翌年よくねん)” の例文
翌年よくねん、二ぐわつ初午はつうまことで、元二げんじばんおもむきへて、部屋へや一人ひとり火鉢ひばちひきつけながられいうた手本てほんに、うつくしいかなの手習てならひをしてた。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それからその翌年よくねん、いま一度人間の疱瘡ほうそうをうえました。が、少し水ぶくれのようなものができただけで、エドワードは天然痘にはかかりませんでした。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
普仏戦争ふふつせんそう——一八七〇ねんから翌年よくねんにかけて、プロシアをしゅとするきたドイツとフランスとのあいだにおこった戦争せんそう
おばあさんとツェッペリン (新字新仮名) / 小川未明(著)
万事傷心のたねならざるはなし。その翌年よくねん草の芽再び萌出もえいづる頃なるを、われも一夜いちや大久保を去りて築地つきじ独棲どくせいしければかの矢筈草もそののちはいかがなりけん。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ついで翌年よくねんには工學部大學校こうがくぶだいがつこう電氣學教授でんきがくきようじゆたりしグレー博士はかせ考案こうあん改良かいりようした上下動地震計じようげどうぢしんけいつくした。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
戰爭せんさうむと翌年よくねんからふたゝ輸入超過ゆにふてうくわへん經濟界けいざいかい状勢じやうせいは一ぺんしたるにかゝはらず戰後せんご數年すうねん今日こんにちおいてもさら改善かいぜん曙光しよくくわうみとむることをざる状態じやうたいにある。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
二十二でせがれの千きちみ、二十六でおせんをんだその翌年よくねん蔵前くらまえ質見世しちみせ伊勢新いせしん番頭ばんとうつとめていた亭主ていしゅ仲吉なかきちが、急病きゅうびょうくなった、こうから不幸ふこうへの逆落さかおとしに
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
清兵衛は一しょう懸命けんめいになって、朝月を養ったので、その翌年よくねんには見ちがえるような駿馬しゅんめになった。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
此石いづればその翌年よくねんにはかなら住職じゆうしよく病死びやうしする事むかしより今にいたりて一度もちがひたる事なし。
このつの毎年まいねんほゞきまつた時期じき一囘いつかいち、翌年よくねんまたえます。としるにしたがつて叉状またじようにわかれますが三本角さんぼんづの以上いじようにはなりません。また鹿しかはるあきとの二囘にかいをかへます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
左様さやうでございますか、わたしひさしい以前いぜん二のとりの時に一人ひとりつれがあつて丸屋まるやあがり、あなたが出てくだすつて親切にしてくだすつた、翌年よくねんのやはり二のとりの時にひさりで丸屋まるやあがると
それで、秋から翌年よくねんの春まで、龍睡丸は、東京の大川口につないでおくのだった。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
ところがその翌年よくねんから、この村に雨が一滴も降らなくなりました。もう川も谷も、水がれてしまつて、飲む水にも困るやうになりました。田や畑の作物はすつかりしなびて、枯れてしまひました。
馬鹿七 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
さて翌年よくねん正月元日しょうがつがんじつあさ、おきさきはいつものように御殿ごてんの中をあるきながら、おうまや戸口とぐちまでいらっしゃいますと、にわかにお産気さんけがついて、そこへ安々やすやすうつくしいおとこ御子みこをおみおとしになりました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
致し候に翌年よくねん三月安産あんざんせしが其夜の中に小兒せうに相果あひはて娘も血氣ちのけ上りて是も其夜のあかつきに死去致し候に付き近邊きんぺんの者共寄集よりあつまり相談するも遠國者ゑんごくもの菩提所ぼだいしよなく依て私しの寺へ頼みはうむり遣し候其後お三婆は狂氣きやうき致し若君樣わかぎみさま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
このはなしが、まったく、不思議ふしぎはなしとしてつたわりました。その翌年よくねんのこと、むらわる病気びょうき流行りゅうこうしました。
おばあさんと黒ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
翌年よくねんの春、ジェンナー夫婦ふうふは男の子をもうけ、エドワードと命名しました。そのときジェンナーはこの子が一定の年齢ねんれいに達したら、実験を試みようと決心しました。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
この稿料いかほどなりしか記憶せず。翌年よくねん秋帰国せし時『あめりか物語』は既にいちに出でゐたりき。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
此石いづればその翌年よくねんにはかなら住職じゆうしよく病死びやうしする事むかしより今にいたりて一度もちがひたる事なし。
翌年よくねん一月いちぐわつ親類見舞しんるゐみまひに、夫人ふじん上京じやうきやうする。ついでに、茅屋ばうをく立寄たちよるといふ音信たよりをうけた。ところで、いまさら狼狽らうばいしたのは、そのとき厚意こうい萬分まんぶんいちむくゆるのに手段しゆだんがなかつたためである。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
どんな山の中でもきます、わたし生国しやうこく越中ゑつちう富山とやまで、反魂丹売はんごんたんうりですから、荷物にもつ脊負せおつて、まだくすりひろまらない山の中ばかりつて歩くのです、さうしてまた翌年よくねんの山の中をつて歩くので
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
その翌年よくねんなつには、公報こうほうこそはいらなかったけれど、あに戦死せんしは、ほぼ確実かくじつなものとなりました。
たましいは生きている (新字新仮名) / 小川未明(著)
べき翌年よくねんの春の為めと歌つたのはれであつたか忘れてしまつたが、春はわが身に取つて異る秋に等しいと云つたのは、南国の人の常として殊更に秋を好むジヤン・モレアスである。
花より雨に (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
このやさしいにいさんは、その翌年よくねんはる疫痢えきりわずらって、わずか一にちんでしまったのでした。
ゆずの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
べき翌年よくねんの春の爲めと歌つたのはれであつたか忘れてしまつたが、春はわが身に取つて異る秋に等しいと云つたのは、南國の人の常として殊更に秋を好むジヤン・モレアスである。
花より雨に (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
友吉ともきちからは、そのなんの便たよりもなかったのです。やがて、翌年よくねんはるがめぐってきました。
僕が大きくなるまで (新字新仮名) / 小川未明(著)
われはついまだ白からず。しかも既にわれながら老いたりと感ずること昨日今日のことにはあらず。父をうしなひてその一週忌も過ぎける翌年よくねんの夏の初、突然烈しき痢病りびょうに冒され半月あまり枕につきぬ。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
はたけえた年郎としろうくんのいちじゅくは、日当ひあたりがよくまたかぜもよくとおったから、ぐんぐんとびてゆきました。翌年よくねんには、もうえだができて、おおきなが、うえくろかげをつくりました。
いちじゅくの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
翌年よくねんはるになると、このちいさな山吹やまぶきもとから、あたらしいやぶって、あたまばしました。しかも、二ほん、三ぼんといっしょに、そのは、気持きもちのいいほど、ぐんぐんとびたのであります。
親木と若木 (新字新仮名) / 小川未明(著)