“袖口:そでぐち” の例文
“袖口:そでぐち”を含む作品の著者(上位)作品数
紫式部10
永井荷風8
太宰治6
島崎藤村3
有島武郎3
“袖口:そでぐち”を含む作品のジャンル比率
文学 > フランス文学 > 小説 物語7.7%
社会科学 > 風俗習慣・民俗学・民族学 > 風俗史・民俗誌・民族誌5.9%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
襦袢じゅばん袖口そでぐちから絞るあいのしずくで鼻紙にしるしつける歌日記を幽閉中唯一の慰めとしていたという。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼女はすぐに、帽子や長衣や肩衣や半靴はんぐつ袖口そでぐちやまた自分に似合う布地や色などに関するあらゆる知識を得た。
……衣裳いしょう袖口そでぐちは上着下着ともに松葉色の様なる御納戸の繻子しゅすを付け仕立も念をいれて申分なく
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
俯目ふしめに、睫毛まつげ濃く、黒棚くろだなひとツの仕劃しきりを見た。袖口そでぐち白く手をべて、
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
倉地はやはり物たるげに、袖口そでぐちからにょきんと現われ出た太い腕を延べて、短い散切ざんぎり頭をごしごしとかき回しながら、
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
やせて血のけのない、白くのふいたような顔をした富士子は、いつも袖口そでぐちに手をひっこめて、ふるえているように見えた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
そして鉢巻はちまきの下ににじんだ汗を袖口そでぐちぬぐって、炊事にかかった妻に先刻の五十銭銀貨を求めた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
青鈍あおにび色の几帳きちょうの感じのよいかげにすわっている尼君の袖口そでぐちの色だけにはほかの淡い色彩も混じっていた。
源氏物語:23 初音 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「どっちの方角へ足が向くかね」と主人は真面目な顔をして、黒木綿くろもめんの紋付羽織の袖口そでぐちを引張る。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あちこちにできた桟敷さじきは、しつらいの趣味のよさを競って、御簾みすの下から出された女の袖口そでぐちにも特色がそれぞれあった。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
木村が一人ひとりではいって来たのに気づくと、始めて弱々しく横向きに寝なおって、二の腕まで袖口そでぐちのまくれたまっ白な手をさし延べて
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
お絹はそういうときの癖で、踊りの型のように、両手を袖口そでぐちへ入れて組んでいたが、足取りにもどこかそういったしなやかさがあった。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
相手は身動き一つしなかった。白い袖口そでぐちから出ている冷めたい赤大根みたような二の腕が、私の左右の手の下で見る見る紫色になって行った。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その人たちの外へ出している袖口そでぐちの重なりようの大ぎょうさは踏歌とうかの夜の見物席が思われた。
源氏物語:08 花宴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
なぜというに、きょうだいたちの着物に火のしをかけたり、袖口そでぐちにかざりぬいしたりするのは、みんなサンドリヨンのしごとだったからです。
階段の上り降りにすそがよごれるとか、ドアの把手とって袖口そでぐちが引掛かるとかの、新しい建築との折合いが悪いというだけではない。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
黒い袖口そでぐちのついた鼠色ねずみいろの制服を着ている二人の葬儀人夫が、棺車の左右に従っていた。
一人の客は洋装した一人の女給をひざの上に抱きあげ、和装した他の女給の袖口そでぐちへ手をいれる。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
帯は仮なように結び、袖口そでぐちに引き入れて見せない用意をしながら数珠じゅずを手へ掛けていた。
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
がまたその布地の、柔らかではありながらなお弾力と重味とを欠かない性質も、袖口そでぐちのなびき方や肩のひだなどに、十分明らかに現わされている。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
し熱い夏の夜に一縷いちる冷風れいふう袖口そでぐちくぐったような気分になる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
背は高いが、ひどく細く、肩幅はせまく、腕も脚も長く、両手は袖口そでぐちから一マイルもはみだし、足はシャベルにでもしたほうがいいような形だった。
袖口そでぐちだけ残して、桃色の太白たいはく二本で、広く狭く縫目ぬいめを外にしてありました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
南窓の外にある横木に倚凭よりかかって、寒そうに袖口そでぐち掻合かきあわせ、我と我身を抱き温めるようにして、辰さん兄弟の用意するのを待った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
黙って、うしろから寝巻をかけてくれて、それから、寝巻の袖口そでぐちから手を入れて、僕の腕のけ根のところを、ぎゅっとかなり強くつねった。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
紫の野郎帽子やろうぼうしえり袖口そでぐちに、赤いものをのぞかせて、きつい黒地のすそに、雪持ゆきもち寒牡丹かんぼたん
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
昔どおりに給仕をする少将の尼の普通に異なった袖口そでぐちの色も悪い感じはせず美しく思われた。
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
綿ネルの下着が袖口そでぐちから二寸もはみ出しているのが、いつも先生から笑われる種であった。
夏目漱石先生の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
櫛の背を歯にくわえ、両手を高く、長襦袢の袖口そでぐちはこの時下へと滑ってその二の腕の奥にもし入黒子いれぼくろあらば見えもやすると思われるまで
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その袖口そでぐちからどうかすると脇の下まで見えきそうになるのを、しきりと気にして絶えず片手でメレンスの襦袢じゅばんの袖口を押えている。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この人は形式的にするだけのことはせずにいられぬ性格であったから纏頭も出したが、山吹色のうちぎ袖口そでぐちのあたりがもう黒ずんだ色に変色したのを
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
几帳のぎぬが一枚上へ掲げられてあって、紫苑しおん色のはなやかな上に淡黄うすきの厚織物らしいのの重なった袖口そでぐちがそこから見えた。
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
結わえてるリボン、手袋、袖口そでぐち半靴はんぐつ、すべて彼女の身につけてるものを、彼は自分の持ってる神聖な物のように、うちながめ大事にしていた。
釣皮にぶらさがる女の袖口そでぐちより脇の下をそつと覗いて独りえつるものあり。
猥褻独問答 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
袖口そでぐちはほころびて、毛糸が垂れさがって、まず申し分のない代物しろものなのです。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
「あ、」と離すと、爪を袖口そでぐちすがりながら、胸毛むなげさかさ仰向あおむきかゝつた、鸚鵡の翼に、垂々たらたら鮮血からくれない
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あかだらけの綿めんネルシャツの袖口そでぐちは金ボタンのカフスとあい接した。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
陳氏はすっかり黒の支度したくをして、袖口そでぐちくつだけ、まばゆいくらいまっ白に、髪は昨日きのうの通りでしたが、支那の勲章を一つつけていました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
袖口そでぐちから毛だらけのシャツがはみ出している事は考えただけでもたまらない
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
そんな物の間から見えるのも女房たちの淡鈍うすにび色の服、黄色な下襲したがさね袖口そでぐちなどであったが、かえってえんに上品に見えないこともなかった。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
女はそう云ってから右の手を左の袖口そでぐちに入れて、何か握ったものを引出した。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
老い疲れたる帝国大学生、袖口そでぐちぼろぼろ、蚊のすねほどに細長きズボン、鼠いろのスプリングを羽織って、不思議や、若き日のボオドレエルの肖像とうり二つ。
狂言の神 (新字新仮名) / 太宰治(著)
あるものは袖口そでぐちくくった朱色の着物の上に、唐錦からにしきのちゃんちゃんをひざのあたりまで垂らして、まるで錦に包まれた猟人かりゅうどのように見えた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから、女の腕が袖口そでぐちから現われるように、彼は首を引き出す。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
が、それ衣絵きぬゑさんがきてて、かざすのに、袖口そでぐちがほんのりえて、しろつやはねば不可いけない……
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
開闢かいびやく以来を尋ねたらば折る指にあの内儀かみさまが袖口そでぐちおもはるる、思へばおみねは辛棒もの、あれにむごあたつたらば天罸てんばつたちどころに
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
夫人はやっとソファの端にひざを下ろした。しかし、両手で袖口そでぐちを引っぱってからかしこまるように膝をそろえ、あごを引いて、やっぱり顔を伏せ気味にしている。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ト云ッて襦袢じゅばん袖口そでぐちなみだいた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
吉は「へへへ。」と笑って袖口そでぐちで鼻と口とをでた。
笑われた子 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「まるでむらだ」そう云って、かの女のあごに固まった白粉おしろいを洋服の袖口そでぐちこすって呉れたりした。いちばん困ったのは、かの女がよく××××をずり下げることだった。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ワイシャツの袖口そでぐちが清潔なのに、感心いたしました。
きりぎりす (新字新仮名) / 太宰治(著)
と言いながら、一人の御客様はたもとから銀縁の大きな眼鏡を取出しました。玉のほこり襦袢じゅばん袖口そでぐちで拭いて、釣針つりばりのようにとがった鼻の上に載せて見て、
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
黒褐色の服に雪白のえり袖口そでぐち。濃いあい色の絹のマントをシックに羽織っている。この画は伊太利亜イタリアで描いたもので、肩からかけて居る金鎖はマントワ侯の贈り物だという。
各夫人の見物席には、いずれ劣らぬ美しい色を重ねた女房の袖口そでぐちが出ていて、あけぼのの空に春の花のにしきかすみが長く一段だけ見せているようで、これがまた見ものであった。
源氏物語:23 初音 (新字新仮名) / 紫式部(著)
お町の眼はその時広巳の右の袖口そでぐちへ往った。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
すだれ戸に袖口そでぐち赤き日の移り 里東りとう
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
白い手袋をはめ赤い袖口そでぐちを見せていた。
宮中の生活にれた女御たちの曹司よりも、新しい尚侍の見物する御殿の様子のほうがはなやかで、同じような物ではあるが、女房の袖口そでぐちの重ねの色目も、ここのがすぐれたように公達きんだちは思った。
源氏物語:31 真木柱 (新字新仮名) / 紫式部(著)
泥まみれになった袖口そでぐちや、ビショビショに濡れた膝頭ひざがしらや、お尻のあたりからは、冷気がゾクゾクとしみ渡って来て、鼻汁と涙が止め度なく出て、どうかするとくしゃみが飛び出しそうになるのです。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ところどころ紅味あかみの入った羽二重しぼりの襦袢じゅばん袖口そでぐちからまる白い繊細かぼそい腕を差し伸べて左の手に巻紙を持ち、右の手に筆を持っているのが、いやしい稼業かぎょうの女でありながら
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
直衣のうしなどを着るために向こうの室の御簾みすを引き上げて源氏がはいる時に、短い几帳きちょうを近くへ寄せて立てた人の袖口そでぐちの見えたのを、女王にょおうであろうと思うと胸がき上がるような音をたてた。
源氏物語:28 野分 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その人々の中に長吉は偶然にも若い一人の芸者が、口には桃色のハンケチをくわえて、一重羽織ひとえばおり袖口そでぐちぬらすまいためか、真白まっしろな手先をば腕までも見せるように長くさしのばしているのを認めた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
おつたは幾年いくねん以前まへ仕立したてえる滅多めつたにない大形おほがた鳴海絞なるみしぼりの浴衣ゆかた片肌脱かたはだぬぎにしてひだり袖口そでぐちがだらりとひざしたまでれてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
夜ふけてから外へ出た事さえまれだったので、この夜久しぶり静にふけ渡った濠端ほりばたの景色を見てさえ、何とも知れず心の浮き立つ折から、時候も丁度五月の初めで、あわせ袖口そでぐち裾前すそまえから静に夜風の肌をでる心持。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
かすりの着物の下に純白のフランネルのシャツを着ているのですが、そのシャツが着物の袖口そでぐちから、一寸いっすんばかりのぞき出て、シャツの白さが眼にしみて、いかにも自身が天使のように純潔に思われ、ひとり、うっとり心酔してしまうのでした。
おしゃれ童子 (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼は人々の更互かたみがはりにおのれのかたながむるを見て、その手に形好く葉巻シガアを持たせて、右手めて袖口そでぐちに差入れ、少したゆげに床柱にもたれて、目鏡の下より下界を見遍みわたすらんやうに目配めくばりしてゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
大河おおかわまで持ち出して行って、バケツで水をみあげるのが面倒くさく、じかに流れですすいだりして、襦袢じゅばん浴衣ゆかたを流したりしていた銀子も、それを重宝がりお礼に金を余分に包んだり、半衿や袖口そでぐちなどを買ってやったりしていた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
にいるお富は半蔵の顔を見るにつけても亡き夫のことを思い出すというふうで、襦袢じゅばん袖口そでぐちなぞでしきりに涙をふいていたが、どうして酒も強いと聞くこの人が包み切れないほどの残りの色香を喪服に包んでいる風情ふぜいもなかなかにあわれであった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
の人々の中に長吉ちやうきち偶然ぐうぜんにも若い一人の芸者が、口には桃色のハンケチをくはへて、一重羽織ひとへばおり袖口そでぐちぬらすまいめか、真白まつしろ手先てさきをば腕までも見せるやうに長くさしのばしてゐるのを認めた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
繻子と云っても綿入りの繻子でしたが、羽織も着物も全体が無地の蝦色えびいろで、草履の鼻緒や、羽織のひもにまで蝦色を使い、その他はすべて、半襟はんえりでも、帯でも、帯留でも、襦袢じゅばんうらでも、袖口そでぐちでも、ふきでも、一様に淡い水色を配しました。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
わたくしが安心もし、張合抜けもしたような様子を見て取り、雛妓は、ここが言出すによき機会か、ただしは未だしきかと、大きいたもと袖口そでぐち荒掴あらづかみにして尋常科じんじょうかの女生徒の運針の稽古けいこのようなことをしながら考えめぐらしていたらしいが、次にこれだけ言った。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
馭者ぎょしゃが二人、馬丁ばていが二人、袖口そでぐちえりとを赤地にした揃いの白服に、赤いふさのついた陣笠じんがさのようなものを冠っていた姿は、その頃東京では欧米の公使が威風堂々と堀端を乗り歩く馬車と同じようなので、わたくしの一家はにわかにえらいものになったような心持がした。
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
初めて言葉を交してからもうかれこれ三月みつきぢかくになるが、今だに着通しに着ているお千代の着物を見ると、品物は金紗きんしゃの上等物でありながら、袖口そでぐちすそまわりの散々にいたんだのを、湯屋へ来る時などは素肌すはだにきて、腰巻などは似もつかぬ粗末なものを取返えもせずに締めている。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
だから、城士のほうでも心得ていて、このえへんが聞えて来ると、さあ大目附が通るというので、いましめ合ってすわり直す、襟をきあわす、袖口そでぐちを引っ張る、そこらを片付ける、急に忙しそうに書類などをめくり出す——一時的だが、咳払い一つで立派に綱紀粛正こうきしゅくせいの目的を達していた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)