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顧
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かえり
ふりがな文庫
“
顧
(
かえり
)” の例文
でも、良吉が傍で洗濯物や乾魚を小さい
行李
(
こうり
)
に収めて明日の出立の用意をしかけると、辰男も書物を
措
(
お
)
いてしばしばその方を
顧
(
かえり
)
みた。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
「やあ、こんな
花
(
はな
)
がここに
咲
(
さ
)
いているのは
珍
(
めずら
)
しい。このとこなつは、
高
(
たか
)
い
山
(
やま
)
にあるとこなつです。」と、ほかの
人々
(
ひとびと
)
を
顧
(
かえり
)
みていった。
公園の花と毒蛾
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
……殿には、御縁あってかく御厚遇をうけましたが、
顧
(
かえり
)
みるに、何の御奉公も仕らず、ただそれのみが、
臨終
(
いまわ
)
の心のこりにござります
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼はそう云いながら、手に持った
雨外套
(
レインコート
)
と双眼鏡を置くために
後
(
うしろ
)
の縁を
顧
(
かえり
)
みた。
傍
(
そば
)
に立った千代子は高木の動かない前に手を出した。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
齢
(
よわい
)
人生の
六分
(
ろくぶ
)
に達し、今にして過ぎ
来
(
こ
)
し
方
(
かた
)
を
顧
(
かえり
)
みれば、行いし事として罪悪ならぬはなく、
謀慮
(
おもんばか
)
りし事として
誤謬
(
ごびゅう
)
ならぬはなきぞかし。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
▼ もっと見る
これも明るい近代的の俳句であり、万葉集あたりの歌を
聯想
(
れんそう
)
される。万葉の歌に「東の野に
陽炎
(
かげろう
)
の立つ見えて
顧
(
かえり
)
みすれば月傾きぬ」
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
高坂は
旧
(
もと
)
来た
方
(
かた
)
を
顧
(
かえり
)
みたが、草の
外
(
ほか
)
には何もない、
一歩
(
ひとあし
)
前
(
さき
)
へ
花売
(
はなうり
)
の女、
如何
(
いか
)
にも身に
染
(
し
)
みて聞くように、
俯向
(
うつむ
)
いて
行
(
ゆ
)
くのであった。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして彼は進んで「汝もし神に求め全能者に祈り、清くかつ正しうしてあらば、必ず今汝を
顧
(
かえり
)
み汝の
義
(
ただし
)
き家を栄えしめ給わん……」
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
「いえ、滑り行く——なんてどうして、彼奴は蹌踉き行ったのですよ。ハハハハハ」と法水は爆笑を上げながら、レヴェズ氏を
顧
(
かえり
)
みて
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
たとえば
仁義
(
じんぎ
)
のために死するとか、国家の責任を
双肩
(
そうけん
)
に
担
(
にな
)
って立つとか、
邦家
(
ほうか
)
のためには一身を
顧
(
かえり
)
みず、
知遇
(
ちぐう
)
のためには
命
(
いのち
)
を
堕
(
おと
)
すとか
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
たえず
勉
(
つと
)
めて自分の平凡な才をみがくべき年ごろに、彼はずるずると坂を滑り落ちて
顧
(
かえり
)
みなかった。そして他人に地位を奪われていった。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
いったい裏飛騨の漁師は、岩魚を釣っても売り場がないから
糧
(
かて
)
に代えるわけにいかぬ。そこで岩魚や山女魚は
顧
(
かえり
)
みないのである。
雪代山女魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
続く幾つかの室内楽や美しい
歌曲
(
リード
)
の数々は、友人達に励まされてとにもかくにも世に送り出されたが、当時は誰も
顧
(
かえり
)
みるものはなかった。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
ガラガラと、引き戸になっている、
陥穽
(
おとしあな
)
への入口が、あいたらしく、やがて、
顧
(
かえり
)
みられぬ女のやけ腹な、おこりッぽい調子で
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
われは珈琲代の白銅貨を、帳場の石板の上に
擲
(
な
)
げ、
外套
(
がいとう
)
取りて出でて見しに、花売の子は、ひとりさめさめと泣きてゆくを、呼べども
顧
(
かえり
)
みず。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
今まで黙っていた廉州先生は、王氏のほうを
顧
(
かえり
)
みると、いちいち画の
佳所
(
かしょ
)
を指さしながら、
盛
(
さかん
)
に感歎の声を
挙
(
あ
)
げ始めました。
秋山図
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と弁護するのか悪く言うのかイヤに笑って我が妻を
顧
(
かえり
)
みる。妻君も苦笑いして下を向くは折々二度の髪を結う
性
(
たち
)
と見えたり。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
帆村は
慄然
(
りつぜん
)
として、隣席の牧山大佐を
顧
(
かえり
)
みた。しかし大佐の姿は、もうそこにはなかった。その代り受話器の中から
儼然
(
げんぜん
)
たる号令が聞えてきた。
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼は大鳥家の人に不二子さんを渡してしまうと、波越警部とエベール氏を
顧
(
かえり
)
みて、ちょっと恥かし相な微笑を浮べながら、こんなことを云った。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
これらのことを
顧
(
かえり
)
みると、どうしたら手仕事を安全に持続させまた発達させるかということは、国家にとって大きな課題だといわねばなりません。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
それで
甚
(
はなは
)
だ迷惑であるからご免を
蒙
(
こうむ
)
りたいといって再三辞退を申したけれども、
是非
(
ぜひ
)
何か述べる様にというので
不肖
(
ふしょう
)
を
顧
(
かえり
)
みず一言述べようと思います。
国民教育の複本位
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
ややもすれば湧き立とうとする人の情と人の心を、荒々しい言葉で
抑
(
おさ
)
えつけるように手きびしく叱っておくと、
傍
(
かたわ
)
らを
顧
(
かえり
)
みて対馬守はふいっと言った。
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
フランシスを弁護する人がありでもすると、
嫉妬
(
しっと
)
を感じないではいられないほど好意を持ち出した。その時からクララは凡ての縁談を
顧
(
かえり
)
みなくなった。
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そう考えるに付けても、彼は
此
(
こ
)
の三年以来自分に振りかゝって来た夢のような華やかな幸運が、振り
顧
(
かえり
)
みられた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
つまりここでもまた、本人同志の意志が少しも
顧
(
かえり
)
みられず、ただ、親達の都合のために結婚させられたのである。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
ソコデ私の見る所で、新政府人の挙動は
都
(
すべ
)
て儒教の
糟粕
(
そうはく
)
を
嘗
(
な
)
め、古学の
固陋
(
ころう
)
主義より割出して
空威張
(
からいば
)
りするのみ。
顧
(
かえり
)
みて外国人の評論を聞けば右の通り。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
越し
方
(
かた
)
を
顧
(
かえり
)
みれば、
眼下
(
がんか
)
に展開する十勝の
大平野
(
だいへいや
)
は、
蒼茫
(
そうぼう
)
として唯
雲
(
くも
)
の如くまた海の如く、
却
(
かえっ
)
て北東の方を望めば、
黛色
(
たいしょく
)
の
連山
(
れんざん
)
波濤
(
はとう
)
の如く起伏して居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
顧
(
かえり
)
みて
看
(
み
)
れば、一国の独立は国民の独立に
基
(
もと
)
いし、国民の独立はその精神の独立に根ざす(謹聴々々、拍手)。
祝東京専門学校之開校
(新字新仮名)
/
小野梓
(著)
父親は云う事を聴かないと、
家
(
うち
)
を追出して古井戸の柳へ縛りつけるぞと
怒鳴
(
どな
)
って、
爛熳
(
らんまん
)
たる児童の
天真
(
てんしん
)
を損う事をば
顧
(
かえり
)
みなかった。ああ、恐しい幼少の記念。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
あとになって、父の性格をいろいろ考えてみたあげく、わたしの達した結論は、父としては私や家庭生活なんぞを、
顧
(
かえり
)
みるひまがなかったということである。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
と能登守はお松を
顧
(
かえり
)
みてこう言ってくれました。その言葉があったために、さっきから一生懸命で、言い出そう言い出そうとしていたお松は一時に力を得て
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
余は此町の
麗
(
うる
)
わしさに殆ど不平の念を起し藻西が何故身の程をも
顧
(
かえり
)
みず此町を撰びたるやとまで恨み初めぬ
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
王
従容
(
しょうよう
)
として去る。庸の諸将
相
(
あい
)
顧
(
かえり
)
みて
愕
(
おどろ
)
き
眙
(
み
)
るも、天子の詔、朕をして
叔父
(
しゅくふ
)
を殺すの名を負わしむる
勿
(
なか
)
れの語あるを以て、矢を
発
(
はな
)
つを
敢
(
あえ
)
てせず。
此
(
この
)
日
(
ひ
)
復
(
また
)
戦う。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
大迫玄蕃、決して
臆病
(
おくびょう
)
な男ではない。が、思わず、声を
呑
(
の
)
んで、白けた眼が、うしろざまに床の間を
顧
(
かえり
)
みた。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
然るに隣家の若主人が相続すると、先代の初七日も済まぬ
間
(
うち
)
に、半分は俺のものだといって、お寺への通行人の迷惑をも
顧
(
かえり
)
みず、自分の持分だけを崩し始めた。
青バスの女
(新字新仮名)
/
辰野九紫
(著)
おしつまって来るほどに
匆忙
(
そうぼう
)
として日は暮れる、
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
に
生
(
い
)
けてある水仙——もしくは鉢に植えてある水仙——も、その多忙のために余り
顧
(
かえり
)
みる人がなくって
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
先方ではそれを一年作って、さらにその大きさを増さしめ、そして
次年
(
じねん
)
に
勢
(
いきお
)
いよく花を咲かせてその花を
賞翫
(
しょうがん
)
する。花が咲いた後、弱った球根は捨てて
顧
(
かえり
)
みない。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
後代にこれを
顧
(
かえり
)
みて神々の隠れたる意図、神のよざしと解しなかったら、むしろ不自然であったろう。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
校長さんは清三を
顧
(
かえり
)
みて、「君はいりませんか、やすけりゃ少し買って
甘露煮
(
かんろに
)
にしておくといいがね」
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
これは女に
対
(
むか
)
って恋情を打明けたのちに、老体を
顧
(
かえり
)
みた趣の歌だが、初句に、「あぢきなく」とあるから、遂げられない恋の苦痛が一番強く来ていることが分かる。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
その感じから想像に生れて来る、端的で速力的な世界は、彼女に自分のして来た生涯を
顧
(
かえり
)
みさせた。
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
松山さんを
顧
(
かえり
)
みてはニヤニヤ笑い、「こら、
大坂
(
ダイハン
)
、これでもか。これでもか」 といくつも撲った。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
慾望 は先にいったように小利を見ることに急であるからして他を
顧
(
かえり
)
みるに
暇
(
いとま
)
がない。しかしその利益を得るために自分が自立してやるかというに決してそうでない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
しかしともかくも三十年の学究生活の霞を透して
顧
(
かえり
)
みた昔の学生生活の想い出の中には、あるいは一九三四年の学生諸君にも多少の参考になるものがないとも限らない。
科学に志す人へ
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それは無論、永田という人間の商略から出た事であろうが、今日それ位の事をした所で、誰も
顧
(
かえり
)
みる人はないであろうのに、絵双紙屋も平気でそれを並べれば、人々も
四谷、赤坂
(新字新仮名)
/
宮島資夫
(著)
帰舟
(
かえり
)
は客なかりき。
醍醐
(
だいご
)
の入江の口を
出
(
いず
)
る時
彦岳嵐
(
ひこだけあらし
)
身
(
み
)
に
渗
(
し
)
み、
顧
(
かえり
)
みれば
大白
(
たいはく
)
の光
漣
(
さざなみ
)
に
砕
(
くだ
)
け、こなたには
大入島
(
おおにゅうじま
)
の火影
早
(
はや
)
きらめきそめぬ。静かに櫓こぐ翁の影黒く水に映れり。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
作曲家でもあり作詞家でもあった孔子は、次第に
遠離
(
とおざか
)
り行く都城を
顧
(
かえり
)
みながら、歌う。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
良人
(
おっと
)
はしきりに
馬
(
うま
)
の
鼻面
(
はなづら
)
を
撫
(
な
)
でてやりながら『
汝
(
おまえ
)
もとうとう
出世
(
しゅっせ
)
して
鈴懸
(
すずかけ
)
になったか。イヤ
結構
(
けっこう
)
結構
(
けっこう
)
!
俺
(
わし
)
はもう
呼名
(
よびな
)
について
反対
(
はんたい
)
はせんぞ……。』そう
言
(
い
)
って、
私
(
わたくし
)
の
方
(
ほう
)
を
顧
(
かえり
)
みて
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
水に臨んだ広い
楼上
(
ろうじょう
)
に登って、私は下りに下って来た鉄橋の
遥
(
はるか
)
を
顧
(
かえり
)
みた。蘇川峡の奇勝、岩壁の
鷹
(
たか
)
、白帝城、雨と朱の夕焼けと花火と、今はただ眼に
入
(
い
)
るものは雲である、江陵である。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
もしそうだとしたら今後も流行する
虞
(
おそ
)
れがある。特に大戦争下などにはその虞れが濃厚であるとも思われるので、予防医学的な意味で、当時の世相を
顧
(
かえり
)
みておくことも無用ではなかろう。
千里眼その他
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
“顧”の解説
顧(こ)は、漢姓のひとつ。『百家姓』の93番目。
(出典:Wikipedia)
顧
常用漢字
中学
部首:⾴
21画
“顧”を含む語句
顧盻
顧客
顧眄
回顧
顧慮
振顧
相顧
後顧
一顧
眷顧
右顧左眄
左顧右眄
四顧
愛顧
顧視
贔顧
見顧
顧愷之
右顧
反顧
...