)
に
莊賈
(
さうか
)
を
斬
(
き
)
り、
以
(
もつ
)
て三
軍
(
ぐん
)
に
徇
(
とな
)
ふ。三
軍
(
ぐん
)
の
士
(
し
)
皆
(
みな
)
(一九)
振慄
(
しんりつ
)
せり。
国訳史記列伝:04 司馬穰苴列伝第四
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
それは十年も前からの友人に、ふと道で
往
(
ゆ
)
きあった時のような、
極
(
ご
)
く自然な言葉であった。
尠
(
すくな
)
くとも、私にはそう感じられた。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
郵便局の角から入ると、それから二三
町
(
ちやう
)
の
間
(
あひだ
)
は露店のランプの
油烟
(
ゆえん
)
が、むせるほどに一杯に
籠
(
こも
)
つて、
往
(
ゆ
)
きちがふ人の肩と肩とが触れ合つた。
父の墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
〔譯〕心は
現在
(
げんざい
)
せんことを
要
(
えう
)
す。事未だ來らずば、
邀
(
むか
)
ふ可らず。事已に
往
(
ゆ
)
かば、
追
(
お
)
ふ可らず。
纔
(
わづ
)
かに追ひ纔かに邀へば、
便
(
すなは
)
ち是れ
放心
(
はうしん
)
なり。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
港というものは、遠く海上を旅する人々の休み場所、停車場というものは、陸上を
往
(
ゆ
)
き来する人々の休み場所、どちらもにぎやかなものです。
街の少年
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
すると
天保
(
てんぽう
)
十年頃意外にも服部平四郎は突然
往
(
ゆ
)
くえを
晦
(
くら
)
ましてしまった。もっともこれは伝吉につけ
狙
(
ねら
)
われていることを知ったからではない。
伝吉の敵打ち
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今まで見えたシャロットの岸に連なる柳も隠れる。柳の中を流るるシャロットの河も消える。河に沿うて
往
(
ゆ
)
きつ来りつする人影は無論ささぬ。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
反絵は時々戸の隙間から中を
覗
(
のぞ
)
いた。薄暗い部屋の中からは、一条の寝息が絶えず
幽
(
かす
)
かに聞えていた。彼は顔を
顰
(
しか
)
めて部屋の前を
往
(
ゆ
)
き
来
(
き
)
した。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
それは鮎漁に
往
(
ゆ
)
く時醤油二杯に酒一杯の割でよく煮詰めた汁を拵えて持って往って、鮎が釣れたらば生きたまま
直
(
す
)
ぐにその中へ入れるのです。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
彼は
往
(
ゆ
)
きと
還
(
かえ
)
りの船旅を思い比べ、欧羅巴を見た眼でもう一度殖民地を見て行く時の千村を想像し、
漠然
(
ばくぜん
)
とした不安や驚奇やは減ずるまでも
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
俺
(
おれ
)
はこんな男に対して、どんな手段を取るだろう、俺が
蜀
(
しょく
)
の都へ
往
(
ゆ
)
くのは、
拗
(
す
)
ねて往くのではない、苦しいから逃げて往くのだ、
何
(
いず
)
れにしても
倩娘
(新字新仮名)
/
陳玄祐
(著)
「——
往
(
ゆ
)
き帰り十日はかかると存じますから、そのあいだに話をおきめになって下さいまし、こんどこそお願い致します」
主計は忙しい
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「それに相違あるまいが、念のためといふことがあるよ——練馬まではざつと五里、
往
(
ゆ
)
きだけで日が暮れるだらう、明日の晝までに歸りや宜い」
銭形平次捕物控:159 お此お糸
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
夜明けに、捜索隊の一部が、昨夜発見の地点から四マイルを隔てた小川の岸に、乗り棄てられた空のボウトに
往
(
ゆ
)
き当った。
チャアリイは何処にいる
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
袴
(
はかま
)
をはき、用具の包を抱へこんで、少し前こごみになつて歩く
痩
(
や
)
せた少年栄蔵の姿が、海沿ひの街道を毎日
往
(
ゆ
)
き来するのを出雲崎の人々は見た。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
マーキュ おゝ、
柔弱
(
てぬる
)
い、
不面目
(
ふめんもく
)
な、
卑劣
(
ひれつ
)
な
降參
(
かうさん
)
!
此上
(
このうへ
)
は
劍
(
けん
)
あるのみぢゃ。(劍を拔く)。チッバルト、いやさ、
猫王
(
ねこまた
)
どの、お
往
(
ゆ
)
きゃらうか?
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
幸に先生は維納府外数里の地に
住居
(
すまい
)
でありました。拙者一見手を
握
(
にぎり
)
てほとんど
傾蓋
(
けいがい
)
の
想
(
おもい
)
をなしました。拙者先生に引かれてその住居へ
往
(
ゆ
)
きました。
禾花媒助法之説
(新字新仮名)
/
津田仙
(著)
只管
(
ひたすら
)
に現状打破を望む性急
焦躁
(
しょうそう
)
のものが、
往
(
ゆ
)
くべき方向の何たるかを弁ずるをえずして、
曩
(
さき
)
にコンムュニズムに狂奔し今はファッシズムに傾倒す。
二・二六事件に就て
(新字新仮名)
/
河合栄治郎
(著)
あちらの
煙突
(
えんとつ
)
のいただきに、
青空
(
あおぞら
)
が
出
(
で
)
て、その
下
(
した
)
のぬれて
光
(
ひか
)
る
道
(
みち
)
を
人々
(
ひとびと
)
が、いきいきとした
顔
(
かお
)
つきをして
往
(
ゆ
)
くのでした。
真昼のお化け
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
或日黄金丸は、用事ありて里に出でし
帰途
(
かえるさ
)
、独り
畠径
(
はたみち
)
を
辿
(
たど
)
り
往
(
ゆ
)
くに、
只
(
と
)
見れば
彼方
(
かなた
)
の山岸の、野菊あまた咲き乱れたる
下
(
もと
)
に、黄なる
獣
(
けもの
)
眠
(
ねぶ
)
りをれり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
絶えず機関車の
往
(
ゆ
)
き
来
(
き
)
する音が聞え、時々はすぐ窓の外で、鋭い汽笛が鳴り響くのだが、そんな物音にも、雪子はビクッと身を震わせて驚くのだ。
鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そこで弟子たちが注意申し上げて、「ここは寂しき所、はや時も
晩
(
おそ
)
し。人々を去らしめ、
周囲
(
まわり
)
の里また村に
往
(
ゆ
)
きて、己がために食物を買わせ給え」
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
「往生とは
往
(
ゆ
)
き生まれることだ。仏法は死ぬことを教えるのじゃない。死なぬ法を教えるのだ。浄土へ往き生まれることを、教えるのが仏法じゃ」
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
我々は「シ」の音と「ス」の音とは立派に別々の音として発音し聴き分けておりますが、東北地方に
往
(
ゆ
)
くと「シ」と「ス」が同じ音になってしまう。
古代国語の音韻に就いて
(新字新仮名)
/
橋本進吉
(著)
そこで
歳
(
とし
)
こそ
往
(
ゆ
)
かないが源三もなんとなく心淋しいような感じがするので、川の
側
(
そば
)
の岩の上にしばし休んで、
鞺鞳
(
どうとう
)
と流れる水のありさまを見ながら
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「
往
(
ゆ
)
きの道すがらとらえた蛍がこのように役に立たうとは思いもかけぬことでした。
斯様
(
かよう
)
いたしておけばお心づきかと存じていたのでございます。」
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「われ
往
(
ゆ
)
きて彼
亡
(
ほろ
)
ぶる日なれば、心配するに及ばず」とて、すぐに軍を出だし、果たして勝利を得たりとのことじゃ。
迷信解
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
そして彼は最後に言う「我は暗き地、死の
蔭
(
かげ
)
の地に
往
(
ゆ
)
かん、この地は暗くして
晦冥
(
やみ
)
に等しく死の蔭にして
区別
(
わかち
)
なし、かしこにては
光明
(
ひかり
)
も
黒暗
(
くらやみ
)
の如し」
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
ちょうど千葉
街道
(
かいどう
)
に通じたところで水の流れがあり、上潮の時は青い水が漫々と差して来た。
伝馬
(
てんま
)
や
筏
(
いかだ
)
、水上警察の舟などが絶えず
往
(
ゆ
)
き来していた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
……彼は小川に沿うて
往
(
ゆ
)
きつ
戻
(
もど
)
りつしている。お
定
(
さだ
)
まりの月の光が、ちらちらと動いて、女の
編針
(
あみばり
)
のように入り交る。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「馬なめて」もよい句で、「友なめて遊ばむものを、馬なめて
往
(
ゆ
)
かまし里を」(巻六・九四八)という用例もある。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
東京へ出るたびに、青山方角へ
往
(
ゆ
)
くとすれば、必ず世田ヶ谷を通る。僕の家から約一里程行くと、街道の南手に赤松のばらばらと生えたところが見える。
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
旅館の主人、馬を勧め、
剛力
(
がうりき
)
を勧め、
蓆
(
ござ
)
を勧め、
編笠
(
あみがさ
)
を勤む、皆之を
卻
(
しりぞ
)
く、この極楽の山、
只
(
たゞ
)
一本の
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
にて足れりと
広舌
(
くわうぜつ
)
して、朝まだき裾野を
往
(
ゆ
)
く。
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
沙を運ぶ者は、
笊
(
ざる
)
に容れて
枴
(
おうこ
)
で担い、礁の破片を運ぶ者は、大きな
簣
(
あじか
)
に容れて二人で差し担って
往
(
ゆ
)
くのであった。
海神に祈る
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
これを決するためには終日終夜
心魂
(
しんこん
)
を痛め、あるいは
跪
(
ひざまず
)
いて神意を伺わんとしたり、あるいは思案に沈んで、ほとんど無意識に一室を
往
(
ゆ
)
き
来
(
き
)
したという。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
彼
自
(
みず
)
から信ずる頗る厚く、自から為す所、言う所、一として自から是認せざるはなく、則ち自から反して
縮
(
なおく
)
んば千万人といえども、吾
往
(
ゆ
)
かんの気象なり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
しかし、
往
(
ゆ
)
けるところまでというとやっと承知して、あくる日、
荷担ぎ
(
バガジス
)
とともに密林をわけはじめたのである。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
今昔
(
こんじゃく
)
の感
坐
(
そぞ
)
ろに
湧
(
わ
)
きて、幼児の時や、友達の事など夢の如く
幻
(
まぼろし
)
の如く、はては
走馬燈
(
まわりあんどん
)
の如くにぞ胸に
往
(
ゆ
)
き
来
(
こ
)
う。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
往
常用漢字
小5
部首:⼻
8画
“往”を含む語句
往来
往復
往々
往還
往來
往時
往返
往生
往昔
往古
往年
往日
往反
既往
往事
右往左往
立往生
大往生
往来中
往通
...