殊勝しゆしよう)” の例文
殊勝しゆしようらしくきこえて如何いかゞですけれども、道中だうちうみややしろほこらのあるところへは、きつ持合もちあはせたくすりなかの、何種なにしゆのか、一包ひとつゝみづゝをそなへました。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
掛られけるとぞ此元は皆全く師の竹本政太夫のおかげなりとて猶更なほさら是をも大切にして兩人のはゝへ孝行をつくしけるこそ殊勝しゆしようなれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ゆふおはりての宵々よひ/\いゑいでては御寺參おんてらまい殊勝しゆしように、觀音くわんをんさまには合掌がつしようを申て、戀人こひびとのゆくすゑまもたまへと、おこゝろざしのほどいつまでもえねばいが。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ほそたけそでとほして、ちないやうに、扇骨木かなめえだけた手際てぎはが、如何いかにもをんな所作しよさらしく殊勝しゆしようおもはれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さりながら人気じんき奴隷どれいとなるも畢竟ひつきやう俗物ぞくぶつ済度さいどといふ殊勝しゆしようらしきおくがあればあなが無用むようばゝるにあらず、かへつ中々なか/\大事だいじけつして等閑なほざりにしがたし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
世を恨み義に勇みし源三位げんざんみ、數もなき白旗殊勝しゆしようにも宇治川の朝風あさかぜに飜へせしが、もろくも破れて空しく一族の血汐ちしほ平等院びやうどうゐん夏草なつくさに染めたりしは、諸國源氏が旗揚はたあげの先陣ならんとは
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
また松島海軍大佐まつしまかいぐんたいさ令妹れいまいなるかれ夫人ふじんにはまだ面會めんくわいはせぬが、兄君あにぎみ病床やまひ見舞みまはんがめに、暫時しばしでもその良君おつとわかれげ、いとけなたづさへて、浪風なみかぜあら萬里ばんりたびおもむくとは仲々なか/\殊勝しゆしようなる振舞ふるまひよと
保吉も前後にこの時だけは甚だ殊勝しゆしように返事をした。
あばばばば (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
看護婦が又殊勝しゆしような女で小さい聲で一度か二度呼ばれると快よい優しい「はい」と云ふ受け答へをして、すぐ起きた。さうして患者の爲に何かしてゐる樣子であつた。
変な音 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
決し在所ざいしよの永正寺と云尼寺あまでらへ入みどり黒髮くろかみそり念佛ねんぶつまい生涯しやうがいおくりし事こそ殊勝しゆしようなれされば長庵を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ばうやはいゝねんねしな。」……とくちうち子守唄こもりうたは、われながら殊勝しゆしようである。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何事なにごといでられんもるべからず、打明うちあけられしだけ殊勝しゆしようなり、よろつはゝむねにありまかせたまへとゆゑやみに、ある夕暮ゆふぐれ墓參ぼさんもどり、槖繩師うゑきやがりくるまをせて、りもせぬはちものゝ買上かひあ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
誰彼時たそがれどきまぎれて只〻一人、うかれ出でけるこそ殊勝しゆしようなれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
差掛さしかけさせくつしと/\と踏鳴ふみならし靜々とぞ歩行あゆみける附從つきしたがふ小姓こしやうの面々には麻上下あさがみしも股立もゝだちを取て左右を守護しゆごしける引續ひきつゞいて常樂院天忠和尚てんちうをしやうむらさきの衣に白地の袈裟けさを掛け殊勝しゆしようげに手に念珠ねんじゆ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
息子むすこせいぜんにして、鬼神きじん横道わうだうなしといへども、二合半こなからかたむけると殊勝しゆしようでなくる。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さればとて香爐峯かうろほうゆきみすをまくの才女さいぢよめきたるおこなひはいさゝかも深窓しんそうはるふかくこもりて針仕事はりしごと女性によしやう本分ほんぶんつく心懸こゝろがまこと殊勝しゆしようなりき、いへ孝順かうじゆんなるはいでかならず貞節ていせつなりとか
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
越中ゑつちうつく/″\いて、かけは弁慶べんけいともふべき人柄ひとがらなれどもこゝろだての殊勝しゆしようさは、喜撰法師きせんはふしにもおとるまじとめ、それよりみちづれして、野寺のでら観音堂くわんおんだうちかくなりて、座頭ざとうかたはらいしつまづきて
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
だい奉仕ほうしたゆみなく、一ちやうあまりなるいへより、ゆきにもあめにも朝夕てうせき機嫌きげんきゝおこたらぬこゝろ殊勝しゆしようなり、つまもたずやとすゝむるひとあれど、なんがことたまそれよりはぢやうさまのうへづかはしゝ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「それ、山伏やまぶしつぱ山伏やまぶしなり、なん殊勝しゆしようなか。」と威張ゐばつて、兜巾ときんかたむけ、いらたかの數珠じゆずみにんで、いのるほどに、いのるほどに、いのればいのるほど、おほききのこの、あれ/\おもひなしか
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
待合まちあひなんといふ家業かげふは、いやだといふ殊勝しゆしよう思慮かんがへ
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)