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釘
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くぎ
ふりがな文庫
“
釘
(
くぎ
)” の例文
年老いた父が今
麦稈
(
むぎわら
)
帽子を
釘
(
くぎ
)
にひっかけている。十月になっても被りつづけている麦稈帽子、それは狐が
化
(
ば
)
けたような色をしている。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
彼女は扉のそばに
釘
(
くぎ
)
付けになって、身動きもせず、凍えきり、歯をうち合して震え、扉を開く力もなく、床につく力もなかった……。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私は海を
眺
(
なが
)
めていた。腰掛は
釘
(
くぎ
)
がゆるんでいるので、足を突っ張ってうまく支えていないと、すぐさま
潰
(
つぶ
)
れてしまいそうであった。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
二人の客はいつも来る人と見えて、何か親しげに子供に物を言ふ。主客とも雨覆を脱いで
長押
(
なげし
)
の
釘
(
くぎ
)
に掛けて、奥に這入つて行つた。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
掃き清められた広い刑場の奥手には白衣を着た女たちがずらりと髪の毛を木の
釘
(
くぎ
)
にくくりつけられたままだらんとぶらさげられている。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
▼ もっと見る
飯を食ってから、踏台をして
欄間
(
らんま
)
に
釘
(
くぎ
)
を打って、買って来た額を頭の上へ掛けた。その時細君は、この女は何をするか分らない人相だ。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ある人
咸陽宮
(
かんようきゅう
)
の
釘
(
くぎ
)
かくしなりとて持てるを蕪村は
誹
(
そし
)
りて「なかなかに咸陽宮の釘隠しといはずばめでたきものなるを無念の事におぼゆ」
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
為世はそれに対しては「万葉集の耳遠き詞などゆめゆめ好み読む
可
(
べか
)
らず」と一本
釘
(
くぎ
)
をさして、「詞は三代集を
出
(
い
)
づ可らず」を固く守る。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
此
(
こ
)
の
尖端
(
せんたん
)
を
上
(
うへ
)
に
向
(
む
)
けてゐる
釘
(
くぎ
)
と、
塀
(
へい
)
、さては
又
(
また
)
此
(
こ
)
の
別室
(
べつしつ
)
、こは
露西亞
(
ロシア
)
に
於
(
おい
)
て、たゞ
病院
(
びやうゐん
)
と、
監獄
(
かんごく
)
とにのみ
見
(
み
)
る、
儚
(
はかな
)
き、
哀
(
あはれ
)
な、
寂
(
さび
)
しい
建物
(
たてもの
)
。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
先刻
(
さっき
)
見た裏口とは反対の方、奥の主人の部屋の前の板塀の上に、忍び返しが少し損じて、古
釘
(
くぎ
)
に新しい
巾
(
きれ
)
が少し引っかかっていたのです。
銭形平次捕物控:094 死相の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「どうだ、これを怪しいとは思わねえか。あの金庫のことは、ネジ
釘
(
くぎ
)
一本だって
調
(
しらべ
)
をつけてあったんだ。それにむざむざと……」
地中魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そうして事の
序
(
ついで
)
にもう一本痛烈な
釘
(
くぎ
)
をぶち込んで二十年間の溜飲を一度に下げてやろうと決心したのでいよいよ落ち着いて咳払いをした。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
これを
釘
(
くぎ
)
で打ちつけるとひびがはいりやすく、またそこから腐りやすかったので、板屋根には
釘
(
くぎ
)
をつかうことを非常にきらった。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そして、まるで
釘
(
くぎ
)
づけにでもされたように、そのまま彼から目を放さなかった。レベジャートニコフは戸口の方へ行こうとした。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
私は
柩
(
ひつぎ
)
に
釘
(
くぎ
)
を打ちます。十一時きっかりに礼拝堂へ参ります。歌唱の長老たちとアブサンシオン長老とがきていられるのでございますな。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ところが人形には、
薄
(
うす
)
い
着物
(
きもの
)
の下に
釘
(
くぎ
)
がいっぱい、
尖
(
とが
)
った
先
(
さき
)
を外に
向
(
む
)
けてつまっているのです。いくら
大蛇
(
おろち
)
でもたまりません。
人形使い
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
居士を病床に
釘
(
くぎ
)
附けにして死に至るまで叫喚大叫喚せしめた脊髄腰炎はこの時既にその症状を現わし来つつあったのであった。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
大工が仕事を初めたところで、
釘
(
くぎ
)
をすら買うべき小銭に事かいていたお島は、また近所の金物屋から、それを取寄せる
智慧
(
ちえ
)
を欠かなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
額際
(
ひたいぎわ
)
とか、
揉
(
も
)
み上げのようなところは金平糖が小さいので、それは別に
頃合
(
ころあ
)
いの笊を注文して、頭へ一つ一つ
釘
(
くぎ
)
で打ち附けて行ったものです。
幕末維新懐古談:63 佐竹の原へ大仏を拵えたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
木々の枝を透いてあちこちの
釘
(
くぎ
)
づけになった別荘が
露
(
あら
)
わに見えて来ますが、日向さんのところはいつも締まっていて、ひっそりとしています。
朴の咲く頃
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
と
袈裟
(
けさ
)
をはずして
釘
(
くぎ
)
にかけた、
障子
(
しょうじ
)
に
緋桃
(
ひもも
)
の
影法師
(
かげぼうし
)
。
今物語
(
いまものがたり
)
の
朱
(
しゅ
)
にも似て、
破目
(
やれめ
)
を
暖
(
あたたか
)
く燃ゆる
状
(
さま
)
、
法衣
(
ころも
)
をなぶる
風情
(
ふぜい
)
である。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
薊
(
あざみ
)
も長い間の押し問答の、石に
釘
(
くぎ
)
打つような不快にさっきからよほど
劫
(
ごう
)
が沸いてきてる。もどかしくて堪らず、酔った酒も
醒
(
さ
)
めてしまってる。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
腰
(
こし
)
に
佩
(
たばさ
)
み此
青壯年
(
あをにさい
)
いざ行やれと
罵
(
のゝし
)
りつゝ
泣臥
(
なきふ
)
し居たる千太郎を
引立々々
(
ひきたて/\
)
行んとすれば
此方
(
こなた
)
は
胸
(
むね
)
に
釘
(
くぎ
)
打思ひ
眼前
(
がんぜん
)
養父の
預
(
あづか
)
り金を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
いけないことだ。「我はその手に
釘
(
くぎ
)
の
痕
(
あと
)
を見、わが指を釘の痕にさし入れ、わが手をその
脅
(
わき
)
に差入るるにあらずば信ぜじ」
散華
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そのあとに
玩具
(
がんぐ
)
のように小さい櫃が竹
釘
(
くぎ
)
を入れたらしく、
仮輪
(
かりわ
)
で形だけ整ったのがころがっている。かやはそれを取上げ
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
一本
釘
(
くぎ
)
を打ッた言い方だった。そして相手の反応を
愉
(
たの
)
しむような眼が、道誉の顔のなかの
黒子
(
ほくろ
)
と一しょに、にんまりする。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
万寿丸は同じく
吉竹
(
よしたけ
)
船長——これはやっぱりこの船のブリッジへ
錆
(
さ
)
びついたねじ
釘
(
くぎ
)
以外ではなかった——によって、
搾
(
しぼ
)
ることを監督されていた。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
でも、そうしていてもしかたがないので、おとうさんの甲野さんは、思いきって箱をあけてみることにし、金づちや
釘
(
くぎ
)
ぬきを持ってこさせました。
魔法人形
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
今度は
此方
(
こつち
)
も意地になつて、菓子折で作つた札に、「X—新聞固く御断り
申候
(
まうしさふらふ
)
」と油絵具で
認
(
したゝ
)
め、それを
釘
(
くぎ
)
づけにした。
姉弟と新聞配達
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
それも、すっかりマホガニイの木でこしらえて、銅の
釘
(
くぎ
)
で打ちつけて、銅の板でくるんだ、丈夫な船でないと、とても向うまでいく
間
(
あいだ
)
持ちません。
黄金鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
与一は二寸ばかりの黄色い
蝋燭
(
ろうそく
)
を
釘
(
くぎ
)
箱の中から探し出すと、灯をつけて台所のある
部屋
(
へや
)
の方へ
疳性
(
かんしょう
)
らしく歩いて行った。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
袂
(
たもと
)
をまくって見せましたが、落ちる拍子に
釘
(
くぎ
)
か何かに触ったのでしょう、ちょうど右腕の
肱
(
ひじ
)
のところの皮が破れて、血がにじみ出ているのでした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
双眼鏡のレンズを虫めがねにして、よく見ると、
釘
(
くぎ
)
でかいた英文であるが、なにぶんにも長い月日をへたものらしく、ほとんど消えかかっていた。
無人島に生きる十六人
(新字新仮名)
/
須川邦彦
(著)
ただ眼つきだけが、見るものの一つ一つに
釘
(
くぎ
)
を打ちこむように鋭い。足もとに、ボストン・バッグと、手さげカバン。
胎内
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
「だからそれへこの札をつけてさ。——ほれ、ここに
釘
(
くぎ
)
が打ってある。これはもとは
十字架
(
じゅうじか
)
の形をしていたんだな。」
蜃気楼
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして
店
(
みせ
)
を
出
(
で
)
てから、もう一
度
(
ど
)
自分
(
じぶん
)
の
描
(
か
)
いた
看板
(
かんばん
)
を
見返
(
みかえ
)
していたが、いつしか
考
(
かんが
)
え
込
(
こ
)
んで、
地面
(
じめん
)
へ
釘
(
くぎ
)
づけにされたように、じっとして
動
(
うご
)
かなかった。
生きている看板
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それは、窓の傍の壁に
釘
(
くぎ
)
づけになつてゐる、葉の落ちた櫻の小枝にやつて來て啼いてゐたのだ。私の朝御飯のパンとミルクの殘りが
卓子
(
テエブル
)
の上にあつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
じッと、
釘
(
くぎ
)
づけにされたように、
春信
(
はるのぶ
)
の
眼
(
め
)
は、おせんの
襟脚
(
えりあし
)
から
動
(
うご
)
かなかった。が、やがて
静
(
しず
)
かにうなずいたその
顔
(
かお
)
には、
晴
(
は
)
れやかな
色
(
いろ
)
が
漂
(
ただよ
)
っていた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
台所には、みんなが持ってきてある小さい
土瓶
(
どびん
)
が、せとものやのように幾段にも
釘
(
くぎ
)
にかけてずらりと並んでいた。
旧聞日本橋:04 源泉小学校
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
アスファルト路の欠けた処を
塞
(
ふさ
)
ぐために
釘
(
くぎ
)
づけにしてあるのを、子供達が、各自家から持出した、
金槌
(
かなづち
)
、やっとこの類で、取りはずすのに、
大童
(
おおわらわ
)
でした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
空吹く風も
地
(
つち
)
打つ雨も
人間
(
ひと
)
ほど我には
情
(
つれ
)
なからねば、塔
破壊
(
こわ
)
されても倒されても悦びこそせめ恨みはせじ、板一枚の吹きめくられ
釘
(
くぎ
)
一本の抜かるるとも
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その天井の鏡板の一枚にあるたいへん奇妙な画像が、私の注意をすっかり
釘
(
くぎ
)
づけにするように強くひきつけた。
落穴と振子
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
初めは恐る恐る
偸
(
ぬす
)
み見たが、次第に太田の眼はじっと男の顔に
釘
(
くぎ
)
づけになったまま動かなかった。そういわれて見ればなるほどこの癩病患者は岡田なのだ。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
せめては
令見
(
みせしめ
)
の為にも折々
釘
(
くぎ
)
を刺して、再び
那奴
(
しやつ
)
の
翅
(
はがい
)
を
展
(
の
)
べしめざらんに
如
(
し
)
かずと、
昨日
(
きのふ
)
は貫一の
曠
(
ぬか
)
らず厳談せよと代理を命ぜられてその家に向ひしなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
ほんの一本
釘
(
くぎ
)
がゆるみ、板の継ぎ目がひとつ口をあけようものなら、死神は侵入してくるかもしれないのだ。
船旅
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
灰寄せの人夫が集まって、
釘
(
くぎ
)
や金物の
類
(
たぐい
)
を拾った焼け跡には、わずかに街道へ接した
塀
(
へい
)
の一部だけが残った。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
郵便配達からは小言の食いづめにあった。それからは固く
釘
(
くぎ
)
で打ちつけたが、それでも門標はすぐ
剥
(
は
)
がされた。この小事件は当時梶一家の神経を悩ましていた。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「その手に
釘
(
くぎ
)
の痕を見、わが指を釘の痕にさし入れ」て見なければ
基督
(
キリスト
)
の復活は信じないと言い張った、不信者トマスの言葉に
飜訳
(
ほんやく
)
することが出来るであろう。
チェーホフの短篇に就いて
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
かやうの所いづかたにもあるゆゑに
下踏
(
げた
)
の
歯
(
は
)
に
釘
(
くぎ
)
をならべ
打
(
うち
)
て
蹉跌
(
すべら
)
ざる
為
(
ため
)
とす。
唐土
(
もろこし
)
にては是を
欙
(
るゐ
)
とて山にのぼるにすべらざる
履
(
はきもの
)
とす、
欙
(
るゐ
)
和訓
(
わくん
)
カンジキとあり。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
斯
(
か
)
うして
彼
(
かれ
)
の
卯平
(
うへい
)
に
對
(
たい
)
する
憎惡
(
ぞうを
)
の
念
(
ねん
)
が
彼
(
かれ
)
の
心
(
こゝろ
)
へ
錐
(
きり
)
を
穿
(
うが
)
つて
更
(
さら
)
に
釘
(
くぎ
)
を
以
(
もつ
)
て
確然
(
しつか
)
と
打
(
う
)
ちつけられたのであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
“釘”の解説
釘(くぎ)は、ねじ部を持たない略棒状の本体を、ほぼ変形させることなく、そのままハンマーなどで打ち込むことによって結合する固着具。
(出典:Wikipedia)
釘
漢検準1級
部首:⾦
10画
“釘”を含む語句
折釘
螺釘
釘附
釘付
螺旋釘
鐵釘
釘抜
金釘流
鉄釘
装釘
釘隠
釘着
釘拔
留釘
捻釘
鋲釘
釘靴
目釘
金釘
錆釘
...