“橘:たちばな” の例文
“橘:たちばな”を含む作品の著者(上位)作品数
紫式部10
泉鏡花9
吉川英治7
中里介山3
幸田露伴2
“橘:たちばな”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 芸術・美術 > 芸術史 美術史60.0%
歴史 > 日本史 > 日本史2.3%
文学 > 日本文学 > 戯曲2.0%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
うずめられているたちばなの木の雪を随身に払わせた時、横の松の木がうらやましそうに自力で起き上がって、さっと雪をこぼした。
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)
二十日月が上って、大きい木の多い庭がいっそう暗いかげがちになって、軒に近いたちばなの木がなつかしい香を送る。
源氏物語:11 花散里 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「嵯峨天皇弘仁年間山城の宇治に住んでいた僧だ。たちばな奈良丸の子とも云われ紀ノ名虎の子とも云われ素性ははっきり解らない」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
蜜柑というよりは、平安朝貴族の珍重した“非時香果ひじのかぐのこのみ”とか“たちばな”と呼ぶ名の方がふさわしい。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女は、中宮ちゅうぐう仕えの少弁しょうべんつぼねといい、伊賀の権守ごんのかみたちばな成忠なりただの娘だった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
誰があんな美しさを辞退することが出来よう、花もそうであるし、こがねいろをしているたちばなの実もそうであった。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
わたくしは母とは知らずに仲間のものから年増としまたちばな千代子さんという女のうわさを幾度も聞いたことさえありました。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
お美津の両手も、鶴の白羽の狩衣に、玉を揃えて、前髪摺れにいていた、かんざしたちばな薫りもする。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
南京にいるわが駆逐艦は名も勇ましい『旗風はたかぜ』だ。艦長はたちばな少佐、播州ばんしゅう赤穂あこうに生まれた快男児である。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
次に八瓜やつりの白日子の王、次に大長谷はつせの命、次にたちばなの大郎女、次に酒見さかみの郎女九柱。
それを山門まで見送って後。妙達はふと、礼に貰った笄に気づいた。布目象嵌ぬのめぞうがんの部分に金で“たちばな”の紋が入れてある。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし馬車でのりつけたのは、昨夜ゆうべ伊予紋へ、少将の夫人の使つかいをした、たちばなという女教師と、一名の医学士であった。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし平安朝廷の食膳を記した『厨事類記ちゅうじるいき』に獼猴桃をたちばなや柿とともに時の美菓に数えたれば、その頃は殊に賞翫したのだ。
わけて、この春頃から、もう十度にもわたるたちばなの坪の会議には、病中でも、欠席したことがなかった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さっきのたちばなの花の匂はそちらから頭の君がみすの近くまで持ち込んで来たのにちがいなかった。
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
涙ぐんでいるのであった。そこに置かれてあった箱のふたに、菓子とたちばなの実を混ぜて盛ってあった中の、橘を源氏は手にもてあそびながら、
源氏物語:24 胡蝶 (新字新仮名) / 紫式部(著)
かの京都の紫宸殿ししんでん前の右近うこんたちばな畢竟ひっきょうこの類にほかならない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
とて、開いた扇子に手をいた。ほこりさっと、名家の紋のたちばなの左右に散った。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
学生2 (なぐさめるように)第一、たちばな先生がいけないんだよ。……いくらなんでも葵祭の翌日に試験をするなんて、あんまり非常識すぎるよ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
時親を、大江氏で呼ぶのは、たとえば、正成を楠木正成といわずに、たちばなノ正成とよぶようなものである。大江は族姓で、毛利時親という方が正しい。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「禅師様にも、松平元康もとやすどのにも、またその他の方々も、はやたちばなつぼにおそろいで、お館のお出ましをお待ちかねでございますが」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たちばなの木が月の光のもとにあざやかに立ってかおりも風に付いておりおりはいってきた。
源氏物語:42 まぼろし (新字新仮名) / 紫式部(著)
順も博学能文の人であったが、後に大江匡房が近世の才人を論じて、たちばな在列ありつらは源ノ順に及ばず、順は以言と慶滋保胤とに及ばず、と断じた。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
五月雨頃さみだれごろの、仄暗ほのぐらく陰湿な黄昏たそがれなどに、水辺に建てられた古館があり、たちばなの花がわびしげに咲いてるのである。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
覚束おぼつかない行燈の光の中に、象牙のしやくをかまへた男雛をびなを、冠の瓔珞やうらくを垂れた女雛めびなを、右近のたちばなを、左近の桜を
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
が、右手めてに捧げたたちばなに見入るのであろう、さみしく目を閉じていたと云う。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
庭のすみたちばなの花に、はちが音を立てて来てゐるしづかなひるのことでした。
鳥右ヱ門諸国をめぐる (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
そもそも病人というものは初めには柑子こうじとか、たちばな梨子なし、柿などの類を食べるけれども、後には僅にお粥をもって命をつなぐようになる。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あの方のために自分はこうした漂泊さすらいの身になった、たちばなの小嶋の色に寄せて変わらぬ恋を告げられたのをなぜうれしく思ったのかと疑われてならない。
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
また従来の家紋は、たちばなであったが、それもえて、藤巴ふじどもえとした。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さりとてここの展望にもまた特色があっていい、美くしいたちばな湾が目の下に見え、対岸の西彼杵にしそのき北高来きたたかぎの陸地を越したむこうにはまた
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
これは、その簪のたちばなしべに抱きました、真珠の威勢かにも申しますな。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
がんの卵がほかからたくさん贈られてあったのを源氏は見て、蜜柑みかんたちばなの実を贈り物にするようにして卵をかごへ入れて玉鬘たまかずらへ贈った。
源氏物語:31 真木柱 (新字新仮名) / 紫式部(著)
共に艶色絶世で、今出川北御門のかつらたちばなよともたたえられていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たちばなとはまた違った感じのする花の香に心がかれて、車から少し顔を出すようにしてながめると、長く枝をたれた柳も、土塀どべいのない自由さに乱れ合っていた。
源氏物語:15 蓬生 (新字新仮名) / 紫式部(著)
同様のことは小仏ながら、たちばな夫人念持の白鳳仏にもうかがわれると思う。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
翌年の夏の新守座出演は、水死した先代たちばなまどかが助演で、滋味ある「天災」や「三味線栗毛」の話風は、豊麗な六歌仙の踊りとともに、悠久に私の目を耳を離れまい。
わが寄席青春録 (新字新仮名) / 正岡容(著)
私とそでを合わせて立った、たちばな八郎が、ついその番傘の下になる……しじみ剥身むきみゆだったのを笊に盛ってつくばっている親仁おやじに言った。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何でもいいじゃないの。一番初め、偽名した時はたちばなだったわね。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
かやや、勝栗かちぐり蜜柑みかん柑子こうじたちばな
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「白と淺黄あさぎの染分けで、眞ん中にたちばなの模樣があります」
涼やかな軟風なんぷうにさざなみを立てている不忍池畔しのばずちはんの池添い道を、鉄色無地の羽二重はぶたえの着流し姿に、たちばなの加賀紋をつけた黒い短か羽織茶色の帯に
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
たちばなさかきうわった庭園の白洲しらすを包んで、篝火かがりびが赤々と燃え上ると、不弥の宮人たちは各々手に数枚のかしわの葉を持って白洲の中へ集って来た。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
唯円 (じっとしていられぬように庭をあるく)たちばな様の御殿医ごてんいのお診察みたても侍医のお診察みたても同じことなのだ。寿命のお尽きとあきらめられよとのお言葉なのだ。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
郭公ほととぎす君につてなん古さとの花たちばなは今盛りぞと
源氏物語:42 まぼろし (新字新仮名) / 紫式部(著)
姫にとっては、肉縁はないが、曾祖母ひおおばにも当るたちばな夫人の法華経、又其御胎おはらにいらせられる——筋から申せば、大叔母御にもお当り遊ばす、今の皇太后様の楽毅論がっきろん
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
そうでもしないと、お客様の手前を誤魔化ごまかし切れないワ、一寸ちょっとの間だけ、久美子に繋ぎを頼んでは来たけれど——え、帝都劇場のたちばな久美子よ——あの人はドジだから心配よ、ね
踊る美人像 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
月が変わって、今日は宇治へ行ってみようと薫の思う日の夕方の気持ちはまた寂しく、たちばなの香もいろいろな連想れんそうを起こさせてなつかしい時に、杜鵑ほととぎすが二声ほど鳴いて通った。
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
たちばな南谿なんけい東遊記とうゆうきに、
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はじめのほどはたちばなも何かうれしかった。
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
たちばなも恋のうれひも散りかへばをなつ
源氏物語:11 花散里 (新字新仮名) / 紫式部(著)
江南のたちばなも江北に植えると枳殻からたちとなるという話は古くよりあるが、これは無論の事で、同じ蜜柑の類でも、日本の蜜柑は酸味が多いが、支那の南方の蜜柑は甘味が多いというほどの差がある。
くだもの (新字新仮名) / 正岡子規(著)
古くから文武の士の間には、源平藤橘げんぺいとうきつの四姓があるが、源氏も平氏も藤原氏もたちばな氏も、みなその用と功によって、朝廷から命ぜられたもので、何も、末代まで四姓に限る必要はない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生梅やたちばなの実をいで来て噛んだ。
(新字新仮名) / 岡本かの子(著)
目で聞くごとくぱっちりと、その黒目勝なのをみはったお妙は、鶯の声を見る時と同一おんなじな可愛い顔で、路地に立ってみまわしながら、たちばなに井げたの紋、堀の内講中こうじゅうのお札を並べた
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まず大御所の金扇馬標から始めて、石田三成の大吉大一大万の旗を作り、次に福島正則が白地に紺の山道、小西行長は糸車か四目結——黒田が藤巴ふじともえで、島津は十文字、井伊がたちばなで、毛利が三星一文字
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「これがたちばなの小嶋でございます」
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
たちばなの香をなつかしみほとゝぎす
流れも寄るかたちばな
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
金坊のお父さんは、講中の世話役だからたちばなのもようのお揃いの浴衣ゆかたを着て、茶博多ちゃはかたの帯をしめて、おしりをはしょって、白足袋の足袋はだしで、吉原かむりにして襟に講中の団扇うちわをさしていた。
舊い頃ではたちばな南谿なんけいと共に可成り足跡そくせきが廣く、且又同じく紀行(漫遊文草)を遺した澤元愷たくげんがいが、この中岩を稱して、その上で酒など飮んでゐる事がその文によつて記臆に存してゐたからである。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
内裏雛だいりびな、五人ばやし、左近さこんの桜、右近うこんたちばな雪洞ぼんぼり屏風びやうぶ蒔絵まきゑの道具、——もう一度この土蔵の中にさう云ふ物を飾つて見たい、——と申すのが心願でございました。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
この人達は私に畑中の巨大な百二十畳敷けるという鬼岩おにいわを見せた上、小浜街道から自動車に乗せ、この人のために千々岩ちぢわ灘にたちばな湾の名を与えた湾頭わんとうの橘中佐の銅像を見せ、美しい千々岩の松原を見せた。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
庭の たちばな
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
春章がしばらくの図はたちばなもん染抜きたる花道の揚幕あげまくうしろにしてだいなる素袍すおうの両袖さなが蝙蝠こうもりつばさひろげたるが如き『しばらく』を真正面よりえがきしものにて
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さうネ、こないだ雑誌で読んだ西洋の婦人みたいにどこか戦争のあるところへ行つて怪我人けがにんの看病がして遣度やりたいですわ、さうでなければ、ソラ日本の歴史にあるたちばな姫みた様にお国に大切な人の身代りになりたいの。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
一番これに近い例としては、神功紀・住吉すみのえ神出現の段「日向ひむかの国のたちばな小門おどのみな底に居て、水葉稚之出居ミツハモワカ(?)ニイデヰル神。名は表筒男うわつつのお・中筒男・底筒男の神あり」というのがある。
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
なるほど自由主義は自由主義に相違なかるべしといえどもわが邦一種特別の自由主義にして、いわゆる江南のたちばなもこれを江北に移せばからたちとなるがごとく、アングロサクソンの自由主義もこれをわが邦に移せばおのずからその性質を一変し
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
たちばな夫人念持仏の厨子ずしを中心にして、左側に百済観音、右側に天平てんぴょう聖観音しょうかんのんが佇立していたが、それを比べるともなく比べてながめながら、しかし結局私は百済観音ただ一茫然ぼうぜんとしていたようである。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
四月の末になり、たちばなの花の匂の立ちだした或夜、だいぶ更けてからだったが、私は自分にいろいろの事を言ってよこされる頭の君を、不本意ながら撫子をそのうちお許しすると御約束した以上はそう素気すげなくばかりも出来ないので、ともかくもお通しさせる事にした。
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
青地の高麗錦こまにしきふちを取った敷き物の中央にもすわらずに琵琶びわを抱いて、きれいに持ったばちさきいとの上に置いているのは、音を聞く以上に美しい感じの受けられることであって、五月さつきたちばなの花も実もついた折り枝が思われた。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
五郎 (脈を見てゐた手で美緒の頬を叩くやうな事をしながら、緊張しきつた顔で、わめく様な声を出す)美緒つ! 馬鹿野郎! 眠つちやいかん! 眠るなと言つたら! 反歌! いゝかつ! 十五もちくだち清き月夜つくよに吾妹子に、見せむとひし宿のたちばな
浮標 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
イザナギの命は黄泉よみの國からお還りになつて、「わたしは隨分いやきたない國に行つたことだつた。わたしはみそぎをしようと思う」と仰せられて、筑紫つくし日向ひむかたちばな小門おどのアハギはらにおいでになつてみそぎをなさいました。
はツと驚いて我ながら、自分のはだに手を触れて、心臓むねをしつかとおさへた折から、芬々ぷんぷんとしてにおつたのは、たちばな音信おとずれか、あらず、仏壇のこう名残なごりか、あらず、ともすれば風につれて、随所、紙谷町を渡り来る一種の薬のにおいであつた。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
上州高崎松平家か、その系統を引くこの地の領主大多喜おおたきの松平家ならば島原扇かたちばな、そうでなければ、俗に高崎扇という三ツ扇の紋所であるべきはずのを、いま、遠眼鏡にうつる旗印を見ると、それとは似ても似つかぬ、丸に——黒立波くろたてなみの紋らしいから、合点がゆかないのです。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)