なわ)” の例文
新字:
建築用けんちくようの木材は火にてき切り又は打製石斧いしおのにてたたりしなるべし、是等をくくり合するには諸種のなわ及び蔦蔓つたづるの類を用ゐしなるべし
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
ひとすじなわじゃ動かないや、この大将は……。母親の気にいることをするくらいなら、叩きのめされたほうがましだと思ってるんだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
すると相手のねずみは、まるでつぶてのようにクねずみに飛びかかってねずみのなわを出して、クルクルしばってしまいました。
クねずみ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
北氷洋の白熊は結局、カメラも鉄砲もなわも鎖もウインチも長靴ながぐつも持っていなかったために殺され生け捕られたに過ぎないように思われる。
空想日録 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
左手には大きなロシア風の暖炉だんろがあった。暖炉から左側の窓にかけて、部屋いっぱいになわが渡されて、色とりどりなぼろが下がっていた。
それどころか、自分じぶんでぐるぐるとなわをなにかのえだきつけて、くるしまぎれに、ウエー、ウエーと悲鳴ひめいげているのでした。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
とびらのそばの片すみには、何か特別の用に当てるためのものらしい品が二処ふたところに積んであって、一つは鉄の類らしく、一つはなわの類らしかった。
停車場には農場の監督と、五、六人の年嵩としかさな小作人とが出迎えていた。彼らはいずれも、古手拭と煙草たばこ道具と背負いなわとを腰にぶら下げていた。
親子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
盗賊とうぞくどもがなくなった時、押入おしいれの中にかくれていたさるは、ようようでてきて、甚兵衛のしばられてるなわいてやりました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
屋根は天気を見さだめて一日のうちに葺くから、手伝いもいるし、なわや竹も集めねばならぬが、それだけならばやといも買いもすることができる。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
己は檢非違使けびゐしの廳の役人などではない。今し方このもんの下をとほりかゝつた旅の者だ。だからお前になわをかけて、どうしようと云ふやうな事はない。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
するのう。うちに、のこぎりで柱をゴシゴシ引いて、なわかけてエンヤサエンヤサと引張り、それで片っぱしからめいで行くのだから、かわらも何もわや苦茶じゃ
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
千太あにいは無実の罪でおなわになったんでさ、人殺し兇状なんぞたあとんでもねえ、まったくの無実だったんですよ。
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
成程舊い道徳どうとくなわでは、親は子供の體を縛ツて家の番人にして置くことが出來るかも知れぬが、藝術の權威を遵奉じゆんぽうする自分の思想は其の繩をぶちる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「我は実にみずから幸福なものと思う。願わくは殿下もこのなわを除いてはまったく我のごとくあられんことを」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ねこ死骸しがいなわにくゝりてお役目やくめなれば引導いんだうをたのみますとげつけしことりしが、それはむかしいま校内かうない一のひととてかりにもあなどりての處業しよげうはなかりき、としは十五
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私はそういいながら、ぱッとなわをそのくびへ投げかけた。ところがさすがは狼王ろうおう、ふっと身をかわして繩をくわえとり、その結び目をかみきってずたずたにした。
キリストも、エルサレムの宮ではとを売るもののつくえを倒し、なわの鞭を持って商人を追放した。私は初めは、キリストのこの行為を善しと見ることができなかった。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
なわでからげてもらった小さな氷を持って、車に乗ると、彼は又当てもなく運転を続けた。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
車力はなわをといて、荷物を庭口から縁側へと運び入れる。父親と荻生さんが先に立って箪笥や行李や戸棚や夜具を室内に運ぶ。長火鉢、箪笥の置き場所を、あれのこれのと考える。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
彼は柿の樹の方から梯子はしごを持って来て、それを土壁に立掛けた。それから、彼の力では漸く持上るような重い大根のつないであるなわを手に提げて、よろよろしながらその梯子を上った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これらの仲間の中にはなわの一はし牝牛めうしまたはこうしをつけていてゆくものもある。
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
一本のなわを振りうごかし、目に見えている鯉が釣れないようにれました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は片手に彼女の頭髪をなわのように巻きつけた。——逃げよ。余はコルシカの平民の息子である。余はフランスの貴族を滅ぼした。余は全世界の貴族を滅ぼすであろう。逃げよ。ハプスブルグの女。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
なわ垂繩たらしをつけた十尺ばかりの角材を海におろし、両端りょうたんをマレー人に支えさせておいてモニカを水に入れた。垂繩たらしにつかまらせると、四人のマレー人が前衛ぜんえい後衛こうえいになって、岸をめがけて泳ぎだした。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
婆「はい、おなわと申します」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なわとびうた
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
そして同時に彼は縛られたなわを揺すった。それは皆切れていた。捕虜はもはや、片足が寝台に結わえられてるばかりだった。
なつ晩方ばんがたには、むら子供こどもらがおおぜい、この城跡しろあとあつまってきていしげたりおにごっこをしたり、またなわをまわしたりしてあそんでいました。
海のかなた (新字新仮名) / 小川未明(著)
本邦ほんぱう石器時代遺跡せききじだいいせきより出づる石輪中せきりんちうにも或は同種だうしゆのもの有らんかなわかごむしろの存在は土器どき押紋おしもん及び形状けいじやう裝飾そうしよく等に由つて充分に證明しやうめいするを得べし。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
なわでくくった浅草紙や、手ぬぐいの截らないのが、雑然として取乱された中で、平塚君や国富君や清水君が、黒板へ
水の三日 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
つるはしのようなつえをさげてなわを肩にかついだ案内者が、英語でガイドはいらぬかと言うから、お前は英語を話すかときくと、いいえと言いました。
先生への通信 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
しかし以前の農村の負搬法ふはんほうというものは、これとはまったくちがったかるいなわ、もしくは荷繩になわ一式の仕事であった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ハンカチもあれば襯衣はだぎもあるから、おれはなわをすぐになうことができる、おまけにズボンりがあるぞ——何もこのうえ、世の中の荷やっかいになって
何方どつちにしても、俺の體は縛られてゐるんだ………縛られてゐるばかりじやない。窮窟きうくつ押籠おしこめられてゐるんだ。何うしたら此のなわが解けるんだ、誰か、俺を
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
まりなげ、なわとびのあそびにきやうをそへてながるゝをわすれし、其折そのをりこととや、信如しんによいかにしたるか平常へいぜい沈着おちつきず、いけのほとりのにつまづきて赤土道あかつちみちをつきたれば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
きれいに刈られた草の中に一本の大きなくりの木が立って、その幹は根もとの所がまっ黒に焦げて大きなほらのようになり、その枝には古いなわや、切れたわらじなどがつるしてありました。
風の又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
どうせ、いざとなれば、銃丸じゅうがんぱつでしとめられるのだが、私はそのりっぱな皮をきずつけたくなかったので、他のなわを取って、まず木のえだをロボへ投げると、かれはそれを歯で受けとめた。
田畝を越すと、二間幅の石ころ道、柴垣しばがき樫垣かしがき要垣かなめがき、その絶え間絶え間にガラス障子、冠木門かぶきもん、ガス燈と順序よく並んでいて、庭の松に霜よけのなわのまだ取られずについているのも見える。
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
単にその弟であったという罪のためにグレーヴの広場でなわをもって両わきをつるされ、ついに死に至ったあの罪なき子供は
「しっかりあししばっておくだぞ、さあ、このなわでな。」といって、父親ちちおやは、ごろなじょうぶそうななわして、子供こどもあしもとへげました。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
里人は相戒めて之を捕りに行くことなかりしを此男一人雪の中を行き、もちなわを流して鳥を取ること甚だ多し。一夜又行きしも少しも獲物無きことあり。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
剣劇の股旅またたびものや、幕末ものでも、全部がまだ在来の歌舞伎かぶき芝居の因習のなわにしばられたままである。
映画芸術 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その昔、囚人ラシャといっていた粗末な地の、長い赤茶けた百姓外套を着け、太いなわを帯にしている。
あなつくるに當つては、或は長さ幾歩いくほはば幾歩とあゆみ試み、或はなわ尋數ひろすうはかりて地上にめぐらし、堀る可き塲所ばしよの大さを定め、とがりたるぼうを以て地を穿うがち、かごむしろの類に土を受け
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
今日けふよりはわたしうちかへりて伯父樣おぢさま介抱かいほう活計くらしたすけもしまする、らぬこととて今朝けさまでも釣瓶つるべなわこほりらがつたは勿躰もつたいない、學校がくかうざかりのとししゞみかつがせてあねなが着物きものきてらりようか
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこで一筋のなわが必要になってきた。ジャン・ヴァルジャンはそれを持っていなかった。ポロンソー街のそのま夜中に、どこに繩が得られよう。
ふとなわで、鉄槌てっついげて、とすたびに、トーン、トーンというめりむようなひびきが、あたりの空気くうき震動しんどうして、とおくへ木霊こだましていました。
白い雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるいは宮や寺の宝物ほうもつになっている古い仮面めんをかり、釣鐘つりがねをおろし、また路傍の石地蔵いしじぞうのもっとも霊験れいげんのあるというのを、なわでぐるぐる巻きにしたりして
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
倉庫の暗やみでのねずみのクローズアップや天井から下がったなわにうっかり首を引っかけて驚いたりするのも、わざとらしくない。そうして塵埃じんあいのにおいが鼻に迫る。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)