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輿
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こし
ふりがな文庫
“
輿
(
こし
)” の例文
そこに待つこと三十分ばかり。その間に、
老中
(
ろうじゅう
)
初め諸大官が、あるいは徒歩、あるいは乗り物の
輿
(
こし
)
で、次第に城内へと集まって来た。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
何も下品に育つたからとて良人の持てぬ事はあるまい、
殊
(
こと
)
にお前のやうな
別品
(
べつぴん
)
さむではあり、一
足
(
そく
)
とびに
玉
(
たま
)
の
輿
(
こし
)
にも乗れさうなもの
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
坊門ノ宰相清忠は、そうそう下山して行ったが、途中の
輿
(
こし
)
のうちでも、
瘧病
(
おこり
)
に
罹
(
かか
)
ったような
気
(
け
)
だるい熱ッぽさを持ちつづけて帰った。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかしそれらの悪魔の中で、最も我々に興味のあるものは、なにがしの
姫君
(
ひめぎみ
)
の
輿
(
こし
)
の上に、あぐらをかいてゐたと云ふそれであらう。
悪魔
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「いや昔は三千の衆徒の上に立つ主でも今は罪人の私、
輿
(
こし
)
などはもったいない。たとえのぼるにしてもわらじばきで、貴方方と一緒に」
現代語訳 平家物語:02 第二巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
▼ もっと見る
秀吉は
輿
(
こし
)
に乗っていながら、「瀬兵衛骨折骨折」と云ったので中川は「あいつ、はや天下を取った気でいやがる」とつぶやいたと云う。
山崎合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
いつのまにか尾州様のけっこうな玉の
輿
(
こし
)
に乗って、あっしとらにゃめったに拝むこともならねえお手かけさまに出世していたんですよ。
右門捕物帖:16 七化け役者
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
象の背中には
欄干
(
てすり
)
の付いた
輿
(
こし
)
のようなものを乗せていた。輿の上には男と女が乗っていた。象のあとからも大勢の男や女がつづいて来た。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
駿河台の老婦人は、あわれ玉の
輿
(
こし
)
に乗らせたまうべき御身分なるに、
腕車
(
くるま
)
に一人
乗
(
のり
)
の
軽々
(
かろがろ
)
しさ、これを
節倹
(
しまつ
)
ゆえと思うは非なり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「それぢやお由良には玉の
輿
(
こし
)
だ。祝言前に評判を立てられるやうなお由良ぢやあるめえ。——こいつは變だよ、もう一度行つて見るがいゝ」
銭形平次捕物控:122 お由良の罪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
纏布
(
ターバン
)
を巻いた、頭でっかちで眼ばかり大きな王が
輿
(
こし
)
にのっているところや、狩猟の絵がある。余白に記録らしい文字があった。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
癩で眼がつぶれ、関ヶ原の戦では
輿
(
こし
)
に乗って指揮をしたという大谷刑部少輔吉継の子で、姉はモニカ真弓、弟はジェリコ菊丸。
呂宋の壺
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
親子で言いあらそいをしているうちに、
輿
(
こし
)
がもう門口へ来て、お供の侍女が群をしていた。そして十娘が来て、奥へ往って舅と姑に挨拶した。
青蛙神
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
土佐
(
とさ
)
へ
御流罪
(
ごるざい
)
の時などは、七条から
鳥羽
(
とば
)
までお
輿
(
こし
)
の通るお道筋には、
老若男女
(
ろうにゃくなんにょ
)
が
垣
(
かき
)
をつくって皆泣いてお見送りいたしたほどでございました。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
輿
(
こし
)
にかゝれておしろへはせつけられまして、「小島若狭守が
男
(
だん
)
新五郎十八歳因
二
病気
一
柳瀬表
江
出張せざる也、只今籠城いたし、全
二
忠孝
一
」
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
背には
印度
(
インド
)
式の
輿
(
こし
)
に唐人服の男が三人、警護の一隊も
更紗
(
さらさ
)
の唐人服で三、四十人、チャルメラを吹き立てて浅草から上野公園へのそりのそり。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
「貴女が
輿
(
こし
)
入れをしてまもなくでしたね」と平五が云った、「とにかくここよりほかに信用できるうちはないんですから」
末っ子
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それから間もなく一
挺
(
ちょう
)
の
輿
(
こし
)
が、
頑丈
(
がんじょう
)
な男に
担
(
かつ
)
がれながら、藪原長者の館を出た。深編笠の武士が、輿の後から悠々と、つき添いながら歩いて行く。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
宋公の妻の父の家が城内の西門の内にあったが、ある日宋公が国王の乗るような
輿
(
こし
)
に乗り、たくさんの
供
(
とも
)
を
伴
(
つ
)
れて入って来て
拝
(
おじぎ
)
をしていってしまった。
考城隍
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
私穢を
厭
(
いと
)
う当時の習慣のために、その病
革
(
あらた
)
まるに及び、来客の
輿
(
こし
)
を借りて、急にこれを近所の小庵に移したくらいであるから、まして梅枝のごときは
東山時代における一縉紳の生活
(新字新仮名)
/
原勝郎
(著)
煙のごとくかすむ花の
薄絹
(
うすぎぬ
)
を
透
(
とお
)
して人馬の行列が見える。にしきのみ旗、にしきのみ
輿
(
こし
)
! その前後をまもるよろい武者! さながらにしき絵のよう。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
路端
(
みちばた
)
の人はそれを何か不可思議のものでもあるかのように
目送
(
もくそう
)
した。松本は
白張
(
しらはり
)
の
提灯
(
ちょうちん
)
や
白木
(
しらき
)
の
輿
(
こし
)
が嫌だと云って、宵子の棺を喪車に入れたのである。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
また小さい美しい巴里女優ラ・カバネルが四人の黒ン坊の子供に担がせた近東風の
輿
(
こし
)
に乗って出るということ。
ドーヴィル物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
かねて
支度
(
したく
)
してあつたお
輿
(
こし
)
に
載
(
の
)
せようとなさると、
姫
(
ひめ
)
の
形
(
かたち
)
は
影
(
かげ
)
のように
消
(
き
)
えてしまひました。
帝
(
みかど
)
も
驚
(
おどろ
)
かれて
竹取物語
(旧字旧仮名)
/
和田万吉
(著)
それを聞いて家の子郎党達が馳せ集まったので、弟子達軍兵済々として前後をかこみ、その数一千人余り、各々涙を流し悲しみを含んで
輿
(
こし
)
を守護して行った。
法然行伝
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
女は白
頭巾
(
ずきん
)
に白の
上
(
うわ
)
っ
被
(
ぱ
)
りという姿である。遺骨の箱は小さな
輿
(
こし
)
にのせて二人でさげて行くのである。近頃の東京の葬礼自動車ほど悪趣味なものも少ないと思う。
札幌まで
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
宮の
輿
(
こし
)
に同乗しながら御息所は、父の大臣が未来の
后
(
きさき
)
に擬して東宮の後宮に備えた自分を、どんなにはなやかに取り扱ったことであったか、不幸な運命のはてに
源氏物語:10 榊
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
彼は始終昼ながら夢みつつ、今にも貴き人又は富める人又は名ある人の
己
(
おのれ
)
を
見出
(
みいだ
)
して、玉の
輿
(
こし
)
を
舁
(
かか
)
せて迎に
来
(
きた
)
るべき天縁の、必ず
廻到
(
めぐりいた
)
らんことを信じて疑はざりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
鉦、炬火、提灯、旗、それから兵隊帰りの
喪主
(
もしゅ
)
が羽織袴で位牌を
捧
(
ささ
)
げ、其後から棺を
蔵
(
おさ
)
めた
輿
(
こし
)
は八人で
舁
(
か
)
かれた。七さんは
着流
(
きなが
)
しに新しい駒下駄で肩を入れて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
雲井に近きあたりまで出入することの出来る立身出世——
玉
(
たま
)
の
輿
(
こし
)
の風潮にさそわれて、
家憲
(
かけん
)
厳しかった家までが、
下々
(
しもじも
)
では一種の
見得
(
みえ
)
のようにそうした家業柄の者を
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「だがねふみや、
仕合
(
しあわ
)
せなことに、お前を
貰
(
もら
)
ってくれるところがあるんだよ。そこは、うち見たいに貧乏でないし、しまいには
玉
(
たま
)
の
輿
(
こし
)
にさえ乗れるかも知れないんだよ」
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
天平の時には開眼師・菩提僧正以下、
講師
(
こうし
)
・
読師
(
どくし
)
が
輿
(
こし
)
に乗り
白蓋
(
びゃくがい
)
をさして入り来たり、「堂幄」に着すとある。また衆僧・沙弥南門より参入して「東西北幄」に着すとある。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
人並みの顔や姿でとんだ
自惚
(
うぬぼ
)
れでも持って、あの、口なくして玉の
輿
(
こし
)
なんて草双紙にでもあるようなことを考えてるなら、それこそ大間違い!
妾手掛
(
めかけてか
)
けなら知らないこと
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
しばしここ
放
(
ゆる
)
せよかしといへど、
猶
(
なほ
)
力にまかせて押しふせぬ。法海和尚の
輿
(
こし
)
やがて入り来る。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
これは「人生婦人の身と
為
(
な
)
る
勿
(
なか
)
れ、百年の苦楽他人に
頼
(
よ
)
る」とか、女は
氏
(
うじ
)
なくして玉の
輿
(
こし
)
とかいう如き、東洋流の運命観から出た、
弱竹
(
なよたけ
)
の弱々しい頼他的根性から来たのである。
夫婦共稼ぎと女子の学問
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
四
旒
(
りゅう
)
の
生絹
(
すずし
)
、供えものの
唐櫃
(
からびつ
)
、
呉床
(
あぐら
)
、
真榊
(
まさかき
)
、
根越
(
ねごし
)
の
榊
(
さかき
)
などがならび、萩乃とお蓮さまの
輿
(
こし
)
には、まわりに
簾
(
すだれ
)
を下げ、白い房をたらし、司馬家の
定紋
(
じょうもん
)
の、雪の輪に覗き蝶車の金具が
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
稲の穂が揺れ、村祭の太鼓の音が響いた。堤の
路
(
みち
)
を村の人達は夢中で
輿
(
こし
)
を
担
(
かつ
)
ぎ廻ったが、空腹の私達は茫然と見送るのであった。ある朝、舟入川口町の義兄が死んだと通知があった。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
それは、
島
(
しま
)
でたいした
評判
(
ひょうばん
)
でした。
娘
(
むすめ
)
さんが
美
(
うつく
)
しいので、
島
(
しま
)
の
王
(
おう
)
さまが、ある
日
(
ひ
)
金
(
きん
)
の
輿
(
こし
)
を
持
(
も
)
って
迎
(
むか
)
えにこられたけれど、
娘
(
むすめ
)
は
弟
(
おとうと
)
がかわいそうだといって、お
断
(
ことわ
)
りしてゆきませんでした。
港に着いた黒んぼ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
共にしたとはいうけれど、譬えば一家の
主僕
(
しゅうぼく
)
がその家を、
輿
(
こし
)
を、犬を、三
度
(
ど
)
の食事を、
鞭
(
むち
)
を共にしていると変った事はない。一人のためにはその家は
喜見城
(
きけんじょう
)
で、一人のためには
牢獄
(
ろうごく
)
だ。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
しかし新橋や柳橋に
左褄
(
ひだりづま
)
を取るものが、皆が皆まで玉の
輿
(
こし
)
に乗るものとは限らず、今は世のなかの秩序も
調
(
ととの
)
って来たので、二号として顕要の人に囲われるか、
料亭
(
りょうてい
)
や待合の、主婦として
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
花ならば蕾、月ならば新月、いづれ末は玉の
輿
(
こし
)
にも乘るべき人が、品もあらんに世を
外
(
よそ
)
なる尼法師に樣を變へたるは、慕ふ
夫
(
をつと
)
に別れてか、
情
(
つれ
)
なき人を思うてか、
何
(
ど
)
の
途
(
みち
)
、戀路ならんとの噂。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
家にいて邪魔をすると仇討ちに衣類を
噛
(
かじ
)
られると恐れる。嫁入りの日取りは所に依って同じからず。山西の
平遥
(
へいよう
)
県では十日に
輿
(
こし
)
入れあり。その晩は麺で作った餅を垣根に置いてお祝いをする。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
大通事は板縁の上、西に
跪
(
ひざまず
)
き、稽古通事ふたりは板縁の上、東に跪いた。縁から三尺ばかり離れた土間に
榻
(
こしかけ
)
を置いてシロオテの席となした。やがて、シロオテは獄中から
輿
(
こし
)
ではこばれて来た。
地球図
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そしてすては、都ではいま装束の流行はどうなっているか、高貴な女はみなやはり
輿
(
こし
)
に乗っているか、道化のしばいがあるか、男はみな太刀をはき、かんむりをかぶっているかなどと
訊
(
たず
)
ねた。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
その
度毎
(
たびごと
)
に、おせんの
首
(
くび
)
は
横
(
よこ
)
に
振
(
ふ
)
られて、あったら
玉
(
たま
)
の
輿
(
こし
)
に
乗
(
の
)
りそこねるかと
人々
(
ひとびと
)
を
惜
(
お
)
しがらせて
来
(
き
)
た
腑甲斐
(
ふがい
)
なさ、しかも
胸
(
むね
)
に
秘
(
ひ
)
めた
菊之丞
(
きくのじょう
)
への
切
(
せつ
)
なる
思
(
おも
)
いを、
知
(
し
)
る
人
(
ひと
)
とては
一人
(
ひとり
)
もなかった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
今は
外人
(
よそびと
)
の旅館となりて、凡そこゝに來らん程のもの一人としてこれに投ぜざるはなし。夫人をば
輿
(
こし
)
に載せて
舁
(
か
)
かせ、我等はこれに隨ひて深く
巖
(
いはほ
)
に
截
(
き
)
り込みたる
徑
(
こみち
)
を進みぬ。下には清き蒼海を
瞰
(
み
)
る。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
その
酷
(
むご
)
たらしい光景を額面の向って右の方から、黄金色の
輿
(
こし
)
に乗った貴族らしい夫婦が、美々しく装うた
眷族
(
けんぞく
)
や、臣下らしいものに取巻かれつつも
如何
(
いか
)
にも興味深そうに悠然と眺めているのであるが
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
友とわれ馬より行けば妻の
輿
(
こし
)
すこし遅れて柳より出づ
満蒙遊記:附 満蒙の歌
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
鶯や
御幸
(
みゆき
)
の
輿
(
こし
)
もゆるめけん
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
お
輿
(
こし
)
は竹馬。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
“輿”の解説
輿(こし)とは、人間を乗せ人力で持ち上げて移動するための乗用具。
(出典:Wikipedia)
輿
漢検準1級
部首:⾞
17画
“輿”を含む語句
神輿
輿丁
御輿
御神輿
権輿
乗輿
肩輿
輿入
板輿
御輿入
手輿
張輿
入輿
輿中
輦輿
輿側
陣輿
御輿舁
腰輿
瑶輿
...