尻尾しつぽ)” の例文
で泥坊は、そつと山羊の頭をなでながら、その綱を切つて、首の鈴を驢馬の尻尾しつぽにゆはひつけて、山羊だけを盗んでいつてしまつた。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
その男のいふのでは、牛程人間の役に立つものはすくない。田をたがへし、荷車をき、頭から尻尾しつぽさきまで何一つ捨てるところも無い。
ぺん宣言書せんげんしよ==其は頭から尻尾しつぽまで、爆發ばくはつした感情の表彰へうしやうで、激越げきえつきはめ、所謂阿父のよこつらたゝき付けた意味のものであツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「今晩はもう遲い、明日の朝早く出かけるとしよう。それだけたくんだ仕事なら、早く行つたからつて尻尾しつぽを掴めるとも限るめえ」
つばめうれしさうにとうさんを尻尾しつぽはね左右さいうふりながら、とほそらからやうやくこのやまなかいたといふはなしでもするらしいのでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
舟をおりようとして、旅人がひよいと見ますと、へさきに立つてゐる子どものしりべたから、長い尻尾しつぽが垂れてゐました。
狐の渡 (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
それから五日程して、よく沼岸の砂地にあそびにくる、尻尾しつぽの短い赤い小鳥が姉さんの居処をしらしてくれました。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
おれがね、お前は一体何物だと、頭に向つて尋ねたら、わたし山椒魚さんせううをですよと、尻尾しつぽがおれに返事をしたぜ。
動物園 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ぴゆツと一とふり尻尾しつぽをふると、びちやりとおほきなはらうへで、めちやめちやにつぶれてんでしまひました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
然し三十分もふんばつてゐて、カラ/\に乾いた鼠の尻尾しつぽ程の糞が二切れほどしか出なかつた。
一九二八年三月十五日 (旧字旧仮名) / 小林多喜二(著)
云ふもンぢやない。加野は加野だ。君があんな風にしむけた罪があるンだ。女は誰にでも尻尾しつぽ
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
引寄ひきよせてもげないから、そつれると、尻尾しつぽ一寸ちよつとひねつて、二つも三つもゆびのさきをチヨ、チヨツとつゝく。此奴こいつと、ぐつとれると、スイとてのひらはいつてる。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しか骨董こつとうのつくほどのものは、ひとつもないやうであつた。ひとりなんともれぬおほきなかめかふが、眞向まむかふるしてあつて、其下そのしたからながばんだ拂子ほつす尻尾しつぽやうてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そしてフロッコオトの長い尻尾しつぽをぴくぴくふるはせて、立ちすくんでしまつた。何分かが喧囂けんがうの内に過ぎた。血走つた先生の凹んだ眼には、その時涙さへにじんで來たのである。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
間拔まぬけのたかい大人おとなのやうなつらをして團子屋だんごや頓馬とんまが、かしらもあるものか尻尾しつぽ尻尾しつぽだ、ぶた尻尾しつぽだなんて惡口あくこうつたとさ、らあ其時そのとき束樣ぞくさまへねりんでたもんだから
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
乳酪の猫がまだ夢みるやうにその光つた尻尾しつぽの尖の細かな緑色の痙攣を凝視みつめてゐる。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
俺も外の奴には恐い顔をして随分啖付くらひつきさうな素振をして嚇かしたが、此正直な神野霜兵衛さんには何時でも尻尾しつぽを掉つて愛想をしたから、一度は麺包パンのお土産を頂戴したことがあつた。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
それから、ちよつとした荷物をこしらへて、それを尻尾しつぽのさきにつゝかけ、えつちやら、おつちやら、お伽の国境までやつて来ました。すると、ちやうど、そこに雲がむく/\と起つて来ました。
虹猫の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
するどいをして、ひげが二いろまつ白な、せなかのまがつた大将が、尻尾しつぽはうきのかたちになつて、うしろにぴんとのびてゐる白馬はくばに乗つて先頭に立ち、大きな剣を空にあげ、声高々と歌つてゐる。
北守将軍と三人兄弟の医者 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
うすぐらい尻尾しつぽの先を曳きずつて歩きまはる。
定本青猫:01 定本青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
海豚いるか背後うしろで、尻尾しつぽむに。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
尻尾しつぽの裂けた気まぐれ者さ。
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それから、小さな尻尾しつぽ
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「どうにもかうにも保ちさうもなかつたら、その邊で詰め込んで歸るとしようよ。魚の尻尾しつぽを噛つてゐる犬なんか見て、淺ましい心を起しちやならねエ」
この炎天えんてんにさらされて、くこともならず、かへりもされず、むなしく、うまはのんだくれ の何時いつだかれない眼覺めざめをまつて尻尾しつぽあぶはひとたわむれながら、かんがへました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
とうさんはめつたにそのへびませんでしたが、どうかするとあたつた土藏どざう石垣いしがきあひだ身體からだだけしまして、あたま尻尾しつぽかくしながら日向ひなたぼつこをしてるのをかけました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
間抜に背のたかい大人のやうな面をしてゐる団子屋の頓馬とんまが、かしらもあるものか尻尾しつぽだ尻尾だ、豚の尻尾だなんて悪口あくこうを言つたとさ、己らあその時千束様せんぞくさまへねり込んでゐたもんだから
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
驢馬の尻尾しつぽで鈴がなつてるものだから、百姓は何にも気がつかなかつたんだよ。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
さすがせて、とがつたつらなが尻尾しつぽさぬけれど、さてうしてには、足代あじろんで四手よつでしづめて、身体からだつて、ていよく賃無ちんなしでやとはれたじやうぬま番人ばんにん同然どうぜん寐酒ねざけにもらず
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「取りあへずあなたに頂きたいのは、火酒ウオツカにしん尻尾しつぽです。」と云ふ。
山鴫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
化猫ばけねこ雉猫きじねこ、かまいたち、粟が尻尾しつぽを黄に垂れた。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うすぐらい尻尾しつぽの先を曳きずつて歩きまはる
青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
尻尾しつぽを出して逃げちやつた。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
尻尾しつぽのないやせ犬が
下手人がわからなきや、親分は馬の尻尾しつぽの仕掛けなんかを、皆んなの前で話すわけはないでせう——あれを
て、ちがふもの——はいぶよはいはうるさがられ、ぶよこはがられてます。ぶよひとをもうまをもします。あのながくて丈夫ぢやうぶうま尻尾しつぽ房々ふさ/\としたは、ぶよひ拂はらのにやくつのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
入相いりあひかねこゑいんひゞきてねぐらにいそぐ友烏ともがらす今宵こよひ宿やどりのわびしげなるにうつせみのゆめ見初みはじめ、待合まちあひ奧二階おくにかい爪彈つめびきの三下さんさがすだれるゝわらごゑひくきこえておもはずとま行人ゆくひと足元あしもとくる煩惱ぼんなういぬ尻尾しつぽ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
尻尾しつぽもふらず、かず
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
自分じぶんるときつね尻尾しつぽだ。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
尻尾しつぽが出たら何とせう。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
喰はせようと思つて居るうちにドロドロと闇の中に消え込んでしまひましたよ。其邊中探したが、尻尾しつぽも見付かりやしません。お月樣が隱れると、坂下の闇はやけに暗い
ひつそりとうつ尻尾しつぽさき
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「何が妙なんだ、大膳坊が尻尾しつぽでも出したのか」
あつちの尻尾しつぽふウといぞ
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
雉猫きじねこ尻尾しつぽを振る
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)