)” の例文
もし、二つなり、三つなりが、いっしょにあかるい世界せかいることがあったら、たがいにってちからとなってらしそうじゃないか。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
さて、それでは、その恋愛、すなわち色慾の Warming-up は、単にチャンスにってのみ開始せられるものであろうか。
チャンス (新字新仮名) / 太宰治(著)
これにって独立した俳句として今日まで形態を保って続いて来ておる。この季に代る或る物を見出す事は容易なことではあるまい。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
母が相当の美貌びぼうであったことも、橋寺がこの少女にって今はき恋女房の面影を偲びつつあることも、ほぼ想察することが出来た。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
隠してはいかぬ、かたきを取って貰いたければわしに話しなさい、又趣意にって話をつけてお前の顔の立つ様にもしよう、そうじゃないか
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
二には減禄ののちは旧にって生計を立てて行くことが出来ぬからである。その母を弘前に遺すのは、脱藩のうたがいを避けんがためである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そうするとその前の方へ少し離れた所に燈火あかりの仕掛があってこれがその絵にって種々いろいろな色の光を投げかけるようになっています。
銀座は昔からハイカラな所 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
しかしまさか母死すなんて事が冗談にえるもんじゃない、ことると何か変事でも起ったのかも知れない、——かく行ってみよう」
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「悪くない年増ですよ。今じゃりどころのない女ですから、どうかしたら、独り者の金蔵と、何か相談があったのかも知れませんね」
然うだ、其だから僕等の生涯は永久えいきゆうに暗黒だと云ふのだ!家庭かてい人生じんせい活動くわつどうみなもとである、と、人にツてはこんなことを云ふものもある。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
初めの内は誤解もするし、おこるような事もあるし、場合にってはたれか死ななくては目ざす人に近寄られないというような事さえある。
「大きな声がどうしたの、いくらでも大きな声を出すよ……さア一度言って御覧ん。事とすべにればお光も呼んで立合わすよ」
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
◯また十章にれば、ヨブは生理学にも通じていたのである。まことに彼はその時代の最も深く、かつ広き知識を有していたのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
って十人の下僕げぼくやしなうことあたわず。これを省きて漸くその日その日を過すのみに至る。これ武家の禄法を察知する一端というべし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「そうかね」と病人は云ったが、何事にらず友達ともだちの言う事を猜疑さいぎの耳を持って聞く癖が付いているので、うれしくも思わなかった。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
御食みけむかふ」は、御食みけに供える物の名に冠らせる詞で、此処の南淵山みなぶちやまに冠らせたのは、蜷貝みながいか、御魚みなかのミナの音にってであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
一体いったいこの人の平素ふだん住んでいるのは有名なブッシュというところで、此処ここには美術学校もあるし、この土地はこの人にって現われたので
不吉の音と学士会院の鐘 (新字新仮名) / 岩村透(著)
泡鳴は人生の神秘を意識し、その絶対的単純化にる生活力の充実を期せるものなり、ついに彼は、その信念を進めて新日本主義となせり。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
二郎君に嫌疑をかけた第一の理由は、この火繩銃が彼の所有品である事にるらしいのですが、これはごうも理由にはならないと思います。
火縄銃 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
って今日より七日間当ムムネ市の街路の掃除を命ずる。今後はばけもの世界長の許可なくして、妄りに向う側に出現することはならん。
その芸にっていかされる、芝居の人物に恋していたと云う、ロマンチックな人間離れをした恋を、面白く思わずにはいられませんでした。
ある恋の話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
其処そこでぢや……松平大島守、やしきは山ぢやが、別荘が本所大川ほんじょおおかわべりにあるにり、かた/″\大島守か都鳥をて取る事に成つた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ところが君は何も知らぬ様子なので安心したんだろうけど、でも君の出ようにっちゃあるいはあの女と同じことになったかも知れないぜ……
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
つて教えた通り、すこしおいでになりましたところ、すべて言つた通りでしたから、その桂の木に登つておいでになりました。
世には切実な愛情の迫力にって目覚める人間の魂もある。叱正や苛酷にすさむ性情がかえって多いとも云えようではないか。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
敵の攻撃は第一岬要塞附近に集中せられ、強行上陸をくわだつるものと思わる。って、わが軍は、全力をあげて守備を固くし、敵を撃退すべし
二、〇〇〇年戦争 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ことつたら、ひとたちのつてゐるしゆ御血汐おんちしほで、このなほるかもれぬ。おもふことも度々たびたびだ。このなら咬付かみつける。真白まつしろだ。
第十条 天皇ハ行政各部ノ官制かんせい文武官ぶんぶかんノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々おのおの其ノ条項ニ
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
それは特殊振子ふりこの周期を測る方法にるので、地上での測定はよいとしても、海の上ではどうして測定すればよいかという問題が起きて来る。
地球の円い話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
過去くわこ經驗けいけんれば、金解禁きんかいきん準備じゆんびをする場合ばあひには、世界せかいいづれからも日本にほん圓貨ゑんくわたいして思惑投機おもわくとうきおこなはれるのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
物が人間の条件であるというのは、それが虚無の中において初めてそのような物としてあらわれるということにってである。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)
小野氏の『本草啓蒙ほんぞうけいもう』にると、佐渡の他にも但馬たじま若狭わかさ、奥州にも四国にも椰子の実の漂流してきた前例がすでに有った。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
法律の賭博を禁ずるのは賭博にる富の分配法そのものを非とする為ではない。実はただその経済的ディレッタンティズムを非とする為である。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
世俗の才には先天的に欠けている生まれつきにるものだった。それにしても、以後はなおさら、この老木は、八方ふさがりの孤立となった。
何にしてもその原書にって見なければこの経文のいずれが真実でいずれがいつわりであるかは分らない。これは原書を得るに限ると考えたのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
すなわち俗にいう瘠我慢やせがまんなれども、強弱相対あいたいしていやしくも弱者の地位を保つものは、ひとえにこの瘠我慢にらざるはなし。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
さうして自分じぶん天地てんちそのはねを一ぱいひろげる。何處どこてもたゞふかみどりとざされたはやしなか彼等かれらうたこゑつてたがひ所在ありかつたりらせたりする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その議論の内容の詳細は判明しないが「狂人の解放治療の実験は今回の出来事にって予想通りの大成功に終りました」
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
また農具の研究並びにその改良等も従来の型を離れて新しい発展をしようとするにはどうしても物理学、力学の応用にる外はないように思われる。
物理学の応用について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
其の兵器を鳩集きふしふする所以ゆゑんのものは、あたか上国孱士じやうこくせんしの茶香古器をもてあそぶが如し。東陲とうすい武夫もののふ皆弓槍刀銃をたしなまざるなし、これ地理風質のことなるにるのみ。
それは暮し方や仕事の性質にもり、また資材の関係にもるのでありましょう。また古い城下町などには伝統を続ける工人たちをよく見かけます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
それにって後世に福神といいて尊むはこのいわれなりと云々。しかしてそののち弘法大師かの大国の文字を改めて大黒と書きたまいけるとなりと記す。
はかばかしくなおらないので、仕舞に医者に見てもらったら、くは分らないが、ことにると何とかいうむずかしい名の心臓病かも知れないと云った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかれども富貴を得て、天が下の事一たびは此の人に一四五ざす。一四六任ずるものをはづかしめていのちおとすにて見れば、文武を兼ねしといふにもあらず。
「東京で用達をして、その模様にっては直に復た国の方へ引返さなけりゃ成らん……おれは今、一日を争う身だ……」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これは、注文者がもし素人しろうと数寄者すきしゃとでもいうのであれば、あるいはそうすることも時宣じぎってかまわぬことでもあろうが、若井氏は商売人である。
伝へにれば、彼女は羅典、希臘ギリシャをはじめ、ヘブライ、カルデヤ、アラビヤ、仏蘭西フランス伊太利イタリヤと、都合七つの外国語に通暁つうぎょうしてゐたことになつてゐる。
ジェイン・グレイ遺文 (新字旧仮名) / 神西清(著)
呼び出すに付七右衞門はすなはち自身番へ罷出し所役人やくにん申ける其の方儀此度このたび山口惣右衞門のたのみにつて嘉川藤五郎兄弟并に建部がう右衞門伴すけ十郎の人々を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
国家社会に対するわれわれ庶民の生活もまずこれに似たものらしい。治世の如何いかん台閣たいかくの諸公の任意にるもので、庶民の力の及ぶべきところではない。
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
また薬園に勤めて本草ほんぞう学に興味をもつようになったのにるとわれていますが、ともかくも生来そういう学問を好んでいたには違いなかったのでしょう。
平賀源内 (新字新仮名) / 石原純(著)