正直しょうじき)” の例文
おりおりまち生活せいかつもしたくなるが、うそといつわりでまるめているとおもうと、この正直しょうじきうみうえのほうが、どれほどいいかしれなくなる。
船の破片に残る話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
勿論もちろんあま正直しょうじきにはつとめなかったが、年金ねんきんなどうものは、たとい、正直しょうじきであろうが、かろうが、すべつとめたものけべきである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「では、この試合しあい部門ぶもんに、なにびとがなんの立合たちあいにご出場しゅつじょうになるか、流名りゅうめいとご姓名せいめいとを、正直しょうじきにお書き入れねがいとうござる」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正直しょうじきおとうとうたぐっていたことがわかると、にいさんはたいそう後悔こうかいして、んだおとうとからだをしっかりきしめて、なみだながしながらいていました。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
くまのように魁偉かいいな男ではあるが、どことなくものやさしい、目は正直しょうじきそうな光をおびている、一同はかれの態度たいどになにかしら心強さを感じた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
正直しょうじきにほんとうのせいを名のっている者は、その手がどうにもなりませんが、いつわりを申し立てているものは、たちまち手が焼けただれてしまうので
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
今考えると随分馬鹿げた話さ。併し斯う云って来ると、一図に「正直しょうじき」に忠実だったようだが、一方には実は大矛盾があったんだ。即ち大名誉心さ。
予が半生の懺悔 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
正直しょうじきにいうと、僕はこの敗軍のしょうに対する同情と敬愛の念は、かれの軍を敗り、彼をして軍門にくだらしめたグラント将軍より、いっそう強く常に懐しく思っている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そうでなかったら、音楽おんがくというのはなんだ? 神様に対する不信ふしんだ、神様をけがすことだ、正直しょうじき真実しんじつなことをかたるために、われわれに美しい歌を下さった神様をね。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
しかし浩二に於てはこれは冗談でも洒落しゃれでもなく、正直しょうじき正銘な思い違いだった。道理でそのぜんから
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
はばかりながら、いったんおひきもうしやした正直しょうじききち、お約束やくそくたがえるようなこたァいたしやせん」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
しかし正直しょうじきに言うと、あなたも知っての通り、わたしは自分の思っていることをなんでも言ってしまう人間ですが、こんどの本に対してはそんなに期待していませんよ。
それというのも、義務ぎむとか責任せきにんとかいうことを、まじめに正直しょうじきに考えておったらば、実際じっさい人間のはない。手足をばくして水中すいちゅうにおかれたとなんのわるところもない。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
だがすぐきっとなられて、だれですか、今のは、正直しょうじきに手をあげなさいと、見まわされた。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
「わたくしは、まずしい正直しょうじき仕立屋したてやでございます。どうかおいれくださいまし。」
「わからない。でも、正直しょうじきっちゃうほうがいいわ。そして、かたをつけるのよ」
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかし王子は次の日も次の日も今まで長い間見て知っている貧しい正直しょうじきな人や苦しんでいるえらい人やに自分のからだの金を送りますので、燕はなかなか南に帰るひまがありません。
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
容疑ようぎはぜつたいにかからないものときめていたのですが、そんなちいさな不注意ふちゅういがもとで、とうとううたがいがかかつたというのは、正直しょうじきなところ、まことに残念ざんねんでもあり、またわるいことは
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
「が、お前いっそ正直しょうじきにいってしまったがよい——お前はつい間違まちがって、ナイフと一ルーブリ銀貨ぎんかを取りやしなかったかね? つい間違まちがって、え? ひとつ自分のポケットをてごらん。」
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
久さんのおかみは「良人やど正直しょうじきだから、良人が正直だから」と流石に馬鹿と云いかねて正直と云った。東隣のおとなしいばあさんも「久さん、お広さんは今何してるだンべ?」などからかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
わたくしとしてはべつにそんなことをしようという所思つもりはなく、ただこころにこの正直しょうじき婦人ふじんをいとしい女性じょせいおもっただけのことでしたが、たまたまみぎ婦人ふじんがいくらか霊能れいのうらしいものをっていために
韮山正直まさなおか。音で読めば正直しょうじきだから笑わしやがらあ。
好日 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
少年は、正直しょうじきに返答した。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「あんまり、おまえがうちのことを正直しょうじきにいったものだから、みんなにわらわれたのですよ。」と、なみだをためて、おっしゃいました。
笑わなかった少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
奉行ぶぎょうの声がかかったので、卜斎はからくも引分ひきわけのていで引きさがったが、群集ぐんしゅう正直しょうじきである。村上賛之丞むらかみさんのじょうのたまりへむかって歓呼かんこびせた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この「正直しょうじき」なる思想は露文学から養われた点もあるが、もっと大関係のあるのは、私が受けた儒教の感化である。
予が半生の懺悔 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
赤猪子あかいのこのどこまでも正直しょうじき心根こころねをおほめになり、ご自分のために、とうとう一生およめにも行かないで過ごしたことをしみじみおあわれみになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
いったい日本語には敬語がおびただしいから、人の葬式そうしきくやみに行っても、心の中の半分だも思わぬことまで述べる。少し正直しょうじきな人はまどわされる。古人のなげける一首にわく
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
アウエリヤヌイチはドクトルの廉潔れんけつで、正直しょうじきであるのはかねてもっていたが、しかしそれにしても、二万えんぐらいたしか所有もっていることとのみおもうていたのに、かくといては
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
彼んな顔をしているけれども、若い時には手に負えぬ道楽者だった事、地獄まで金を背負しょって行く積りらしい事、何から何までほじって聞くから、正直しょうじきに答えなければならなかった。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「この正直しょうじきそうなおかみさんなら、家の中にいれてもかまわないだろう。」
あのとき、自分じぶんは、乞食こじきかとおもったが、そんなに正直しょうじき感心かんしんひとであったのかと、さげすんだことが、かえってずかしくなりました。
雪の降った日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私は当時「正直しょうじき」の二字を理想として、俯仰天地にじざる生活をしたいという考えをっていた。
予が半生の懺悔 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
若い神は、正直しょうじきにご命令を聞いて、すぐに草をかき分けてどんどんはいっておいでになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
しかし僕は学問や技芸ぎげいに不案内であると同様に、金銭についても正直しょうじきお話するとはなはだ無頓着むとんじゃくで、毎日金勘定かねかんじょうをしながら金持になってなんになるだろうと常に思わないことはない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
裾野当時すそのとうじの気持で、じぶんへあやまるのに、親方おやかた親方とんだところが、いくぶんか正直しょうじきらしいと、おかしくなって、この蛾次郎には、竹童へ向かったような、ああいう本気にはなれなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、鏡は、正直しょうじきにまえとおなじに答えました。
正直しょうじきな、やさしいかみなりは、くろい、ふと一筋ひとすじ電線でんせんが、空中くうちゅうにあるのをつけました。そして、注意深ちゅういぶかく、そのせんうえりました。
ぴかぴかする夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
正直しょうじき、怖いものだ。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分じぶんは、田舎いなかかえれば、また、みんなから、やさしい、正直しょうじきだといって、ほめられるだろうと、おたけみちあるきながら、おもいました。
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まだ、ひともので、正直しょうじきくまさんは、みんなからかわいがられていました。子供こどもたちは、学校がっこうからかえって、くまさんのところへやってきました。
熊さんの笛 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、トムきちが、真物ほんものどおりの相場そうばで、正直しょうじきったとると、たちまち、主人しゅじんかお不機嫌ふきげんわって、おこしました。
トム吉と宝石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しょうちゃん、だれでもひとというものは、正直しょうじきであれば、おんなじことをかんがえるんだね。ぼくばかりかとおもったら、そうでなかった。
兄と魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おつきさま、わたしは、正直しょうじきはたらいていますけれど、だれもわたしをかわいそうとおもってくれるものがありません……。」と、うったえたのであります。
酒屋のワン公 (新字新仮名) / 小川未明(著)
にしろ、くさにしろ、とりにしろ、むしにしろ、本質ほんしつえていない。正直しょうじきで、明朗めいろうだ。あのみきった子供こどものようなものさ。
金歯 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「りっぱなみせっている骨董屋こっとうやのほうが、かえって、人柄ひとがらがよくないかもしれない。だれか正直しょうじきそうな古道具屋ふるどうぐやんできてせよう。」
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まん正直しょうじきな、うらおもてのない人間にんげんとして、むら人々ひとびとからあいされていました。小学校しょうがっこうえると、じきに役場やくば小使こづかいとしてやとわれました。
万の死 (新字新仮名) / 小川未明(著)
正直しょうじきひとなら、なにがただしいか、ただしくないかがわかる。たとえわかっても、なかのため、あくまでいいはる、勇気ゆうきのあるひとすくないのだ。
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)
チリンチリンのくるま小泉こいずみくんをたとき、わたしは、その正直しょうじきさをふたたびかんじました。それはぐんとわたしむねをつきました。
生きぬく力 (新字新仮名) / 小川未明(著)
正直しょうじきで、しんじやすいかみなりは、たかのいうことにしたがいました。そして、かみなりは、方向ほうこうてんじて、みやこほうすすんでいきました。黒雲くろくもかみなりに、したがいました。
ぴかぴかする夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)