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餘念
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よねん
と
言葉やさしく
愛兒の
房々せる
頭髮に
玉のやうなる
頬をすり
寄せて、
餘念もなく
物語る、これが
夫人の
爲めには、
唯一の
慰であらう。
「おほせまでも
候はず、
江戸表にて
將軍御手飼の
鳥籠たりとも
此上に
何とか
仕らむ、
日本一にて
候。」と
餘念も
無き
體なり。
あるが
中にも
薄色綸子の
被布すがたを
小波の
池にうつして、
緋鯉に
餌をやる
弟君と
共に、
餘念もなく
麩をむしりて、
自然の
笑みに
睦ましき
咡きの
浦山しさ
白い
羽の
鷄が五六
羽、がり/\と
爪で
土を
掻つ
掃いては
嘴でそこを
啄いて
又がり/\と
土を
掻つ
掃いては
餘念もなく
夕方の
飼料を
求めつゝ
田圃から
林へ
還りつゝある。
懸用人無事に紀州表の
取調べ
行屆候樣
丹誠を
凝し晝は一間に
閉籠りて
佛菩薩を
祈念し別しては紀州の
豐川稻荷大明神を
遙拜し晝夜の
信心少しも
餘念なかりしに
斯る處へ伊豆守殿より
使者を
餘念もなく
戯れて
居るので、
私は
一人室内に
閉籠つて、
今朝大佐から
依頼された、
或航海學の
本の
飜譯にかゝつて
一日を
暮してしまつた。
床几の
下に
俵を
敷けるに、
犬の
子一匹、
其日の
朝より
目の
見ゆるものの
由、
漸と
食づきましたとて、
老年の
餘念もなげなり。
お
前は
思ひ
切りが
宜すぎるからいけない
兎も
角手紙をやつて
御覽、
源さんも
可愛さうだわなと
言ひながらお
力を
見れば
烟管掃除に
餘念のなきは
俯向たるまゝ
物いはず。
勘次は
疲れた
身體を
其の
日も
餘念なく
使役した。
其の
夜は三
人が
空を
戴いて
狹い
筵に
明すのには、
僅でも
其身體を
暖める
火は
消滅して
居たのである。三
人は
其夜南の
家に
導かれた。
春枝夫人もいと
晴々しき
顏色で、そよ/\と
吹く
南の
風に
鬢のほつれ
毛を
拂はせながら
餘念もなく
海上を
眺めて
居る。
氣分すぐれてよき
時は
三歳兒のやうに
父母の
膝に
眠るか、
白紙を
切つて
姉樣のお
製に
餘念なく、
物を
問へばにこ/\と
打笑みて
唯はい/\と
意味もなき
返事をする
温順しさも
彼は
次第に
懷の
工合が
善く
成り
掛けたので、
今では
其の
勢ひづいた
唐鍬の一
打は一
打と
自分の
蓄へを
積んで
行く
理由なので、
彼は
餘念もなく
極めて
愉快に
仕事に
從つて
居るやうに
成つたのである。
何お
峯が
來たかと
安兵衛が
起上れば、
女房は
内職の
仕立物に
餘念なかりし
手をやめて、まあ/\
是れは
珍らしいと
手を
取らぬばかりに
喜ばれ、
見れば六
疊一
間に一
間の
戸棚只一つ
孃さまがたは
庭に
出て
追羽子に
餘念なく、
小僧どのはまだお
使ひより
歸らず、お
針は二
階にてしかも
聾なれば
子細なし、
若旦那はと
見ればお
居間の
炬燵に
今ぞ
夢の
眞最中、
拜みまする
神さま
佛さま