“一眸”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
いちぼう88.2%
ひとめ11.8%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
……その丘からは港の瑠璃色の海や、船着場の黄色い旗や、また彼女の家や青年の邸も悉く手に取るように一眸いちぼうの中におさめられた。
赤い煙突 (新字新仮名) / 渡辺温(著)
頂にいたりて超然として一眸いちぼうのもとに瞰下みおろさば、わが心高きに居て、ものよくさだむるを得べしと思いて、峰にのぼらむとしたるなり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
翌朝あくるあさ日覚めると明け放った欞子窓れんじまどから春といってもないほどなあったかい朝日が座敷のすみまでし込んで、牛込の高台が朝靄あさもやの中に一眸ひとめに見渡された。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
が、蔵前の煙突も、十二階も、睫毛まつげ一眸ひとめの北のかた、目の下、一雪崩ひとなだれがけになって、崕下の、ごみごみした屋根を隔てて、日南ひなたの煎餅屋の小さな店が、油障子も覗かれる。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)