)” の例文
丑松は敬之進のことを思出して、つく/″\落魄らくはく生涯しやうがいを憐むと同時に、の人を注意して見るといふ気にも成つたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
男もた余り我儘わがまゝ過ぎると思ひますの——梅子さん、是れは世界の男に普通のでせうか、其れとも日本の男の特性なのでせうか
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
色の淺黒い、輪廓の正しい立派な男、酒を飮めば必ず歌ふ、のまざるもた唄ひながら働くといふ至極元氣のい男であつた。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
さらば天成の哲學者、理論家なんどにもたおそらくは益なしといふに至らむ。かくても談理を斥けずといはるべきか。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
今や軍国の時に際してネルソン伝は吾人の切望せし所、此書た我国人目下の要求に応ぜしものと言はざるべからず。
ネルソン伝に序す (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
江海の水溢れて天に注ぐ事なく、泰山の土長く地上にとゞまることを知らば、地上にもたコンシステンシイの争ふ可からざる者あるを悟らざらめや。
最後の勝利者は誰ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
唯だその障碍をのぞき、学者をして学問の実体を講ずるの力をゆたかならしむるものに至らば、在野の人といえどたその責を分たざるを得ず(謹聴、喝采)。
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
あらゆる自由結婚の長所を含ませるだけの働のない子供達は、これた聡明を欠いてゐるといはなければならぬ。
もとより戯曲には種々の規則あり、罪過を以つて唯一の規則となすは不可なるべしといへども、これが為めに罪過は不用なりと言ふあらばおほいに不可なるが如し。
罪過論 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
して歐米をうべい海員かいゐん仲間なかまでは、此事このことらぬでもないが、如何いかにせん、この海賊かいぞく團體だんたい狡猾かうくわつなること言語げんごえて、そのきたるやかぜごとく、そのるもかぜごとく。
(五八)いはく、『みちおなじからざれば相爲あひためにはからず』と。また各〻おのおの其志そのこころざししたがなりゆゑに(又 )いは(五九)富貴ふうきもとくんば、執鞭しつべんいへどわれこれさん。 ...
其牡丹赫奕かくえきとして紅燃えんとするものあり、子規子の墨痕た古雅瀟洒たり。
牡丹句録:子規病中記 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
求めんと欲し続々投書山をす之をもって之を見れば君が文事に於けるた羨むべし嗚呼あゝ涙香君は如何なる才を持て筆を採るや如何なる技を持って小説を作るや余は敢て知らず知らざるゆえに之れを
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
また棺を出すには必ず家の戸尻とじりより出し、棺の後に霊供持れいぐもちとて握り飯を持ち行く者と、水持みずもちとて水を持ち行く者あり、共に身近き婦人の役なり。弓持ゆみもちとて竹の弓矢を携えて附添え行く者あり。
本朝変態葬礼史 (新字新仮名) / 中山太郎(著)
大日本だいにほん妾宅用せふたくよう制限せいげんされた狆君ちんくんが、コスモポリタン動物どうぶつでないこと亦無論またむろんである。日本主義者にほんしゆぎしや帝國主義者ていこくしゆぎしや國家主義者こくかしゆぎしや愛國者あいこくしや國自慢者くにじまんしやなどがコスモポリタンじんでないことじつ無論むろんである。
舀他一勺亦何妨 それ一勺いっしゃくむになんさまたげん〕
一夕 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
何も悪意あつて排斥するでは無いが、学校の統一といふ上から言ふと、これた止むを得ん——斯う校長は身のまもりかたを考へたので。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
世の露西亜ロシヤを言ふもの、た一に露西亜の皇帝を見、宮室を見、貴族を見、軍隊を見て足れりとなす、何等の不公平にして又た何等の浅学ぞや
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
そして、先生せんせいた、一心不亂いつしんふらん此精神このせいしんもつ兒童じどうみちびき、何時いつたのしげにえ、何時いつ其顏そのかほ希望きばうかゞやいてました。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
人世は遂に説明し得べからざるものなり、然らば人生を指導するものもた、遂に解釈し尽くす能はざる程の宝蔵にあらざれば、可なるところを知る能はず。
各人心宮内の秘宮 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
てき米國軍艦べいこくぐんかんわれ帝國軍艦ていこくぐんかん水雷すいらい砲火ほうくわならぬ陸上りくじやう運動うんどうをもつてたがひいどたゝかふも一興いつきようであらうとおもふ。
又レッシングの「ガロッチー」シルレルの「ワルレンスタイン」もた皆な然らざるはなし。
罪過論 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
惟うに、これ余一人の冀望なるに止まらず、恩人隈公・校長・議員・幹事及び講師諸君も、ひとしくこの冀望をいだき、共に本校の独立をねがい、共に他の干渉を受けざるを望むならん。
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
姑と一緒に、お妻もた門口に出て、客の後姿を見送るといふ様子。今更のやうに丑松は自他われひと変遷うつりかはりを考へて、塚窪の坂を上つて行つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
僕は里子をようして泣きました。幾度も泣きました。僕もた母と同じく物狂ものぐるおしくなりました、あわれなるは里子です。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
其記者が仏独の旧形を摸倣するに甘んじて、創造の偉功を顕はさゞる事も、すでに久しと云ふべし。
トルストイ伯 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
その運送船うんさうせん丁度ちやうど橄欖島かんらんたう到着たうちやくするころ電光艇でんくわうてい本島ほんたう出發しゆつぱつして、二船にせんそのしま會合くわいがふし、凖備じゆんび藥液やくえきをば電光艇でんくわうてい轉載てんさいして、それより日本につぽんかへらんとの計畫けいくわくです。
印度インドは既に亡びて英国に属し、爪哇ジャワはその制を荷蘭オランダに受け、暹羅シャムはその命を英国に聞き、近時安南アンナンた疲れて仏蘭西フランスに帰する等、漠々たる亜細亜大陸の広き、能く独立の躰面を全うし
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
新聞紙は紙と活字と記者と職工とにて出来るものぢやない、我等配達人もた実に之を成立せしめる重要なる職分をおびて居るのである、しかるに君等は我が同胞新聞の社会に存在する理由、
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
大島伸一先生おほしましんいちせんせいなかつたなら、此小學校このせうがくかうた、世間せけんりふれたもの大差たいさなくをはつたかもれません。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
なん醉漢すいかん心中しんちう暴露ばくろするのみようなる。さらすゝんで我妻わがつま我娘わがむすめだんじ、むすめ婬賣いんばいすることまで、慚色はづるいろなくづるにいたりては露國ロコク社界しやかいおどろくべきにあらずや。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
少年こども歡喜よろこびが詩であるならば、少年の悲哀かなしみた詩である。自然の心に宿る歡喜にしてし歌ふべくんば、自然の心にさゝやく悲哀もた歌ふべきであらう。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「美」を観るの眼もかくの如し、正面に立つて「美」を観る事は雲のかゝりたる時の外はかなはず。
松島に於て芭蕉翁を読む (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
或はシヱレイの合歓がふくわん未だ久しからざるに妻は去つて自ら殺し、郎もた天命を全うせざりしが如き。
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
ぼくこひしてたのだらうけれども、ゆめに、じつゆめにもおきぬをどうしやうといふことはなかつた、おきぬた、ぼくくからずおもつてたらう、けつしてそれ以上いじやうのことはおもはなかつたにちがひない。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
侠もた遊廓内に何権理なにけんりとか名の付く可き者なり。而して紅葉は実に如是かくのごとき妙法の功力を説法せんとの意ありしや否やはかく、佐太夫なる人物は宛然たる粋の女王なり。
オヤ/\乃公おれは隠して置いた酒さえも何時いつ他人ひとしりの下にしかれてしまうのか、と自分の運命をのろったのです。詛うと言えばすごく聞えますが、実は僕にはそんなすご了見りょうけんた気力もありません。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
然りといへども、宇宙の人間に対するは蛇の蛙に於けるが如くなるにあらず、人間もた宇宙の一部分なり、人間も亦た遠心、求心の二引力の持主なり、又た二引力の臣僕なり。
頑執妄排の弊 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
加ふるに閑少なく、書籍の便なく、事実の蒐集しうしふ思ふに任せぬことのみなるべければ、独断的の評論をなす方に自然傾むき易きことも、た予め諒承あらんことを請ふになむ。
我文学に恋愛なるものゝ甚だ野鄙やひにして熱着ならざりしも、た他界に対する観念の欠乏せるに因するところ多し、「もろ/\の星くづを君の姿にして」などやうなることば
他界に対する観念 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
単に自然の摸倣ネーチユーア・イミテーシヨンを事とする美術を以て真正の満足を得ること能はざるは必然の結果なるが故に、創造的天才クリヱチーフ・ジニアスの手に成りたる美を愛好するに至ることも、た当然の成行なり。
これをむものもそのこゝろしてよまざるからず、涙香ルイコウ探偵小説たんていせうせつごとぞくよろこばすものにてなき由を承知しようちして一どくせばみづか妙味みようみ發見はつけんすべきなり、余はこのしよ讀者どくしや推薦すいせんするをはばからず
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
牢獄のうちに捕繋せられて、然る後に恋愛の為に苦しむ、我が牢獄は我を殺す為に設けられたり、我もた我牢獄にありて死することを憂ひとはせざれども、我をして死す能はざらしむるもの
我牢獄 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
翁もたねがへりの数に夢幾度いくたびかとぎれけむ、むく/\と起きて我を呼び、これより談話俳道の事、戯曲の事にたけなはにして、いつるべしとも知られず。われはねむりの成らぬを水のとがに帰して
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
然れども武門の栄華は平民に取りて幸福を剥脱はくだつする秋霜なり、盆水一方に高ければ、他方に低からざるを得ず、権力の積畳せきでふせし武門におのづからなる腐爛生じ、しかして平民社界もた敗壊し終れり
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
我庵わがいほた秋の光景けしきにはもれざりける。
秋窓雑記 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)