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鬻
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ひさ
ふりがな文庫
“
鬻
(
ひさ
)” の例文
鰒
(
ふぐ
)
は多し、また
壮
(
さかん
)
に
膳
(
ぜん
)
に上す国で、魚市は言うにも及ばず、市内到る処の魚屋の店に、春となると、この
怪
(
あやし
)
い
魚
(
うお
)
を
鬻
(
ひさ
)
がない処はない。
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大津絵または
追分絵
(
おいわけえ
)
とは今の大津の町から大谷、追分にかけての街道で
鬻
(
ひさ
)
いだ所から来た名である。明らかに旅人の土産物であった。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
風琴
(
ふうきん
)
楽を和して
幽
(
ゆう
)
なる処のみ神の教会ならざるを知れり、孝子家計の貧を補わんがために寒夜に物を
鬻
(
ひさ
)
ぐ処これ神の教会ならずや
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
一定の居なく水草を逐うて
移徙
(
いし
)
し、男は狩猟を主として傍ら各種の遊芸に従事し、女は美粧して婬を
鬻
(
ひさ
)
ぐを業としていたらしい。
くぐつ名義考:古代社会組織の研究
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
これ一椀の
羹
(
あつもの
)
に、長子の権を
鬻
(
ひさ
)
ぐものなり。これ我種族伝来の最善なるものに不忠なることを示すものなり。これ単に欧洲教育の猿真似なり。
我が教育の欠陥
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
▼ もっと見る
系譜の載する所の始祖は又兵衞と稱した。相摸國三浦郡蘆名村に生れ、江戸に入つて品川町に居り、魚を
鬻
(
ひさ
)
ぐを業とした。
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
然しわたくしがわざわざ廻り道までして、この店をたずねるのは古本の
為
(
ため
)
ではなく、古本を
鬻
(
ひさ
)
ぐ亭主の人柄と、
廓外
(
くるわそと
)
の裏町という情味との為である。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
故
(
ゆゑ
)
に
曰
(
いは
)
く、
之
(
これ
)
と
大人
(
たいじん
)
を
論
(
ろん
)
ずれば
則
(
すなは
)
ち
以
(
もつ
)
て
己
(
おのれ
)
を
(七二)
間
(
かん
)
すとせられ、
之
(
これ
)
と
(七三)
細人
(
さいじん
)
を
論
(
ろん
)
ずれば
則
(
すなは
)
ち
以
(
もつ
)
て((己ノ))
權
(
けん
)
を
(七四)
鬻
(
ひさ
)
ぐとせられ
国訳史記列伝:03 老荘申韓列伝第三
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
本業は人を使つて山深く入つて
曲物
(
まげもの
)
(日光名物であるに拘らず、今はこれを
鬻
(
ひさ
)
いでゐることの少いのは遺憾だ)
華厳滝
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
我駒の行くところは、古かなもの、古畫を
鬻
(
ひさ
)
ぐ
露肆
(
ほしみせ
)
の間にて、目も當てられず
穢
(
けが
)
れたる
泥淖
(
ぬかるみ
)
の
裡
(
うち
)
にぞありける。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「素扇では売れませぬまま、人のすすめで、
里人
(
さとびと
)
のなぐさみばかりに、恥を
鬻
(
ひさ
)
いでいるだけでございまする」
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
此町の多く紳士貴婦人の
粧飾
(
そうしょく
)
品を
鬻
(
ひさ
)
げる事は
兼
(
かね
)
てより知る所なれど、心に思いを包みて見渡すときは又
一入
(
ひとしお
)
立派にして
孰
(
いず
)
れの窓に飾れる品も、実に
善
(
ぜん
)
尽
(
つく
)
し
美
(
び
)
尽
(
つく
)
し
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
松陰
惟
(
おもえ
)
らく、象山
畢竟
(
ひっきょう
)
洋学を
鬻
(
ひさ
)
いで、
自
(
みず
)
から給する売儒ならんと。
乃
(
すなわ
)
ち平服のままにて、その門に入る。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
ほかにも宋の朱泰貧乏で百里
薪
(
たきぎ
)
を
鬻
(
ひさ
)
ぎ母を養う、ある時虎来り泰を負うて去らんとす、泰声を
厲
(
はげま
)
して我は惜しむに足らず母を託する方なしと歎くと虎が放ち去った
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
原品は東海道
亀山
(
かめやま
)
お
化
(
ばけ
)
とて張子にて飛んだりと同様の製作にて、江戸黒船町辺にて
鬻
(
ひさ
)
ぎをりしを後
江戸の玩具
(新字旧仮名)
/
淡島寒月
(著)
四三
管仲
(
くわんちゆう
)
、
四四
九
(
ここの
)
たび諸侯をあはせて、身は
四五
倍臣
(
やつこ
)
ながら富貴は列国の君に
勝
(
まさ
)
れり。
四六
范蠡
(
はんれい
)
、
四七
子貢
(
しこう
)
、
四八
白圭
(
はつけい
)
が
徒
(
ともがら
)
、
四九
財
(
たから
)
を
鬻
(
ひさ
)
ぎ利を
逐
(
お
)
うて、
巨万
(
ここだく
)
の
金
(
こがね
)
を
畳
(
つ
)
みなす。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
我をして先づ想はしめよ、見せしめよ、聞かしめよ、
而
(
しか
)
して教へられしめよ、彼植木屋は何ぞ。彼はこれ一箇
市井
(
しせい
)
の
老爺
(
らうや
)
、木を作り、花を作り、以て
鬻
(
ひさ
)
いで生計を立つる者のみ。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
アオヤ 栽培する
蔬菜
(
そさい
)
にも青物という名を延長し、これを
鬻
(
ひさ
)
ぐ店を青物屋ということは、東日本一般の風であったが、東京などはいつの間にかこれをヤオヤというようになった。
食料名彙
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
貴縉
(
きけん
)
紳士、夫人令嬢老若童婢と、
雲霞
(
うんか
)
のごとく蝟集する中をよろめき歩く貸椅子屋の老婆、
行列
(
マルソウ
)
の
番附
(
プログラム
)
を触れ売りする若い衆、コンフェッチを
鬻
(
ひさ
)
ぐ娘など肩摩轂撃の大雑踏大混雑
ノンシャラン道中記:03 謝肉祭の支那服 ――地中海避寒地の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
五百人の
杣夫
(
そま
)
をはじめとし、それを監督する百五十人の武士、その連中に春を
鬻
(
ひさ
)
ぐ、三四十人の私娼の群、どこにいるとも解らないが、兇暴の強盗や殺人をする、数百人の
山窩
(
さんか
)
の団隊
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
張子の
虎
(
とら
)
や起きあがり法師を売っていたり、おこしやぶっ切り
飴
(
あめ
)
を
鬻
(
ひさ
)
いでいたりした。
蠑螺
(
さざえ
)
や
蛤
(
はまぐり
)
なども目についた。山門の上には
馬鹿囃
(
ばかばやし
)
の音が聞えて、境内にも雑多の店が居並んでいた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
鬻
(
ひさ
)
ぐ
駿河屋
(
するがや
)
三郎兵衞と云者ありしが
此方
(
こなた
)
は
新規
(
しんき
)
の
小見世
(
こみせ
)
と
云
(
いひ
)
向
(
むか
)
ふは所に久しき大店なれば
客足
(
きやくあし
)
も
自然
(
おのづから
)
向
(
むか
)
ふへのみ
行勝
(
ゆきがち
)
なれども加賀屋よりも
折
(
をり
)
にふれては
代呂物
(
しろもの
)
の
融通等
(
ゆうづうとう
)
もなし
出入邸
(
でいりやしき
)
の
商
(
あきな
)
ひを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
王は曾が平生爵位を売り、名を
鬻
(
ひさ
)
ぎ、法を
枉
(
ま
)
げ、権勢を以て人の財産を奪いなどして得た所の金銭は
幾何
(
いくばく
)
であるかということを詮議さした。そこで髯の長い人がそろばんを持って計算して言った。
続黄梁
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
市場に
鬻
(
ひさ
)
がれているものは千差万別で、同一の会社からも、低音、半音、高音、特大音、或はクロミウム針、竹針、等々が売り出されている有様だから、これでは迷わないわけに行かぬであろう。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
この頃はとんだ人間がはやるので、その一人は唐人お吉という淫売女、早く外国人に春を
鬻
(
ひさ
)
いだということが景物になっている。売淫が景物になるような人間は、あまり披露されては迷惑であります。
話に聞いた近藤勇
(新字新仮名)
/
三田村鳶魚
(著)
支那に路上春を
鬻
(
ひさ
)
ぐの
女
(
ぢよ
)
を
野雉
(
やち
)
と云ふ。
蓋
(
けだ
)
し徘徊
行人
(
かうじん
)
を
誘
(
いざな
)
ふ、
恰
(
あたか
)
も野雉の如くなるを云ふなり。邦語にこの輩を
夜鷹
(
よたか
)
と云ふ。
殆
(
ほとんど
)
同一
轍
(
てつ
)
に出づと云ふべし。野雉の語行はれて、
野雉車
(
やちしや
)
の語出づるに至る。
骨董羹:―寿陵余子の仮名のもとに筆を執れる戯文―
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
麹町の方まで歩いて、ある静かな町の角へ出ると、古い屋敷跡を改築したような
建築物
(
たてもの
)
がある。その建築物の往来に接した部分は幾棟かに仕切られて、雑貨を
鬻
(
ひさ
)
ぐ店がそこにある。角には酒屋もある。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
結局彼らは人形を舞わすとか、手品を使うとか、
婬
(
いん
)
を
鬻
(
ひさ
)
ぐとかいう様な、身分相当の方法によって、生活の資を求めねばならぬ。
特殊部落の成立沿革を略叙してその解放に及ぶ
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
今も北京の路上でわずか数銭を以て
鬻
(
ひさ
)
ぐあの簡素な磁州窯の美しい器を見よ。作家は省みて、心に動揺を覚えないであろうか。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
三味線
(
さみせん
)
弾きて折々わが
門
(
かど
)
に
来
(
きた
)
るもの、溝川に
鰌
(
どじょう
)
を捕うるもの、
附木
(
つけぎ
)
、草履など
鬻
(
ひさ
)
ぎに来るものだちは、皆この児どもが母なり、父なり、祖母などなり。
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
魚蝋
(
ぎよらふ
)
の烟を風のまにまに吹き
靡
(
なび
)
かせて、前に木机を据ゑ、そが上に
月桂
(
ラウレオ
)
の青枝もて編みたる籠に
貨物
(
しろもの
)
を載せたるを飾りたるは、肉
鬻
(
ひさ
)
ぐ男、
果
(
くだもの
)
賣る女などなり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
通円
(
つうえん
)
ヶ茶屋の軒には、上品な老人が茶の風呂釜をすえて、
床几
(
しょうぎ
)
へ立ち寄る旅人に、風流を
鬻
(
ひさ
)
いでいた。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
解決のしかたによっては、僕は家を売り蔵書を市に
鬻
(
ひさ
)
いで、路頭に彷徨する身となるかも知れない。
申訳
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼妾を得てなお足れりとせざるなり。ゆえに出でて娼家に遊ぶ。社会の人彼らのために、貧しき者その子女を
鬻
(
ひさ
)
ぎてもって娼となす。ゆえにすなわち社会に娼といえるものあり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
同時に写された書中其
発落
(
なりゆき
)
を詳にすべきものは、狩谷氏の本が市に
鬻
(
ひさ
)
がれ、渋江氏の本が海底に沈んだと云ふのみである。小島氏、森氏の本はどうなつたか、一も聞く所が無い。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
得
(
え
)
ず右の女と
夫婦
(
ふうふ
)
になり
小細工
(
こざいく
)
などして
暮
(
くら
)
せしに
生質
(
せいしつ
)
器用
(
きよう
)
にて學問も出來其上
醫道
(
いだう
)
の
心懸
(
こゝろがけ
)
も有りし
故
(
ゆゑ
)
森通仙
(
もりつうせん
)
と改名し
外科
(
げくわ
)
を
專
(
もつぱ
)
らとして
傍
(
かたは
)
ら賣藥を
鬻
(
ひさ
)
ぎ不自由もなく世を送りし中女子一人を
儲
(
まう
)
け名を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
店頭で
鬻
(
ひさ
)
ぐ品々を見ると、伝統的なものを除くすべての新しい品で、質の粗悪と工程の粗雑と、そうして美の低下とを示していないものはない。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
三味線
(
さみせん
)
弾
(
ひ
)
きて
折々
(
おりおり
)
わが
門
(
かど
)
に
来
(
きた
)
るもの、
溝川
(
みぞかわ
)
に
鰌
(
どじよう
)
を捕ふるもの、
附木
(
つけぎ
)
、
草履
(
ぞうり
)
など
鬻
(
ひさ
)
ぎに来るものだちは、皆この
児
(
こ
)
どもが母なり、父なり、祖母などなり。
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
耕作をせぬ女が生活して行く為には、自然と
婬
(
いん
)
を
鬻
(
ひさ
)
ぐことになるのは、やむをえなかった事でありましょう。
特殊部落の成立沿革を略叙してその解放に及ぶ
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
ここ三年が間は、往来の馬子に、自分らで作った馬沓を売り
鬻
(
ひさ
)
いで、細々ながら喰べていたが
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
難に遭へるものは號泣し、壯觀に驚ける
外國人
(
とつくにびと
)
は
讙呼
(
くわんこ
)
して、御者商人などは客を招き價を論ぜり。馬に跨れる人あり、車を驅れる人あり、燒酎
鬻
(
ひさ
)
ぐ
露肆
(
ほしみせ
)
を圍みて
喧譟
(
けんさう
)
せる農夫の群あり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
安政元年に竜池父子の贔屓にした八代目団十郎が自刃した。二年は地震の年である。江戸遊所の不景気は未曾有で、幇間は
露肆
(
ろし
)
に
天麩羅
(
てんぷら
)
を売り、町芸妓は
葭簀張
(
よしずばり
)
におでん
燗酒
(
かんざけ
)
を
鬻
(
ひさ
)
いだそうである。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
懸茶屋
(
かけぢゃや
)
には
絹被
(
きぬかつぎ
)
の芋
慈姑
(
くわい
)
の
串団子
(
くしだんご
)
を
陳
(
つら
)
ね
栄螺
(
さざえ
)
の壼焼などをも
鬻
(
ひさ
)
ぐ。
百眼売
(
ひゃくまなこうり
)
つけ
髭
(
ひげ
)
売
蝶〻
(
ちょうちょう
)
売
花簪
(
はなかんざし
)
売風船売などあるいは屋台を据ゑあるいは立ちながらに売る。花見の客の
雑沓狼藉
(
ざっとうろうぜき
)
は筆にも記しがたし。
向嶋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
つい先日までは鉄金具の引手で、ほとんど円形に近い
肉太
(
にくぶと
)
のものがありました。これらの棚や箪笥類を
鬻
(
ひさ
)
ぐのは
夷川
(
えびすがわ
)
で、全町家具の通りであります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
城下金沢より約三里、第一の
建場
(
たてば
)
にて、両側の茶店軒を並べ、
件
(
くだん
)
のあんころ餅を
鬻
(
ひさ
)
ぐ……伊勢に名高き、赤福餅、草津のおなじ
姥
(
うば
)
ヶ餅、相似たる
類
(
たぐい
)
のものなり。
一景話題
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
遊行女婦は生きんがために媚を呈し、婬を
鬻
(
ひさ
)
いだのであったが、しかもこれ「遊行」の文字の古く用いられた実例で、遊行上人の「遊行」もまたこの意味にほかならぬ。
俗法師考
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
遊廓
(
くるわ
)
の総門のすぐ外に、
編笠
(
あみがさ
)
茶屋というのがある。武蔵はそこを覗き、わらじはないかと訊ねたが、遊廓へ入る浮かれ男が、顔隠しの笠を求める店なので、元よりわらじを
鬻
(
ひさ
)
いでいるはずはない。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
今も田舎の
市日
(
いちび
)
に逢えば、蓑売が何枚かの品を
列
(
なら
)
べて
鬻
(
ひさ
)
ぐのを見かけることがある。昔は需要が多かったからこのために市日が立って
盛
(
さかん
)
であったようである。
蓑のこと
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
二時
(
やつ
)
さがりに
松葉
(
まつば
)
こぼれて、
夢
(
ゆめ
)
覺
(
さ
)
めて
蜻蛉
(
とんぼ
)
の
羽
(
はね
)
の
輝
(
かゞや
)
く
時
(
とき
)
、
心太
(
ところてん
)
賣
(
う
)
る
翁
(
おきな
)
の
聲
(
こゑ
)
は、
市
(
いち
)
に
名劍
(
めいけん
)
を
鬻
(
ひさ
)
ぐに
似
(
に
)
て、
打水
(
うちみづ
)
に
胡蝶
(
てふ/\
)
驚
(
おどろ
)
く。
行水
(
ぎやうずゐ
)
の
花
(
はな
)
の
夕顏
(
ゆふがほ
)
、
納涼臺
(
すゞみだい
)
、
縁臺
(
えんだい
)
の
月見草
(
つきみさう
)
。
五月より
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
またその婦女は、粉粧をこらして淫を
鬻
(
ひさ
)
ぐ。田も作らねば
蚕
(
かいこ
)
も飼わず、国司の支配をも受けず、少しの課役をも負担せぬという、至って気楽そうな生活をしていたとある。
賤民概説
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
鬻
漢検1級
部首:⿀
22画
“鬻”を含む語句
獯鬻
自鬻
衒鬻
鬻子
鬻拳