よろ)” の例文
離婚をして双方幸福の生涯に入った人もすくなくないと存じます。そういう場合には社会はその人たちの離婚を賀してもよろしいでしょう。
離婚について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
醫者 それがどうもよろしくない。この間からもたび/\云ふ通りここ十日か半月が大事の所だから、なるべく無理をしないで下さい。
近松半二の死 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
これに似た事、『中陵漫録』五に、唐人猪の尻の肉を切って食し、また本のごとく肉生ずれどもその肉硬くなりてよろしからずとある。
すぐお会いするのでありますから、もうお話ししてもよろしいわけですが、実は、将軍のおいいつけであなたをお迎えに上ったのです。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
じつおどろきました、んなお丈夫ぢやうぶさまなおかたうして御死去おなくなりになつたかとつて、宿やどものよろしうまうしました、さぞ力落ちからおとしで……。
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そういう事をお話なすって下さると我々青年は為合しあわせなのですが。ほんの片端かたはしよろしいのです。手掛りを与えて下されば宜しいのです
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
よろしう御座りまする、わたくしも兼ねて其の心得で居りましたのですから、早速執事等とも協議の上、至急御挨拶ごあいさつに及ぶで御座りませう」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
昨日きのふ美味うま最中もなかが出来たが今日けふの茶の時間には温かい饅頭まんぢうが作られた。晩餐には事務長から一同浴衣掛ゆかたがけよろしいと云ふ許しが出る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
よろしく世界の楽園となして、外人の金嚢を振はしむべしと説くに至つては、是れ天然の恩恵なる清風明月も亦造鉄術アーツ・ヲフ・マネイ・メーキングの材料たるのみ。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
敬太郎は主人の煙草入たばこいれを早く腰に差させようと思って、単によろしいと答えた。主人はようやく談判の道具を角帯かくおびの後へしまい込んだ。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(急に低くなりますから気をつけて。こりゃ貴僧あなたには足駄あしだでは無理でございましたかしら、よろしくば草履ぞうりとお取交とりかえ申しましょう。)
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
の故に智識に預る者はねもごろに至誠を発して各介福おほいなるさきはひを招かば、よろしく毎日三たび廬舎那仏を拝し、自ら念を存し各廬舎那仏を造るべし
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
「そんなはずはあるまい、一点一画は時のよろしきに従うとしても、本来、老という字は老であり、土という字は土でなければならん」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それやこれ思い合せると、われわれの会合も、あまりしばしばはよろしくないと考えられる。ここは一層自重せずばなるまいと思われる
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これだけの人数が、月にも雪にも花にもよろしという、三宜楼さんぎろうの二階、折から三月十六日の朧ろ月を眺めて、まことに散々の狂態でした。
銭形平次捕物控:245 春宵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
既に神聖なる軍国の議会に、露探ろたん問題を上したるの恥辱を有する同胞は、よろしく物質の魔力に溺れむとする内心の状態を省みる可く候。
渋民村より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
予は新富座に於て満村の血色よろしからざる由を説き、これに所持の丸薬の服用を勧誘したる、一個壮年のドクトルありしを語れば足る。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それぢやお前は、おれは馬鹿でお前が怜悧れいりだといふんだね。よろしい、弱い者いぢめといふんなら、おれは、ま、馬鹿になツてねるとしやう。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
どうか、私の一生の願を聞いてやると思召おぼしめして、ただ一度でよろしゅうございますから、お目にかかることは出来ませんでしょうか。
ある恋の話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
『エヘン!』と一つ咳拂せきばらひして、ねずみ尊大そんだいかまへて、『諸君しよくんよろしいか?もつと乾燥無味かんさうむみなものはこれです、まァだまつてたまへ、諸君しよくん! ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
子澄が曰く、しからず、燕はあらかじめ備うること久しければ、にわかに図り難し。よろしく先ずしゅうを取り、燕の手足しゅそくり、しこうして後燕図るべしと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「アほんにそうでしたッけ、さっぱり忘却わすれていました……エー母からもこの度は別段に手紙を差上げませんがよろしく申上げろと申ことで」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
とても行っている暇がないから、兄さんにも姉ちゃんにもよろしく云って置いてほしい、と、彼女はそう云って夕飯後二人を帰した。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
新婦は首をりて、否々、かどの口をばえひらきはべらず、おん身のこゝに來給はんはよろしからずと云ひ、起ちてかなたの窓を開きつ。
掛一たい志操こゝろざしよろしからぬ者に付同惡とぞんじこと仇討あだうちせつさまたげ致し候故是非ぜひなくきずを付候と申ければして又其方敵討かたきうちいたさん爲に遊女奉公ほうこう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
物の低きに過ぐるはもとよりよろしからずといえども、これを高くして高きに過ぐるに至るが如きは、むしろ初めのままに捨て置くにかず。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
問題の説明供せられざるに彼の苦みがことごとく取去られしとは、まことに不思議なる事である。はじめから問題を提出しないならばそれでよろしい。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
よろしう御座い升とも、御覧あそばしたら、其先へ入つしやらずと、直ぐお帰り遊ばしまし、さう遊ばせば、何にもわるいことは御座いません。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
ガーエフ 貴族でもない男と結婚した上に、行状も大いによろしかったとは言えないからな。あれは立派な女だ。気立てもいいし、親切だ。
桜の園 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
何を苦しんで今また野獣の如き原人生活の昔に還さんとするか。革新はよろしいが退化は悪い。何処どこまでも進化でなくてはならぬ。
現代の婦人に告ぐ (新字新仮名) / 大隈重信(著)
すぐにおわかりになったものとえ『フムその懐剣かいけんならたしかに彼所かしこえている。よろしい神界しんかいのおゆるしをねがって、取寄とりよせてつかわす……。』
よろしく布報すべし。しかれども今、しかあたわざるものあり。我が祖宗創業の際、海外諸邦の通信貿易、もとより一定なることなし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
其所そこつてもいですか』と遠慮勝ゑんりよがちうてると、令息れいそくわらひながら『何處どこでもよろしい、つたところ御掘おほりなさい』とはれる。
よろしい、其の画家さんを、ここへよこして下さい。きつと考へ出して、元の通りの絵を描いて貰ひます。」と、申しました。
愚助大和尚 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
かういふふうにしてわが地球ちきゆう知識ちしきはだん/\すゝんでたけれども、其内部そのないぶ成立なりたちに立入たちいつた知識ちしき毛頭もうとうすゝんでゐないといつてよろしかつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
近いうちに謁聖えっせいがありますから、それに応ずるがよろしゅうございます、貴君あなたは武科が御志願でございますけれども、まず文科を
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
私も知らん顔もしていられないから、老人へは葉巻を二本、他の連中へもそこばくの黄白こうはくを撒いて「どうぞよろしく」とやった。
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
その頃の主人の日記に、「今日は模様よろし」とか、「今日はむつかし」などと書いてありますのは、エリスとのことでしょう。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
開拓ノコトよろシク漸ヲもっテソノ成功ヲ責メ、官吏ヲ減ジ、煩擾はんじょうヲハブキ、仁政ヲ施シ、人心ヲ安ンジ、賦税ヲ軽クスルニアリ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
「しかし雨の降るのに上にあがったところで宿を貸してくれないと困る。」「よろしい、ともかくお上りなさい」と笑って居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
すると、「これは非常にうまい。」と言ってその素麪そうめんを食べてしまった。そうして、「よろしく頼む。」と言って、幽霊は帰って行ってしまった。
□本居士 (新字新仮名) / 本田親二(著)
ひとりのをる處には他もまたしやうぜられ、さきに二人ふたりが心をあはせて戰へる如く、その榮光をもともに輝かすをよろしとす 三四—三六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
伊皿子台上いさらごだいうえ汐見坂しおみざかも、天然の地形と距離とのよろしきがために品川の御台場おだいば依然として昔の名所絵に見る通り道行く人の鼻先に浮べる有様
この港は利尻の内で第一の都会といってもよろしいのである、それから午後一時二十分というに、いよいよ一行が上陸すべき鴛泊おしどまりの港に投錨した
利尻山とその植物 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
ハッと思って女中を呼んで聞くと、ツイたった今おいでになって、先刻は失礼した、よろしくいってくれというお言い置きで御座いますといった。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
よろしければ、本日の午後五時半に再びここへまかり出ますから、それまで御用意下さいますなら、私の光栄でございます
罌粟の中 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「ただこんなお役に立たぬ者になり、また遠国のことでなにか有ってもお伺い申すことができません、どうぞ呉ぐれもよろしくおたのみ申します」
日本婦道記:二十三年 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一枚は警視庁の高田たかだ警部の名刺で、「東洋真珠商会主下村豊造しもむらとよぞう氏貴下に御依頼の件あり参上仕るべく何分よろしく願上候ねがいあげそうろう
真珠塔の秘密 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
たらよろしく被仰おつしやつください、』とぼく眞實ほんたうにしないのでむすめだまつてわらつてた。おきぬ此娘このむすめ從姉妹いとこどうしなのである。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
人間嘘をつくのはよろしくないと思って、私は『何あにこれは今まで染めていたのだ』と正直なところを打ち明けました。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)