吾亦紅われもこう
マルが私の家に居ついたのは、昭和十一年のはじめであった。死にそうな、犬が庭に迷い込んで来たから追出して下さいと妻はある寒い晩云った。死にはすまいと私はそのままにしておいた。犬は二三日枯芝の日だまりに身をすくめ人の顔をみると脅えた目つきをして …