“樹蔭:こかげ” の例文
“樹蔭:こかげ”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花12
吉川英治8
上田敏2
島崎藤村2
蒲原有明2
“樹蔭:こかげ”を含む作品のジャンル比率
文学 > フランス文学 > プロヴァンス文学100.0%
文学 > 英米文学 > 詩28.6%
文学 > ドイツ文学 > 詩15.4%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
その時、影のようにふらふらと樹蔭こかげから現れ出た男にあやうく突き当ろうとして、互に身を避けながらふと顔を見合せ、
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と、啓之助は、それを待ちかねて、すぐに門の外へ出た。そして、サッサと向うの樹蔭こかげへ行ってから、お米を目でさし招いた。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
巨人のような植物で、赤い幹は小屋ほどの大きさがあり、その周囲の広い樹蔭こかげでは歩兵一箇中隊でも演習が出来たろう。
先日こなひだ奈良へやつて来た戸川残花氏は、奈良公園の太い杉の樹蔭こかげに立つて、鹿の遊んでゐるのを見て非常な発明をした。
ですから軒下の暗闇づたいに近付いて行けるあの真暗い背戸の山梔木くちなしのき樹蔭こかげに在る砥石を選んだものではないかと考えます。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
神田橋近くへ来ると、番屋からも手を借り、十四、五名になった捕手とりてを、石垣のすそだの、樹蔭こかげだの、橋のたもとだのへ配って、
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
樹蔭こかげの石に腰をおろしていた人影が起って来ていった。宗彭沢庵しゅうほうたくあんなのである。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、樹蔭こかげから、白壁みたいな顔にみだらな笑みをもって、にやにや、近づいてきた女が、
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
境内の桜の樹蔭こかげに、静々、夫人のもすそが留まると、早瀬がかたわらから向うを見て、
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
少年は洞穴ほらあなを出てこれを見届けたが、引き返そうとしてはっとして樹蔭こかげに隠れた。
田圃たんぼが広々と開かれて好い樹蔭こかげがなくなると、家が近ければつじにはかえってきて、昼間の食事だけは家でする風習も生じたのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そこでそろりそろりとその丘を登つて、こつそり樹蔭こかげから現場をのぞいて見た。
三つの挿話 (新字旧仮名) / 神西清(著)
眼路めぢ眇茫べうばうとしてきはみ無く、樹蔭こかげも見えぬ大野おほのらや、
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
樹蔭こかげに身を退いて、黙然と見送っていた良雪は、思わず大きな嘆息をもらして、
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たもとすゞしきふかみどりの樹蔭こかげには、あはれちひさきものどもうちれてものひかはすわと、それも風情ふぜいかな。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
が、母と青年とは、闇の中の樹蔭こかげ椅子ベンチに、美奈子がたった一人うずくまっていようとは、夢にも思わないと見え、美奈子のいる方へ、益々近づいて来た。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
が、夏繪なつゑ息込いきごんでゐたのがまたもりそこねて、まり色彩しきさいをどらしながらうしろの樹蔭こかげへころがつてつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
眼路めぢ眇茫びようぼうとしてきはみ無く、樹蔭こかげも見えぬ大野らや、
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
その男は樹蔭こかげから猟師のやうに飛び出した。そして慌てて帽子を脱いだ。
樹蔭こかげから小声でよぶ者の影を見て、うれしそうにそこへ走り寄った。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……正三は樹蔭こかげ水槽すいそうの傍にある材木の上に腰を下ろした。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
樹蔭こかげなるがけの腹から二頭の竜の、二条の氷柱を吐く末が百筋ももすじに乱れて、どッと池へそそぐのは、熊野の野社のやしろ千歳経ちとせふる杉の林を頂いた
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
掛矢かけやふるって、玄関の大戸が見事に打ち破られるのを正面に立って眺めていたが、その時、門番小屋から、小者らしい男の影が、いたちのように樹蔭こかげへ走った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一人一人に変化のある、そして気のいた点の共通である巴里パリイ婦人の服装を樹蔭こかげの椅子で眺めながら、セエヌ河に煙花はなびあがる時の近づくのを待つて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
とポカ/\ちながら引ずりき、樹蔭こかげへ来ましたから、
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
続いて、はじめの黒きものと同じ姿したる三個、人の形のからす樹蔭こかげよりあらわれ、同じく小児等こどもらあいだまじつて、画工の周囲をめぐる。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
曹操と玄徳は、樹蔭こかげに雨やどりして、雨の過ぎるのを待っていた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幹が一抱え以上もある柳の樹蔭こかげに腰をおろして、釣糸を垂れた。
令嬢アユ (新字新仮名) / 太宰治(著)
あだかも樹蔭こかげに身を休めて行こうとする長途の旅人のごとくに。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
見れば川幅も広くなり、鉄橋にかわって、上の寺の樹蔭こかげも浅い。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
——最も合理的に耕作された田畑、緑の樹蔭こかげに掩はれた村、肥えて嬉々きゝとして戯れてゐる牧獣や家禽かきんの群、薫ばしい草花に包まれた家屋、清潔に斉然きちんと整理された納屋や倉
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
そして、すぐその体は、杉の樹蔭こかげへ走り寄っていた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小屋を出て二町ばかりくと、直ぐ坂があって、坂の下口おりくちに一軒鳥屋があるので、樹蔭こかげも何にもない、お天気のいい時あかるいあかるい小さな店で、町家まちやの軒ならびにあった。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人は樹蔭こかげの草の上に、腰をおろしていた。
虫ばんだが一段高く、かつ幅の広い、部厚ぶあつ敷居しきいの内に、縦に四畳よじょうばかり敷かれる。壁の透間すきま樹蔭こかげはさすが、へりなしのたたみ青々あおあおと新しかった。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すると、今までトルストイの手元ばかり見詰めてゐた乞丐こじきは、吃驚びつくりして跛足びつこをひきひき、宿無しいぬのやうに直ぐ前の歴山アレキサンダー公園の樹蔭こかげに逃げ込んでしまつた。
そこには生々とした樹蔭こかげが多いから。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と叫んだ。続いて一方の樹蔭こかげからも、
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妙な暗号文を書いた紙切れを——それにはいつも恐ろしい殺人に関する事柄などをしたためてあるのです——公園のベンチの板の間へ挟んで置いて、樹蔭こかげに隠れて、誰かがそれを発見するのを待構えていたり
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
帽も上衣うはきジユツプも黒つぽい所へ、何処どこか緋や純白や草色くさいろ一寸ちよつと取合せて強い調色てうしよくを見せた冬服の巴里パリイ婦人が樹蔭こかげふのも面白い。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
赤松の樹蔭こかげに茶店がある。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
やがてまた青き樹蔭こかげ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
途中に樹蔭こかげもある。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
夏は樹蔭こかげを慕ふらむ
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あの花に味噌を着けたら食えぬことは有るまい、最後はそれだ、と腹の中でめながら、なお四辺を見て行くと、百姓家の小汚こぎたな孤屋こおくの背戸にしいまじりにくりだか何だか三四本えてる樹蔭こかげ
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼方あつち此方こつちさがす中、やつとのことで大きな無花果いちじく樹蔭こかげこんでるのをつけし、親父おやぢ恭々うや/\しく近寄ちかよつて丁寧ていねいにお辭儀じぎをしてふのには
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ここかしこの鉢植なる熱帯地方の植物は、奇花を着け、異香を放ち、且つ緑翠りょくすいを滴らせて、個々ひとりひとり電燈の光を受け、一目びょうとして、人少なに、三組の客も、三人のボオイも、正にこれ沙漠の中なる月の樹蔭こかげに憩える風情。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
數多あまた賓客まらうど女王樣ぢよわうさまのお留守るすにつけこんで、樹蔭こかげやすんでりました、が、女王樣ぢよわうさまのお姿すがたはいするやいなや、いそいで競技ゲームりかゝりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
で、本文ほんもん通り、黒革縅くろかわおどし大鎧おおよろい樹蔭こかげに沈んだ色ながらよろいそで颯爽さっそうとして、長刀なぎなたを軽くついて、少しこごみかかった広い胸に、えもののしなうような、智と勇とが満ちて見える。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中隊教練ちうたいけうれんんで一先ひとま解散かいさんすると、分隊長ぶんたいちやう高岡軍曹たかをかぐんそう我々われわれ銃器庫裏ぢうきこうらさくら樹蔭こかげれてつて、「やすめつ‥‥」と、命令めいれいした。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
……去年きよねんはるごろまでは、樹蔭こかげみちで、戸田街道とだかいだう表通おもてどほりへ土地とちひとたちも勝手かつて通行つうかうしたのだけれども、いまは橋際はしぎは木戸きど出來できて、くわん構内こうないつた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小屋こやて二ちやうばかりくとすぐさかがあつて、さか下口おりくち一軒いつけん鳥屋とりやがあるので、樹蔭こかげなんにもない、お天気てんきのいゝときあかるい/\ちひさなみせで、町家まちやのきならびにあつた。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……ここにこうして居ると、そういう数年前の光景の一つ一つが、妙に生き生きと彼の心のなかによみがえってくるのは、どういうわけかしらと考える度毎に、彼はこの樹蔭こかげに何かしら一種特別な空気のあることに気づかないではなかったけれど、つい面倒くさいので彼はそれをそのままにしておいた。
恢復期 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
浜辺は煮えてにぎやかに、町は寂しい樹蔭こかげの細道、たらたらざかを下りて来た、前途ゆくては石垣から折曲る、しばらくここにくぼんだ処、ちょうどその寺の苔蒸こけむした青黒い段の下、小溝こみぞがあって、しぼまぬ月草、紺青の空が漏れ透くかと、露もはらはらとこぼれ咲いて、やぶは自然の寺の垣。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あのT原の四五町手前で自動車を降りると、わしは懐中電燈で道を照しながらやっと一本松の下までたどりつきました。牧田は、闇のことで見つかる心配はなかったけれど、なるべく樹蔭こかげを伝う様にして、五六間の間隔でわしのあとからついて来ました。御承知の通り一本松のまわりは一帯の灌木林で、どこに賊が隠れているやら判らぬので、可也気味が悪い。
黒手組 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)