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主
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ぬし
ふりがな文庫
“
主
(
ぬし
)” の例文
「どんな事情が、おありか、ぞんじませんが、それは、およしなさいませ。あれは魔の島です。おそろしい
主
(
ぬし
)
がすんでいるのです。」
怪奇四十面相
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と、
主
(
ぬし
)
のない血まみれなその小舟が
潮
(
しお
)
に乗って流されてゆくそばに、ぽかりと、
西瓜
(
すいか
)
のような物が浮いた。ふたつの人間の頭である。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
扨
(
さて
)
その帯が出来上つて見ると、それは註文
主
(
ぬし
)
のお上さんには勿論、若い呉服屋の主人にも
派手
(
はで
)
過ぎると思はずにはゐられぬものだつた。
貝殻
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「わたしは大菱屋の綾衣でおざんす。お前がたの頼もしいことは、
主
(
ぬし
)
からもかねて承わっていやんした。どうぞよろしく頼みんす」
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
生かすの殺すの、あなた、水の
出端
(
でばな
)
や
主
(
ぬし
)
ある間の出来事とは違いまして、生かすの殺すの、そんな野暮なものじゃございません……
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
つくられたものは、つくり
主
(
ぬし
)
の計画のなかに自分の運命を見いださねばならぬのだ。その心をまかすというのだ。
帰依
(
きえ
)
というのだ。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
只
一四二
烈婦
(
さかしめ
)
のみ
主
(
ぬし
)
が秋を
約
(
ちか
)
ひ給ふを守りて、家を出で給はず。翁も又
一四三
足
(
あし
)
蹇
(
なへ
)
ぎて百
歩
(
ほ
)
を
難
(
かた
)
しとすれば、深く
閉
(
た
)
てこもりて出でず。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
之
(
これ
)
は審査員に対する遺恨と云ふ様な事で無く、
其
(
その
)
画がよくよく気に
入
(
い
)
らなかつた為だと云ふ。
悪戯
(
いたづら
)
の
主
(
ぬし
)
は
未
(
ま
)
だ
捕
(
つかま
)
らない。(四月十四日)
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
宗助は安井をここに二三度訪ねた縁故で、彼のいわゆる不味い菜を拵らえる
主
(
ぬし
)
を知っていた。細君の方でも宗助の顔を覚えていた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それでも「池の
主
(
ぬし
)
になっているから、姿をかくしたが安心してくれ。」という
伝言
(
ことづけ
)
をせねば、自分の重い役が一生とれぬ
心地
(
こころもち
)
もするので
糸繰沼
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「齒が痛い。痛いよう! 痛いよう!
罪人
(
つみびと
)
と人に呼ばれ、十字架にかかり給へる、救ひ
主
(
ぬし
)
イエス・キリスト……齒が痛い。痛いよう!」
宿命
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
しかし、やがて
贈
(
おく
)
り
主
(
ぬし
)
の
悲
(
かな
)
しき
形
(
かた
)
見になつたその
寫眞器
(
しやしんき
)
は、
支那
(
しな
)
の旅から
歸
(
かへ
)
ると
間
(
ま
)
もなく、或る
文
(
ぶん
)
學青年の
詐欺
(
さぎ
)
にかゝつてうしなはれた。
写真と思ひ出:――私の写真修行――
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
むろんその
主
(
ぬし
)
がわかったとしても、今はもうどうするすべもない。晋太郎を育てあげることに一生を捧げるほか、自分の生きる道はない。
菊屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それに義蔵老が——出ますよ先生と、じろり私の顔を見ながら言った、池の
主
(
ぬし
)
の大蛇は、ついにお姿を拝するに至らなかったが。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
権七
(
ごんしち
)
や、
主
(
ぬし
)
は
先
(
ま
)
づ、
婆様
(
ばあさま
)
が
店
(
みせ
)
へ
走
(
はし
)
れ、
旦那様
(
だんなさま
)
、
早速
(
さつそく
)
人
(
ひと
)
を
出
(
だ
)
しますで、お
案
(
あん
)
じなさりませんやうに。
主
(
ぬし
)
も
働
(
はたら
)
いてくれ、さあ、
来
(
こ
)
い
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「それ見い。やって見れば、お
主
(
ぬし
)
にはこれだけの腕はあるんじゃ。だからわしが
鋳物
(
いもの
)
をやれとあんなにすすめたんじゃに。——」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
見たら富右衞門殿へ平兵衞と云手紙が
這入
(
はひつ
)
てあり
然
(
さ
)
すれば
穀平
(
こくへい
)
殿より富右衞門殿へ送つた手紙が有からは落し
主
(
ぬし
)
は富右衞門殿ならん
其邊
(
そこら
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
そしてドルフが無事で
陸
(
おか
)
に上がつた時、身のめぐりを囲んで、「どうも己達皆を一つにしても、お
主
(
ぬし
)
一人程の値打はないなあ」
聖ニコラウスの夜
(新字旧仮名)
/
カミーユ・ルモンニエー
(著)
「こら。お
主
(
ぬし
)
たちは逃げる談合をしておるな。逃亡の企てをしたものには
烙印
(
やきいん
)
をする。それがこの邸の掟じゃ。赤うなった鉄は熱いぞよ。」
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
生れて四十年、一
反
(
たん
)
五
畝
(
せ
)
の土と十五坪の草葺のあばら
家
(
や
)
の
主
(
ぬし
)
になり得た彼は、正に
帝王
(
ていおう
)
の気もちで、
楽々
(
らくらく
)
と足踏み伸ばして寝たのであった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
独
(
ひと
)
り全土を統一した最高の王者のみと言わず、島々のかはら
即
(
すなわ
)
ち頭、一地に割拠した大小の
按司
(
あじ
)
・
世
(
よ
)
の
主
(
ぬし
)
もまたテダであった。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
いままで
待
(
ま
)
ってももどってこないところをみると、おそらくその
落
(
お
)
とし
主
(
ぬし
)
はもどってこないだろう。そのお
金
(
かね
)
は、おまえさんに
授
(
さず
)
かったのだ。
武ちゃんと昔話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「東洋人というものは、お
主
(
ぬし
)
のように、
左様
(
さよう
)
に
貪慾
(
どんよく
)
ではない。余の欲しいのは、
白紙命令書
(
はくしめいれいしょ
)
だ。それを百枚ばかり貰いたい」
独本土上陸作戦:――金博士シリーズ・3――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その滝壺の
主
(
ぬし
)
を或者は河童だといつた。或者は六尺もある鯉だといつた。そしていづれも現在見た者から聞いたのだといふ。
銀の匙
(新字旧仮名)
/
中勘助
(著)
そのお庭の
持
(
も
)
ち
主
(
ぬし
)
の王さまが、あくる朝、お庭におりてきました。ナシの数をかぞえてみますと、きょうはひとつたりません。そこで王さまは
手なしむすめ
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
「なんとか言ってるよ……
主
(
ぬし
)
に何とぞつげの櫛、どこを放っつきまわってるんだろうねえ、あの人は。ほんとにじれったいったらありゃしない」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
捨ててしまっても
勿体
(
もったい
)
ない、取ろうかとすれば水中の
主
(
ぬし
)
が
生命
(
いのち
)
がけで執念深く握っているのでした。
躊躇
(
ちゅうちょ
)
のさまを見て吉はまた声をかけました。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それでその
骨
(
ほね
)
の
持
(
も
)
ち
主
(
ぬし
)
である
動物
(
どうぶつ
)
と、『ピテカントロプス・エレクツス』すなはち
猿人
(
えんじん
)
、
直立
(
ちよくりつ
)
して
歩行
(
ほこう
)
する
猿人
(
えんじん
)
といふ
名
(
な
)
をつけたのであります。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
苟
(
かりそめ
)
にも
主
(
ぬし
)
ある人の
妻
(
もの
)
から艶書を持って来て返事をやるような文治と心得て
居
(
お
)
るか、
何
(
なん
)
の為に文治の所へ来て居る、
汝
(
わりゃ
)
ア畳の上じゃア
死
(
しね
)
ねえから
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
社長は
何方
(
どつち
)
かと云へば因循な人であるけれど、資本
主
(
ぬし
)
から迫られて、社の創業費を六百円近く
着服
(
ちよろまか
)
したと云ふ主筆初め二三の者を追出して了つた。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
造
(
つく
)
り
主
(
ぬし
)
に從ひかへらうとする願ひなのだ。時々私は祈りを——それはもう實に短い祈りだけれど、しかし本當に心からのものをはじめたのですよ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
彼はこの写真の
主
(
ぬし
)
の職業をどう考えたであろうか。この写真の主が私であることは、たぶん知らなかったろうと思う。
安吾人生案内:08 その八 安吾愛妻物語
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「隠れなき御匂ひぞ風に従ひて、
主
(
ぬし
)
知らぬかと驚く
寝覚
(
ねざめ
)
の家々ぞありける」と記された
薫
(
かおる
)
大将の
美
(
び
)
、「扇ならで、これにても月は招きつべかりけり」
『新訳源氏物語』初版の序
(新字新仮名)
/
上田敏
(著)
日限の日になって観音が出来上がると万事用意が整っているのだから、五寸の立像の観音は、
辷
(
すべ
)
るように厨子に納まり、そのまま注文
主
(
ぬし
)
の手に渡る。
幕末維新懐古談:08「木寄せ」その他のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「異端の加特力教徒でも、火酒に眼がないのだ。飲まないのは土耳古人だけさ。どうだ、ステツィコ、穴倉でしこたますすつて来をつたな、お
主
(
ぬし
)
?」
ディカーニカ近郷夜話 後篇:03 怖ろしき復讐
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
乳母車の
主
(
ぬし
)
の赤ん坊は、白い
被
(
かぶ
)
り物の下から赤い頬をふくらせて、太短い直線的な手の運動で、非常に熱心に、自分の靴下の爪さきを引っ張っている。
踊る地平線:03 黄と白の群像
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
または悪魔悪鬼にまれ、若しこの事を
叶
(
かな
)
えてくれたら、永劫未来後の世はお
主
(
ぬし
)
の
僕
(
しもべ
)
となって暮そう、火の山、針の林へもよろこんではいるであろう——
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
この間不意と銭湯の帰道で
出会
(
であわ
)
し、いやとも云われず家へ上げたのが
間違
(
まちがい
)
のもとで、その後は
主
(
ぬし
)
ある身だからと断ってもずうずうしくやって来るので
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ちぇイ
主
(
ぬし
)
を……主たちを……ああ忍藻が心苦しめたも、虫…虫が知らせたか。
大聖威怒王
(
だいしょういぬおう
)
も、ちぇイ日ごろの信心を
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
ですからニールスは、お城の中の
部屋
(
へや
)
という部屋を、
持
(
も
)
ち
主
(
ぬし
)
の生徒についてまわらなければなりませんでした。じつにじれったい
旅
(
たび
)
ではありませんか。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
校友會の
主
(
ぬし
)
と呼ばれる迄に母校と校友會のために献身的に盡してゐると聞く田中兎喜代さん(私より一年あとの卒業で母校の教師)にも逢つた事がない。
随筆 藪柑子:02 随筆 藪柑子
(旧字旧仮名)
/
土井八枝
(著)
明け放したる障子に
凭
(
よ
)
りて、こなたを向きて立てる一人の
乙女
(
おとめ
)
あり。かの唄の
主
(
ぬし
)
なるべしと辰弥は直ちに思いぬ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
富貴
(
ふうき
)
には
寄
(
よ
)
る
親類顏
(
しんるゐがほ
)
幾代先
(
いくだいさ
)
きの
誰樣
(
たれさま
)
に
何
(
なに
)
の
縁故
(
えんこ
)
ありとかなしとか
猫
(
ねこ
)
の
子
(
こ
)
の
貰
(
もら
)
ひ
主
(
ぬし
)
までが
實家
(
さと
)
あしらひのえせ
追從
(
つゐしよう
)
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
大物
主
(
ぬし
)
の前まで来て、はじめて悠然と足を止めたが、
鷲
(
わし
)
のような眼をじっと据えて、大物主を
睨
(
にら
)
んだものである。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
お
家
(
うち
)
の
土藏
(
どざう
)
には
年
(
とし
)
をとつた
白
(
しろ
)
い
蛇
(
へび
)
も
住
(
す
)
んで
居
(
を
)
りました。その
蛇
(
へび
)
は
土藏
(
どざう
)
の『
主
(
ぬし
)
』だから、かまはずに
置
(
お
)
けと
言
(
い
)
つて、
石
(
いし
)
一つ
投
(
な
)
げつけるものもありませんでした。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
と、不意に、(意見せられて、さし
俯向
(
うつむ
)
いて——)という、おけさの一節が、頭に
浮
(
うか
)
びました。(泣いていながら
主
(
ぬし
)
のこと)なにか
訴
(
うった
)
えるものが欲しかった。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
いいや、わしの言うのは
主
(
ぬし
)
の知れないグラスです。それはあのミルクのグラスのそばに置いてあつて、ウイスキーがまだ一インチか二インチはいつていました。
手早い奴
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
侯爵は打ち驚き「オ、廃業しをつた——新聞に在つたと、浜子、
其方
(
そち
)
は
能
(
よ
)
う新聞を見ちよるな、感心ぢや——松島、其の根引き
主
(
ぬし
)
は貴公ぢや無いか、白状せい」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
側には妻の寝床が其の
主
(
ぬし
)
を待っています。此の寝床は明日は死体をのせていることだろうと考えながら。
悪魔の弟子
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
持皈
(
もちかへ
)
りて
主
(
ぬし
)
を
尋
(
たづね
)
ばやと
鐺
(
かま
)
を
手
(
て
)
にさげて二町ばかりあゆみしにしきりに
重
(
おも
)
くなり、
鐺
(
かま
)
の内に
声
(
こゑ
)
ありて我をいづくへ
連
(
つ
)
れ
行
(
ゆく
)
ぞといふに
胆
(
きも
)
を
消
(
け
)
し
鐺
(
かま
)
をすてゝ
逃
(
にげ
)
さりしに
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
主
常用漢字
小3
部首:⼂
5画
“主”を含む語句
主人
亭主
主婦
主家
女主人
家主
御主
主殺
主題
御亭主
坊主
神主
主翁
主君
領主
主從
主取
救世主
主従
女主人公
...