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紅
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くれなゐ
ふりがな文庫
“
紅
(
くれなゐ
)” の例文
小賊
(
せいぞく
)
肯
(
き
)
かずして、
則
(
すなは
)
ち
刀
(
かたな
)
を
執
(
と
)
つて
其
(
そ
)
の
指
(
ゆび
)
を
切
(
き
)
つて
珠
(
たま
)
を
盜
(
ぬす
)
むや、
指
(
ゆび
)
より
紅
(
くれなゐ
)
の
血
(
ち
)
衝
(
つ
)
と
絲
(
いと
)
の
如
(
ごと
)
く
迸
(
ほとばし
)
りぬ。
頭領
(
とうりやう
)
面
(
おもて
)
を
背
(
そむ
)
けて
曰
(
いは
)
く、
於戲痛哉
(
あゝいたましいかな
)
。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
彼答へて曰ひけるは、汝問ふところの事みなよくわが心に適ふ、されど、煮ゆる
紅
(
くれなゐ
)
の水はよく汝の問の一に答へん 一三三—一三五
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
兎に角己はいつに無い上機嫌になつて来た。己は酒に
逆
(
のぼ
)
せて、顔が
健
(
すこ
)
やかな濃い
紅
(
くれなゐ
)
に染まつた。それを主人は妬ましげに見てゐるらしい。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
亂れた髮の上から、猿轡を
食
(
は
)
まされ舞臺の上に引据ゑられて、
紅
(
くれなゐ
)
の
裳
(
もすそ
)
を亂したお村は、顏色を變へてゾツと身顫ひしたやうです。
銭形平次捕物控:016 人魚の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
けれどもそれはつい二三週間前までのやうな
灼
(
や
)
け
爛
(
ただ
)
れた真赤な空ではなかつた。底には快く快活な黄色を
匿
(
かく
)
してうはべだけが
紅
(
くれなゐ
)
であつた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
▼ もっと見る
婦人は此言をなし
畢
(
をは
)
りて、
纔
(
わづか
)
におのれの擧動の
矩
(
のり
)
を
踰
(
こ
)
えたるを
曉
(
さと
)
れりとおぼしく、
臉
(
かほ
)
に火の如き
紅
(
くれなゐ
)
を
上
(
のぼ
)
して席をすべり出でぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
おだやかに午前と午後を照らしをへて疲れはてた太陽は地平の彼方に沈んで、まさに暮れなんとする日は蠱惑的に、鮮やかな
紅
(
くれなゐ
)
の色をおびた。
ディカーニカ近郷夜話 前篇:03 ソロチンツイの定期市
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
紅
(
くれなゐ
)
や緑や紫や又は絞り縫取り染模樣のさま/″\に、閃く焔の如く飾り立てられたのを見ると、私は娘のやうに心も浮かれて引寄せられたが
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
此あたりは山近く林
密
(
みつ
)
にして、
立田
(
たつた
)
の姫が織り成せる木々の錦、二月の花よりも
紅
(
くれなゐ
)
にして、匂あらましかばと
惜
(
を
)
しまるゝ美しさ、得も言はれず。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
其、誰とも知れぬ戀人は、毎日々々、朝から晩まで、燃ゆる樣な
紅
(
くれなゐ
)
の衣を着て、船首に立つて船の行手を眺めてゐた。
散文詩
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
それは夕日が
紅
(
くれなゐ
)
を帯びた
黄金
(
こがね
)
色に海岸を照してゐる時、優しい、明るい目をした、賢い人達が、互に親しい話を交へてゐる様子を思ひ出したのである。
クサンチス
(新字旧仮名)
/
アルベール・サマン
(著)
窪んだ頬の上に薔薇色の
紅
(
くれなゐ
)
が
潮
(
さ
)
してゐる。多くの町や広場を通り過ぎて、主従は大ぶ家を遠ざかつた。併し老人には主人がどこへ往くのだか分からない。
フロルスと賊と
(新字旧仮名)
/
ミカイル・アレクセーヴィチ・クスミン
(著)
帰宅後、大震の再び至らざるべきを説き、家人を皆屋内に眠らしむ。電燈、
瓦斯
(
ガス
)
共に用をなさず、時に二階の戸を開けば、
天色
(
てんしよく
)
常に燃ゆるが如く
紅
(
くれなゐ
)
なり。
大正十二年九月一日の大震に際して
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
答無かりければ、満枝は
手酌
(
てじやく
)
してその
半
(
なかば
)
を傾けしが、見る見る頬の麗く
紅
(
くれなゐ
)
になれるを、彼は手もて
掩
(
おほ
)
ひつつ
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
見眞似
(
みまね
)
か
温順
(
おとな
)
しづくり
何某學校
(
なにがしがくかう
)
通學生中
(
つうがくせいちゆう
)
に
萬緑叢中
(
ばんりよくさうちゆう
)
一點
(
いつてん
)
の
紅
(
くれなゐ
)
と
稱
(
たゝ
)
へられて
根
(
ね
)
あがりの
高髷
(
たかまげ
)
に
被布
(
ひふ
)
扮粧
(
でたち
)
廿歳
(
はたち
)
を
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「梅子さん、
貴嬢
(
あなた
)
が
此辺
(
このあたり
)
に
在
(
い
)
らつしやらうとは思ひ寄らぬことでした、」と篠田は
池畔
(
ちはん
)
の石に腰打ちおろし「どうです、天は
碧
(
みどり
)
の幕を張り廻はし、地は
紅
(
くれなゐ
)
の
筵
(
むしろ
)
を ...
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
僅かに天の一方にあたつて、遠く深く
紅
(
くれなゐ
)
を流したやうなは、沈んで行く夕日の反射したのであらう。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
洋装婦人の顔は着たる衣の其れよりも
紅
(
くれなゐ
)
になりぬ。倒れし男はそこ/\に舞踏室を逃げ出したり。
燕尾服着初めの記
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「萩が花咲けるを見れば君に逢はず
真
(
まこと
)
も久になりにけるかも」(巻十・二二八〇)、「竹敷のうへかた山は
紅
(
くれなゐ
)
の
八入
(
やしほ
)
の色になりにけるかも」(巻十五・三七〇三)等で
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
市場又は祭礼すべて人の
群
(
あつま
)
る所へいでゝ
看物
(
みせもの
)
にせしが、ある所にて
余
(
よ
)
も見つるに大さ
狗
(
いぬ
)
のごとく
状
(
かたち
)
は全く熊にして、白毛雪を
欺
(
あざむ
)
きしかも
光沢
(
つや
)
ありて
天鵞織
(
びらうど
)
のごとく
眼
(
め
)
と
爪
(
つめ
)
は
紅
(
くれなゐ
)
也。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
紅頭嶼
(
こうとうしよ
)
とかつていふのよ。
紅
(
くれなゐ
)
の
頭
(
あたま
)
つて書くんでせう。土人も、まあ生蕃なんかより、原始的だし、動物や植物の種類が、日本の領土のなかでは、全く例がないくらゐ違ふんですつてね
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
毛色が白に
紅
(
くれなゐ
)
を帯びてゐた。所謂
桃花鳥
(
とき
)
色である。それゆゑ名を
桃花猫
(
とき
)
と命じた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
此の頭
三三八
何ばかりの物ぞ。此の戸口に
充満
(
みちみち
)
て、雪を積みたるよりも白く
輝
(
きら
)
々しく、
眼
(
まなこ
)
は
鏡
(
かがみ
)
の如く、
角
(
つの
)
は
枯木
(
かれき
)
の
如
(
ごと
)
、三
尺
(
たけ
)
余りの口を開き、
紅
(
くれなゐ
)
の舌を
吐
(
は
)
いて、只一
呑
(
のみ
)
に飲むらん
勢
(
いきほひ
)
をなす。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
御腰蓑
(
おんこしみの
)
には白熊、鞭をおびられ、
白革
(
しろかは
)
のお
弓懸
(
ゆがけ
)
には、桐のとうの御紋あり、
猩々皮
(
しやうじやうがは
)
の
御沓
(
おんくつ
)
に、お
行縢
(
むかばき
)
は金に虎の
斑
(
まだら
)
を縫ひ、
御鞍重
(
おんくらかさ
)
ね、
泥障
(
あふ
)
り、御手綱、腹巻、馬の
尾袋
(
をぶくろ
)
まで
紅
(
くれなゐ
)
の
綱
(
つな
)
、紅の房
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
灼熱の
夏日
(
かじつ
)
の
紅
(
くれなゐ
)
に移る一歩前、陽光さんさんと降りくだつて、そこに菜の花は咲きつづき、
和
(
やはら
)
ぎと喜びの色に照りはえ、
展
(
の
)
べひろげられ、麗かに、
閑
(
のどか
)
に國を包んで、朝に
明
(
あ
)
け、夕べに暮れてゐる。
菜の花:――春の新七草の賦のその一ツ――
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
寐ながら胸の
脈
(
みやく
)
を
聴
(
き
)
いて見るのは彼の近来の癖になつてゐる。動悸は相変らず落ち付いて
確
(
たしか
)
に打つてゐた。彼は胸に手を
当
(
あ
)
てた儘、此鼓動の下に、
温
(
あたた
)
かい
紅
(
くれなゐ
)
の血潮の緩く流れる
様
(
さま
)
を想像して見た。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
見んとして見えず何となく氣
壯
(
さか
)
んになりて身に膓胃ある事を忘れたり
此山路
(
このやまぢ
)
秋は左こそと青葉を
紅
(
くれなゐ
)
に默想し雪はいかにと又萬山を枯し盡して忽ち
突兀
(
とつこつ
)
天際に聳ゆる
銀
(
しろがね
)
の山を瞑思すつひに身ある事を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
彼は、降りて來た階段の高さを、振り仰ぐ瞳のなかに、彼女を見た。彼女の蒼白い頬には、瞳のあたりまで
紅
(
くれなゐ
)
の色が上つてゐた。紫に輝く髮の上に、重たい光りのおもさを感じてゐるやうであつた。
幸福への道
(旧字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
寺の門に近づくに人群集せり。何ゆゑならんといぶかりつつ門を入れば、
紅
(
くれなゐ
)
の
芥子
(
けし
)
の花咲き満ち、見渡す限りも知らず。いよいよ心持よし。この花の間に亡くなりし父立てり。お前も来たのかといふ。
遠野物語
(新字旧仮名)
/
柳田国男
(著)
ぐろきしにあつかみつぶせばしみじみとから
紅
(
くれなゐ
)
のいのち忍ばゆ
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
乳ぶさおさへ
神秘
(
しんぴ
)
のとばりそとけりぬここなる花の
紅
(
くれなゐ
)
ぞ濃き
みだれ髪
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
氏は
卓
(
たあぶる
)
の一角から
罪色
(
つみいろ
)
紅
(
くれなゐ
)
の
Curaçao
(
きゆらさお
)
を取つて
北原白秋氏の肖像
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
ひらひらと
紅
(
くれなゐ
)
の
裙
(
すそ
)
が
燃
(
も
)
える、女だ、若いぞ。
二十三夜
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
その
間
(
かん
)
、小さな
紅
(
くれなゐ
)
の花が見えはするが
山羊の歌
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
紅
(
くれなゐ
)
の實とぞさはやどれる。
独絃哀歌
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
から
紅
(
くれなゐ
)
の花のたもとを
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
紅
(
くれなゐ
)
さむるかげろふの
天地有情
(旧字旧仮名)
/
土井晩翠
(著)
紅
(
くれなゐ
)
褪
(
あ
)
せしさふらんの
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
紅
(
くれなゐ
)
のダーリアの花
一点鐘
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
紅
(
くれなゐ
)
燃
(
も
)
ゆる
天津日
(
あまつひ
)
の
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
紅
(
くれなゐ
)
の花花は
わがひとに与ふる哀歌
(新字旧仮名)
/
伊東静雄
(著)
二間
(
ふたま
)
三間
(
みま
)
、
段々
(
だん/\
)
に
次第
(
しだい
)
に
奧
(
おく
)
へ
深
(
ふか
)
く
成
(
な
)
ると……
燈火
(
ともしび
)
の
白
(
しろ
)
き
影
(
かげ
)
ほのかにさして、
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
へ、
颯
(
さつ
)
と
紅
(
くれなゐ
)
の
簾
(
すだれ
)
が
靡
(
なび
)
く、
花
(
はな
)
の
霞
(
かすみ
)
に
入
(
い
)
る
心地
(
こゝち
)
。
麦搗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
派手な
縫模樣
(
ぬひもやう
)
の單衣を着たお駒が、可愛らしい後ろ帶を引摺つて、半面
紅
(
くれなゐ
)
に染んで死んで居た痛々しさは、馴れた眼にもツイ涙が浮かびます。
銭形平次捕物控:004 呪ひの銀簪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
われは星斗のきらめける空を仰ぎ、又熔巖の影處々に
紅
(
くれなゐ
)
を印したる青海原を見遣りたり。好し々々、我は我戀人を獲たり。我戀人は自然なり。自然よ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「ですけれど、
私
(
わたし
)
はドウやら悩みに悩むで
到底
(
たうてい
)
、救の門の開かれる望がない様に感じますの」梅子は
只
(
た
)
だ風なくて散る
紅
(
くれなゐ
)
の一葉に、層々
擾
(
みだ
)
れ行く波紋をながめて
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
唯後に残つたは、向うの岸の砂にさいた、したたかな柳の太杖で、これには枯れ枯れな幹のまはりに、不思議や
麗
(
うるは
)
しい
紅
(
くれなゐ
)
の薔薇の花が、
薫
(
かぐは
)
しく咲き誇つて居つたと申す。
きりしとほろ上人伝
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
戀人は平生の如く船首に立つて
紅
(
くれなゐ
)
の衣を着てゐたが、私は船尾にゐて戀人の後姿を瞶めてゐた。
散文詩
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
竹敷
(
たかしき
)
のうへかた
山
(
やま
)
は
紅
(
くれなゐ
)
の
八入
(
やしほ
)
の
色
(
いろ
)
になりにけるかも 〔巻十五・三七〇三〕 新羅使(大蔵麿)
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
涙の地風をおこし、風は
紅
(
くれなゐ
)
の光をひらめかしてすべてわが官能をうばひ 一三三—一三五
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
無論其邊の商店や料理屋には
瓦斯
(
ガス
)
の火がついて居たが、烈しい
夕陽
(
ゆふひ
)
は西の空一面を
紅
(
くれなゐ
)
に燒き立てゝ、見渡す往來のはづれなる本願寺の高い屋根をば恐しいほど眞黒に焦してゐる。
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
紅
常用漢字
小6
部首:⽷
9画
“紅”を含む語句
紅玉
淡紅
淡紅色
紅潮
紅色
紅葉
真紅
薄紅
口紅
微紅
爪紅
雁来紅
紅毛
頬紅
紅提灯
紅羅
紅絹
紅殻
紅々
鮮紅
...