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橘
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たちばな
ふりがな文庫
“
橘
(
たちばな
)” の例文
また、ひとかごの
橘
(
たちばな
)
の実をひざにかかえ、しょんぼりと、市場の日陰にひさいでいる小娘もある。
下駄
(
げた
)
売り、
沓
(
くつ
)
直
(
なお
)
しの
父子
(
おやこ
)
も見える。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
抑
(
そもそ
)
も病人というものは初めには
柑子
(
こうじ
)
とか、
橘
(
たちばな
)
、
梨子
(
なし
)
、柿などの類を食べるけれども、後には僅にお粥をもって命をつなぐようになる。
法然行伝
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
雨夜
(
あまよ
)
の
橘
(
たちばな
)
の
其
(
それ
)
には
似
(
に
)
ないが、
弱
(
よわ
)
い、
細
(
ほつそ
)
りした、
花
(
はな
)
か、
空燻
(
そらだき
)
か、
何
(
なに
)
やら
薫
(
かをり
)
が、たよりなげに
屋根
(
やね
)
に
漾
(
たゞよ
)
うて、
何
(
ど
)
うやら
其
(
そ
)
の
人
(
ひと
)
は
女性
(
によしやう
)
らしい。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
雁
(
がん
)
の卵がほかからたくさん贈られてあったのを源氏は見て、
蜜柑
(
みかん
)
や
橘
(
たちばな
)
の実を贈り物にするようにして卵を
籠
(
かご
)
へ入れて
玉鬘
(
たまかずら
)
へ贈った。
源氏物語:31 真木柱
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
橘
(
たちばな
)
と
榊
(
さかき
)
の
植
(
うわ
)
った庭園の
白洲
(
しらす
)
を包んで、
篝火
(
かがりび
)
が赤々と燃え上ると、不弥の宮人たちは各々手に数枚の
柏
(
かしわ
)
の葉を持って白洲の中へ集って来た。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
▼ もっと見る
「嵯峨天皇弘仁年間山城の宇治に住んでいた僧だ。
橘
(
たちばな
)
奈良丸の子とも云われ紀ノ名虎の子とも云われ素性ははっきり解らない」
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その最中、八幡宮の一隅にある、
甲良大明神
(
こうらだいみょうじん
)
の前の
橘
(
たちばな
)
の木に
山鳩
(
やまばと
)
が三羽とんでくると、お互に食い殺し合って死んでしまった。
現代語訳 平家物語:01 第一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
学生2 (
慰
(
なぐさ
)
めるように)第一、
橘
(
たちばな
)
先生がいけないんだよ。……いくらなんでも葵祭の翌日に試験をするなんて、あんまり非常識すぎるよ。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
順も博学能文の人であったが、後に大江匡房が近世の才人を論じて、
橘
(
たちばな
)
ノ
在列
(
ありつら
)
は源ノ順に及ばず、順は以言と慶滋保胤とに及ばず、と断じた。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
しかし平安朝廷の食膳を記した『
厨事類記
(
ちゅうじるいき
)
』に獼猴桃を
橘
(
たちばな
)
や柿とともに時の美菓に数えたれば、その頃は殊に賞翫したのだ。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
美くしい
橘
(
たちばな
)
湾が目の下に見え、対岸の
西彼杵
(
にしそのき
)
、
北高来
(
きたたかぎ
)
の陸地を越した
向
(
むこ
)
うにはまた、湖水のように
入込
(
いりこ
)
んでいる大村湾が
瑠璃
(
るり
)
色をたたえている。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
一番これに近い例としては、神功紀・
住吉
(
すみのえ
)
神出現の段「
日向
(
ひむか
)
の国の
橘
(
たちばな
)
の
小門
(
おど
)
のみな底に居て、
水葉稚之出居
(
ミツハモワカ(?)ニイデヰル
)
神。名は
表筒男
(
うわつつのお
)
・中筒男・底筒男の神あり」
水の女
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
橘
(
たちばな
)
の花の匂の立ちだした或夜、だいぶ更けてからだったが、私は自分にいろいろの事を言ってよこされる頭の君を
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
わたくしは母とは知らずに仲間のものから
年増
(
としま
)
の
橘
(
たちばな
)
千代子さんという女の
噂
(
うわさ
)
を幾度も聞いたことさえありました。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
橘
(
たちばな
)
の三千代夫人という。死後に正一位大夫人をもらった。この才女が藤原
不比等
(
ふひと
)
に再嫁して生んだのが
安宿媛
(
アスカヒメ
)
。衣の外に光が発するほど美しい娘であった。
安吾史譚:02 道鏡童子
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
上から下方へ、また下から上方へ、絶えず
楕円形
(
だえんけい
)
を描きつつ
流転
(
るてん
)
しているわけだ。同様のことは小仏ながら、
橘
(
たちばな
)
夫人念持の白鳳仏にもうかがわれると思う。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
生梅や
橘
(
たちばな
)
の実を
捥
(
も
)
いで来て噛んだ。さみだれの季節になると子供は都会の中の丘と谷合にそれ等の実の在所をそれらを
啄
(
ついば
)
みに来る
烏
(
からす
)
のようによく知っていた。
鮨
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
五月雨頃
(
さみだれごろ
)
の、
仄暗
(
ほのぐら
)
く陰湿な
黄昏
(
たそがれ
)
などに、水辺に建てられた古館があり、
橘
(
たちばな
)
の花が
侘
(
わび
)
しげに咲いてるのである。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
唯円 (じっとしていられぬように庭をあるく)
橘
(
たちばな
)
様の
御殿医
(
ごてんい
)
のお
診察
(
みたて
)
も侍医のお
診察
(
みたて
)
も同じことなのだ。寿命のお尽きとあきらめられよとのお言葉なのだ。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
(御名は衣通の王と負はせる所以は、その御身の光衣より出づればなり。)次に
八瓜
(
やつり
)
の白日子の王、次に大
長谷
(
はつせ
)
の命、次に
橘
(
たちばな
)
の大郎女、次に
酒見
(
さかみ
)
の郎女九柱。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
内裏雛
(
だいりびな
)
、五人
囃
(
ばや
)
し、
左近
(
さこん
)
の桜、
右近
(
うこん
)
の
橘
(
たちばな
)
、
雪洞
(
ぼんぼり
)
、
屏風
(
びやうぶ
)
、
蒔絵
(
まきゑ
)
の道具、——もう一度この土蔵の中にさう云ふ物を飾つて見たい、——と申すのが心願でございました。
雛
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
南京にいるわが駆逐艦は名も勇ましい『
旗風
(
はたかぜ
)
』だ。艦長は
橘
(
たちばな
)
少佐、
播州
(
ばんしゅう
)
赤穂
(
あこう
)
に生まれた快男児である。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
翌年の夏の新守座出演は、水死した先代
橘
(
たちばな
)
の
圓
(
まどか
)
が助演で、滋味ある「天災」や「三味線栗毛」の話風は、豊麗な六歌仙の踊りとともに、悠久に私の目を耳を離れまい。
わが寄席青春録
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
三樹八郎は金を
納
(
しま
)
って立上った。ひどい貧乏の中にたった一組だけ残った
内裏雛
(
だいりびな
)
と、
橘
(
たちばな
)
、桜、
雪洞
(
ぼんぼり
)
が二つという、
淋
(
さび
)
しい雛壇に燈を入れる、——昔を思うと夢のようだ。
武道宵節句
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
涼やかな
軟風
(
なんぷう
)
にさざなみを立てている
不忍池畔
(
しのばずちはん
)
の池添い道を、鉄色無地の
羽二重
(
はぶたえ
)
の着流し姿に、
橘
(
たちばな
)
の加賀紋をつけた黒い短か羽織茶色の帯に、
蝋塗
(
ろうぬり
)
細身の大小の落し差し
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
これが
左近
(
さこん
)
の桜、
右近
(
うこん
)
の
橘
(
たちばな
)
と、見て行くに従って、そこに、樟脳の匂いと一緒に、何とも古めかしく、物懐しい気持が漂って、昔物のきめの
濃
(
こま
)
やかな人形の肌が、いつとなく
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
かの京都の
紫宸殿
(
ししんでん
)
前の
右近
(
うこん
)
の
橘
(
たちばな
)
が
畢竟
(
ひっきょう
)
この類にほかならない。そしてこんな下等な一小ミカンが前記歴史上のタチバナと同じものであるとする所説は、まったく
噴飯
(
ふんぱん
)
ものである。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
今日行われている
名頭
(
ながしら
)
というもの、すなわち人の通称の吉というのは
橘
(
たちばな
)
氏であります。
名字の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そうでもしないと、お客様の手前を
誤魔化
(
ごまか
)
し切れないワ、
一寸
(
ちょっと
)
の間だけ、久美子に繋ぎを頼んでは来たけれど——え、帝都劇場の
橘
(
たちばな
)
久美子よ——あの人はドジだから心配よ、ね、ね
踊る美人像
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
退いてその私を省みれば、なるほど自由主義は自由主義に相違なかるべしといえどもわが邦一種特別の自由主義にして、いわゆる江南の
橘
(
たちばな
)
もこれを江北に移せば
枳
(
からたち
)
となるがごとく
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
誰があんな美しさを辞退することが出来よう、花もそうであるし、こがねいろをしている
橘
(
たちばな
)
の実もそうであった。きしむような白い菜の幅の広い茎は妻のただむきのように美しかった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
江南の
橘
(
たちばな
)
も江北に植えると
枳殻
(
からたち
)
となるという話は古くよりあるが、これは無論の事で、同じ蜜柑の類でも、日本の蜜柑は酸味が多いが、支那の南方の蜜柑は甘味が多いというほどの差がある。
くだもの
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
金坊のお父さんは、講中の世話役だから
橘
(
たちばな
)
のもようのお揃いの
浴衣
(
ゆかた
)
を着て、
茶博多
(
ちゃはかた
)
の帯をしめて、お
尻
(
しり
)
をはしょって、白足袋の足袋はだしで、吉原かむりにして襟に講中の
団扇
(
うちわ
)
をさしていた。
旧聞日本橋:05 大丸呉服店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
庭の
隅
(
すみ
)
の
橘
(
たちばな
)
の花に、
蜂
(
はち
)
が音を立てて来てゐるしづかなひるのことでした。
鳥右ヱ門諸国をめぐる
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
こないだ雑誌で読んだ西洋の婦人みたいにどこか戦争のある
処
(
ところ
)
へ行つて
怪我人
(
けがにん
)
の看病がして
遣度
(
やりた
)
いですわ、さうでなければ、ソラ日本の歴史にある
橘
(
たちばな
)
姫みた様にお国に大切な人の身代りになり
度
(
たい
)
の。
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
藏
(
か
)
くし
孃
(
じよう
)
さまにも
嘸
(
さ
)
ぞお
喜
(
よろこ
)
び
我身
(
わがみ
)
とても
其通
(
そのとほ
)
りなり
御返事
(
おへんじ
)
屹度
(
きつと
)
まちますと
云
(
い
)
えば
點頭
(
うなづき
)
ながら
立出
(
たちいづ
)
る
廻
(
まは
)
り
椽
(
ゑん
)
のきばの
橘
(
たちばな
)
そでに
薫
(
かを
)
りて
何時
(
いつし
)
か
月
(
つき
)
に
中垣
(
なかがき
)
のほとり
吹
(
ふき
)
のぼる
若竹
(
わかたけ
)
の
葉風
(
はかぜ
)
さら/\として
初
(
はつ
)
ほとゝぎす
待
(
まつ
)
べき
夜
(
よ
)
なりとやを
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
橘
(
たちばな
)
の香をなつかしみほとゝぎす
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
見せむと
思
(
も
)
ひし宿の
橘
(
たちばな
)
。
浮標
(新字旧仮名)
/
三好十郎
(著)
流れも寄るか
橘
(
たちばな
)
の
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
庭の
橘
(
たちばな
)
未刊童謡
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
「禅師様にも、松平
元康
(
もとやす
)
どのにも、またその他の方々も、はや
橘
(
たちばな
)
の
坪
(
つぼ
)
におそろいで、お館のお出ましをお待ちかねでございますが」
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私と
袖
(
そで
)
を合わせて立った、
橘
(
たちばな
)
八郎が、ついその番傘の下になる……
蜆
(
しじみ
)
の
剥身
(
むきみ
)
の
茹
(
ゆだ
)
ったのを笊に盛って
踞
(
つくば
)
っている
親仁
(
おやじ
)
に言った。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
うずめられている
橘
(
たちばな
)
の木の雪を随身に払わせた時、横の松の木がうらやましそうに自力で起き上がって、さっと雪をこぼした。
源氏物語:06 末摘花
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
と、その時平等院の東北の
橘
(
たちばな
)
の小島が崎から武者二騎が激しく蹄の音を鳴らし、川を目指してまっしぐらに駆けよって来た。梶原と佐々木の二騎である。
現代語訳 平家物語:09 第九巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
姫にとっては、肉縁はないが、
曾祖母
(
ひおおば
)
にも当る
橘
(
たちばな
)
夫人の法華経、又其
御胎
(
おはら
)
にいらせられる——筋から申せば、大叔母御にもお当り遊ばす、今の皇太后様の
楽毅論
(
がっきろん
)
。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
小西行長は糸車か四目結——黒田が
藤巴
(
ふじともえ
)
で、島津は十文字、井伊が
橘
(
たちばな
)
で、毛利が三星一文字、細川の九曜——西軍の総帥格宇喜多中納言と、裏切者の小早川秀秋は
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
薄い
赤銅
(
しゃくどう
)
の延板を使って、どちらにも無雑作に
井桁
(
いげた
)
に
橘
(
たちばな
)
の紋が、
敲
(
たた
)
き出しで浮かしになっている。
長屋天一坊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼方此方
(
かなたこなた
)
に響く
鑿金槌
(
のみかなづち
)
の音につれて新しい材木の
脂
(
やに
)
の
匂
(
におい
)
が鋭く人の鼻をつく中をば、引越の荷車は
幾輛
(
いくりょう
)
となく
三升
(
みます
)
や
橘
(
たちばな
)
や
銀杏
(
いちょう
)
の葉などの
紋所
(
もんどころ
)
をつけた
葛籠
(
つづら
)
を運んで来る。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
この人達は私に畑中の巨大な百二十畳敷けるという
鬼岩
(
おにいわ
)
を見せた上、小浜街道から自動車に乗せ、この人のために
千々岩
(
ちぢわ
)
灘に
橘
(
たちばな
)
湾の名を与えた
湾頭
(
わんとう
)
の橘中佐の銅像を見せ
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
さっきの
橘
(
たちばな
)
の花の匂はそちらから頭の君が
簾
(
みす
)
の近くまで持ち込んで来たのにちがいなかった。
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
“橘(タチバナ)”の解説
タチバナ(橘、学名:Citrus tachibana)は、ミカン科ミカン属の常緑小高木で柑橘類の一種である。別名はヤマトタチバナ、ニッポンタチバナ。
(出典:Wikipedia)
橘
漢検準1級
部首:⽊
16画
“橘”を含む語句
橘樹郡
花橘
弟橘媛
橘千蔭
橘守部
橘内
橘柚
橘井堂
家橘
柑橘
橘南谿
橘屋
橘諸兄
橘之助
柑橘類
橘曙覧
源平藤橘
御前橘
橘飩
橘寺
...