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眠
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ね
ふりがな文庫
“
眠
(
ね
)” の例文
一種、眼の
眩
(
くら
)
みそうな
臭
(
におい
)
が室内に
漲
(
みなぎ
)
って、周蔵は起上って坐っていたが、私の入って来ると同時にまたごろりと
眠
(
ね
)
ころんでしまった。
黄色い晩
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
夫は二、三の紳士と寂しい玄関の一室に
眠
(
ね
)
ながら待っていた。その紳士の妻君達も彼女と同じように快楽に耽けっていたのである。
頸飾り
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
其の降る中をビショ/\
担
(
かつ
)
がれて
行
(
ゆ
)
くうち、新吉は看病疲れか、トロ/\眠気ざし、遂には
大鼾
(
おおいびき
)
になり、駕籠の中でグウ/\と
眠
(
ね
)
て居る。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
陽があがれば野原に出て男達は木の根を掘っくりかえし、女達は
土塊
(
つちくれ
)
を
打
(
ぶ
)
っ
砕
(
くだ
)
き、
陽
(
ひ
)
が沈めば小屋に帰って
眠
(
ね
)
るのだった。
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「眼をつぶってただけだよ、それもちょっとの間さ」——彼女は言う——「眠ってたなんて言えやしない。ほんとに
眠
(
ね
)
てたんじゃないんだから」
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
▼ もっと見る
暫くして、
眠
(
ね
)
つかれないままに、燭台へ灯をともすと、その時ひらひらと飛んで来て、
嘲
(
あざけ
)
るやうに灯をかすめたものがある。それも蛾であつた!
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
「ああ、美紅姫と一所にこの
家
(
うち
)
で
眠
(
ね
)
るのもこれがおしまいになるかもしれぬ。美紅はそれで泣いているのであろう。何という悲しい事であろう」
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
……
乳母
(
おんば
)
、
先
(
さき
)
へ
往
(
ゆ
)
きゃれ。
姫
(
ひめ
)
によう
傳
(
つた
)
へたもれ、
家内中
(
かないぢゅう
)
を
早
(
はや
)
う
就褥
(
ねか
)
しめさと
被言
(
おしゃ
)
れ、
歎
(
なげ
)
きに
疲
(
つか
)
れたれば
眠
(
ね
)
むるは
定
(
ぢゃう
)
ぢゃ。ロミオは
今直
(
いますぐ
)
參
(
まゐ
)
らるゝ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
実はな、みなの衆、この先生の今夜のお宿だがなあ、わしのところは、知つての通り、餓鬼が多くて、ゆつくり
眠
(
ね
)
てもらふ場所もないしなあ……。
椎茸と雄弁
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
和田は
酔眼
(
すいがん
)
を輝かせながら、声のない一座を見まわした。が、藤井はいつのまにか、
円卓
(
テエブル
)
に首を垂らしたなり、気楽そうにぐっすり
眠
(
ね
)
こんでいた。
一夕話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
じぶんが庄之助さんのところで酔いつぶれて
眠
(
ね
)
ているあいだにいなくなっていたといったので、若松屋惣七をはじめ、屋敷はさわぎになっていた。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
朱
(
しゆ
)
の色の
薔薇
(
ばら
)
の花、
羊
(
ひつじ
)
守
(
も
)
る
娘
(
こ
)
が、戀に惱んで
畠
(
はたけ
)
に
眠
(
ね
)
てゐる姿、
羊牧
(
ひつじかひ
)
はゆきずりに匂を吸ふ、
山羊
(
やぎ
)
はおまへに
觸
(
さは
)
つてゆく、
僞善
(
ぎぜん
)
の花よ、
無言
(
むごん
)
の花よ。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
マアよい事をしたと思つて、
子良
(
しりやう
)
は喜んで
家
(
うち
)
に帰り
誰
(
たれ
)
にも言はずにその日も暮れましたので、寝床に入つて
眠
(
ね
)
ました。
子良の昇天
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
明るくなったので
最
(
も
)
う
眠
(
ね
)
るでもないと床を離れて「それじゃア帰ろう」というと、まだ話が仕足りなさそうな容子で
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
病に疲れてものうく、
眠
(
ね
)
む
気
(
け
)
がさして、うっとりとして来るにつれて、その嫁入衣裳のキレは冷たい
真白
(
まっしろ
)
な雪に変る。すると
橇
(
そり
)
の鈴の音が聞えて来る。
少年・春
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
座敷には梅子が
新聞
(
しんぶん
)
を
膝
(
ひざ
)
の
上
(
うへ
)
へ
乗
(
の
)
せて、
込
(
こ
)
み入つた
庭
(
には
)
の
緑
(
みどり
)
をぼんやり眺めてゐた。是もぽかんと
眠
(
ね
)
むさうであつた。代助はいきなり
梅子
(
うめこ
)
の前へ
坐
(
すは
)
つた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「どうしたらいいだろう……マッチがない……下へ降りたっても店はもう仕舞っている……
燈
(
あか
)
りなしで寝床へもぐりこもうか……どうせ
眠
(
ね
)
られやしまい」
孤独
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
その晩、子供たちは
何時
(
いつ
)
までも
眠
(
ね
)
なかった。藤木さんがおひきすその、赤い胴ぬきの着物を着るのを見るまで——
旧聞日本橋:11 朝散太夫の末裔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
隣のおかみさんが一寸格子の外から覗いて「ほう、一生懸命に学問やね、皆さん畑か?——今日はお桐さんも静やね、楽やと見えて、
眠
(
ね
)
てござるのか。」
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
吉里は袖を顔に当てて
俯伏
(
つッぷ
)
し、
眠
(
ね
)
てるのか眠てないのか、声をかけても返辞をせぬところを見ると、眠てるのであろうと思ッて、善吉はじッと見下した。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
「私は起きませんが、番頭さんはお腹が惡いとかで一度起きたやうです、でも、私は一度目を覺したけれど、直ぐ
眠
(
ね
)
てしまつて、床へ戻つたのは知りません」
銭形平次捕物控:298 匕首の行方
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
秋の夜ごとにふけ行く
夜半過
(
やはんすぎ
)
わけて雨のやんだ後とて庭一面
蛼
(
こおろぎ
)
の声をかぎりと鳴きしきるのにわたしは
眠
(
ね
)
つかれぬままそれからそれといろいろの事を考えた。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
黒い支那服の山崎は、同様な支那服の中津と並んで、片隅の、
眠
(
ね
)
むげな軍曹の前の長い腰掛に腰かけていた。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
あふのけさまに畳の上へ倒れて、
暫時
(
しばらく
)
丑松は身動きもせずに考へて居たが、
軈
(
やが
)
て
疲労
(
つかれ
)
が出て
眠
(
ね
)
て
了
(
しま
)
つた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
久し振りで、のびのびと
眠
(
ね
)
るだけも眠てみたいなどとも感じて、行こうと思ったり、また思いなおしたりして、決定するまでにはずいぶん暇がかかったのである。
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
『
私
(
わたし
)
は
眠
(
ね
)
て
居
(
ゐ
)
たから
能
(
よ
)
く
分
(
わか
)
りませんが、』と言ひながら
外景
(
そと
)
を
見
(
み
)
ると
丘山樹林
(
きうざんじゆりん
)
の
容樣
(
かたち
)
が
正
(
まさ
)
にそれなので
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
「畜生、困った! どうしたって
眠
(
ね
)
れないや」と、身体をゴロゴロさせた。「駄目だ、伜が立って!」
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
さあ、ぐつすり
眠
(
ね
)
るとしよう。
耶蘇
(
イエスス
)
よ。
十字架
(
クルス
)
を
負
(
お
)
ふあの
白
(
しろ
)
い
幼児
(
をさなご
)
たちをも、
夜々
(
よるよる
)
眠
(
ね
)
むらし
給
(
たま
)
へ。われ
真
(
まこと
)
にかく
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る。あゝ
眠
(
ね
)
むくなつた。われ
真
(
まこと
)
にかく
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る。
浮浪学生の話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
答 私ハ二人ガ
眠
(
ね
)
テ居ルラシイ事ヲ室ノ外カラウカガッタ後、障子ヲソット開ケテ中ヘ入リマシタ。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
無心によく
眠
(
ね
)
入っていた中の君を思うと、胸が鳴って、なんという残酷なことをしようとする自分であろう、起こしていっしょに隠れようかともいったんは
躊躇
(
ちゅうちょ
)
したが
源氏物語:49 総角
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
毎晩
就蓐
(
しゅうじょく
)
前に、
眠
(
ね
)
つきをよくするために空家の中へはいって体操をしておられたということで、その晩も、九時頃、玄関の戸をあけてはいろうとすると、どうしたものか
予審調書
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
アハヽヽと笑へばお吉も笑ひながら、左様したらまた不潔〻〻と
厳敷
(
きびしく
)
御叱
(
おいぢ
)
めなさるか知れぬ、と互ひに二ツ三ツ
冗話
(
むだばな
)
し仕て後、お吉少しく改まり、清吉は
眠
(
ね
)
て居りまするか
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
私は再び
眠
(
ね
)
に就いたが、表の
怪立
(
けた
)
たましい物音に間もなく驚かされた。
破
(
わ
)
れるやうに戸が叩かれて女の悲鳴が耳を
擘
(
つんざ
)
かんばかりに響いた。母も祖母も飛び起きて
上
(
あが
)
り
框
(
がまち
)
へ出て
避病院
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
考え続けているうちに
疲労
(
つか
)
れてきて、その儘ごろりと横になった、血の着いたシーツを取り代えるのももう億劫だった、が、寝てみるとまた妙に頭が冴えて
眠
(
ね
)
つかれなかった。
黒猫十三
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
まづい食事がすむと、王様は
眠
(
ね
)
るより外には仕方がなかつた。王様は寝床にはいつた。寝床は粗末な拵へだつたが、
上布
(
シイツ
)
丈
(
だけ
)
は新しい、おろしたての雪のやうに真白な布だつた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
小笠原は顔を伏せてみたり
背
(
そむ
)
けたりしながら、
眠
(
ね
)
むたげな単調な語勢でそんなことをぶつぶつ喋っていたが、すると痴川もぼんやり俯向いて、わけもなく一々頷いたりしながら
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「や、ちょっと待て、一等の
船室
(
ケビン
)
を廻って見よう。みんなが
眠
(
ね
)
たかどうか見て来よう。」
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
郊外の小ぢんまりした
路角
(
みちかど
)
の家の茶の間で、赤ん坊はうつら/\
眠
(
ね
)
かゝつてゐる。二十一になる細君は、ソツと用心深く取上げて、静かな二階に眠かさうと、
階子段
(
はしごだん
)
を上つて行つた。
姉弟と新聞配達
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
『どちらへ! いけません、いけません!』と、
彼
(
かれ
)
は
呌
(
さけ
)
ぶ。『もう
眠
(
ね
)
る
時
(
とき
)
ですぞ!』
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
乃公が車の中を
彼方此方
(
あっちこっち
)
遊んで歩くものだから、お母さんは一日心配していた。それで日が暮れると直ぐに、乃公は
寝台
(
ねだい
)
へ押し込められてしまった。けれどもなかなか
眠
(
ね
)
られやしない。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
眠
(
ね
)
ること眠ること……が、もし
万一
(
ひょっと
)
此儘になったら……えい、
関
(
かま
)
うもんかい!
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
眠
(
ね
)
不足でフラフラしている彼を引張る様にして、自動車に乗り込んだのです。
とむらい機関車
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
氷が来た時分に、表から風の吹き通す茶の間の入口の、
簾屏風
(
すだれびょうぶ
)
の蔭に
眠
(
ね
)
ていた正雄も、やっと目を覚ましかけて来た。正雄はそのころ、叔父の知っている
八重洲河岸
(
やえすがし
)
の洋服屋へ行っていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
表通りを駈けて通る騒々しい
跫音
(
あしおと
)
が、近所の軒先に
佇
(
たたず
)
んだ人々の
眠
(
ね
)
むそうな、併しおどおどした話声に混って、まるで、北川氏自身には何の関係もない音楽か何ぞの様に響いて来るのだった。
恐ろしき錯誤
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
翁も
亦
(
ま
)
たねがへりの数に夢
幾度
(
いくたび
)
かとぎれけむ、むく/\と起きて我を呼び、これより談話俳道の事、戯曲の事に
闌
(
たけなは
)
にして、いつ
眠
(
ね
)
るべしとも知られず。われは
眠
(
ねむ
)
りの成らぬを水の
罪
(
とが
)
に帰して
三日幻境
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
が何がなしに嬉しかッたので
臥床
(
ふしど
)
へはいッてからも何となく
眠
(
ね
)
るのが
厭
(
いや
)
で、何となく待たるるものがあるような気がするので、そのくせその待たるるものはと
質
(
ただ
)
されるとなに、何もないので
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
平生さえ然うだったから、
況
(
いわん
)
や試験となると、
宛然
(
さながら
)
の
狂人
(
きちがい
)
になって、手拭を
捻
(
ねじ
)
って
向鉢巻
(
むこうはちまき
)
ばかりでは
間怠
(
まだる
)
ッこい、氷嚢を頭へ
載
(
のっ
)
けて、其上から
頬冠
(
ほおかむ
)
りをして、
夜
(
よ
)
の目も
眠
(
ね
)
ずに、例の
鵜呑
(
うのみ
)
をやる。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
軍艦
(
ぐんかん
)
「
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
」の
艦中
(
かんちう
)
には
一人
(
ひとり
)
も
眠
(
ね
)
むる
者
(
もの
)
は
無
(
な
)
かつた。
艦橋
(
かんけう
)
には
艦長松島海軍大佐
(
かんちやうまつしまかいぐんたいさ
)
をはじめとし、
一團
(
いちだん
)
の
將校
(
しやうかう
)
は
月
(
つき
)
に
燦爛
(
さんらん
)
たる
肩章
(
けんしやう
)
に
波
(
なみ
)
を
打
(
う
)
たせて、
隻手
(
せきし
)
に
握
(
にぎ
)
る
双眼鏡
(
さうがんきやう
)
は
絶
(
た
)
えず
海上
(
かいじやう
)
を
眺
(
なが
)
めて
居
(
を
)
る。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
私
(
わたし
)
ネ、篠田様のこと思ふと腹が立つ涙が出る、夜も
平穏
(
おつちり
)
と
眠
(
ね
)
られないんです、紀念式にも昨夜の演説会にも
彼
(
あ
)
の通り行らしつて、
平生
(
いつも
)
の通り
聴
(
きい
)
てらツしやるでせう、自分が
逐
(
お
)
ひ出されると
内定
(
きま
)
つて
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
『
母
(
かあ
)
さんは
昨夜
(
ゆふべ
)
よく
眠
(
ね
)
ないのでね、頭が痛いのよ。』
帰つてから
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
眠
常用漢字
中学
部首:⽬
10画
“眠”を含む語句
睡眠
居眠
催眠術
眠付
眠気
睡眠剤
眠氣
坐眠
催眠
催眠剤
眠込
眠足
春眠
不眠不休
間眠
仮眠
眠不足
眠入
惰眠
嗜眠
...