ひど)” の例文
うしてつてまゐります品物しなものらないと、ひどいんですぜ、そりや、んだり、つたり、ポカ/\でさ。我又不善擇人參可否われまたにんじんのかひをえらぶことをよくせず
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
寒気もひどかったし天気も悪かったろうが、福島近傍の大森から、政宗領のはずれ、叛乱地の境近くに至るまでに十日もかかって居る。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
公爵夫人こうしやくふじんそのだいせつうたも、えず赤子あかごひどゆすげたりゆすおろしたりしたものですから、可哀相かあいさうちひさなのがさけぶので
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
で何事に依らず氣疎けうとくなツて、頭髪かみも埃にまみれたまゝにそゝけ立ツて、一段とやつれひどく見える。そしてしきりと故郷を戀しがツてゐる。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
故アーネスト・ハートなどは、人と語る中ややもすれば句切り同然に放っていたが、それは廉将軍の三遺失に等しく、ひどれたのだ。
その中にいかりを上げ帆を捲いて船を出したが、進むに従って横波が船の腹をドサンドサンと打って動揺して、それが段々ひどくなった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
貧乏にひどく驚くと云うもんで……旦那様が妻恋坂下で三年あとに御切腹なすったと云うのだから、これが何うも驚きましたね、何うも
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
とそれをのぞきにかゝつた。その大学生は幼稚園このかたまだ褒美といふものを貰つた事が無かつたので、ひどくそれが珍しかつたのだ。
三千代の兄と云うのはむし豁達かったつな気性で、懸隔てのない交際振つきあいぶりから、友達にはひどく愛されていた。ことに代助はその親友であった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
勿論其の女は決して自分が殺したので無いとひどく言い張ったけれども何よりの証拠は左の手先の肉を、骨へまで死人に噛み取られて居て
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
従来これまでに無い難産なんざんで、産のが附いてから三日目みつかめ正午まひる、陰暦六月の暑い日盛ひざかりにひど逆児さかごで生れたのがあきらと云ふおそろしい重瞳ぢゆうどうの児であつた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
庄吉は見出さるる度毎にひどく苛められ乍ら、それが却って彼の立聞きの好奇心をあおった。彼の身体にはよく紫色に腫上った傷跡がついた。
少年の死 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
李生はうっかりするとひどい目に逢うから、ここが大切だと思った。そう思う心の下から、ある皮肉な考えがちらと浮んできた。
申陽洞記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
明治四十三年の九月に佃島に津波つなみが来た。京橋の築地河岸がし一体にまでその水は押上げたほどで、洲崎すざきや月島は被害がひどかった。
今時分、ベイツさんが呼ばれるといふのは、多分誰かゞひどく惡いのだと思ふとメァリー・アンが云つた。彼女は家に這入つた。
京都など特に神社仏閣の多い土地ではこの問題の影響を受けることが一層ひどかったのですが、神主側からいうと、非常に利益なことであって
飼馴かひならした籠の鳥でも逃げるかの樣に村中から惜まれて、自分でもひど殘惜のこりをしさうにして、二三日の中にフイと立つて了つた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
一つは男にひどく女の醜い所を見せまいという矯飾の心、後世の道徳家の言葉で申せば貞淑の心から書かなかったのでしょう。
産屋物語 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
まあ、そのへつぽこ役人といつたらさ ma chèreシェール(いとしいかた)、そりやあひど醜男ぶをとこなの! まるでかめのこが袋をかぶつたみたい……。
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
然しかねといふものは人の心を迷はすもので、智者の学者の豪傑のと、千万人にすぐれた立派な立派な男子さへ、財の為には随分ひどい事も為るのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
静枝は大詰の幕がおりない前に、後を晴代にまかせて、ていよく逃げたが、残された晴代は二人をくのにひどく骨が折れた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
旦那様はこまかい活版刷の紙をひろげて御覧なさる、皆さんが無遠慮な方ばかりです。「こりゃひどい、まるで読めない」と旦那様はその紙を投出しました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
育つにれて、丸々とふとって可愛らしかったのが、身長せいに幅を取られて、ヒョロ長くなり、かおひどくトギスになって、一寸ちょッと狐のような犬になって了った。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
と私は、見馴れて居るこの山の手の一角の場所の中に、何時もとはひどくも違つた何物かがあるやうに思つた。
秋の第一日 (新字旧仮名) / 窪田空穂(著)
不思議に継子さんのことがひどく不安になつて来ましたので、乗らうか乗るまいかと考へてゐるうちに、汽車はわたくしを置去おきざりにして出て行つてしまひました。
すくなくとも喋舌しやべらないことをもつひど自分じぶんらがるもの馬鹿者ばかもの骨頂こつちやうつてろしいして此種このしゆ馬鹿者ばかものいまにチヨイ/\見受みうけるママなさけない次第しだいである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
で、身體からだひどこゞえてしまつたので、詮方せんかたなく、夕方ゆふがたになるのをつて、こツそりと自分じぶんへやにはしのたものゝ、夜明よあけまで身動みうごきもせず、へや眞中まんなかつてゐた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
十七歳などといふ年ごろは、一と月も見ないでゐるとひどく變るものらしく、この人は鼻先が光るほど變つて見え、笑ひは顏ぢゆうに揉みくづれてゐてぽちやぽちやであつた。
巷の子 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
機会おりに依っては、何処かつんと思い揚って、取澄ましているかと思えば、またひどつつましやかで、愛想もそう悪くはなかったが、今夜は余程思い余ったことがあるらしく、心が悩めば悩むほど
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
明治座の舞台稽古は、衣裳やかつらの都合で、ひどく遅くなつたのです。私は其の間、早く稽古を済して、帰りたいと思つてゐました。それでやうやく稽古が済んだのは、もう五日の午前二時頃でした。
忘れ難きことども (新字旧仮名) / 松井須磨子(著)
誰が言うたか松島大佐も其れが為めにひどく感色を悪るくして居たと云ふのだから、——篠田も最早もはや教会を除名した上は、風評うはさも自然立ち消えになるであらうが、兎角とかく世間は五月蝿うるさいものだから
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
思わぬ大勢の来客に日出夫の父は仰天したがまたひどく喜びもした。
「丸石までひどい山道だで、旦那んような方じゃ俥んきませんわ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ひどい雨になつたなあ。」と異口同音に言つた。
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
御やすみになっているところを御起しして済みませんが、夜前やぜんからの雨があの通りひどくなりまして、たににわかふくれてまいりました。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
といふので、男が持前の自惚うぬぼれから、みんな自分がその忘れられない男にならうと、せつせと通つて来るので、ひどく全盛を極めたさうだ。
所々の水溜みずたまりでは、夫人おくさんの足がちらちら映る。真中まんなか泥濘ぬかるみひどいので、すその濡れるのは我慢しても、路傍みちばたの草をかねばならない。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「村の鎮守様だ、神様の手を切るとはひどいことをしたものだ、どんな祟りがあるかも知れん、叩き殺して神様にお詫びをする」
殺神記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
長「大層誉めました、此の位の名幅めいふくを所持している者は、此の国にゃア領主にも有るまいとの評判で、お客振りもひどく宜しゅうございました」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それはひどく雪の降った日のことであったという。座には早川千吉郎、益田なにがし、その他錚々そうそうの顔触れが居並いならんでいた。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
私がひどい目にはされたといふ譯ではございませんのよ。私、さかねぢをはせるやうに、いつも用意してをりましたの。
見𢌞して置いて、肩をゆすツて、「だが、此の位のことが解らんやうぢや、諸君の頭はノンセンスだ。」といふ。これがひどく學生等の疳癪かんしやくに觸ツた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あいちやんはじツかんがはじめました、『さて、わたしがそれをうちれてつてうしやう?』やがてまたひどうなつたので、あいちやんはおどろいて其顏そのかほ見入みいりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
白痴ながら住者はひどく喜んで室の一方の隅へ行き、何か拾って握って来て、お礼と云う見得で余に差し出した。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
この言葉は、ひどく甲田の心を害した。たとひ對手が何にしろ、旅をして困つてる者へ金を呉れるのが何が好事ものずきなものかと思つたが、たゞ苦笑ひをして見せた。
葉書 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
一日食卓から落ちた肉を犬が食うてひどく打たれたので、犬の王に愁訴する、王猫をして驢皮書を出さしむるに見えず。それより犬と猫、猫と鼷が不断仇視すると。
初はひど吃驚びっくりしたが、く研究して見ると、なに、父のいびきなので、やっと安心して、其儘再び眠ろうとしたが、さかんなゴウゴウスウスウが耳に附いて中々眠付ねつかれない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そうして、自分が遠からず、彼よりもひどく失脚するのは、ほとんど未発の事実の如く確だとあきらめていたから、彼は侮蔑ぶべつの眼をもって寺尾を迎える訳には行かなかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お徳はこう睨みつけられたとなると最早もう喧嘩けんかだ、何かひどい皮肉を言いたいがお清がそばに居るので辛棒していると十八九になる増屋の御用聞が木戸の方から入て来た。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
奈良や、京都などでは特にそれがひどかった中に、あの興福寺の塔などが二束三文で売り物に出たけれども、誰も買いがなかったというような滑稽こっけいな話がある位です。