むぎ)” の例文
旧字:
それから、清水できんをしぼって、そっと、側へすすめたり、むぎのさまし湯を上げたりしたが、長話のうち、一度も手にしなかった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとむぎばたけで、やぶれがさをかぶって手足てあしをひろげた、鳥追とりおいのかかしが、よるやすまずに、ばんをするのを、おとうとが、まねているのでした。
戦争はぼくをおとなにした (新字新仮名) / 小川未明(著)
男は、ほっとしたようにつぶやき、むぎわらや空籠あきかご空箱あきばこで、すっかり部屋へやよごれてしまったのも、気かつかぬようだった。
たぬきがしばられてぶらげられている下で、おばあさんはうすして、とんとんむぎをついていました。そのうち
かちかち山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
米のめしよりむぎの飯、さかなよりも揚豆腐が好きで、主人を見真似たか梨や甜瓜まくわの喰い残りをがり/\かじったり
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あさこめむぎなどの内陸の産物と、交易したものがもっとも有名で、わたしたちはこれをボッカと呼んでいた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これから私たちにはまだむぎこなしの仕事がのこっています。天気がわるくてよくかわかないでこまります。麦こなしはのぎがえらえらからだに入って大へんつらい仕事です。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
純次は食卓から胸にかけてむぎたくさんなためにぽろぽろする飯をこぼし散らかすと、母は丹念にそれを拾って自分の口に入れた。母はいい母だがまったく教育がない。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
家内を見れば稿筵わらむしろのちぎれたるをしきならべ(いねむぎのできぬ所ゆゑわらにとぼしく、いづれのいへもふるきむしろ也)納戸なんど戸棚とだなもなし、たゞ菅縄すげなはにてつくりたるたなあるのみ也。
一度御相談してからと思っていますうちに、だんだんむぎも色づきだしましたし、麦刈むぎかりが近づくにつれ、しだいにむつかしくなりそうでしたので、大いそぎ私たちでとりきめました。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
花畠はなばたけむぎの畠、そらまめの花、田境たざかいはんの木をめる遠霞とおがすみ、村の小鮒こぶな逐廻おいまわしている溝川みぞかわ竹籬たけがき薮椿やぶつばきの落ちはららいでいる、小禽ことりのちらつく、何ということも無い田舎路ではあるが
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
夫婦に三人の子供あれば一日に少なくも白米一升五合より二升は入用なるゆえ、現に一月二、三斗の不足なれども、内職の所得しょとくを以てむぎを買いあわを買い、あるいかゆ或は団子だんご様々さまざま趣向しゅこうにてしょくす。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
むこうは、こちらからぶんどったむぎわら帽子ぼうしを持ってきました。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
長崎のむぎあきなるくもり日にわれひとりこそこころやすけれ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
むぎはたけのかなたに日はかくれ
むぎうへをばかぜく。
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
むぎきや臼の蔭で
おさんだいしよさま (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
野原のはらにははたけがありました。はないています。また、むぎがしげっています。そのほか、えんどうのはなや、いろいろのはないていました。
ちょうと怒濤 (新字新仮名) / 小川未明(著)
弾力性だんりょくせいのあるむぎワラの上なので、どっちもじゅうぶんに力がはいらず、目へチリをいれたり、ほこりをいこんで、むせたりしているうちに
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じれったそうに、あいだにつめたむぎわらをほうりだし、中のガラスびんをひとつずつ、だいじそうにとりだした。どのびんにも液体えきたい粉末ふんまつがつまっている。
むかし、むかし、あるいえのおくらの中に、おこめって、むぎって、あわって、まめって、たいそうゆたかにらしているおかねちのねずみがんでおりました。
ねずみの嫁入り (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ある避難の家族は、むぎがまずいと云うて、「贅沢な」と百姓から、頭ごなしに叱りつけられました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
丁度一学期がっき試験しけんんでその採点さいてんおわりあとは三十一日に成績せいせき発表はっぴょうして通信簿つうしんぼわたすだけ、わたくしのほうからえばまあそうです、農場のうじょう仕事しごとだってその日の午前でむぎ運搬うんぱんも終り
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
春陽の頃はつもりし雪もひるの内はやはらかなるゆゑ、夜な/\狐の徘徊はいくわいする所へむぎなど舂杵つくきねを雪中へさし入て二ツも三ツもきねだけのあなを作りおけば、夜に入りて此あなこほりて岩の穴のやうになるなり。
むぎ野草のぐさをふみて
むぎはたけを風がふく。
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
学校がっこう先生せんせいは、からすは害鳥がいちょうだ。まいたまめむぎをほじくりだしてべるから、はたけへきたら、っぱらえといったよ。」
高い木とからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
なにをつめてあるのか、中の物がこわれぬようにむぎわらをぎゅうぎゅうあいだにつめこんだかごが十二、三
一寸法師いっすんぼうしたいへんよろこんで、さっそくたび支度したくにかかりました。まずおかあさんにぬいばりを一ぽんいただいて、むぎわらでとさやをこしらえて、かたなにしてこしにさしました。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
其れにび出される様に、むぎがつい/\と伸びてに出る。子供がぴいーッと吹く麦笛むぎぶえに、武蔵野の日は永くなる。三寸になった玉川のあゆが、密漁者の手からそっと旦那の勝手に運ばれる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
むぎあお
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なかでは、かえるのこえゆめのようにきこえて、はたけはすっかりたがやされてしまい、むぎはぐんぐんびていました。
百姓の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いながら、おばあさんのきねをげて、むぎをつくふりをして、いきなりおばあさんの脳天のうてんからきねをろしますと、「きゃっ。」というもなく、おばあさんは目をまわして
かちかち山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「かわいい子供こどもが、あの黄色きいろくなりかけたむぎのはたけにいますので、わたしたちは、心配しんぱいで、どこへもいくことができないのですよ。」と、のひばりが、こたえました。
ひばりのおじさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
地震じしんのありました、すぐあとのことであります。まちには、こめや、まめや、むぎなどがなくなりました。それで、人々ひとびとは、あらそって、すこしでものこっているのをおうとしました。
ごみだらけの豆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おじいさん、これは、やはりむぎいたこなですよ。うちのせがれは、子供こども時分じぶんから、不思議ふしぎで、こうせんが大好だいすきだったから、こんなものをおくってよこしたのですよ。
片田舎にあった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みちりょうがわに、いえっていました。それらのなかには、店屋みせやがまじっていました。そして、ところどころあるあきはたけとなって、むぎや、ねぎが、青々あおあおとしげっていました。
かたい大きな手 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちょうど、おかしたは、むぎばたけでした。ふさふさしたが、かぜのために、波打なみうっていました。
戦争はぼくをおとなにした (新字新仮名) / 小川未明(著)
がくれかかると、のひばりは、むぎばたけのなかかえりました。そこには、かわいいひばりが、おかあさんや、おとうさんのかえるのをっていました。ひとりりのこされたかごのひばりは
ひばりのおじさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ここは、いいところだな。」と、良吉りょうきちは、おもいました。良吉りょうきちのほかにも、ごとにここでやすんで、いったひとがあったとみえて、タバコのばこや、やぶれたむぎわら帽子ぼうしなどが、ててありました。
隣村の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いまごろ、むぎ青々あおあおとしたはたけでは、ひばりがさえずっているだろう。
気にいらない鉛筆 (新字新仮名) / 小川未明(著)