安否あんぴ)” の例文
「ああ、だれかに、ご安否あんぴをたずねてみたいが、めったなものに、そんなことをきけば、みずから人のうたがいをまねくようなものだし……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女體の額の小さい夜光石の紛失ふんしつは、幾らか氣が樂になりましたが、男體の額の大きい夜光石の安否あんぴも一度は見定めて置く必要があつたのです。
「そうです。博士の安否あんぴをたしかめるほかに、他のいろいろな道をも行ってみます。そのひとつとして、わたしは金属Qを追跡ついせきしているのです」
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あかりのついた、お附合つきあひとなりまどから、いはさんの安否あんぴかうとしでもしたのであらう。格子かうしをあけたをんながあつたが、なんにも女房にようばうにはきこえない。……
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
お前がこの島にとどまっていれば、姫の安否あんぴを知らせるのは、誰がほかに勤めるのじゃ? おれは一人でも不自由はせぬ。まして梶王かじおうと云うわらべがいる。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかもきっと不幸と恥辱ちじょくとの中に。有王よ、わしは妻子の安否あんぴを気づかった時、いつもお前のことを頼みにしていた。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
音羽町へやりたりしが此時すでに家主は殺され父子おやこ行衞ゆくゑしれぬとて長家はかなへわくが如く混雜こんざつなせば詮方せんかたなく立返へりつゝ云々と三個みたりに告て諸共もろともにお光の安否あんぴ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたくしかくれていたところ油壺あぶらつぼせま入江いりえへだてた南岸なんがんもりかげ、そこにホンのかたばかりの仮家かりやてて、一ぞく安否あんぴづかいながらわびずまいをしてりました。
けれど、それと同時どうじに、第一だいいち吾等われらむねつたのは、櫻木大佐等さくらぎたいさら乘込のりこめる海底戰鬪艇かいていせんとうてい安否あんぴである。
けっして品物の安否あんぴを無視したわけではないが、結果から見て、その行為は品物の安否を無視したことになり、所有者のうらみを買いこそすれ、感謝されはしないであろう。
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
もつと最後さいご三四日さんよつかおけ宗助そうすけはや安井やすゐひたいとおもふよりも、すこ事情じじやうがあるから、失敬しつけいしてさきつとわざ/\通知つうちしながら、何時迄いつまでつてもかげせないかれ安否あんぴ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ただおまえの安否あんぴがわかればいいので、こののちは、毎日まいにちおくることは見合みあわせてください。
母の心 (新字新仮名) / 小川未明(著)
先日七のうちから茄子苗なすなえを買ったら、今朝七の母者ははじゃがわざ/\茄子の安否あんぴを見に来た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
〔譯〕人は皆身の安否あんぴふことを知つて、而かも心の安否を問ふことを知らず。宜しく自ら能く闇室あんしつあざむかざるやいなや、能く衾影きんえいぢざるや否や、能く安穩あんおん快樂くわいらくを得るや否やと問ふべし。
便たよりまつ一日ひとひ二日ふたひうれしきやうなづかひな八重やへ遠慮ゑんりよらぬものゝまたすかとおもはるゝもはづかしくじつとこらゆる返事へんじ安否あんぴもしやとおもへば萬一もしやになるなり八重やへ大丈夫だいじやうぶ受合うけあへどそれやすめのことばなるべしふみとても御受取おうけとりになりしやならずや其塲そのばそのま〻御突おつもどしになりたるを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その消息は不明であるが、玉太郎は安否あんぴを知りたい人のあとについて今おいかけていることはまちがいないと知り、元気をくわえたのであった。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いや決してそんなことはあるまい。わしの安否あんぴまらぬうちに、自害する勇気はとてもあるまい。それに有王ありおうがついている。あの忠実な勇敢な下僕しもべが。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
『では、貴君きくんは、しやおい日出雄少年ひでをせうねん安否あんぴを——。』とひかけて、いそ艦尾かんびなる濱島武文はまじまたけぶみ春枝夫人はるえふじんとにひとみうつすと、彼方かなた二人ふたりたちまわたくし姿すがた見付みつけた。
親分さんのお力で、伜を取戻して頂くなり、それが出來なければ、せめて伜の安否あんぴも知り、逢つた上で此先武家奉公するものか、得心づくで事を決め度いと存じます。
亭主に引合はせぬ徳右衞門は一大事となほ然氣さりげなく善六に答へし如く此者どもにもはなしたりさらばとて十人の内より三人を鎌倉の尼寺あまでらつかはし殘り七人は其儘そのまゝ龜屋に宿やどりて鎌倉の安否あんぴ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたしはとうとうMと云う家へ行き、彼女の安否あんぴを尋ねることにした。しかしMの主人もまた彼女のことは知らなかった。わたしはいよいよ不安になり、彼女の宿所を教えて貰った。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
じつながあいだのことで、あの安否あんぴ気遣きづかい、そのため、わたしは、やせてしまった。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは平岡の安否あんぴにかけてゐた。まだ坐食ゐぐひの不安な境遇にるにちがひないとは思ふけれども、或はの方面かへ、生活の行路こうろを切り開く手掛りが出来できたかも知れないとも想像して見た。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ただならぬ怪影かいえいを見つけたとりで番士ばんしは、なにかとおどろいて、へん小幡民部こばたみんぶにつげた、その夜、自然城しぜんじょう山曲輪やまぐるわには、巽小文治たつみこぶんじ山県蔦之助やまがたつたのすけも、虫の知らせか、しきりに伊那丸いなまる安否あんぴ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ、知っているとも。だから、いっそうきみの安否あんぴを心配していたんだ。この星が、いまアドロ彗星に追いかけられているというのだろう」
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
成経 母は父の安否あんぴばかり心配して泣いていました。そしてなぜわしがかかる恐ろしいことをくわだてたかをかきくどきました。父はその朝院に出仕しゅっしする途中をとらえられたのです。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
嘔氣はきけもよほすやうな不愉快な心持になりましたが、お靜の安否あんぴが心もとないので、もう一度ギヤーマンの穴から覗くと、廣間は廣々と取片付けられて、白日の光が一杯にさし込み
大佐たいさ令妹れいまい春枝夫人はるえふじん安否あんぴ——その良君をつと濱島武文はまじまたけぶみ消息せうそく——それよりさきわたくしからかたらねばならぬのは(大佐たいさ屹度きつとんだとおもつてるだらう)※去くわこねんあひだわたくしとも朝日島あさひじまつきながめて
出立致し讃州丸龜へ罷越まかりこし候事に候へば舊冬きうとう屑屋くづや一同御呼出しの節は御當地に罷り在り申さず漸々やう/\一昨日江戸表へ立歸り私し妻より舊冬きうたう屑屋くづや一同御呼出しの樣子を承まはり候につき文右衛門の安否あんぴ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そうとも、死をいとうのではないが、こんど、木隠こがくれとこの忍剣にんけんがおともをしてきて、首尾しゅびよう大殿おおとののご安否あんぴをつきとめねば、小太郎山こたろうざんにのこっている、小幡民部こばたみんぶ咲耶子さくやこ小文治こぶんじなどにも笑われ草……
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昨夜はついにかえらなかった玉太郎たちの安否あんぴをたしかめ、必要なら救助作業をしてもらいたいものだと申入れた。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
警部としては一秒たりともはやく少年の告白を聞いて、メリー号の安否あんぴをただしたいのであった。しかしかれの希望は、すっかりじゃまされてしまった。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
捜査は、とくに針目博士の安否あんぴ重点じゅうてんをおいておこなわれたが、前にのべたように博士のすがたは発見できなかった。また人骨じんこつ一片いっぺんすら見あたらなかった。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
正吉のそんな話を、みんなはおもしろく聞いた。そしてモウリ博士の安否あんぴはいずれしらべてあげましょう。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そしてモーリ博士の安否あんぴはいずれしらべてあげましょう。それはそれとして、まず久しぶりにかるい食事をなさいといって、正吉を食堂へ案内して流動食りゅうどうしょくをごちそうした。
三十年後の東京 (新字新仮名) / 海野十三(著)
手元へ飛びこんで組打くみうちとも考えたが、船長と格闘することよりも、自分に親切にしてくれたハルクの安否あんぴをはやく見てやりたいとおもったので、歯をくいしばって我慢した。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
玉太郎の胸の中は残して来て、別れ別れになった人々の安否あんぴを気づかう気持で、一杯だった。だから、ダビットのようにあたりまえの景色に気をつかうだけの余裕はなかった。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
古谷局長は、さっきからだまりこくって、二号艇の無慚むざんな光景にむかっていた。彼は、あの二号艇にのりこんでいた部下の丸尾技士の安否あんぴについて、いろいろと考えていたのだ。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
(ああそうだ。そのうち折をみて、帆村さんに、あたしの両親の行方とその安否あんぴをしらべてもらおうかしら。ああ、それがいい。あたしは、いい人とお友だちになったものだ!)
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
時計のことよりも、この屋敷へはいって行方不明になった北岸さんなんかの安否あんぴ
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
老人の知りたいのは、春木君の安否あんぴであったようである。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
勇敢なる大尉及び同乗者等の安否あんぴは、極めて憂慮ゆうりょさる”
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
艇長の安否あんぴ
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)