悪魔あくま)” の例文
旧字:惡魔
悪魔あくま! 人でなし! かれらはこのかれんな子どもたちをどうしようとするのだろう、助けてやろうとは思わないのでしょうか?」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
そしておとこかえってるのをまどからると、きゅう悪魔あくまこころなかへはいってでもたように、おんなっている林檎りんごをひったくって
これはきっと腹の中の悪魔あくま仕業しわざだろうとは思いましたが、二月の末までと約束したのですから、今更いまさら取返しはつきませんでした。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
世間の噂では、「ロボのくび金環かなわがついている。」とか、また、「かれのかたには悪魔あくま仲間なかまである印としてさかさ十字の斑点はんてんがある。」
(やつのたましい悪魔あくまにみいられているにちがいない。でなければ、ふつうの人間にんげんに、そんなおそろしいことがたえきれるはずがないんだ)
そこには、おばけや、悪魔あくまなどの、けっしてわからない、ただおかあさんと自分じぶんだけがっている、いいところだと子供こどもしんじているのでした。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
山鳴り谷答えて、いずくにかひそんでいる悪魔あくまでも唱い返したように、「我は官軍我敵は」という歌の声は、笛吹川の水音にもまぎれずに聞えた。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「魔女だ、魔女だ、の女は全能ぜんのうの力を備えて居る悪魔あくまだ。己は此奴こいつの命令に対して、絶対的に服従しなければならない。」
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
せっせと長い間はたらいて、あせとあぶらのかわりにえたとうとい金を、悪魔あくまのように、こっそりとぬすんでいくなんて。
名なし指物語 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
同じように、かえしぶみを、わしの片足へむすびつけて、それのおわったとき、伊那丸の目のまえに、さらにのろいの悪魔あくま悠々ゆうゆうとかげを見せてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
悪魔あくまいまにくほつする、もとむる……ほとけ鬼女きぢよ降伏がうぶくしてさへ、人肉じんにくのかはりにと、柘榴ざくろあたへたとふではいか。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ところが、兵隊たちは、すみからすみまで、さがしまわりました。うまく、おかあさんと子供を見つけると、まるで悪魔あくまのように、よろこびました。
「この世の悪魔あくまの店にあるものは何ものもみな相応のあたいがあって売買ばいばいされるが、価なしに得らるるものは独りかみのみ」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
するとある年のなたら(降誕祭クリスマス)の悪魔あくまは何人かの役人と一しょに、突然孫七まごしちいえへはいって来た。孫七の家には大きな囲炉裡いろりに「おとぎもの
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すこしの油断ゆだんがあれば、姿すがたはいかに殊勝しゅしょうらしく神様かみさままえすわっていても、こころはいつしか悪魔あくまむねかよっている。
けれども、べつにこわがる必要ひつようはないと思いました。たしかに、これは、危険きけん魔物まもの悪魔あくまのようなものではありません。かべも門も、じつに美しくできています。
向うのあおい花壇かだんから悪魔あくまが小さなかえるにばけて、ベートーベンの着たような青いフロックコートを羽織りそれに新月よりもけだかいばらむすめに仕立てた自分の弟子でしの手を引いて
ひのきとひなげし (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
このなかにあって、唯ひとり、腹をかかえて笑いころげているのは、悪魔あくまのような机博士だ。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「しかたがない、悪魔あくまほろぼすつるぎをつかうときた。」
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
悪魔あくまちか
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そして悪魔あくまは、紳士がビールのコップを手にとって、ぐーっと飲んでるすきに、皿の中の料理をぺろりと頬張ほおばってしまいました。
不思議な帽子 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
こなひきはこわくなって、いうとおりにすると悪魔あくま約束やくそくしてしまいました。そこで、むすめのところへいって、いいました。
この世の中に神であり仏であり正義の英雄であると信じていたものが一夜のうちに悪魔あくま波旬はじゅんとなった絶望の苦しみである。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
みすみす目のまえにこうしている一とう仇敵きゅうてき咲耶子さくやこにとってはかたきのこの悪魔あくまを、なんで見のがしていいものだろうか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ちくしょうめっ! なにが科学者だい。学者ってものは、もうすこし上品じょうひんなもんだよ。大きなつらをしやがって……あいつは悪魔あくまかもしれねえぞ」
それが、ときどき、ばけものか、ゆめにあらわれる悪魔あくまのように、わたしにおそいかかってきて、わたしの上きげんを、めちゃめちゃにしてしまいます。
そんなばかなはなしがあるものか。この文明ぶんめいなかに、ものや、悪魔あくまなどのいようはずがない。むかしひとは、いろんなことをいって、ひまをつぶしたものだ。
青いランプ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おぎん! お前は悪魔あくまにたぶらかされたのか? もう一辛抱ひとしんぼうしさえすれば、おんあるじの御顔も拝めるのだぞ。」
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
もない。はじめからひとつまつかつてものをふ、悪魔あくま所業しわざぢや、無理むり無躰むたい法外ほふぐわい沙汰さたおもへ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ほーう、おそろしいやつですね。まるで、悪魔あくまですね。こんな、ものすごいひげは、見たことがない。」
丘の銅像 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
おみちのむねはこの悪魔あくまのささやきにどかどか鳴った。それからいきなり嘉吉かきちをとび退いて
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
わたくし矢張やは悪魔あくまみいられてたのでございました。——わたくしあらためてここでおびをいたします。
「こら悪魔あくま、悪業の数々は今報われるときがきたぞ、さ、観念せ。」
空かける悪魔あくま
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そしてこののん気な悪魔あくまは、下水道からひょいと飛び出して、小さな犬にけて、街路樹がいろじゅの影をうそうそと歩き出しました。
不思議な帽子 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
するとそこへ、あの悪魔あくまがやってきました。こいつは、信心しんじんぶかいおきさきさまをひどいめにあわせてやろうと、そのことばかり考えていたのです。
それなら、三にんちからで、悪魔あくまころして、あわれなこうちゃんの一すくってやりたいというになったからでした。
草原の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「なんどでもならすがいいわ。だれがいってやるもんか。あんな男は悪魔あくまに食われて死んでしまえばいいんだ」
長い道中のあいだ日のめを見ることなく、乗物のうちにゆられてきた伊那丸は、いよいよ運命の最後を宣告され、悪魔あくま断刀だんとうをうけねばならぬこととなった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この魔法使というのは、なかまでもいちばんいけないやつで、それこそまがいなしの「悪魔あくま」でした。
おゝ、ふねいたは貴様きさまだな。それろ、それろ。うぬ魔物まもの山猫やまねこか、狒々ひゝか、きつねか、なんだ! 悪魔あくま女房にようばううばつたやつ。せめて、おれに、正体しやうたいせてくれ。一生いつしやう思出おもひでだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
入口いりぐちには注連縄しめなわってあるので、悪魔あくま外道げどうたぐい絶対ぜったいはいることはできぬ。またたとえ何事なにごとおこっても、かみまなこはいつも見張みはっているから、すこしも不安ふあんかんずるにはおよばぬ……。
何人なんぴとか如来を信ずるものにしてこれを地下にありというものありや、我等は決してかくごとき仏弟子の外皮をかぶ貢高邪曲ぐこうじゃきょくの内心を有する悪魔あくまの使徒を許すことはできないのである。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
王 (王女のかみでながら)有難ありがとう。よくそう云ってくれました。わたしも悪魔あくまではありません。悪魔も同様な黒ん坊の王は御伽噺おとぎばなしにあるだけです。(王子に)そうじゃありませんか?
三つの宝 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
若者の背後はいごには何ものにもまさって黒いかれ影法師かげぼうしが、悪魔あくまのように不気味な輪廓りんかくをくっきり芝生の上にえがいていた。老人は若者の背後にまわってそのかげのはしを両足でしっかりふまえた。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
悪魔あくまはほっと息をついて、やれやれ助かったと思うと、急に疲れが出て、帽子に化けたまま、ぐっすり眠ってしまいました。
不思議な帽子 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
けれども、そのたびに、悪魔あくまがにせの手紙とすりかえてしまいますので、くるへんじはいつもおんなじことばかりでした。
「このまちさわがしたしろ悪魔あくまは、こいつでなかったか?」と、いつか負傷ふしょうした運転手うんてんしゅは、ふとこころおもいました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おまえは美しい悪魔あくまだ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
顔が人間と猿の間で、手足の先が山羊やぎのようで、小さな尻尾しっぽがあって、まっ黒な胴着をつけてるのが、悪魔あくまの姿として絵に書いてあったのです。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)