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ひなた
ふりがな文庫
“
日南
(
ひなた
)” の例文
向って
日南
(
ひなた
)
の、
背後
(
うしろ
)
は水で、思いがけず一本の
菖蒲
(
あやめ
)
が町に咲いた、と見た。……その美しい
女
(
ひと
)
の影は、分れた背中にひやひやと
染
(
し
)
む。……
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
春さきになると、まず壺すみれが
日南
(
ひなた
)
に咲いた。それからクローバー、
車前草
(
おおばこ
)
、
藜
(
あかざ
)
などがほしいままに繁った。
吾亦紅
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
ガラツ八の八五郎が、鼻の頭から襟へかけての汗を、肩に掛けた手拭の端つこで拭きながら、
枝折戸
(
しをりど
)
を足で開けて、ノツソリと
日南
(
ひなた
)
に立ちはだかるのでした。
銭形平次捕物控:251 槍と焔
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
只
(
たゞ
)
蒿雀
(
あをじ
)
は
冬
(
ふゆ
)
も
春
(
はる
)
も
辨
(
わきま
)
へぬやうに、
暖
(
あたゝ
)
かい
日南
(
ひなた
)
から
隱氣
(
いんき
)
な
竹
(
たけ
)
の
林
(
はやし
)
を
求
(
もと
)
めて
低
(
ひく
)
い
小枝
(
こえだ
)
を
渡
(
わた
)
つて
下手
(
へた
)
な
鳴
(
な
)
きやうをして、さうして
猶且
(
やつぱり
)
日南
(
ひなた
)
へ
出
(
で
)
て
土
(
つち
)
をぴよん/\と
跳
(
は
)
ねた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
武蔵野や多摩のみなかみ、
御嶽道
(
みたけみち
)
払沢
(
ほつさは
)
の口、春浅き
日南
(
ひなた
)
のそとに、餅搗くや爺は杵とり、臼のべや婆は手に捏ね、ぽたらことのどに
対
(
むか
)
ひゐ、ぽたらこよゆるにとめぐる。
篁
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
▼ もっと見る
寡婦は陰になり
日南
(
ひなた
)
になりしてその子を暖き懐に抱きよせようとしておる。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
時々縁側の
日南
(
ひなた
)
に坐りながら、ぼんやりお島の働きぶりを眺めていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ゆをびぬる
日南
(
ひなた
)
のかをり
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
日南
(
ひなた
)
ぼつこで居るわいな
やきもの読本
(旧字旧仮名)
/
小野賢一郎
(著)
日南
(
ひなた
)
ぼつこして
雨情民謡百篇
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
……
掬
(
すく
)
い残りの
小
(
ちゃっ
)
こい
鰯子
(
いわしこ
)
が、チ、チ、チ、(笑う。)……青い
鰭
(
ひれ
)
の行列で、
巌竃
(
いわかまど
)
の
簀
(
す
)
の中を、きらきらきらきら、
日南
(
ひなた
)
ぼっこ。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「恐ろしい効能書だぜ、——あとはどうだ。
日南
(
ひなた
)
ぼっこをしながら、美人の品定めを聴くのも悪くないな」
銭形平次捕物控:242 腰抜け彌八
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
武蔵野や多摩のみなかみ、
御嶽道
(
みたけみち
)
払沢
(
ほつさわ
)
の口、春浅き
日南
(
ひなた
)
のそとに、餅搗くや爺は杵とり、臼のべや婆は手に捏ね、ぽたらことのどに
対
(
むか
)
ひぬ、ぽたらこよゆるにとめぐる。
海阪
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
恁
(
か
)
うして
居
(
ゐ
)
る
間
(
あひだ
)
に
春
(
はる
)
の
彼岸
(
ひがん
)
が
來
(
き
)
て
日南
(
ひなた
)
の
垣根
(
かきね
)
には
耳菜草
(
みゝなぐさ
)
や
其
(
その
)
他
(
た
)
の
雜草
(
ざつさう
)
が
勢
(
いきほひ
)
よく
出
(
で
)
だして
桑畑
(
くはばたけ
)
の
畦間
(
うねま
)
には
冬
(
ふゆ
)
を
越
(
こ
)
した
薺
(
なづな
)
が
線香
(
せんかう
)
の
樣
(
やう
)
な
薹
(
たう
)
を
擡
(
もた
)
げて、
其
(
そ
)
の
先
(
さき
)
に
粉米
(
こごめ
)
に
似
(
に
)
た
花
(
はな
)
を
聚
(
あつ
)
めた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
寂寞
(
じやくまく
)
の胸の
日南
(
ひなた
)
を
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
日南
(
ひなた
)
ぽつこ
十五夜お月さん
(旧字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
けれども、さして心を
傷
(
いた
)
めた趣のあるにもあらず、
茅花
(
つばな
)
々々
土筆
(
つくつくし
)
、摘草に
草臥
(
くたび
)
れて、
日南
(
ひなた
)
に憩っているものと、
大
(
おおい
)
なる違はない。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
平次は晩秋の薄陽を浴びて、縁側に
日南
(
ひなた
)
ぼっこをしながら、八五郎の話を背中に聴いているのでした。
銭形平次捕物控:242 腰抜け彌八
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
で、お宗旨
違
(
ちがい
)
の神社の境内、額の古びた木の鳥居の
傍
(
かたわら
)
に、裕福な
仕舞家
(
しもたや
)
の土蔵の羽目板を
背後
(
うしろ
)
にして、秋の
祭礼
(
まつり
)
に、
日南
(
ひなた
)
に店を出している。
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
平次は縁側の
日南
(
ひなた
)
で、鼠の
尻尾
(
しっぽ
)
のような、世にも情けない、懸崖の菊の鉢の世話をして居りました。
銭形平次捕物控:239 群盗
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
いま畚を引上げた、水の音はまだ響くのに、翁は、太郎虫、米搗虫の
靄
(
もや
)
のあなたに、影になって、のびあがると、
日南
(
ひなた
)
の
背
(
せな
)
も、もう見えぬ。
小春の狐
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
娘はヒラリと身を
飜
(
ひるがへ
)
すと、生垣の蔭に隱れてしまつたのです。チヽと鳴き乍ら春の
日南
(
ひなた
)
に群れ立つ小鳥、八五郎は五六歩追ひすがりましたが、娘の姿はもう何處にも見えません。
銭形平次捕物控:284 白梅の精
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
桜にはちと早い、
木瓜
(
ぼけ
)
か、何やら、枝ながら障子に映る花の影に、ほんのりと
日南
(
ひなた
)
の
薫
(
かおり
)
が添って、お千がもとの座に着いた。
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、かく
菌
(
きのこ
)
を
嗜
(
たしな
)
むせいだろうと人は言った、まだ杢若に不思議なのは、
日南
(
ひなた
)
では、影形が薄ぼやけて、陰では、汚れたどろどろの
衣
(
きもの
)
の
縞目
(
しまめ
)
も
判明
(
はっきり
)
する。
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
日南
(
ひなた
)
に霜が散ったように、鬢にちらちらと
白毛
(
しらが
)
が見える。その時、赤蜻蛉の色の
真紅
(
まっか
)
なのが忘れたようにスッと下りて、尾花の
下
(
もと
)
に、杭の
尖
(
さき
)
に
留
(
とま
)
った。
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
こうした場所と、身の上では、夜中よりも人目に立たない、
静
(
しずか
)
な
日南
(
ひなた
)
の隙を計って、
岐路
(
えだみち
)
をあれからすぐ、桂谷へ行くと、
浄行寺
(
じょうぎょうじ
)
と云う門徒宗が男の寺。
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
やがて、水の
流
(
ながれ
)
を前にして、
眩
(
まばゆ
)
い
日南
(
ひなた
)
の糸桜に、
燦々
(
さんさん
)
と雪の咲いた、
暖簾
(
のれん
)
の
藍
(
あい
)
もぱっと
明
(
あかる
)
い、桜湯の前へ立った。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その
笑
(
わらい
)
が、
日南
(
ひなた
)
に居て、蜘蛛の巣の影になるから、鳥が
嘴
(
くちばし
)
を開けたか、猫が
欠伸
(
あくび
)
をしたように、人間離れをして、笑の意味をなさないで、ぱくりとなる……
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
既に、草刈り、
柴
(
しば
)
刈りの女なら知らぬこと、髪、
化粧
(
けわい
)
し、
色香
(
いろか
)
、
容
(
かたち
)
づくった町の女が、
御堂
(
みどう
)
、拝殿とも言わず、この
階
(
きざはし
)
に
端近
(
はしぢか
)
く、
小春
(
こはる
)
の
日南
(
ひなた
)
でもある事か。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ことに生垣を
覗
(
のぞ
)
かるる、
日南
(
ひなた
)
の
臥竜
(
がりゅう
)
の南枝にかけて、良き墨薫る手習草紙は、
九度山
(
くどさん
)
の
真田
(
さなだ
)
が
庵
(
いおり
)
に、
緋縅
(
ひおどし
)
を見るより由緒ありげで、奥床しく、しおらしい。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
小春の雲の、あの
青鳶
(
あおとび
)
も、この人のために
方角
(
むき
)
を替えよ。姿も
風采
(
なり
)
も鶴に似て、
清楚
(
せいそ
)
と、端正を兼備えた。襟の
浅葱
(
あさぎ
)
と、薄紅梅。
瞼
(
まぶた
)
もほんのりと
日南
(
ひなた
)
の面影。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
昼の時は、まだ私という
少年
(
こども
)
も、その
生命
(
いのち
)
も
日南
(
ひなた
)
で、暑さに苦しい中に、陽気も元気もありました。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、蔵前の煙突も、十二階も、
睫毛
(
まつげ
)
に
一眸
(
ひとめ
)
の北の
方
(
かた
)
、目の下、
一雪崩
(
ひとなだれ
)
に
崕
(
がけ
)
になって、崕下の、ごみごみした屋根を隔てて、
日南
(
ひなた
)
の煎餅屋の小さな店が、油障子も覗かれる。
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さるも
老木
(
おいき
)
の春寒しとや、枝も幹もただ
日南
(
ひなた
)
に向いて、戸の外にばかり茂りたれば、広からざる小路の中を横ぎりて、枝さきは伸びて、やがて
対向
(
むかい
)
なる、二階家の窓に
達
(
とど
)
かんとす。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
浅間
(
せんげん
)
の
社
(
やしろ
)
で、
釜
(
かま
)
で甘酒を売る茶店へ休んだ時、鳩と
一所
(
いっしょ
)
に
日南
(
ひなた
)
ぼっこをする婆さんに、
阿部川
(
あべかわ
)
の
川原
(
かわら
)
で、桜の頃は土地の人が、毛氈に
重詰
(
じゅうづめ
)
もので、花の
酒宴
(
さかもり
)
をする、と言うのを聞いた。
雛がたり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
筧
(
かけひ
)
の
水
(
みづ
)
を
受
(
う
)
くるとて、
嫁菜
(
よめな
)
の
莖
(
くき
)
一
(
ひと
)
つ
摘
(
つ
)
みつゝ、
優
(
やさ
)
しき
人
(
ひと
)
の
心
(
こゝろ
)
かな、
何
(
なん
)
のすさみにもあらで、
其
(
そ
)
の
盥
(
たらひ
)
にさしけるが、
引
(
ひき
)
とき
衣
(
ぎぬ
)
の
藍
(
あゐ
)
に
榮
(
は
)
えて、
嫁菜
(
よめな
)
の
淺葱色
(
あさぎいろ
)
冴
(
さ
)
えしを、
菜畠
(
なばたけ
)
の
日南
(
ひなた
)
に
憩
(
いこ
)
ひて
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
何しろその体裁ですから、すなおな髪を
引詰
(
ひッつ
)
めて
櫛巻
(
くしまき
)
でいましたが、生際が薄青いくらい、襟脚が透通って、
日南
(
ひなた
)
では消えそうに、おくれ毛ばかり
艶々
(
つやつや
)
として、涙でしょう、濡れている。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
朝夕の風、
日南
(
ひなた
)
の
香
(
か
)
、雨、露、霜も、
一斉
(
いつとき
)
に貨物車に積込むのださうである。
玉川の草
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
これが
植込
(
うゑこみ
)
を
遙
(
はる
)
かに
透
(
すか
)
し、
門
(
もん
)
の
外
(
そと
)
からあからさまに
見
(
み
)
えた、と
見
(
み
)
る
間
(
ま
)
もなく、
件
(
くだん
)
の
美少年
(
びせうねん
)
の
姿
(
すがた
)
は、
大
(
おほき
)
な
蝶
(
てふ
)
の
影
(
かげ
)
を
日南
(
ひなた
)
に
殘
(
のこ
)
して、
飜然
(
ひらり
)
と——
二階
(
にかい
)
ではないが——
窓
(
まど
)
の
高
(
たか
)
い
室
(
しつ
)
へ
入
(
はひ
)
つた。
再
(
ふたゝ
)
び
説
(
と
)
く。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
そんな脂切ったのがあるかと思うと、
病上
(
やみあが
)
りの
蒼
(
あお
)
っしょびれが、
頬辺
(
ほっぺた
)
を
凹
(
くぼ
)
まして、インバネスの下から信玄袋をぶら下げて、ごほごほ
咳
(
せき
)
をしながら、
日南
(
ひなた
)
を
摺足
(
すりあし
)
で
歩行
(
ある
)
いて行く。弟子廻りさ。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
足の運びにつれて目に映じて心に
往来
(
ゆきき
)
するものは、土橋でなく、
流
(
ながれ
)
でなく、遠方の森でなく、工場の煙突でなく、
路傍
(
みちばた
)
の
藪
(
やぶ
)
でなく、寺の屋根でもなく、影でなく、
日南
(
ひなた
)
でなく、土の
凸凹
(
でこぼこ
)
でもなく
政談十二社
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
芬
(
ぷん
)
とえた村へ入ったような
臭
(
におい
)
がする、その
爺
(
じい
)
、余り
日南
(
ひなた
)
ぼッこを仕過ぎて
逆上
(
のぼ
)
せたと思われる、大きな
真鍮
(
しんちゅう
)
の
耳掻
(
みみかき
)
を持って、片手で鼻に杖をついたなり、馬面を据えておいて、耳の穴を掻きはじめた。
政談十二社
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と男衆は、
雪駄
(
せった
)
ちゃらちゃら、で、
日南
(
ひなた
)
の横顔、小首を
捻
(
ひね
)
って
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
日南
(
ひなた
)
に
蒸
(
いき
)
れる酢の
臭
(
におい
)
に、葉も花片も
萎
(
な
)
えんとす。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
日南
(
ひなた
)
の
虹
(
にじ
)
の姫たちである。
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
日
常用漢字
小1
部首:⽇
4画
南
常用漢字
小2
部首:⼗
9画
“日南”で始まる語句
日南水